こうして私はあなたを好きになった
綴りたいのは残された言葉、なつかしい匂い、
揺れる気持ち、忘れられない感触

2009年07月28日(火)


 午前中、彼から電話がありました。

 前日に私が電話を欲しいというメールを送っていたからです。


 「おはよう!」


 「おはようございます。^^」


 「どうしたの?」


 「ただ話がしたくなって…。」


 「声が聞きたかったのか?^^」


 「はい、そうです。」


 「来月の○○日からのホテル、予約しておいたから。」


 「ありがとうございます。^^

  Tさんは大丈夫なんですか?」


 「大丈夫だよ。そう言っただろう?」


 私がお泊りデートしたいと言った時は

 1泊でも出来れば嬉しいと思っていたのだけれど、

 彼は市内のシティホテルを3泊予約してくれました。

 3泊目は泊まらずに彼と一緒に帰るつもりだけれど、

 3日目の夜までずっとお部屋が使えるようにと

 彼が配慮してくれたのです。

 そんなに長い時間を彼と一緒に過ごせるということは、

 あまりに贅沢過ぎて何だか怖いような気がしてしまうのでした。




↑エンピツ投票ボタン
 と彼は不思議そうに言っていたけれど…。



 数ヶ月前までは彼との別れを想像することもあったのに、

 今ならまだ数週間の涙で彼を忘れることだって出来そうなのに、

 これから先、彼と上手に別れられる自信が私には無いのです。

 失うことが怖くなるということは、

 本気になり始めている証なのでしょうか。



2009年07月27日(月) 一秒のキス


 その日は朝から湿った雨が降ったり止んだりしていました。

 私はレッスンの後、街中のカフェで彼からの電話を待っていました。

 彼はこの日ゴルフのコンペが終わってから

 表彰式には出席せずに私と会う約束をしていました。

 私は英文の読解に集中していたので、

 数回目の着信でやっと彼からの電話に気付きました。




 これから夜を迎える7月最後の週末の街は明るく賑わっていました。

 彼の車に乗り込んで、すぐに彼の顔を見ました。

 最近は会って最初に見る彼の表情で、

 その日のデートがどんな風になるか予測がつくようになりました。

 この時の彼の表情は少し疲れている様子でした。

 後で理由を聞くと、私が彼からの電話を受けてから

 彼の車のある場所まで行くのに時間がかかったので、

 待っている間に苛々していたようです。


 「今日はホテルから一歩も外に出ないから。」


 車の中で彼が言いました。


 「そうなんですか?」


 彼はいつもとは違うシティホテルの名前を言って、


 「食事もそこでするから。」


 と言いました。




 お部屋に入ると私達はすぐに荷物を置いて、

 ホテルの中の中華料理のレストランへ行きました。

 彼はその日は正午からゴルフコンペがあったので、

 10時頃にゴルフ場へ向かう途中で食事をした後は

 何も食べていませんでした。

 彼はビールと紹興酒、私は杏露酒と白ワインを飲みながら、

 中華料理のコースを頂きました。

 この日の私は、ブルーと白のストライプのクレリックシャツに

 少し光沢のある黒のタイトスカートを着ていました。


 「そういうシャツ、似合うね。

  仕事が出来る風で。^^」


 「そうですか。

  じゃあ、Tさんの会社に雇って下さい。^^」


 「嫌だ。時間に遅れるから。」


 「ごめんなさい。^^;

  でも、私は今日はレッスンの後、2時間も待ってたんですよ。」


 「でも、それは織り込み済みなはず。

  15分後に着くって電話していたのに、

  着いてから15分も待ったんだから。」


 褒められたのも束の間、

 彼のお叱りの言葉を受けました。^^;




