ささやかな日々

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2020年04月10日(金) 
通院日。数少ないマスクを着けて病院へ向かう。
着いてみてぎょっとする。人ばかりが多くて、その人々が行き交う道筋の店はどこも閉店。シャッターを閉めている。別の県からやってきた私の眼にそれは異様な様に映る。薬局だけが朝早くから店を開けている。しばらく横断歩道の手前で立ち止まり、街の様子を眺める。
どうしてこんな街に人ばかりが行き交うのだろう。

カウンセリングが始まると同時に、カウンセラーが厚生省からの緊急通達があったのだと教えてくれる。制限がかかった、と。大丈夫な人たちは次のカウンセリングは一か月後になる、あなたの場合必要だから来週も予約を取ってほしいのだけれど、と。
主治医は先々週だったか、こう言っていた。厚生省から病院は閉めないでほしいと言われたから心配することはないわよ、と。それが覆ったということだろうか。私はしばし沈思する。すぐに受け止められず、頭の芯がぼおっとなる。

カウンセリングを終えすぐ診察。主治医が、混乱している私に気づいて、カウンセラーよりも詳しく説明をしてくれる。「あなたは来週も来てね」とそう付け加えて。
でも。
何だか命の選別をされているかのような気持ちになって、安心なんてとても、できなかった。申し訳なさというか、そんな、罪悪感にも似た気持ちにさせられた。何だろう、こう、もやもやざわざわとして、その黒い雲がどんどん沈んで色濃くなって…。私の中に充満してゆくかのようで。

命の選別。一体誰が、何の為に、何の権利があって、そんなことができるのだろう。命に重い軽いがあるなんて、考えたこともなかった。この命は選ばれ優先され、別の命は後回しにされる。そんなことが起ころうとは。

空を見上げると、高く高く晴れ上がっており。どこまでも眩しい。まるで今私の目の前でひろげられたものは幻だよと笑っているかのようで。思わず私は眼を閉じる。

つらい。


浅岡忍 HOMEMAIL

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