なべて世はこともなし
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2003年07月01日(火) まだまだ続く。アイルランド入院体験記(5)

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病室のほかの5人が朝食を食べているのを横目で見つつ、窓から見えるSuttonとHowthの丘を見ながら時間を潰す。腕の点滴がぽたりぽたりとゆっくりと流れ落ちてゆく。時間もこの点滴と同じくらいゆっくりと流れていく。こんなふうにぼーっとしてたら、「ああ、あの最後の葉っぱが散ると僕も死ぬのかなあ」なんて考え出すのは当然のような気がしてきた。


食事が終わると、退屈をもてあましている5人はどうやら新入りの私に興味を持ったらしくぼそぼそと話しはじめる。特に向かいのベッドの例の右足の膝から先がないおじさんが聞きもしないのに膝から先がなくなった理由を話しはじめる。


おじさん:「俺の右足のここから先は立った数日前に切ったばっかしだよ。原因?タバコ。俺なあ、12の時からたばこを吸いはじめてすげえヘビースモーカーだったんだよな。で、気がついたらそのせいで血管が詰まって足が腐っちまった。切る前にいろいろバイパス手術とかしたんだけどだめでなあ。たぶん左も切る羽目になるし早かれ遅かれ両足なくなっちまうんだろうなあ。お前タバコ吸うのか?吸わない?そうか。俺はタバコを吸っている奴みんなに言いたい。俺みたいになるからやめろって」


…そんなことがあるのかなあ。アイリッシュお得意のフカシが入っているんじゃないか(タバコの話ですしね)とか一瞬思ったが、そういえばむかし一度オーストラリアの政府筋が作ったビデオを見たことがある。タバコを吸っている人のたぶん気管支と思われる部分をぎゅっと絞ると、脂肪のような白いものが歯磨きこのチューブを絞るようにぎゅーって出てくるのを。あ、喫煙者の皆様気分を害したなら陳謝。


そんな話をしていると、今度は医師がやってきた。インド人でもなければフィリピン人でもなさそう。よくは分からんがインドネシア人ってこんな顔をしているんだろうか。ともあれ彼は友好的ながらとってもよく分からない英語で…


医師:「キミは、ここで何してんの?」
私:「よー分からんのですが、なにやら…」



「盲腸の疑いで…」と言おうとすると、彼はそれを遮り、


医師:「ああ、SARSか?」


またくそ寒いギャグを飛ばしてきやがって。いくらアイルランドがいい加減でもSARS疑いの患者を一般病室に入れるわけないだろうが。


私:「SARS患者が、一般病棟にいるとは思わないのですがねえ」


で、例によって触診をしておわり。昨日ほどの痛みはない。…というか昨日もほとんど痛みがなかったからほとんど無痛になったというほうが正しい言い方か。前にも書いたとおり、私は風邪薬をもらいに近所の医者に行き、そこでまさに青天のへきれきで盲腸を疑われて病院に来たわけで、けっして激しい腹痛に襲われて病院に担ぎ込まれたわけではない。


で、今度は別の医師が昨日の医師をつれてやってくる。この医師は白衣姿ではなくスーツ姿。いわゆる専門医の「ボスキャラ」であることが容易に想像できる。この40くらいの黒ぶちの眼鏡をかけたオッサン。誰かに似ている…。だれだっけ。うーん。


このMr Irelandというジョークのような名前の医師。この医師が去ってから誰に似ているか気がついた。ディルレヴァンガーだ。(あ、「誰それ?」という方。知らぬがホトケとはこのことです。Googleで検索をかけたりすると後悔することになるのでしないほうがいいです。ゆえにリンクも貼りません)。

で、このディルレヴァンガー改めミスターアイルランド(改めも何もこっちが本名なんだけどさ)、ひととおりのおざなりの検診をして、


医師:「しばらく様子を見よう。お腹は空いたかね?」
私:(涙目で)「はい」
医師:「よし、食事をしてもいいよ」
看護婦:「先生、この点滴はどうしますか?」
医師:「ついでにもう1本やっとけ」


今にして思えば「ついでにもう1本」とはなんだ?というツッコミどころだが、「メシが食える」という喜びでそこまで頭が回らなかった。


数分後。トースト2枚とお茶が出てくる。この時のトーストのおいしさは忘れられない。で、その数分後の10時30分。今度は「ティータイム」とやらでお茶とビスケットが出てくる。さすがはアイルランドといいたかったが、このお茶のまずいこと。ミルクをたっぷり入れないと飲めない代物だった。


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