2010年07月31日(土) |
もしも生まれ変わったら |
来週はGでドライブに行きましょうと
彼からのメールに書かれていたから、
次のデートが待ち遠しくて仕方がない私です。
今日、午前中のゴルフを終えた彼から電話がありました。
彼はそれから友達とランチをするところだったので、
少しの間だけお喋りしました。
来週からいつでもGが使えるようになると彼が言いました。
前回のデートでGに乗せてもらった時には、
まだ車の車庫証明も名義変更も済んでいませんでした。
Gに乗ることをずっと楽しみにしていた私のために、
彼が手続きの途中でも借りられるよう交渉してくれたのです。
彼のこういうマメさは付き合い始めの頃からちっとも変わっていません。
以前彼が言っていたことを思い出します。
「今、楽しい時間が共有出来ればそれでいい。」
初めの頃、私は彼のこの言葉に怯えていました。
いつまでも楽しいばかりの付き合いなんてあるわけがないから、
その時期が過ぎたらあっけなく別れが訪れるのだろうと。
でも、今ならこう思えるのです。
一緒にいて楽しいと思えなければ付き合っている意味がないと。
未来の時間が有り余っていた頃とは違って、
少しずつ残りの時間を意識するようになったこの頃。
きっと彼は私よりもっとそれを意識しているに違いないから、
私と過ごす彼の時間も充実したものであって欲しいと思うのです。
もしも生まれ変わったら彼と結婚したいかと聞かれたら、
「もっとTさんと早く出会えたらと思うこともあるけれど、
それは無理よね。
だって、Tさんが大学生の時、私は小学生だったんだから。^^」
先日、ベッドの中で私がそう言ったら、
「そういうこと言うなよ。」
と少し不貞腐れたように答えた彼。
私は人生のこの時期に彼と出会えて本当に良かったと思えるのです。
もし10年前だったら、或いは10年後だったら、
おそらく私達の恋はもっと辛いものになっていたでしょう。
数日前から彼にドライブと映画のどちらがいい?と聞かれていました。
ゲレンデバーゲンが届いたら私を一番先に乗せてくれると話していた彼。
でもお天気予報ではその日はあいにくの雨となっていました。
「とにかく新しい車で迎えに行くから。
映画を観に行くかどうかは、乗ってから考えればいいよ。^^」
前日の電話で彼が言いました。
デート当日は予報通り朝から強い雨が降っていました。
新しい車でドライブしたかったけれど、
諦めて映画を観ることにしました。
私が途中で映画に退屈していたら、
彼が私の顔を覗き込んで、小さな声で、
「大丈夫?^^」
と聞きました。
私は甘えるふりをして彼の腕にそっと触れました。
彼は右手を伸ばして、
短めの丈のワンピースを着ていた私の脚をしばらく撫でていました。
この日はほぼ十日ぶりのデートでした。
ホテルのお部屋でいっぱいキスをしました。
私がルナの三日目だったので、
二人とも求めたい気持ちをどうにか抑えていました。
しばらくお昼寝した後に、私達はいつものお寿司屋さんへ行きました。
「美味しい!」と言いながら食べている私の顔を見て、
「理沙子のいいところは…。」
と彼が優しく言いました。
「何でも美味しそうに食べるとこでしょ?^^
いつもそればっかなんだもん。」
「他にも色々あるよ。ここでは言えないけど。^^」
お部屋に戻って、ベッドの上で彼のものを愛していた時、
「あの続きを教えて。
理沙子のいいところは?」
と、私は彼の顔を見つめながら言いました。
「いやらしいところ。^^」
「もう、いつもそれしか言わないんだから。^^」
「それだけじゃないよ。」 「ねぇ、あと一週間我慢できる?」
「出来ない。理沙子の中で逝きたい。」
触れ合うだけでは我慢出来なくなって、私達は愛し合いました。
私の身体の奥を突きながら、彼は何度も私の名前を呼びました。
そして、感じている私の耳元で何度も「可愛い。」と囁きました。
今日は彼にとって東京からのお客さんとのゴルフの最終日。
電話で彼の声も聞けたし、何度かメールも届きました。