 この日は彼に抱かれている間も気持ちが集中出来ませんでした。

 心のどこかで冷めていて、彼を客観的に見ている自分がいました。




↑エンピツ投票ボタン
 この日の私達は二人とも

 愛するよりも愛されたいと思う分量が少しだけ多くて、

 愛情を分け合うバランスが悪かったのだと思います。




 二回目に抱き合った後で、彼はシャワーを浴びると、


 「今日はもう無理。」


 と言って、二つあるベッドのうちの

 私がいない方のベッドの上に寝転びました。

 それから、


 「理沙子は出来ても俺はもう無理だからな。^^」


 などと意地悪を言い始めました。

 私達がツインのお部屋で抱き合う時は

 一つのベッドしか使わないことがほとんどです。

 彼が抱き合った後に一人でもう一つのベッドに移ったのは、

 この日が初めてのことでした。

 いつもは抱き合った後も一つのベッドで寄り添っているから、

 私は不意に寂しい気持ちに襲われました。

 あの人とのことを思い出したのです。

 あの人はいつでも抱き合った後は

 すぐに私から離れたがっているように見えました。




 「こっちに来て。」


 私がそう言ってしばらくすると、彼が私のいるベッドの方へ来ました。

 彼は私の気分に気付かずに、しばらく一人で陽気に話していました。


 「どうして返事しないの?」


 彼に聞かれても、私はそのまま黙っていました。


 「どんな顔してるの?」


 彼が私の顔を覗き込むように私を抱き寄せました。


 「お泊りデート止めましょうか。」


 「どうして?」


 「ずっと一緒にいて、Tさんが疲れちゃうといけないから。」


 そして、私はあの人のことを持ち出して、

 あの人が私と付き合っている数年間で病気が悪化した話をしました。


 「それは違うだろう。

  俺は最初から病気じゃないし。」


 「だって、さっきずっと私に意地悪を言ってたから。」


 「からかってるんだよ。^^」


 「そうやって、

  Tさんはいつも誰彼構わずからかうんですか?」


 「誰彼構わずってさぁ〜。^^;」


 「私だって大変なんですよ。

  Tさんみたいな人と付き合うのって初めてなんですから。」


 私はベッドでの彼の我侭ぶりを挙げてみました。

 彼は笑いながら、


 「さっきの仕返しされてるみたいだな。(笑)」


 と言いました。


 「私ってTさんの何ですか?」


 「何って…恋人だよ。

  理沙子は?」


 「私にとってTさんはってこと?」


 「そうだ。」


 「答えない。」


 「自分が答えられないようなことを人に質問するなよ。」


 「答えられるけど、言わない。」


 彼は私にキスをして、


 「大好き。」


 と言いました。


 「何番目に好き?」


 「ワンコの次に好き。^^」




 私はワンコ以下なのかと思うと悔しかったけれど、

 その後は話の流れが変わりました。

 彼は私と観たいと思っている映画二本と

 私と一緒に行きたいと思っている美術展の話をしました。

 彼の私に対する気持ちがどんなものなのかは分からないけれど、

 とりあえず、彼の頭の中のスケジュールには、

 ずっと先まで私とのデートのプランが入っているようです。




 深夜、ホテルを出る時もまだ雨が降っていました。

 別れ際、車の中で私がそっと彼の右手に触れると、

 彼は私の唇に短いキスをしました。



2009年07月25日(土) 同じ瞬間、同じ想いで…


 私が本屋さんで仕事のためのテキストの注文をしていると、

 携帯電話に彼から続けて4回の着信がありました。

 普段から彼は電話にはすぐに出られないことがあると言っているくせに、

 立場が逆になるととてもせっかちです。^^;



 本屋さんの近くで彼にピックアップしてもらいました。

 この日の彼は白いポロシャツを着ていて、

 ゴルフ焼けした浅黒い肌がひときわ目立っていました。


 「今日はこのまま真っ直ぐ食事に行こう。」


 彼は私のお気に入りのワインと串焼きのお店の名前を言いました。


 「予約しておいたから。」


 いつもなら平日でも当日の予約は難しい人気のお店です。


 「嬉しい。

  私が食べたいと思っているものがどうして分かるんですか?^^」


 「あのお店、好きなんだろう?^^」



 お店に入ると、私達はカウンターの一番端の席に案内されました。

 このお店のカウンターでは

 シェフが目の前で新鮮な旬の素材を下ごしらえして、

 炭火で焼いてくれます。

 私達が席に着く頃にはカウンターとテーブル席のほとんどが

 常連らしいお客さんで埋まっていました。

 まずは、冷たいビールで乾杯しました。


 「お疲れ様でした〜。

  今日のゴルフの調子はどうでしたか?^^」


 「最悪!

