私季彩々
DiaryINDEXpastwill


2001年10月31日(水) 藍空の冷気集める合鍵を差し込めぬまま外で君待つ

 無造作に鍵束が投げ出されている。

 いつも、朝どこに鍵を置いたかとバタバタしてしまう。玄関、ズボン、テーブル・・・、あらゆる可能性を紐解いてもでてこない時は、前日帰宅時の様子を思い返す。買い物袋をなげだして、熱帯魚に餌をやって、すぐに布団に倒れこんだ、などなど、いいかげんな私生活にほとほと嫌気が差す。けれど、長年続いたこの悪習もすでに計算に入っていると見えて、不思議とぎりぎりに見つかって、何とか間に合うようになっている。人間なかなかうまく出来ているものだ。

 現在ついている鍵は4つ。家と車と会社2つ。皆様はいったいどれくらい持っているものなのだろうか。
 以前にとんでもない人がいた。合鍵を30くらいブラブラさせている女性だ。学生時代の話だが、男友達の部屋の鍵を勝手に拝借して合鍵を作ってしまうのだ。そして勝手に入り込んでしまう。ほとんど犯罪の世界だが、みんな彼女には寛容で(というか少し哀れみもあって)しばらくして落ち着いた。
 彼女は他大学の学生だったが、何故かうちの大学のサークルに入り浸って、そっちにはほとんど行ってなかった。唯一といっていい人間関係の場所に、反動的に解放したかのようだった。受け入れられた証が”鍵”だったように思える。
 一つの鍵なら恋人の合鍵のようなものだが、それが30ともなれば、その意味合いがないことははっきりする。じゃらじゃらと鳴らす鍵束は彼女なりの安心の証だと思える。ここの場所は私がいてもいい空間だという事の証。

 いつしかその矛盾も消えて鍵束はなくなった。そうしなくてもいられることに気がついたようだ。それ以前に、そんな彼女を許した連中というのがすごいなと、今になって思う。

 鍵を開けるのはけっこう勇気のいる事だったりする。預けるのも渡されるのも。お互いの間にあった扉でわかりやすかった距離のとり方も、その鍵を開けた途端に綺麗に交わるわけではない。そこから始まるという事かもしれない。

 鍵束に鍵は4つ。見える鍵は4つ。他にはまだあるのかな、私には。

 藍空の冷気集める合鍵を差し込めぬまま外で君待つ Home&Photo


とんと |MAILHomePageBBS

My追加