おやすみ前のメールには疲れたと書いてありました。
気心の知れた友人や仕事仲間と一緒のゴルフでは、
彼は疲れを見せるようなことはほとんどありません。
ゴルフ好きな彼だからこそ
今回のようなお付き合いは気疲れするものだったのでしょう。
ルナの前なので、お腹が重く気分もいまいちです。
今度のデートは10日ぶりなのに、
またルナの2日目あたりにぶつかってしまうかもしれません。
無理だと分かっているけれど、今すぐに会いたい…。
最近一人で眠るよりも彼が隣にいてくれた方がぐっすり眠れる私です。
彼と素肌をくっつけ合って眠りたいと思う週末の夜です。
前回のデートの夜、
私が車を降りる前に彼が短いキスをしてくれたのは、
10日間ほど会えない日が続くからでしょう。
今週は彼の女友達夫婦とその友人達が東京から来ていて、
彼はゴルフや食事のお付き合いをしています。
去年の4月に彼女が同じメンバーでこちらに滞在していた時には、
彼女のためにゴルフや食事のセッティング、
車での送迎などを快く引き受けている彼を見て、
私はこの二人の長年の付き合いには到底かなわないと感じていました。
でも、今はあの頃よりも彼をもっと理解するようになったから、
去年とは少し違う角度から彼と彼女の関係を見ています。
昨日、彼と電話で話をしました。
彼女達がこちらに来て三日目でした。
「いや〜。疲れた。^^;」
「お疲れさまです。大変ですね。」
「セレブの相手は疲れるよ。」
「庶民の私と一緒にいる方が楽しいでしょ?^^」
「ずっと楽しいよ。^^」
「明日もお付き合いするんですか?」
「いや、明日は俺は行かないよ。
一日仕事させてもらう。」
去年は滞在中は毎日ずっとお付き合いしていた彼だけれど、
今年はだいぶ軽減させてもらっているようです。
恋よりも友情の方がずっと長く彼と繋がっていられると
一時は彼女を羨ましく感じることもありました。
でもそれは二人がフェアな関係であればこそ…。
彼と私は甘えて甘えられて、いつだって男と女の下心でいっぱい。
恋人よりも友達がいいなんて、
私はもう二度と口にすることはないでしょう。
お部屋に戻ってから、私達は全英オープンを観ました。
ベッドからテレビがよく見えるように、
二つの枕をそれぞれベッドの反対側に置いて、
私達は身体を交互に並べる形で横になりました。
トーナメント最終日の競技を観ながら、
彼は私のブルーのキャミソールの裾を捲って、
私の太腿やヒップを優しく撫でていました。
「そこはやめてよ。恥ずかしい…。」
「何が恥ずかしいんだよ。^^」
私は思わずキャミソールの裾を手で押さえました。
ゴルフを観たり、お喋りしたり、じゃれ合ったり…。
長いおあずけ状態に焦らされていたので、
番組が終了して彼がお部屋の明かりを暗くした時には、
お互いの身体は十分なほど熱くなっていました。
愛し合った後、私は彼に腕枕をしてもらいながら、
「好き?」
と聞きました。
「好きだよ。」
と彼が言いました。
「一番好き?」
「一番好きだよ。」
前にも聞いたことがある彼の言葉。
こんな時しか聞くことが出来ない本当は臆病な私。
私は彼の言葉を聞きながら、
今だけ彼の一番になれるのならそれでもいいと思いました。
ソファでテレビを見ながら彼とお喋り。
キスをして、触れ合っているうちに、
呼吸は乱れ、素肌は熱を帯び、身体の芯から濡れ始めました。
お互いにどこか醒めていた数日前のセックスとは違って、
体力の全てを消耗するほどの激しさで求め合いました。
愛し合った後は、二人ともそのまま長いお昼寝に突入。
私は高校時代の親友が出て来る不思議な夢を見ました。^^
夜はワインと中国料理のお店に出かけました。
彼がシンガポールの話をした時に、私が小さな焼餅を焼きました。
「Tさんは小さい頃にお母さんを亡くしたから、
一番愛する人を失った時のことを考えると怖いんでしょう。
だから私のようなもう一人の女が必要なんだと思う。」
「理沙子はよくそういうことを決め付けて言うよなぁ。
しかも大抵見当違いだし。」
