私季彩々
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とある夏の日に自転車旅行で宗谷岬に向かっていた。サロベツ原野の丈の短い草原は、もう花々の季節を追えて少し単調だったけど、遠くに浮かぶ利尻の山が竜宮城のように幻想的だった。
夏の盛り、日差しはなかなか手強かった。 単調な道のりに一軒田舎にありがちな古いお店があった。私はその店の中にあるガラスケースの冷蔵庫からジュースを買って、アスファルトに座って一気に飲んだ。そのうまかった事といったらなかった。 そのジュースは”。ネクターの爽やかとはいいがたいあののどごしといい、青りんご風味の爽やかな酸味は広々とした雰囲気とあいまって日陰の優しさと共に私の疲れを吹っ飛ばした。
以来、ジュースやアイスで青りんごがあるとうれしくなって買ってしまう。果汁が入っていないなどという細かい事はどうでもいい。あの夏の一日が思い出されるだけで十分だ。
しかしながら、あれ以来”青りんごネクター”に会った事がない。何より本当にそんなジュースを飲んだのかがはっきりしない。確かにあの時あのルートを走った。けれど、あのうまさは何か現実とは違っているように鮮やか過ぎる。私にはそんなはっきりしない記憶がいくつかあるのでこれもその一つなのかもしれない。
たかがジュース、されどジュース。強烈な印象が私の中で昇華している。夢だろうが現実だろうが今となってはどちらでもいい。ただ、やっぱりもう二度と会えない味だからこんな感覚になっているんだろう。もしかして思い出と未来が交じり合った不思議なカクテルが今の私と同居しているのかもしれない。
”青りんごネクター”は私にとって夏のかげろうとともにある逃げ水のような記憶なのです。
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