  3000円取られたよ。(笑)」


 最悪と言いつつも彼の顔は笑っています。

 ストレスがたまるようなゴルフはしないというのが

 彼のポリシーだそうです。



 二杯目からは白ワインに切り替えて、

 彼が次々と注文してくれる美味しい串焼きを頂きました。

 彼が来月のお泊りデートの日程を決めてしまおうと言ったので、

 二人でカレンダーを見ながら、お互いの都合の良い日を選びました。



 食事を終えると、彼は電話で代行の運転手さんを呼びました。

 それから、いつものシティホテルへ行きました。

 お部屋に入ると、二人とも靴を脱いでベッドに横になりました。

 彼はすぐに私に覆い被さると、いつもより激しいキスをしました。



 この日、私はルナの二日目でした。

 ずっとベッドの上でキスしたり、触れ合ったりしていました。

 そうしているうちに、

 お互いの求める気持ちがどうしようもないほど強くなっていくのでした。




↑エンピツ投票ボタン
 でも、最後には彼がとても辛そうにしていたので、

 私は手と舌を使って彼のものを愛しました。

 いった後、彼は私をギュッと抱き締めて耳たぶや唇にキスをしました。


 「起きたくないな。ずっとこうしていたい。」


 私を腕に抱いたまま、彼が言いました。


 「このまま眠りたいね…。」


 そのまま彼の腕の中で眠ってしまいたい気持ちを抑えて、

 いつものように私から先にベッドを離れました。



2009年07月24日(金) 負けるが勝ち


 デートの日の朝、彼から電話がありました。


 「昨夜、メール読んだの12時過ぎで返信出来なかったけど、
  
  何か用事だったの?」


 「あれ…始まっちゃったんです。」


 前日の段階ではルナが始まったばかりで具合が悪かったので、

 もしその週の他の日でお互いの都合がつくなら、

 デートの日を変更してもらおうと思っていたのです。


 「別の日にする?」


 「でも、今日は体調は悪くないですよ。

  昨日は痛みもひどくてメールしてしまったんだけど…。」


 二人で迷っているうちに彼の携帯電話にキャッチホンがありました。


 「ごめん、またすぐかけ直すから。」



 数分後、彼からまた電話がかかってきました。


 「今からゴルフしようって。(笑)」


 「○○さんでしょ?」


 私は彼とよくゴルフをする友達の名前を言いました。


 「そう。(笑)」


 「何て返事したんですか?」


 「ちょっと考えさせてって。」


 「声がやけに明るいんですけど。^^」


 「ゴルフの後に会うのはどう?」


 「う〜ん、今日は止めにしましょうか。」


 ゴルフに彼を取られるのは悔しかったけれど、

 電話を通して彼のゴルフに行きたい気持ちが伝わって来ました。


 「そうだ。こうしよう。

  今日はゴルフに行かせて。」


 「う、うん。」


 「それで、ゴルフが終わってから会おう。」


 「いいですよ。今週土曜日も会えるなら。^^」


 「会える。会えるよ。

  この埋め合わせは必ずするから。」


 「わっ、ほんとですか?