「核心を突かれてドキッとしたでしょ。」
「俺を不愉快にさせたいの?」
「別にTさんが怒ってもいいですよ。
男にとっては二番で女にとっては一番だから
いずれは上手くいかなくなりますよね〜。
それなら、いっぱい我侭言ってもいいでしょ。
この際いっぱい飲むし、いっぱい食べます。」
私は拗ねて、白ワインを飲み干すと、
彼のお皿に残っていたインカの目覚めを奪いました。
「可愛いよ。^^」
彼が少し酔った目で私をじっと見つめました。
「病んでるね。」
「何の病気だよ。^^」
「恋の病。」
結局、彼は私の発言を肯定も否定もしなかったけれど、
実を言うと、私も自分の気持ちなんてあまりよく分かりません。
気持ちは常に変化しているものだし、
この時現れた私の焼餅だって正体不明のものだもの。
私達がお店を出る時、外は激しい雨が降っていました。
女性スタッフが「返さなくていいですよ。」と
大きめのビニール傘を彼に手渡しました。
「ほら。」
彼が腕を差し出したので、私は自分の腕を絡めました。
一つの傘で彼と寄り添って歩く雨の日が好きです。
映画を観る予定だったけれど、連休中のシネマコンプレックスは
学生や家族連れでかなり混んでいることが予想されたので取りやめ。
修理に出していた彼の愛車が
デートの前日にやっと戻ってきた嬉しさもあって、
久しぶりに郊外へドライブに出かけました。
ここ最近、大きな故障はなかったものの、
車の調子がおかしくなってきていることに薄々気づいていたと言う彼。
「手間もお金もかかる車だよ。」
と彼が言うので、
「女もそういう女が好きでしょ?^^」
と私が聞くと、
「自分のことを言ってるのか?^^」
と彼が笑いました。
先週から鰻が食べたいと話していた私達。
まずは腹ごしらえということで、大好きな鰻屋さんへ行きました。
お座敷で美味しいひつまぶしを食べていると、
隣のテーブルの二歳位の可愛い男の子が、
お母さんの膝に抱っこされながら、「美味しい!美味しい!!」を連発。
男の子のお父さんが、「○○の鰻は食べないのになぁ。」と
目を細めていました。
お店を出て、私が彼に
「ご馳走さまでした。
あの男の子も美味しいって連発してたね。^^」
と言うと、
「理沙子みたいな子供だったな。
何度も『美味しい、美味しい!』って言って。(笑)」
と彼が私をからかうように言いました。
車の中でゴルフの話をしました。
私がゴルフスクールの体験レッスンの申し込みをしたという話をすると、
彼は数ヶ月練習場に通っただけでは上達しないと言いました。
彼は私がゴルフを始めることを面白がってはいるけれど、
彼は自称ユーティリティ・プレイヤーで、
友達に誘われたら一緒にプレイするという人なのです。
自分からメンバーを集めたり、ゴルフ場や日時をアレンジしたり
ということはほとんどありません。
それに最大のネックは、
私が彼と一緒にプレイ出来るレベルになるまでには
まだまだ時間がかかるだろうということです。
今度の冬に旅行先で二人でゴルフ…という私の無謀な願いは、
彼にあっさりと一蹴されました。^^;
途中スイーツのお店でアイスクリームを食べた後、
フラワーガーデンへ行きました。
私達が着いた頃、駐車場は車や観光バスでいっぱいでしたが、
外の風は冷たく小雨が降り始めていました。
私達は園内を見て回ることは諦めて、
併設されたお土産屋さんに寄って帰って来ました。
街の中心に近づくに連れて、雨はいよいよ本降りになってきました。
でも、彼と二人、車の中でずっとお喋り。
楽しいドライブデートでした。^^
心の中にわだかまりを残したままにしておくと、
気づいた時にはお互いの気持ちは後戻り出来ないほどに
離れてしまっているということは過去の恋愛で経験済み。
不安要因は早いうちに取り除いておく方が賢明でしょう。
彼が興味の無い相手にどれだけ冷淡であるかは想像がつきます。
側にいて邪魔にならない相手と無関心な相手は紙一重。
いつまでも彼の好奇心をそそる女でありたいと思うのです。
