こうして私はあなたを好きになった
綴りたいのは残された言葉、なつかしい匂い、
揺れる気持ち、忘れられない感触

2010年08月30日(月) これから


 金曜日のデートで私の心と身体は十分に満たされていたから、

 土日は寂しい思いをせずに過ごすことが出来ました。



 いつもより沢山お喋りしたこと。

 私が観たい映画を彼も観たいと言ってくれたこと。

 来月の旅行で露天風呂付のお部屋に泊まろうと言ってくれたこと。

 私の身体がいっぱい感じるように愛してくれたこと。

 別れ際に痛いくらいにギュッと抱きしめて大好きと言ってくれたこと。

 それら一つ一つの小さなことが私にはとても嬉しくて、

 最近少し離れていた二人の心が再び結び付いた気がしました。



 時に拗ねたり意地を張ったりしてしまうけれど、




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 来月、私達の恋は3年目を迎えます。

 これからもきっと色々なことがあるに違いありません。

 楽しいことばかりではなく、迷ったり、諦めたり、

 厳しい現実を突きつけられることも…。

 駄目になる時はきっとどう足掻いても駄目になると思うから、

 その時まで一番近い場所で彼を見つめていたいと思うのです。



2010年08月29日(日) 刺激


 私の仕事が終わる時間に彼が車で迎えに来てくれました。

 そのままいつものシティホテルへ向かいました。



 お部屋のベッドで彼は私を抱き寄せると、

 携帯電話を開いて私がメールで送ったアドレスにアクセスしました。

 それは私がずっと観たいと思っていたフランス映画のサイトでした。

 私達は身体をくっつけて映画の予告編を見ました。

 
 「Tさんも好きそうな映画でしょ?^^」


 私の言葉に彼は頷くと、

 今度のデートの日に観に行こうと言ってくれました。

 それから、しばらく私達はキスをしたり、触れ合ったりしていました。



 7時半頃、私達はホテルを出て、

 最近お気に入りになっているお寿司屋さんへ行きました。

 私達はカウンターで美味しいお刺身や焼き魚、お寿司を頂きながら、

 沢山お喋りしました。


 来月末には彼の高校の同窓会があります。


 「ねぇ、同窓会の写真見せてね。

  Tさんの初恋の人、見たい。^^」


 「東京にいるから、多分来ないと思うよ。」


 それから私達はしばらくプラトニック・ラブについて話をしました。

 彼が通っていた中学校に彼女が転校して来てから

 二人が同じ高校を卒業するまで、

 彼はずっと彼女に想いを寄せていました。

 それから数年が経ち、東京で再会した二人。

 彼がこちらに戻って来てからも、東京に出張した時には

 たまに食事に誘ったりしていたという話は以前にも聞いていました。


 「何も無かったからいい思い出になってるんだと思うよ。」


 「本当に何も無かったの?^^」


 「手も握ったことないよ。」


 「Tさんが好きな人の手も握らないなんて考えられないな。^^」


 「俺はシャイだったからさ。口も利けなかったんだよ。」


 「それは高校生の時でしょ。

  既に結婚しているのにTさんに食事に誘われたら、

  自分に気があるって彼女も感じると思うけど。」


 「食事に誘うって言っても1年や2年に1回とかそんなもんだよ。

  それに俺がそういう電波を発してなかったんじゃないかな。」


 「そうなの…?」


 「例えば、あの頃の状況だったら俺がその気になれば

  彼女をどうにかしようという行動に出ることも可能だった。

  でも、そうなったところでいい思いが出来るという

  保証は無いと思ったんだ。

  むしろがっかりする可能性の方が高いような気がした。

  思い出を壊したくないと思った。」


 「それは彼女の年のせいなの?」


 「俺や彼女の年のせいではないよ。

  あの頃からあまりにも時間が経ち過ぎているからってことだろうな。」


 それから彼は「例えは悪いけど…。」と前置きした後で、