  今日会ったら何でもお願い聞いてくれそう。^^」


 彼は私の承諾を得て、嬉しそうに電話を切りました。



 この日はデートの時間は短縮されたけれど、

 彼に会ってから嬉しいことがありました。

 一つは彼がゴルフ場から私の一番お気に入りのレストランに

 予約を入れておいてくれたこと、




↑エンピツ投票ボタン


 ゴルフの後の彼はとてもご機嫌です。

 プレイの後で疲れていると思いきや、いつもより元気な位です。

 昼間はゴルフに彼を取られた分、

 夜はとびきり優しい彼と一緒に過ごすことが出来ました。



2009年07月19日(日) 夏休みのリクエスト


 彼の仕事は基本的に年中無休です。

 クリスマス、年末年始などはいつもより寧ろ忙しい位です。

 世間でお盆休みにあたる期間は

 彼にとって特別忙しいわけではないけれど、

 連続した休暇が取れるわけではありません。

 それでも私にとっては仕事の無い期間だから、

 出来れば彼といつもよりのんびり過ごしたいと思い、

 昨日の電話でリクエストしました。



 「で、どうしたの?」


 彼は仕事に向かう途中の車の中で、

 私の用件を早く聞きたがっていました。


 「8月のことなんだけど…。」


 私がそう言った途端に彼は大きな声で笑い出しました。

 彼にとってはお盆シーズンなんてまだ当分先のことだからでしょう。

 私は自分の仕事が休みになる期間を告げて、


 「この週にお泊りデート出来ますか?」


 とストレートに聞きました。

 もし駄目だと言われたら、ちょっとショックだなぁと思いながら…。 




↑エンピツ投票ボタン

 それから、彼はちょっと呆れたように、


 「それは今度会った時に話せばいいことだろう?^^」


 と言いました。


 「うん、そうですね。」


 「その時、じっくり話を聞くから。^^」


 「はい。^^

  今度のデート、晴れるといいなぁ。」


 「別に雨でもいいじゃないか。」


 「Tさんは雨の方がいいんでしょう?」


 彼は大好きなゴルフの日が雨になると嫌なので、

 ゴルフの無い日に沢山雨が降ってほしいといつも言っているのです。


 「そんなことはないよ。^^」


 「そうですか?^^

  じゃあ、今度は雨が降らないことを祈ってます。」


 「可愛く祈ってて。

  神様、お願い!って。(笑)」


 「あははは。^^」


 その後すぐに彼には仕事が入っていたので、早々に電話を切りました。



 今年は彼と過ごす初めての夏です。

 今度会った時には、8月のスケジュール表に

 彼とのお泊りデートの約束を入れることが出来るでしょう。



2009年07月18日(土) 好き


 先日、ランチのために彼と初めて入ったのは、

 牛タンと麦飯のお店でした。

 古い小さなお店のカウンターに座って、

 牛タンと麦飯とトロロ、それから牛テールスープを頂きました。

 彼は私がこういう小さなお店で「美味しい!」とはしゃぐと、

 とても恥ずかしがる人だということを学習したので、

 私達はいつになく大人しく食事をしました。^^



 ランチの時はお酒を飲まないので、

 大抵彼の方が私より早く食事を済ませます。

 この日も彼はあっという間に全て平らげると、

 カウンターに置いてあった団扇を手に取りました。

 私はさほど暑さを感じなかったのだけれど、

 暑がりの彼は額や首にいっぱい汗を掻いていました。

 彼は自分と私の両方に風が送られるように

 団扇であおぎ始めました。

 カウンターに座っているのは私達ともう一人の男性だけで、

 お店のご主人はその男性と気さくに話をしていました。




↑エンピツ投票ボタン
 いかにも「ついでだから二人分あおいでるんだぞ。」と言いたげな

 様子で少し乱暴に団扇を動かす彼。

 そんな彼の優しさがしみじみと嬉しくて、

 彼の目を見つめては、何度か小さく「ありがとう。^^」と言いました。



 ほんの小さなことだけれど、

 彼のさりげない仕草に好きという気持ちが溢れることがあります。

 さりげないからこそ、優しさは溶けるようにすっと心に沁みるのです。

 好きな人が好きでいてくれる、この幸せを大切にしたいと思いました。



2009年07月17日(金) 温かい気持ちで


 「まだ今日も終わっていないのに来週のことを聞く。^^」


 と私のことを笑うくせに、

 10月の旅行で行きたい場所を私に尋ねる彼。

 先日のデートでは、本屋さんで旅行のためのガイドブックを買いました。



 ホテルのお部屋で私が、


 「私達は10月にまだ付き合ってるかな…。」


 と少し弱気になって言うと、


 「それまでに一体何が起こるって言うんだよ。

  俺の方は全く問題ないよ。」


 と彼が言いました。



 二人でベッドに寝転んで、ガイドブックを見ました。

 彼が私に地図を見せながら幾つかのプランを提案しました。

 素肌をくっつけて、時々キスをしながら話をするうちに、

 言葉は途切れ、二人の吐息も乱れがちになるのでした。

 彼がガイドブックを閉じ、テレビを消し、明かりを落として、

 私達は一週間ぶりに抱き合いました。



 夜、食事に出かけたお店でも私達は旅行の話をしました。

 私達が旅行を検討している街には