彼からメールの返信が無かった翌日、
時間がある時に電話をしたいと彼にメールを送りました。
しばらくして、彼と電話で話すことが出来ました。
前の晩に返信が無かった理由を私から聞くことは無かったけれど、
「昨夜は疲れて早く寝ちゃったよ。」
と彼が明るい声で言いました。
彼は前日、デートの後でオフィスに寄って仕事をしたそうです。
「理沙子は大丈夫?^^」
「少し腕が筋肉痛だけど、それほどでもないです。
色々教えてくれてありがとうございました。^^
Tさんこそ私の練習に付き合って疲れちゃったかなと思ってました。
昨日のTさん、何だかいつもと少し違ってたから。」
「そんなことはないだろう。」という彼の言葉を予想していたけれど、
「連休のデートは大丈夫ですか?」
仕事のことが心配になって、私が彼に聞くと、
「ああ、もう大丈夫だよ。
それまでちゃんと我慢するんだよ。^^」
と彼がいつもの調子で言いました。
10分ほど彼と話をしただけなのに、
前日からの正体不明の不安がたちまち解けていくのが分かりました。
ゴルフの練習場で、彼に初レッスンをしてもらいました。
彼がクラブの握り方やスイングフォームなど、
基本的なことから丁寧に教えてくれました。
1時間ほど練習したところで、
「素質あるかも。^^」
と彼にちょっと褒められて私は大喜びしていたのだけれど、
彼曰く「思っていたより悪くない。」レベルなんだそうです。^^;
とりあえず、ゴルフスクールに通っても良いという許可を頂きました。
ゴルフの練習の後に豚カツ屋さんでランチをしました。
練習場にいた時は楽しかったけれど、この日の彼はどこか上の空でした。
彼の愛車が修理に出されていて、
しばらく代車を使わなければならないことや、
前倒しの仕事が溜まっていること等、
私には無関係な彼の諸々の事情のせいだったのかもしれません。
抱き合った後に9月の旅行の話もしたし、
私が帰り支度をする前にはギュッと抱きしめてくれたから、
こんな風に思うことも恐らく気のせいでしょう。
この日は私の都合で早く帰らなければならなかったから、
彼は寧ろ私の方が素っ気無いと感じていたのかもしれません。
好きな人の顔色をうかがうような恋はもうしたくないのです。
恋人の気持ちが離れているという女の直感は、
大抵当たっているものだと過去の恋が教えてくれました。
家に帰ってから彼にメールを送ったけれど、返信はありません。
連休になれば、また彼に会えるのに、
些細なことで不安になってしまう自分が嫌いです。
デートの数日後、彼と電話で話しました。
彼は今回の不整脈のことを私以外には誰にも話していないと言いました。
ベッドを共にする相手がいるということは、
健康を気遣う相手がいるということでもあるのだと思いました。
私が一番彼の健康状態を理解しているのだから、
忙しい彼に病院へ行くように勧めるのは私しかいないのだと思いました。
今週は彼にゴルフの練習場へ連れて行ってもらう予定です。
「Tさんに教えてもらう前に、ゴルフスクールに行った方がいいかな。」
「ゴルフスクールに通うほどのレベルかどうか、
それも含めて俺が見極めてやるよ。^^」
「初めから私が下手だって諦めてるでしょ?^^」
「まぁ、一度やってみれば分かるから。」
彼曰く、ビギナーは誰でも
止まっているボールを打つのがいかに難しいかを実感するそうです。
「ゴルフシューズを買った方がいいですか?」
「まだ続けるかどうかも分からないのに買う必要無いよ。
上手くなったら俺が買ってやるから。^^」
「私は褒められて伸びるタイプだからね。^^」
「褒める所があればだけどな。
スパルタ式でビシバシやるぞ。(笑)」
ずっと前から彼と練習場へ行くことを楽しみにしていたけれど、
どうやら前途多難のスタートになりそうです。^^;
二人で目の前の鉄板いっぱいに肉や野菜をのせていきました。
彼はビール、私は生グレープフルーツサワーを飲みながら、
焼かれたものから次々に食べていきます。
焼肉屋さんデートでは、
食べることもお喋りも途切れることがありません。
