デパートの飾り気の無い紙袋に潜ませて、
こっそりホテルのお部屋に持ち込んだ彼の誕生日のプレゼント。
洗面台の鏡の前で私を抱きしめて、触りまくる彼。
「ねぇ、まだシャワー浴びないで、こっちに来て。^^」
彼の手を引っ張って無理やりソファーに連れて行きました。
彼がソファーに座ったところで、
「お誕生日おめでとう!」
少し大袈裟に大きな声で言いました。^^
今年の彼へのプレゼントは彼が好きなブランドのコインケースと、
来年の卓上カレンダーです。
犬の形の卓上カレンダーは、
去年私がプレゼントしたものと全く同じデザインの2011年版です。
彼は私が書いた小さなバースデーカードを読んだ後、
「ありがとう。^^」
と言って、唇にキスをしてくれました。
彼の本当の誕生日はデートの日の数日後だったけれど、
今年は少し早めにプレゼントを渡しました。
この日の夜、私達はワインの美味しいレストランへ行きました。
私達が初めてデートした日、
映画を観た後に彼が連れて行ってくれたお店です。
最近ではお料理に合わせて赤も飲むようになりました。
「Tさんの誕生日のお祝いのはずなのに、
私が行きたいって言ってたお店に連れて来てもらってごめんなさい。」
「後で、理沙子にリボンつけてくれればいいよ。^^」
確か去年も同じようなことを言われた気がするけど…。^^;
これからもずっと彼と一緒にいられたらいいなと思うこともあります。
でも、その願いが強過ぎるほど切ない想いも大きくなるから、
今彼と過ごせるこの瞬間を大切にしようと思いました。
デートの別れ際、彼の車の中で、
「今日は遅くなっちゃったね。」
と私が言うと、
「最近、激しいからな…。」
と彼がぽつんと言いました。
「どっちが?」
「俺と理沙子だよ。」
彼が言ったように、
ここ最近抱き合う度に激しく、深くなっている気がするのです。
一度はお互いに別れを想像したけれど、続けることを選んだ私達。
あれから何か肩の荷がストンと落ちたような気がして…。
先のことを不安に感じて今別れるよりも、
もっと抱き合って、もっとお互いを知り尽くしてから別れても
決して遅くはないだろうと思ったのかもしれません。
求め過ぎて飽きられてしまうことを恐れていたけれど、
最近彼の方から「好きだよ。」と言ってくれます。
ベッドでも電話でも、ふとした会話の中で…。
彼が私を好きで、私も彼が好き。
多分その理由のほとんどは共通している気がします。^^
先々週に引き続き、先週も彼とシアターで映画を観ました。
彼と付き合っていなければ、きっと観なかったと思う作品。
ミステリー作品では沢山の伏線が張り巡らされているということも
彼が教えてくれました。
この街での公開をずっと楽しみにしていた映画が、
来月近くのシアターで上映されることになりました。
今朝、このことを知らせようと彼にメールを送りました。
仕事前に彼から電話がありました。
「メール読みましたか?」
「ああ、読んだよ。」
「一日一回だけの上映なんですね。
前売券買った方がいいかな。^^」
「その方がいいな。
明日にでも買っておくよ。
取れたら、また電話するから。^^」
私と付き合うまで、
彼は観たい映画はほとんど一人で観に行っていたようです。
今は私達が観たいと思う映画は、だいたいいつも同じだから、
必ずデートの時に二人で観るようになりました。
良い映画を観た後に、
彼と食事をしながらその映画についてお喋りすることは、
ベッドで愛し合うことと同じ位、楽しいことです。
映画の感想は時にその人の人生観や恋愛観をも映し出すから、
思いがけず私が知らなかった彼の一面を見つけることがあります。
私が彼のことをもっと知りたいと思うのは、 きっと彼のことをもっと深く愛したいからなのでしょう。
ホテルに戻る帰り道、彼が私の手を繋いでくれました。
彼の手はとても暖かくて、私は幸せな気持ちになりました。