 若い頃にとびきり美味しいと思っていた中華料理のお店に、

 何年も経ってから入ってみたらその味にがっかりしたという

 話を持ち出しました。

 若い頃の味覚とあらゆるお店で美味しいものを食べてきた経験がある

 現在の味覚は違うと彼は言いました。


 「でも、案外その先に進んでみたら、

  めくるめくようないいことが待っていたかもよ。^^」


 彼の思い出の真ん中にずっと住み続けている初恋の彼女。

 そんな彼女が私にはちょっぴり妬ましく思えるのでした。




 「ここにおいで。^^」


 お部屋に戻ると、彼が私を後ろ向きのまま自分の膝の上に乗せました。

 彼は私を振り向かせて唇を塞ぐと、

 両手を私のサマーニットの中に滑り込ませました。

 彼はブラの背中のホックを外すと、左右の手で二つの胸を愛撫しました。




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 彼の指先で胸の先端を弄られながら、

 舌を舐められ、吸われ、絡め合って、

 私の身体は痺れたように熱くなっていきました。



2010年08月25日(水) 恋愛の心得


 彼の仕事のピークと私のルナが重なったので、

 私からお願いしてデートを延期してもらうことにしました。

 本当は会うはずだった今日、彼と電話で話しました。


 「お腹痛いの?」


 「ん…ちょっと。でも大丈夫です。」


 私がデートの延期を申し出るなんてよっぽど体調が悪いと思ったのか、

 珍しく「可哀想に。」を連発する彼。

 彼の優しい声を聞いて無性に会いたくなった私は、


 「今日、会いたかった〜。

  もう我慢出来ない。」


 と言いました。


 「Tさんも会いたい?」


 「会いたいよ。早く!!

  あんなこともこんなこともして。^^」


 「もう、私ばっかり…。

  Tさんもいっぱいしてね。^^」


 「何をして欲しいのか言ってごらん。

  理沙子がして欲しいこと、何でもしてあげるから。^^」




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 お泊りデートの後、少しぎこちなかった私達だけれど、

 いつの間にか以前と変わりない会話に戻っていました。

 相手に求め過ぎず、自分だけが与え過ぎず、

 恋愛以外のことも楽しみながら生活していくことが、

 私達の関係を長続きさせる秘訣なのだと思いました。



2010年08月22日(日) 触れたいカラダ


 お泊りデートの最後の日の朝、

 私は部屋を出る前に洗面台の鏡の前にいました。

 去年まではすっきりと着こなしていたハーフパンツのヒップラインが

 やけにきつくなっていることに落胆して、


 「太っちゃった、お尻も大きくなったよ〜。」


 と私が嘆くと、彼は後ろから私の脇腹を両手でギュッと掴むと、


 「ウエストも太くなったんじゃないか。デブになったぞ。^^」


 と言いました。

 この後の別の会話の中で問題の諍いが生じたのだけれど、

 この時の彼の無神経な一言が引き金になったことは

 間違いないような気がします。




 あの日から先週末のデートまでの一週間に、

 私は体重を1.7kg落としました。

 恋人との間に別れ話が持ち上がると体重が落ちるのは昔からのこと。

 愛し合った後で出かけた中国料理のレストランで、


 「痩せたね。」


 と彼に言われました。




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 もしも本当に失恋していれば、

 私の体重は近いうちに目標値に到達していたかもしれません。

 でも、幸か不幸か私達の恋は続いているから、リバウンドは必至。




 彼はスリムな女が好き。

 ぽっちゃり程度の体型の女でも好きにはなれない人。

 その一方で彼は何でも美味しそうによく食べる女が好き。

 
 「何でもよく食べて、太らない理沙子が好き。」


 だなんて言ってたこともあったっけ。^^;