例のゲレンデバーゲンがこちらに到着する日が決まったようです。
到着してから諸々の手続きがあって、
彼の所に届くのが今月最後の週の初め頃になるそうです。
彼は今月最後のデートの日には私を乗せることが出来るだろうと
言いました。
「それまでは誰も乗らない?」
「俺が乗る。(笑)
とにかく車が来たら連絡するよ。^^」
今月の半ば過ぎには東京から彼の友達夫婦が遊びに来ます。
スペイン時代の女友達とご主人、もう一組の夫婦とシングルの男性
というメンバーで一週間ほどこちらに滞在するそうです。
その間、彼はゴルフと夜の食事のお付き合いをします。
「私もその週は忙しくなりそう。
新しい仕事の準備もあるし、
友達とランチや飲み会の予定も入ってるし。^^」
「気をつけなさいよ。」
「大丈夫ですよ〜。私も友達もそんなに飲まないし。^^」
保護者みたいなことを言う彼の優しさに照れて、私は言いました。
この夜、ベッドで彼の腕に抱かれていた時、
「ここに耳を当ててごらん。」
と彼が自分の心臓を指して言いました。
「聞こえる?」
「テレビの音であまり良く聞こえない。」
彼がリモコンでテレビを消しました。
私はしばらく彼の左胸に耳を当てて、じっとしていました。
「心臓の音、途切れ途切れになってる…。」
「それが不整脈なんだよ。」
先週末のゴルフの時以来、
また不整脈が出るようになったと彼は言いました。
以前彼が循環器の専門病院で精密検査を受けた時には、
特に治療の必要がない不整脈だと診断されたそうです。
でも今回は彼はまだ一度も病院へ行っていないので心配です。
「時間がある時に病院へ行ってね。」
私はもう一度彼に言いました。
ランチの後はレンタルショップでDVDを借りて、
いつものシティホテルにチェックインしました。
先週は私がルナだったから、繋がることが出来なかった私達。
借りて来たDVDも観ないうちに私達は抱き合いました。
途中で彼の友人からゴルフの誘いの電話がありました。
彼の上に乗っていた私は、彼から下りて繋がりを解こうとしました。
「そのままでいて。」
携帯電話を手にしたまま、彼が言いました。
私と繋がりながら友人と話す彼。
私が時々腰を揺らすと、彼の表情が少しだけ苦しそうに歪みました。
電話を切った後、彼は私を下ろし、
今度は後ろから私の中に入って来ました。
私達はゆっくり時間をかけて、2週間分愛し合いました。
愛し合った後、
私は彼の厚い胸に頭を乗せて、彼の携帯電話の画面を見ていました。
彼は9月の旅行で泊まるホテルをチェックしていました。
当初2泊3日の日程で彼から誘われていた9月初めの旅行。
その週はスケジュールが立て込んでいるから多分無理と答えていた私。
この日になって1泊なら行けそうと彼に伝えました。
多忙な彼にとって一番貴重な時間を
いつも優先して与えてもらっているのだから…。
私は露天風呂から湖が見える温泉旅館をリクエストしました。
短いランチデートをした翌日、彼の体調が気になって電話をしました。
不整脈の症状はその後は出ていないようで、彼の声は元気そうでした。
私はほっとしてすぐに電話を切ったけれど、
何か忘れ物をしたような気持ちになりました。
私はもう一度彼に電話をしました。
「私、言い忘れたことがあるの。」
「どうしたの?」
「Tさんが好き。^^」
「昨日は大胆だったよなぁ。(笑)」
彼は私が車の中でストッキングをはき替えたことか、
キスをおねだりしたことを言っているようでした。
「そうでしたね。^^;
誰にも見られてないですよね〜。」
「今朝の新聞に出てたぞ。(笑)」
「あはは、やっぱり。^^」
「○○新聞に出てた。(笑)」
その絶妙のタイミングに私の胸はキュンとなりました。
デパートの脇の比較的人通りの少ない道に彼は車を止めました。
「ストッキング取り替えてもいい?」
ワンピースの下のストッキングが伝線していることに気づいた私は、
バッグから新しいストッキングを取り出しました。
短めのワンピースの裾から手を入れて素早く取り替えれば、
