私季彩々
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バイト先の専門学校で狂牛病の話となった。北海道で飼われた牛から発病したという人畜共通伝染病。新聞でその記事を読んでいた私は聞き耳を立てていた。
伝染病というからには病原体がある。一般には細菌だったり原虫だったりウイルスだったりする。細菌や原虫だったら体内で増殖するわけだけど細胞分裂というわかりやすい増え方をする。ウイルスの場合は遺伝子のコピーを増やして増殖する。人の細胞分裂を借りて悪さをするわけだ。まぁこれらは全て”遺伝子”が直接関わっている。
しかしこの狂牛病は良くわからん代物だ。何よりこれはただの”たんぱく質(プリオン)”。遺伝子をもっていないのだ。生命の設計図である遺伝子なしに増殖するこいつはなんなのか、実のところわかっていない。多分、宿主の遺伝子に働きかけて普通に体にある正常なたんぱく質を異常な”プリオン”に変えてしまうらしいといわれている。とにかく今までの常識では考えられない代物だ。学者の間ではウイルスが発見された時と同じくらいのインパクトがある。
中枢神経を長い潜伏期をかけて犯すといわれる。潜伏期が長いというのはやっかいだが巧妙だ。エボラ出血熱のようにバッタバッタと倒れていけば限局的に集束可能だから。エイズとエボラならエイズのほうがはるかに怖い。 ではこの”プリオン”はどうか。伝染性という点では脳神経に手を出さなければ大丈夫らしい。出したとしても感染力はかなり低いようだ。
しかしながらこの病気は羊では”スクレイピー”といわれ鹿や他の動物でもよく知られている。人でも発症がなかったわけではない。急激に増えたのは硬膜の移植による。牛からの伝播はまだ霧の中といえる。 では何故こんなに牛で増えたのか。それは羊が牛の餌になってしまったからだ。脳も含めた枝肉が高たんぱくの飼料となった。食物連鎖が人間の手で変化して、今までほとんど無視できた病原性が指数関数的に上昇したと考えるのが妥当だ。
エボラ出血熱も猿と人との生活圏が異常接近したと気に現れる。生命の歴史をみればこのような寄生体ともいえる生命体は宿主といい折り合いをつけてきた。宿主が死ねば自分も死ぬ。だから宿主には長生きしてもらわねばならない。エキノコックスはキツネの体なら何の悪さもしない。人の体に入ってしまうとどうしていいかわからず成虫になれずに迷走してしまうからいけないのだ。
中には共生関係に移行するものもいる。私達の細胞に必ずあるATPを作るミトコンドリアは動物遺伝子にはない全く別のものだ。彼らは生命誕生の時代に共生関係になった寄生体という考え方もある。
未知の空間は意外とそばにある。 生命の歴史を考えればいつかはそれらと折り合いをつけていくことができる。ただその時間は人の感覚では長すぎるし遭遇の機会を作っているのは人間だ。同時に”折り合いをつける時間”も削っているわけだ。
もし人類が滅びるとしたら、このような遭遇はおおいなる危機である。
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