 彼と初めて愛し合った日、

 ホテルのソファで服を着たままの私をギュッと抱きしめて、


 「本当に細いね。」


 と言った彼。

 あの頃の体型を失いつつある最近の私。




 折角小さくなり始めた私の胃があっという間に元の大きさに戻りそうな、

 ボリュームたっぷりのお料理をシェアしながら、


 「でも言ってもらえて良かったでしょ。」


 と彼が言いました。


 「ほんとですね。

  ショックだったけど、もしTさんにはっきり言われなかったら、

  あのまま太り続けていたかも。恐ろしい!!」




 そういうわけで、先週からレコーディングダイエットを始めました。

 いつまでも好きな人に触れたいと思われるカラダでいたいから。



2010年08月21日(土) 一言も触れずに


 朝6時半頃に彼からメール。

 仕事が忙しいので待ち合わせの時間を遅らせて欲しいとのことでした。



 夕方、彼がいつもの場所で私をピックアップしてくれました。

 運転席の彼の横顔は少し疲れているように見えました。

 急遽対応しなければならなくなった予定外の仕事について、

 私に話してくれました。



 お部屋に入ると、彼はすぐにシャワーを浴びました。

 私も彼の後にシャワーを浴びてお部屋に戻ると、

 彼はベッドの上でテレビを見ていました。

 私が彼の隣に滑り込むと、いつものように彼は私を抱き寄せました。

 彼は視線はテレビの画面に向けたまま、

 私のキャミソールの左側のストラップを下ろすと、

 私の左の胸を焦らすようにゆっくりと愛撫し始めました。

 思わず甘い声を漏らしながら、私が彼の顔を覗き込むと、




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 数日前に別れのメールを交わしたことについては一言も触れずに、