 彼が以前から行きたいと思っているスペイン料理のお店があって、

 そこへ食事に行こうかと彼が言いました。

 彼の行きつけの場所に連れて行ってもらうことも嬉しいけれど、

 二人で初めての場所へ行くことはそれよりもっと嬉しいことです。

 スペインで伝統的なバスク料理を学んだシェフが開いたという

 そのお店の話を聞いているうちに、無性に行きたくなって来ました。 

 10月なんてまだずっと先の話だけれど、


 「分かった。予約するよ。^^」


 と彼が言いました。



 旅行の話の後で、少し真面目な話題になりました。

 私が将来の不安を断片的に打ち明けたからです。

 相談というわけではなく、話の流れでそうなったのです。

 彼は彼独自の人生哲学で私の心配を和らげるような話をしてくれました。

 いつも思うことだけれど、彼は一般論は言わない人です。

 彼自身の言葉で彼の考えを理論的に明確に示します。




 ホテルに戻ってから、


 「今日はもうしないよね。あんな真面目な話をした後だもの。」


 と私が言うと、


 「それは関係ないよ。俺はするよ。」


 と彼が言いました。



 シャワーを浴びてベッドに入ると、

 色々な不安が押し寄せてきて涙が溢れてきました。

 その不安は彼との付き合いとは無関係なものではあったけれど。

 彼は私を後ろから抱き締めると、


 「理沙子、好きだよ。」

 
 と優しく囁きました。


 「嘘ばっかり…。

  何番目に好き?」


 私は彼が答えに困っている間に


 「何番目でも別にいいけど…。」


 と言いました。

 彼は更に強く私を抱き締め、

 耳たぶや濡れた頬にキスしたり、胸やお尻を愛撫しました。




 愛し合った後、私達はベッドでお互いの身体に触れ合いながら、

 帰る時間までずっと話をしていました。

 彼は私の胸の先端を弄りながら、


 「この前ずっとこうしてたら、

  理沙子がだんだん感じてきたんだっけ。」


 と先週の話をしました。




↑エンピツ投票ボタン
 彼は私に観て欲しいと貸してくれた映画の話や愛犬の岳の話、

 日曜日に久しぶりに会う予定になっている高校の同級生の話を

 聞かせてくれました。

 この日は抱き合った後も彼を冷たく感じることはありませんでした。




 帰り道、彼の車の中で、


 「この赤信号、長いな。」


 と少し苛立つ彼に、


 「ずっと赤ならいいのに。」


 と私が言いました。

 彼は不思議そうに私を見ました。


 「すぐに家に着いちゃうのが嫌だから…。」


 と私は独り言みたいに呟きました。

 
 「こんなに私に思われてるなんて、Tさんは幸せ者ですね。」


 と私が続けて言うと、彼は優しい笑顔を見せました。




 私が車を降りる時に、彼が私の助手席に右手を置いたので、

 私はおやすみのキスの代わりに、

 彼の右手の上に自分の左手をそっと重ねました。

 私が車を降りてから、

 彼の車はUターンをして角の信号の所で停まりました。

 私達の目が合って、二人とも手を振りました。

 彼の車はしばらくそこに停まっていたので、

 私は歩きながら時々彼に手を振りました。

 角を曲がると彼の車が見えなくなるまで、

 私は振り返りながら手を振りました。

 私が手を振る度に彼も手を振ってくれたので、

 この夜は温かい気持ちで家に着くことが出来ました。



2009年07月14日(火) 今の気持ち


 特に用事も無いのに彼から電話があるのは珍しいことです。

 彼はこの場所を知っているから、

 もしかしたら日曜日の日記を読んだのかも知れないと思いました。

 今度のデートのことや気になっている映画の話など、

 いつもより少し長い時間、彼と電話でお喋りしました。

 今度彼に会うことになっている日も




↑エンピツ投票ボタン

 思い出してみると、彼に初めて抱かれてからしばらくの間は、

 ほとんどの時間をお部屋で過ごすデートをしていたような気がします。



 彼に会えない雨の日は気持ちも下降気味だけれど、

 雨の日のデートは不思議と気持ちが和らぐから結構好きです。

 ゴルフシーズンが終わりそうな頃に彼と付き合い始めて、

 シーズンの間はずっとデートよりもゴルフを優先させるからと

 明るく強気の発言をしていた彼。

 それでも毎週一日は私のために時間を空けていてくれます。



 彼のことは別にしても、

 5年後や10年後を想像すると不安で心が押し潰されそうになります。

 昨日、電話を切った後にふと彼が以前言っていた言葉を思い出しました。

 世の中考えてもどうにもならないことが沢山あるから、

 将来を心配してあれこれ悩むよりも

 今の気持ちに正直に生きればいい…。

 彼は確かそんな風に言っていました。



 好きなだけでは結婚出来ないと言うけれど、

 好きな気持ちだけで一緒にいられるのが恋愛でしょう。

 だからこそ、一番大切にしなければならないのは彼を好きな今の気持ち。

 お互いの気持ちに揺るぎがなければ、

 私達はもうしばらく恋人同士でいられそうです。



2009年07月12日(日) 愛の受け皿


 私とあの人は悲しみを共有していたように思います。

 あの人はそれを意識していたのかどうか分からないけれど、

 私は出会った時からずっと負のファクターを通して