車の外からは誰にも見られないと思いました。
私がストッキングをするりと脱いで素足になると、
彼は私の腿をいやらしく撫でました。
「触っちゃ駄目。^^」
「新しいのはかなくてもいいんじゃない。
そのままでいいよ。」
「このままでもいいかな。でもやっぱり…はく。」
彼の右手がずっと私の腿を撫でているので、
新しいストッキングが膝の位置から上げられません。
「ジレンマだろ?^^」
彼の手がワンピースの奥に伸びようとしました。
「やめて、濡れちゃう。^^」
「やめてって言われると余計に触りたくなる。^^」
私は彼の手を制止して、ストッキングを腰の位置まで上げました。
「欲しくなった?」
私は彼の方をちらりと見て言いました。
「いやいや、その誘いには乗らないから。(笑)」
「うふふ、いつも私がTさんを誘惑してるみたいに言って。^^」
車を降りる時に、私は、
「キスして。」
とおねだりしました。
彼は私の唇に甘くて短いキスをしました。
私が車を降りて彼に手を振ると、彼も運転席から手を振ってくれました。
私の大好きなとびきり優しい笑顔でした。
不安な気持ちで素っ気無い別れ方をしたデートの翌朝、
もう一度彼と電話で話しました。
彼は前の晩と同じように、もし私達が遠距離になったら、
二ヶ月に一度位しか私に会いに来ることは出来ないだろうと言いました。
「理沙子がこっちに来ることは出来ないの?」
と彼は私に尋ねました。
隔月で私と彼が行ったり来たりすれば、
月に一度のデートも可能かもしれません。
でも、彼の性格にそういう付き合い方は向いていないような気がして、
そのことは口にしませんでした。
この日、彼は午後からゴルフに行く予定になっていたので、
ゴルフが終わったら会って話をしたいから電話が欲しいと
メールを送りました。
夕方、彼から電話があったけれど、彼はとても疲れている様子で、
「今日は止めよう。
明日ランチをしながら話をしよう。
何時頃がいいか夜にでもメールを入れておいて。」
と言いました。
翌日、彼は忙しい仕事の合間を抜けて私に会ってくれました。
私は彼のオフィスからあまり遠くない行きつけのお店で、
ランチをしながら彼と話をすることを想定していました。
でも彼は、私に会うとすぐに、
前から二人で行きたいと話していた郊外の公園へ行こうと言いました。
広大な美しい公園内にはお洒落なフレンチレストランがあります。
彼はそこで食事をしようと言いました。
車の中で私達はずっと他愛ないお喋りに夢中になっていたけれど、
彼は前日のゴルフのプレイ中に、
二年ぶりに不整脈の症状が出たという話をしました。
胸が苦しかったけれど、友達には話さずに、
どうにか一人で車を運転して帰って来たそうです。
「今日は大丈夫なんですか…。
昨日の電話でもそんなに具合が悪いこと言ってなかったですよね。
Tさんは周りに気を使って言えないんでしょう。
そういう時は私にも友達にも本当のことを言って下さいね。」
「家に帰ってすぐに、以前貰った薬を飲んで寝たから大丈夫だよ。」
私は彼のこの話を聞いて、
その時に感じた気持ちのままを彼に伝えました。
「俺は何もしないで、理沙子を待ってればいいのか?(笑)」
「うん、私の方が若いから私が来るね。^^」
公園内のレストランはあいにくウエディング・パーティのために
貸し切りとなっていました。
私達はそこでランチをすることは諦めて、
ピラミッド型の施設の屋上から公園を眺めたり、
設計者のギャラリーを見学したりしました。
公園を出てから街の中心部に戻り、ラーメン屋さんへ行きました。
食事を終えると、もう彼は仕事に戻らなければならない時間でした。
「今日は俺の顔が見たかったの?^^」
車の中で彼が私に尋ねました。
私達のこれからのことを話し合いたいと思っていたのに、
そんなことはもうどうでも良くなっている私の気持ちに
彼は気づいているようでした。
「話をしたかったんだけど、ラーメン屋さんじゃ話せないしね。^^」
「もっとずっと先の話だろう?