 私達は愛し合いました。



 
 「壊れちゃう…。」


 求め過ぎると苦しいほど窮屈になる心なのに、

 求めれば求めるほど開放され、満たされていく身体。


 求め合っている間だけは、

 理由も理屈も不安も矛盾も存在しないのでした。



2010年08月19日(木) 二人の夏


 「電話するから。」


 私が聞いた最後の彼の言葉。

 それから二日間が経過していました。

 今週前半の彼の多忙なスケジュールは

 先週のお泊りデートの前から知っていたので、

 もし連絡があるとすれば水曜日だろうと思っていました。

 彼がどのような結論を出すのか、私には予想出来ませんでした。

 ただ付き合い始めの頃から私がずっと将来の別れを意識していること、

 どんなに好きでもいつかは私達に別れが訪れるだろうということは、

 彼も十分に分かっていることなのです。

 だから、私が彼に送ったメールは別れのメールでもあると同時に、

 私が彼に送った初めてのラブレターのようでもありました。




 水曜日の朝、私は不安な気持ちで待つことを恐れて、

 時間がある時に電話がしたいと彼にメールを送りました。

 彼からの返信には2時過ぎに時間が出来たらメールをすると

 書かれていました。

 ちょうど2時を過ぎた頃、少し遅いお昼休みに彼からメールがあり、

 今なら電話が出来ると書かれていました。




 「こんにちは。」


 受話器から大好きな彼の声が聞こえて来ました。


 「こんにちは。暑いですね。」


 「暑いね。俺の声が聞きたかったの?^^」


 私から電話をした時のいつもの彼の口癖でした。


 「うん…。

  お昼ご飯は食べたんですか?」


 「もう食べたよ。」


 「私はダイエット中です。

  昨日お菓子を食べ過ぎてリバウンドしそうだけど。^^;」


 「無理しなくていいよ。」


 私が目標の体重を彼に告げると、

 そこまでしなくていいよと彼が言いました。


 「週末はどうする?」


 いつもと全く変わらない調子で彼が聞きました。

 週末のデートは先週の諍いの前から約束されていたことでした。

 私の心の中で一気にほっとする気持ちが広がりました。


 「私、この前Tさんが教えてくれた映画、調べてみましたよ。」


 先週のデートの時、

 彼が私に携帯電話のテキストメモに入れておくように言った、

 来月以降に公開される幾つかの映画の名前。

 私達はしばらくそれらの映画の話をしました。

 それから私達はごく自然に、

 今度会う日の待ち合わせの時間を決めました。


 「ずっと一緒にいられるんですか?」


 夜遅くまでという意味で私は尋ねました。




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 「いつもと同じだよ。」


 「じゃあ、ずっと?」


 「そうだよ。うるさい。(笑)」




 私達はどちらも、別れについて口にしませんでした。

 私には彼がもう別れのことなど

 これっぽっちも考えていないことが分かりました。

 そして、彼もまた私が別れを切り出した理由、

 それでも彼への想いを断ち切れなかったこの数日間の私の気持ちを

 全て察しているかのように思えました。

 二人の夏はまだまだこれからです。



2010年08月18日(水) 別れの日


 出会いの日は偶然に訪れるものだけれど、

 別れの日は恋人達が決めなければなりません。

 いつかは別れる覚悟でいた私。多分彼もそうだった筈です。

 その日は遅ければ遅いほどいいと思う時もあれば、

 早い方が小さな傷でさよなら出来ると思う時もありました。

 つい最近、今別れるような問題は無いと言っていた彼。

 でも、彼は別れることに同意しました。

 先に言い出したのは私。

 誰も傷つけたくない、他人も自分自身も。

 それは彼との諍いの後、ずっと考えていたことでした。

 いつも本当に肝心なことはメールには書かない彼。

 今日なら別れられるかもしれないという私のメールに

 彼からの返信があったのは、ほぼ丸一日が経過した翌日の朝でした。

 返信の内容は予想していたものだったけれど、私の気持ちは震えました。

 メールでのお別れなんて納得できないから、

 連絡が欲しいと彼にメールを送りました。

 9時少し過ぎた頃に、彼から携帯電話に着信がありました。


 「いつかは別れる覚悟でいるけれど、やっぱり今は無理。」


 と言った私に、




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 彼の声は優しかったけれど、表情が見えないことがとても不安でした。




 彼が一人で考えた末にもう一度別れという選択をしたならば、

 その時はもう私には覆せないような気がします。



2010年08月17日(火) 早朝のメール


 今までどうもありがとう。とても楽しい時間でした。

 自分にも素敵な思い出がたくさんあります。

 あなたの言う通り別れる兆しが見えたら

 早めの方がいいかも知れません。

 本当にありがとう。

 元気でね。



 メールでお別れだなんて、あっけないよね。




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 朝から憎らしいほどに晴れています。

 今日がどんな日になるか、私には想像もつかないけれど…。



2010年08月16日(月) 潮時


 潮時を見誤ると、残りの恋愛期間は辛いだけの日々になります。

 彼と付き合い始めた頃、

 二人の時間の中にちらりとでもこの恋の終わりが見えたら、

 自分でピリオドを打とうと心に決めました。




 夏期休暇の最後の日の朝、

 部屋の窓から秋の気配さえ感じさせる涼しい風が入って来て、

 久しぶりに心地よく目覚めることが出来ました。

 今日なら彼と別れられるかもしれないと思いました。

 まだ表面上私達の付き合いが誰のことも傷つけていない今のうちに、

 楽しかったことだけを思い出にして別れられたらと思いました。

 ほんの少しためらったけれど、

 彼にいつもより少しだけ長いメールを打ちました。

 お泊りデートから帰った翌日に彼と電話で話した内容だから、

 今なら別れられるという私の言葉を彼は唐突だとは思わないでしょう。

 太ったら別れると彼はいつも冗談半分で言っていたけれど、

 彼と美味しいものを食べ過ぎて増えてしまった体重を

 元に戻す良い機会にもなるでしょう。




 夕方になっても彼から返信はありません。

 以前にも一度、もう別れようかと書いた私のメールは

 彼にあっさりスルーされてしまったことがあります。

 今回は彼から返信があるまで私からは連絡しないつもりです。

 彼は今度こそ別れを選ぶような気がします。

 彼が別れを選んだら、私は潔く彼から離れるつもりです。

 もし彼がまた私のメールの内容をスルーして、

 私をデートに誘って来たら…。

 その時の私の気持ち次第ではもうしばらく続ける方向に

 傾いてしまうかもしれません。

 それでも、それほど遠くない日に私が別れる覚悟でいることを

 彼は心に留めておいてくれるでしょう。




 元彼を忘れるために私は彼と付き合い始めました。

 彼を好きになったから、今ではもう元彼を思い出すこともありません。

 彼との付き合いはもうすぐ3年目を迎えます。

 会えばすぐに求め合っていた頃とは違い、

 ベッドで素肌をくっつけ合っていてもそのまま眠ってしまう最近の二人。




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 でも私はそんな退屈な時間が訪れる前にピリオドを打ちたいと思います。