 彼に惹かれていると感じていました。



 今の彼とは楽しさだけを共有する関係です。

 私は彼に自分の悲しみを曝け出さないし、

 彼も私に対してネガティブなことは一切言わないのです。

 私はあの人に色々相談していたけれど、

 彼に対しては何も相談をすることはありません。

 そういう意味では同性の親友よりも遠い関係のような気もします。

 私は彼に精神的な負担をかけることを恐れます。

 私は彼には愛の受け皿が無いと分かっているから。



 今のところ、彼は私と一緒に居て楽しいし、

 私も彼と過ごす時間が楽しいから毎週会っているのです。

 楽しくなくなったら二人の関係は終わりでしょう。

 急に彼との別れが訪れても私は泣かないつもりです。

 あの人との7年間が今となっては幻だと思えるように、

 彼との月日も長い夢だったと思えばいいのです。



 久しぶりにあの人とのICQの履歴を辿ってみました。




↑エンピツ投票ボタン
 あの人は恋愛に向かない人なのだと今更ながら思います。

 あの人は本質的に女性に限らず人との付き合いが好きではないのです。

 あの人が本当に好きなのはお酒と本とネットと妄想なのです。

 長いこと私がそれに気付かなかったのは、

 私があの時期、一人では立ち上がれないほど悲しみに暮れていたから。

 私は長いこと本質から目をそむけていたのだと思います。



 人を愛せないという点において私とあの人は似ていたのだと思います。

 今の彼はきちんと女性を愛せる人だと思います。

 でも、私はその相手として相応しくないような気がします。

 多分彼もそれを知っていると思うのです。

 決して夢中にならない相手だと知っていて、

 いつでも手放すことの出来る相手だからこそ、

 安心して私と付き合っていられるのだと思います。



 私は彼と抱き合うことが好きだけれど、

 頭のどこかで快感をセーブしようとしている気がします。

 身体の関係にのめり込まなければ、

 離れるべき時にきちんと離れることが出来ると思っているから。



2009年07月11日(土) 雨の日の電話


 その日は朝からどしゃぶりの雨でした。

 仕事以外何の予定もない日だから、

 お天気が悪くても一向に構わないのだけれど、

 仕事前に少しだけ彼の声が聞きたくなってメールを送りました。




 しばらくして彼から電話がありました。


 「おはよう!^^

  凄い雨だね。」


 「ほんとですね。

  もうオフィスですか?」


 「今、車で向かってるところだ。

  今日はゴルフじゃなくて良かったよ。」


 「こんな雨でもゴルフなんてことあるんですか?」


 「今日、この雨の中、知り合いがコンペしてるよ。

  俺も誘われたけど、仕事で断って良かったよ。^^」


 彼と話している間にも、雨はますます激しく降っています。


 「お借りした台湾映画、観ましたよ。」


 「どう、良かった?」


 それから、しばらく彼とその映画の話をしました。




 先日のデートの時から彼の体調が気になっていたので、

 
 「身体に気をつけて下さいね。」


 と言いました。

 普通の人だったら、

 彼女に身体のことを心配されたら素直に受け取ると思うのだけれど、

 彼は年上扱いされることが嫌な様子で、


 「そんな言い方するのかよ。(笑)」


 と少し拗ねたように言いました。


 「だって、この前疲れた顔してたから。」


 「誰が疲れさせたんだよ。^^」


 「私じゃないですよ。

  だって会った時にはもう疲れた顔してたもん。」


 「大丈夫。俺、丈夫だから。^^

  それより理沙子こそ、喉大丈夫か?」


 「はい、もう平気です。」




↑エンピツ投票ボタン

 彼はよく私に大人しくしていろと言うのですが、

 私にはあまり良く意味が分からないので聞いてみると、

 仲良しの友達と遊んで騒ぎ過ぎないようにとのことらしいです。^^;




 電話を切った後、

 彼の声を聞くことが出来た嬉しさと

 すぐにでも会って甘えたい気持ちが入り混じって、

 しばらくぼんやりとガラス窓を伝う雨の雫を眺めていました。

 彼の温かな声を思い出しながら、彼にまた抱かれたいと思いました。



2009年07月10日(金) 男の気持ち


 彼に会うのはほぼ一週間ぶりでしたが、

 彼の顔はいつになく疲れているように見えました。


 「少し疲れているように見えるけど、大丈夫ですか?」


 「月曜日のゴルフでちょっと頑張り過ぎたからかも。」


 彼の仲間の中では一番レベルが高いというメンバーとのゴルフで、

 自己最高スコアを出したと嬉しそうに話す彼。

 それにしても最近の彼は忙し過ぎて、ゆっくり休む暇も無いのではと

 心配してしまいます。

 いつもは意識していないけれど、

 彼の疲れた顔を見るとつい彼の年齢と健康を気にしてしまいます。




 私が彼の車に乗るとすぐに、


 「今日は予定が決まらなかったから、

  クラシックのコンサートにでも行こうか?」


 と彼が言いました。

 この日はあいにくの雨で予定していたドライブは中止。

 朝の彼との電話でも何もプランが決まらなかったので、

 会う時までに考えておくと彼が言っていたのです。

 思いがけない彼の提案に私は喜んで、


 「嬉しい!!