お部屋に戻って、私達はシャワーを浴びました。
彼は私が身に着けていた濃紺のキャミソールとショーツを脱がせると、
既に濡れているその部分に舌を這わせました。
気が遠くなるほど長い間、両手の指先で二つの胸の先端を摘まれ、
舌でその部分を吸われたり、舐められたりしました。
彼のモノが後ろから私の中に入ってきた時、
熱く滴る私の中は彼のモノでいっぱいになり、満たされていきました。
愛し合った後、私は彼の腕枕でそのまま眠ってしまいました。
乱れて乱されて眠りについて目覚めた時に、
照れて、ついひねくれたことを言ってしまうところは彼も私も同じ。
「あ〜疲れた。今までで一番疲れた。」
今までで一番疲れた…ではなく、
今までで一番気持ち良かったって言うべきだったのに…。
「俺も疲れたよ〜。もう無理。
どっちも疲れたならそれでいいじゃん。」
ひねくれ者の彼の言葉に傷つくひねくれ者の私。
帰ってから、いつものように彼にメールを送りました。
いっぱい愛してくれてありがとう。
今日が一番疲れたなんて言ったけど、本当はとっても嬉しかったの。
次の日の朝、ゴルフが終わったら電話が欲しいと彼にメールをしました。
夕方になって彼と電話で繋がりました。
「ゴルフの調子、どうでしたか?^^」
「いやぁ〜。今日は調子悪かったよ。疲れたよ。」
疲れたとは言いながら、彼の声はとても明るく聞こえました。
「昨日よりも疲れた?^^;」
「勿論今日の方がずっと疲れたよ〜。」
「昨日はそんなに疲れなかったの?^^」
「ぜ〜んぜん!
気持ち良かったよ。
どうしたんだよ?^^」
デートしたばかりなのに電話して欲しいなんて…と
彼は言いたかったに違いありません。
「ちょっと切なかったの。^^」
「大丈夫だよ。好きだよ。^^」
温かみのある優しい声で彼は言いました。
彼の「大丈夫だよ。」の言葉は、
世界中のどんな言葉よりも私を安心させてくれると思いました。
ホテルのベッドでお昼寝から目覚めたら、
隣に彼が居て、携帯電話の中のレストランのリストを見ていました。
私に何を食べたいか聞いたとしても最終的に決めるのは彼。
毎週デートの度にお店を考えるのが面倒になったのか、
私が彼に任せっきりなことに腹を立てたのか、
彼は私に棘のある言葉をぶつけて来ました。
一方的にきつい言い方をされたのが悲しくて、
私は彼に背中を向けて目を閉じました。
『もう、私、今日はこのまま帰るね。』
喉まで出かかった言葉をどうにか堪えました。
しばらくして彼は私に出かける用意をするように言いました。
彼の苛々は消えて、穏やかな言い方に変わっていました。
「何だかお腹空いてない。
今日は何も食べないで、こうしてここにいる。」
彼は自分が言い過ぎたことに気づいたようでした。
彼がいつもと変わらない調子で話しかけてきたので、
私も自分だけいつまでも臍を曲げていても仕方ないと思い、
着替えて出かけることにしました。
ホテルを出ると、昼間に降っていた雨は既に上がっていました。
彼と歩きながら普通に話しているうちに、
ついさっきまでの悲しい気持ちは次第に薄れていくような気がしました。
彼が連れて行ってくれたのは、おでんと焼き鳥のお店でした。
予約が取れないお店で平日はとても混んでいるのだけれど、
この日は祝日なので空いているだろうと彼は思ったようです。
純和風の趣のあるエントランスを入ったところで、
彼の靴紐が解けていることに気づきました。
「なんか…。」
彼は何か言いかけたけれど、その先は言いませんでした。
私が立ち上がって彼の顔を見ると、そこには優しい笑顔がありました。
私達の間の空気が一瞬にして変わったみたいでした。
それから、私達はカウンターの席に並んで座りました。
私達は見つめ合って、美味しいお酒とお料理を頂きました。
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