2010年08月15日(日) 笑顔が消えた日


 前日までの楽しかった時間を

 気まずい雰囲気で終わらせたくなかったので、

 私は予定通り美術館へ行きたいと言いました。


 「分かったよ。行こう。」


 重苦しい空気の中で彼が呟くように言いました。




 ドライブの間、私達はほとんど言葉を交わしませんでした。

 彼の表情からは完全に笑顔が消えていました。

 私は色々なことを思い巡らしました。

 彼がそれほど私に対して怒りを露にするのは初めてだったので、

 原因は私達の朝の会話だけの問題ではないような気もしました。

 この三日間、彼はずっと疲れていたのかもしれないと思いました。

 或いは私が知らない所で、

 仕事や家庭のトラブルが起こっているのかもしれないとも思いました。

 私の心の中でも前の晩あたりから

 彼に対してどこか醒めた気持ちがあったから、

 彼も私と長い時間を過ごすことに疲れを感じているのかもしれないと

 思いました。




 美術館でも私達は二言、三言言葉を交わしただけでした。

 まだ元彼のことを好きだった時、

 彼に誘われて車で美術館へ行った日のことを思い出しました。

 あの時は私の心がまだ彼を受け入れられなかったけれど、

 今は私が彼の心に近づくことさえ許されないような気がしました。




 帰りの車の中で、


 「スパへ行って汗を流そう。」


 と彼が言いました。

 ホテルのスパには食事が出来るスペースもあるので、

 そこで夕食も済ませようと彼が言いました。




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 私が車を降りる時、彼は私の手を取ってくれました。

 そして後部座席に置いていた大きなバッグを渡してくれました。

 瞬間二人の目が合って、車の陰で短いキスをしました。




 もしかしたら近いうちに彼とは別れることになるかもしれないと

 私は思いました。

 デートの最後に気まずくなったことは何度かあるけれど、

 一度も彼の笑顔を見なかった日はありませんでした。

 二人で過ごす時間が楽しいと思えなくなったら、

 潔くこの恋を終わりにしようとずっと思っていました。

 私は一つ前の恋を思い出していました。

 二人の心が離れているのに何年も追いすがるようなことは

 もうしたくないと思いました。



 この日、彼と別れてから私はすぐにお礼のメールを送ったけれど、

 深夜になっても彼からの返信はありませんでした。



2010年08月14日(土) 覚悟


 お盆休みの後半は二泊三日のお泊りデートをしました。

 二日目まではお天気が悪かったので、

 食事に出かける以外は

 ほとんどホテルのお部屋で映画を観て過ごしました。




 二日目の夜はお気に入りのお店でゆっくりお酒と食事を楽しんだ後、

 ほろ酔い気分でお部屋に戻りました。


 「今夜は朝まで何回もしよう。^^」


 とベッドで彼が言いました。

 私達はしばらくじゃれあっていたけれど、

 そのうち寄り添ったまま眠りについていました。

 夜中に私がいつもの癖で目を覚ますと、

 彼は隣で寝息をたてて眠っていました。

 私はベッドから起きて、洗面台でメイクを落とし、歯を磨きました。

 それから、バスルームでシャワーを浴び、髪を洗いました。

 ベッドに戻ると、目を覚ました彼に抱き寄せられました。

 私達は薄暗がりの中で愛し合いました。

 その最中に発した言葉を私自身は覚えていないけれど、

 私は彼に長く愛してくれることを求めていたようです。

 セックスの後、


 「理沙子、凄いよ。

  今までの男はみんな大変だったろうな。」


 と彼が呟きました。

 彼は悪気は無く独り言のように呟いたか、

 いつものように私をからかうつもりだったのかもしれないけれど、

 私は彼の言葉に傷つきました。

 でも、その一方で今まで誰にも十分というまで満たされた記憶のない

 自分の身体を冷静に見つめている私もいました。


 明け方、彼はもう一度私を求めたけれど、