  クラシックのコンサートって行ったことないんです。」


 と言いました。




 シティホテルの中の中華料理のレストランでランチをしてから、

 大きな本屋さんへ行きました。

 彼は以前から二人の会話に出ていた文庫本を探して、

 私に買ってくれました。

 その他に彼は新刊の小説の単行本を一冊と

 先週二人で観た映画のサントラのCDを買いました。




 コンサートホールはいつものホテルから

 歩いて10分ほどの所にありました。

 コンサートの時間までまだ時間があったので、

 私達はそれまでお部屋でのんびり過ごしました。

 抱き合った後に、私は彼の腕に抱かれたままお昼寝してしまいました。

 私が目覚めた時、彼は既に起きていました。

 彼はあまり眠らなかったようです。

 私はまだ少し眠かったので、


 「このままこうしていたいな…。」


 と呟きました。

 コンサートは当日券を買うつもりだったので、

 予定を変更することは可能でした。


 「もう一度したいの?」


 彼の甘い声が誘惑します。


 「どうしようかな…。」


 彼は携帯電話を開くと、

 来週以降のコンサートの日程を調べ始めました。

 私は折角その日誘ってくれた彼に悪い気がしてきて、


 「私、急いで着替えて来ますね。」


 と言ってベッドを離れました。




 コンサートホールの窓口で当日券を買った後、

 併設されているレストランで食事をしました。

 彼は私よりずっとクラシック音楽に詳しく、

 そのコンサートホールにも何度も足を運んでいました。




↑エンピツ投票ボタン
 木管アンサンブルの生演奏で聴くモーツァルトは素晴らしく、

 心が洗われるような時間を過ごしました。




 お部屋に戻ってから、もう一度彼に抱かれました。

 愛し合っている時も私達には会話があります。

 繋がっている時にはお互いに言葉を発し、
 
 彼が私の身体を愛撫している時には彼が私の耳元で囁きます。

 私が彼のものを愛している時に、


 「気持ちいい?」


 と彼に聞きました。


 「凄く気持ちいいよ…。

  男の気持ち、分かんないだろうなぁ…。

  俺も女の気持ち、分かんないけど…。」


 と彼が呟きました。




 帰りは彼が車で家まで送ってくれました。

 私が運転席の彼を見つめていると、


 「どうしたの?」


 と優しく言って、彼は私の左手を握りました。


 「どこまで送って行けばいい?」


 「おやすみのキスが出来る所。」


 「家の近所でキスはまずいでしょう。」


 「そうですね。我慢します。^^」


 信号が赤になった時、

 彼は私の左手を取ると指先に数回キスをしました。


 「これでいい?^^」


 「はい。^^」




 その日の彼からのおやすみメールには、

 私に観て欲しいと言っていた映画の放送予定日が書かれていました。

 彼が買ってくれた恋愛小説、彼に借りた台湾映画のDVD、

 そして彼のお薦めの映画の放送予定日が書かれたメール。

 これらのものは全て、

 彼に会っていない間も彼のことを想うためのものになるでしょう。



2009年07月06日(月) 依存


 暴力を振るう親の子供は、親になると子供に暴力を振るうと言います。

 それは育った環境のせいだけでなく、

 そういう気質を生むDNAが受け継がれるからなのだそうです。

 私の彼の父親は一度も子供に手を上げたことがないそうです。

 そして、彼自身も自分より弱い人間に手を上げることは

 生理的に出来ないことだと話していました。

 彼はきちんと言葉で自分の意見を言う人です。

 私に対しても嫌なことは嫌だとその場ではっきりと言います。

 私の今までの人生に関わってきた男性達は

 父親にしても、かつての夫やあの人にしても

 自分の考えや気持ちを言葉で伝えない人達でした。

 三人に共通して言えるのは母親に溺愛されて育っているということと、

 社会人になるまで、或いは社会に出てからも

 他人との結びつきよりも母親との関係の方が強かったということ

 でしょう。

 いずれも友達が少ない人達です。



 依存心の強い、子供のような人達ばかりと付き合ってきた私にも

 きっと何らかの責任があるのだと思います。

 地位はあるけれども精神的に未熟な父親を見てきたから、

 そういう種類の男性に対して免疫があるということも言えるでしょう。

 私には何年も元夫の暴力耐えることの出来る免疫があったのです。

 そして、私もまた心のどこかで相互依存を望むようなところが

 あったのだと思います。




↑エンピツ投票ボタン

 親にまともに愛されたことのない人間は

 他人を愛する資格など無いように思えるからです。



 頼ることと信頼することが全く違うように

 依存することと愛することは全く別のことです。
 
 彼と私の間にはある一定の距離があります。

 この距離を崩さずにずっと付き合っていくことが出来れば、

 私は今までより少しだけ大人になれるかもしれません。



2009年07月05日(日) 素直に表現出来るということ


 「あれは9月28日だったんだな。^^」


 先日のデートで食事をしていた時、

 私達が初めてのデートで観た映画の話になって、

 彼は思い出したようにその日付を言いました。


 「どうして分かったんですか?」


 彼はそういうことに無頓着だと思っていたので、

 不思議に思って聞いてみました。


 「10年日記をつけていて、この前それを見て分かった。」


 「Tさんも日記を書いているんですか?^^」


 「といっても毎日一行位しか書いていないけど。

  忘備録みたいなもの。^^」


 彼の10年日記がいつから始まっているのかは聞かなかったけれど、

 その10年日記の最後の頁の日まで

 彼の側に居られたらいいなと思いました。




 私が夜の食事の時にワインを少し飲み過ぎたので、

 ホテルに戻ってから椅子に座ってうとうとしていたら、


 「飲み過ぎたからだろう?

