ささやかな日々

DiaryINDEXpastwill HOME


2022年05月13日(金) 
久しぶりにMKさんと会う。久しぶり、と声を掛け合ったところで息を呑んだ。目の前のMKさんは驚くほど老け込んで見えた。あまりの老け込みようにどうしたのと訊くのさえ躊躇われほど。
この春、通信で大学に編入し勉強を始めたMKさん。つい先頃もレポートの締め切りがあったのだとか。彼女のその、幾つになっても学んでゆこうと有言実行する姿は頼もしく、応援せずにはおかない。が、しかし、この彼女の老け込みようは。
でも、語り口は相変わらずのほほんとしていて、それに耳を傾けているとそれだけでくすくすっと笑んでしまえる。
途中から家人も加わり、喫茶店で三人でのんべんだらりん。と書いたが、正確には家人とMKさんが賑やかにやりとりし、私はいつ瞼がくっ付いてもおかしくないくらいの眠気に苛まれていた。
最近時々、発作のように、眠気に襲われることが増えた。歳のせいなのかしらんと思ったりはしているが、それにしたってこの私が昼間眠くなるというのが不思議。普段どれほど睡眠時間が短いことが続いても、昼間猛烈な眠気に襲われるなどということはあり得なかった。やはり歳なのか、それとも更年期なのか。誰かさっさと私に教えてほしい。宙ぶらりん状態って、一番落ち着かない。

今書きながら気づいた。私は今日、MKさんから聞いた話がとても、嫌だったんだ、と。MKさんは近々性暴力をテーマに写真を組む。被害だけではない、加害の方向からも切り込むのだという。それを聴いたとき、私はとても複雑な気持ちになったのだ。
どうしてあなたがそれを為すの?と。
でも、口には出せなかった。そうなんだ、それで?と話の先を促すような相槌を打つのが精いっぱいで、そうしているうちに私は猛烈な眠気に襲われた。
あれは。
私の、私なりの拒絶だったんだな、と。今になって、気づいた。
私はMKさんは好きだけれど、彼女がこれから為そうとしていることについてきっと、不快に思っている。
いや、分かってる。私が不快に思うなんて筋違いだって。分かってる。でも。
私は、このテーマを彼女が扱うことが、やっぱり不快なんだ。

半ば解離しながら、ぼんやり彼女と家人が笑い合うのを横で聞いていた。早く帰りたいなぁと何処かで思ったのを覚えている。何で私ここにいるんだろう、とも思った。
わかってる。彼女は上手にきっとテーマをまとめる。そしてきっと多くの人がそれを評価もするに違いない。分かってる。
私がどうこう言う筋合いなんて、何処にも、ない。分かってる。

いろんなものがフラッシュバックする。ああ、今、私とMKさんとふたりきりじゃなくて本当によかった。家人が来ていて本当によかった。私は心の底から家人に感謝した。そうしている間にも、私の裡でフラッシュバックは繰り返し起こり、時間軸はもはや、何の意味もなかった。
どろりと私の内側に横たわり居座った不快感。どろり、どろどろ。
帰宅し、しばらくすると呼び鈴が鳴った。宅急便。受け取るために玄関を開けると雨音がざあっと雪崩れ込んできた。びっくりして目をやれば、いつの間にか土砂降りになっている。潔い降り方というか何と言うか。ここまで降るとむしろ気持ちが良い。いっそこの雨の中に突っ立って、全部洗い流してもらおうかしらん、と心の中思っていたら、お茶をとりにきた息子がにまっと笑って言った。「今雨の中出たらすげー気持ちいいと思うんだよね」。
あら、お仲間。


浅岡忍 HOMEMAIL

My追加