 私達はしばらくまどろむように繋がっていただけで、身体を離しました。




 8時頃、彼は一人で部屋を出ました。

 彼は幾つかの仕事の用事を済ませ、

 二日間乗っていた乗用車を家のガレージに置いて、

 Gに乗って私を迎えに来ました。

 約束していた10時よりも30分ほど早い時間でした。

 私がお部屋でのんびりと出かける用意をしていた間に、

 彼が慌しく私とのドライブデートのためにしてくれたことを考えれば、

 彼が戻って来た時にもう少し彼を気遣う言葉をかけることが

 出来たはずでした。

 でも、私の大人気ない甘えの言葉と彼の無神経な言葉が衝突して、

 諍いになりました。

 一番の原因はその日の帰る時間を事前にきちんと話し合っていなかった

 ことなのだけれど…。




 ホテルをチェックアウトして、私がGの助手席に座ると、




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 帰りたいと言い出したのは私だけれど、

 それは決して本心ではありませんでした。


 「俺のこと、試してるだろう?」


 「試してないよ。試したことなんかないけど…。

  ごめんね。」


 「悪いけど、俺、今日はこんな気分でどこにも行きたくないから…。」


 彼の横顔はとても疲れているように見えました。

 彼の気持ちが取り戻せないほどに離れてしまったことは明白でした。

 私は別れを意識しました。



2010年08月07日(土) Gクラスみたいな女


 ゲレンデバーゲンで初めて遠出した日の夜、

 私達はシティホテルのレストランのテーブルで、

 向かい合って食事をしていました。




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 彼が初めてGで長距離ドライブをした感想を言いました。

 うるさいというのは走る時に風を切る音のことです。


 「ユーザーレポートを読んでいると、

  『金庫みたいな車だ。』とか、

  『これ一台だけだと辛い。』とか色々出て来る。(笑)」


 彼の話を聞いていると、

 Gは彼が長年ずっと乗っているセダン型のベンツに比べて

 不便な点も幾つかあるようです。


 「普段使いするなら今までのベンツの方がいい?」


 「そうだな。Gは高速を走るのには向かないかもしれないな。

  初めて乗ってみて結構疲れたよ。」


 「私は自分に例えられたから、Gの味方をしちゃう。

  Gを悪く言わないで。^^

  私はあの車大好き。」


 「ホテルの駐車場のおじさんに

  『乗り換えたんですか?』って聞かれたよ。^^」


 「もし私と付き合っていなかったら、買わなかったかもしれない?」


 彼はしばらく無言で考えている様子でしたが、


 「そうかもしれないな…。」


 と言いました。


 「扱いにくい車だってTさんならちゃんと操縦出来るでしょ?」


 私はGと自分を重ね合わせて、彼に聞きました。


 「そうだな。余裕が無ければ買わない車だよ。」


 「若い頃だったら買わない車でしょ。

  でも、前のベンツの方が乗り心地がいいなんてちょっとショック。

  Gは普段使い出来ないの?」


 「何言ってんだよ。

  Gの方が前のよりずっと高価な車なんだよ。」


 「レアなんでしょ?

  私はレアな女じゃないよね。」


 「初めはそうでもなかったけど、だんだんレアになってきた。^^」




 ちょっとしたたとえ話に過ぎないのに、

 私はやっぱり普段使いされる一台目になりたかったなと思ったり…。

 でも彼の好奇心をいつまでも惹きつけられる二台目なら、

 それでもいいような気もするのでした。




 この夜、ベッドで愛し合う前に、彼は私を抱きしめて、


 「今日はきっと乗り心地がいいよ。^^」


 と囁きました。


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理沙子

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