| 2021年05月14日(金) |
クロアゲハの幼虫を育てている息子と一緒に、彼らが喰らう葉を探す毎日。キンカンの樹を育てているお宅を見つけると、おずおずと「枝を一本いただけますか」と頼んでみる。何を突然、という顔をされた後、事情を話すとああなるほどとくすくす笑われ、どうぞと言われることがたいていで。ありがとうございますと一礼して枝を頂く。そうやって毎日いくつかの枝を手に入れ、せっせと幼虫たちに食べさせる。 そのかいあってか、脱皮に失敗して死んでしまった一匹を除き、今のところ全員が元気に育ってくれている。彼らは何故か、広い虫籠の中、ひとところに集まる習性があるようで。ふと見ると、たいてい集まってごにょごにょしている。青虫の井戸端会議という不思議な光景。 「母ちゃん!見て!こっち!糸吐いてる!!」。息子が叫ぶので近寄ってみる。私の老眼では糸を確認できないが、確かに蛹になろうとしている気配を感じる。「もうこの子を動かしちゃだめだよ、死んじゃうからね」。息子に言うと、「動かしちゃダメって言われると動かしたくなるよねえ」と笑うものの、じっと凝視し続ける姿は真剣そのもの。息子のその顔を私は横からこっそり見つめる。 やがてじっと動かなくなった幼虫。息子が声に出して応援する。「頑張れ、頑張れ、ちゃんと蝶になって!」。何度も言いながら、寝床に就いた。 明日の朝には、無事蛹になれたかどうか、はっきりするだろう。息子だけじゃない、私も実はちょっとどきどきしている。無事蛹になれますように。何事もありませんように。祈る。
整骨院の日。首を折ると腹部と両手が痺れることを話す。あと骨盤周りの鈍痛と先週脚が猛烈に痛んだことも。施術の後、身体を冷やさないこと、できるかぎり下を長時間向かないことなど注意を受ける。今日しきれなかったところは来週続きをやりますからね、くれぐれも注意を守ってくださいね、と。 そう言われ気を付けて行為してみると、首を折る動作があちこちにあって、どきっとする。そのたび腹部と両手に痺れを覚え、あ!と焦る。必要以上に首を折った状態を続けないよう気を付けるのだが、これがまた結構難儀。 そうしているうちに今日も又ホットフラッシュの嵐に見舞われる。最近ちょっと頻発している。今度心療内科に行った時主治医に話そう。
受刑者さんたちから立て続けに手紙が届く。手紙を開きながら、彼らがあの場所にいることの意味を考えてみる。罪を償う、ということが本当にあの場所で為されているのか、罪を償うとは一体どういうことなのか、社会に戻って来る彼らから社会性を奪ってしまっていやしないのか、それは再犯につながるのではないか、などなど。 ぐるぐる、ぐるぐる、考え続ける。答えなんて出ない。それでも考えてしまう。 私の文通相手はたまたま、どちらも自分の揺らぎながらも、懸命に自分の内の歪みと向き合おうと努めているように見えるけれど、そうじゃない人たちももちろんいて。でもそういう人たちもまたいずれは社会に戻ってきてしまうわけで。そうなった時、社会に彼らを受け止める受け皿なんてあるんだろうか。 あまりに、今の現実と刑務所内の状況とが、乖離していやしないだろうか。 考えてしまう。考え込んでしまう。じゃあ、乖離していたとして、別の方法が他にあるのか、と問われると、私の甘い考えなんて通用しないことは重々承知で、それでも。頭を抱えてしまうんだ。今のこのままは、やっぱりおかしいんじゃないか、と。 |
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