今はまだいいじゃないか。」
「そうですね。」
この日の彼との時間があまりにも楽しかったから、
私達のこれからの関係について話をすることなど
意味が無いような気がしました。
「そばにいて。」
私が彼に横浜へ帰るかもしれないという話をした夜、
彼がベッドで私を抱きしめて呟いた言葉を思い出しました。
あの時はベッドの中の戯言のように聞いていた彼の言葉だけれど、
後になってあの短い一言こそが彼の本心であるような気がしました。
ルナ二日目、朝から体調が悪かったけれど彼に会って来ました。
私の体調を気遣ってお部屋でDVDでも観ようと言う彼に、
私はどこかへ出かけたいと言いました。
お部屋で彼にキスされたり、身体に触れられたりしたら、
欲しくなって我慢して、余計にお腹が痛くなると思ったからです。
体調が悪くなければ、とても楽しいはずのイングリッシュ・ガーデン。
蒸し暑いし、お腹は痛いしで、
私は広い園内を歩くのが途中でしんどくなってしまいました。
小さな子供が遊べるようなミニチュアの家があって、
彼が面白がって私と入ろうとしたのだけれど、
ローテンションの私は彼のノリについていけませんでした。^^;
「理沙子、この家に入ろうよ。ベッドがあるから。(笑)」
って、あのね。
いい大人がこんな所に二人で入っているところを人に見られたら、
変態扱いされますから…。^^;
おまけに丸太の上を歩いている時にハイヒールの踵を傷つけてしまい、
気分はますます凹んでしまいました。
ローズ・ガーデンは映画のシーンのように綺麗だったし、
放牧されている馬やアルパカも可愛かったから、
元気な時にもう一度訪れたいと思うけれど…。
3時頃、いつものホテルにチェックインしました。
シャワーを浴びてから、彼の腕枕でお昼寝しました。
目覚めてから私達はしばらくキスしたり、触れ合ったりしていました。
夜、食事を終えてお寿司屋さんを出る時に、
携帯電話に横浜の実家からメールが届いていることに気づきました。
メールの内容は私が近いうちに横浜へ帰らなければならなくなる
ということを意味していました。
そして、もしそうなったら、
彼と離れなければならないということも頭に浮かびました。
私は読んだばかりのメールをそのまま彼に伝えました。
帰りの車の中で、
「もし私が横浜に帰ることになったら、別れよう。」
と私は彼に言いました。
ホテルのお部屋にいた時には、
「俺が毎月理沙子に会いに行くよ。」
と言っていた彼。
「そばにいて。」
と言って私を抱きしめた彼。
でも、この時は無言でした。
私にも彼との遠距離恋愛は想像がつきませんでした。
家に帰ってから彼と電話で話をしました。
「はっきり決まってから考えよう。」
と彼は言いました。
彼はお部屋で言った言葉は撤回して、
「毎月理沙子に会いに行くのは無理だろう。」
とも言いました。
彼の言葉から私と別れたくないという強い愛情は感じられませんでした。
彼は初めからいつか来る別れのことを意識していて、
それまでの時間を楽しめればいいと割り切っているようでもありました。
私は悲しいというよりはどこか醒めた虚しい思いで、
私達の関係がこの先どうなるのか考えていました。
この夜、彼からのおやすみメールはありませんでした。
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