  俺に会えてそんなに嬉しいからなのか知らないけど。^^」


 と彼が言いました。

 私の気持ちはすっかり彼にばれていると思いました。




 二度目に彼に抱かれた後、彼は私に腕枕をしながら、


 「気持ち良かった…。」


 と呟くように言いました。


 「気持ちいいね…。」


 と私も彼に寄り添って言いました。

 言葉に出来ない幸せが私の身体を包みました。

 彼はいつもどんな風に感じているか

 言葉で、態度で、そしてセックスで表現してくれます。

 だから私もどんな風に感じているかを素直に表現出来るのです。

 それは簡単なことのようでいて、奇跡的なことなのかもしれません。




 彼は携帯電話を開いて、

 一週間後のデートのホテルの予約をしてくれました。


 「完了。」


 「ありがとう。

  来週晴れたら、またドライブに行きたいな。」


 「ああ、そうしよう。」


 それから、しばらく彼が黙っていたので、




↑エンピツ投票ボタン
 私はそれを聞きながら頭の中で、

 今度は何を着て行こうかなと考えていました。




 帰る頃にはアルコールがすっかり抜けていたので、

 彼が私を車で家まで送ってくれました。

 彼が家まで送ってくれると一人でタクシーで帰るよりも

 別れ際が寂しくならずにすみます。

 私が彼の車から降りて歩き始めると、

 彼の車がUターンして戻って来てクラクションを鳴らしました。




 家に着いてしばらくすると、彼からメールが届きました。

 今日も楽しかったと書かれていました。

 それから私の喉の調子を気にかけて、早く良くなって下さいと…。

 帰りの車の中では朝よりもひどくなっている私の掠れた声をからかって、

 ベッドで声を出し過ぎたからだなどと意地悪を言っていたくせに、

 本当は彼なりに心配してくれていたようです。

 既に岳と一緒にベッドで寝息をたてているかもしれない彼に

 私もデートのお礼とおやすみなさいのメールを送りました。



2009年07月04日(土) 彼と過ごす季節


 普段はよっぽどのことでなければ病院に行かない私だけれど、

 彼にうつしてはいけないと思い、彼に言われたとおりに病院へ行き、

 抗生物質のお薬を処方して貰いました。



 デートの前日、彼から珍しく甘いメールが届きました。

 
  会った時にまだ調子が悪いようだったら、

  いっぱい優しくしてあげるね。


 デート当日の朝の喉の調子は、前日よりは少しはましという程度。

 ハスキーな声のまま彼に会いに出かけました。



 インドカレーのお店でランチをした後、

 二人で観たいと思っていた映画を観ました。

 映画の後、シティホテルにチェックインしました。

 お部屋に入ると、彼はベッドの上に座って、


  「こっちにおいで。」


 と私を呼びました。

 それからしばらくベッドの上で、

 彼と服を着たままキスしたり、お喋りしたりしました。



 この日は彼も私もいつもと少し違っていたような気がします。

 もしかしたら私の掠れた声のせいかもしれません。




↑エンピツ投票ボタン
 それは私にとって生まれて初めてのことでした。

 私はその瞬間、彼に対する愛おしい気持ちが込み上げて、

 果てた後もしばらくずっと彼の背中に腕を回して抱き締めていました。



 その夜、食事に出かけたレストランで、

 彼は私達のセックスのことをストレートに言いました。


 「今日は凄く良かったよ。」


 「いつもと違う声のせい?^^」


 「それは関係ないと思う。」


 それから、彼は10月になったら二人で旅行に行ける時間が取れそうだ

 と言ってくれました。

 彼がわざわざそういう先の予定を口にするのは、

 ほぼ確定していることだから…。

 
 「その頃になったら涼しくなっているから、

  温泉に行くのもいいだろう?」


 「嬉しい!一泊ですか?」


 「多分二泊位出来ると思うよ。^^」


 まだ夏も始まったばかりなのに、

 秋が来ることを楽しみにしているなんて素敵なことだと思いました。



2009年07月01日(水) ストレス


 彼に薦められた映画の感想を書いたメールを送ったら、

 しばらくして返信がありました。

 電話が欲しいという内容だったので、すぐに彼に電話をしました。




↑エンピツ投票ボタン
 と言いました。


 「今朝からひどくなったんですよ。」


 「病院には行ったのか?」


 「いえ、行ってないです…。熱とかの症状は無いし。」


 「無理して喋らない方がいいな。」


 「はい、そうします。^^;」


 「可哀相に。^^」


 「会った時は優しくして下さいね。」


 「大人しくなってちょうどいいな。^^」


 「ひどいじゃないですか!!」


 「ひどいのは、そっちの声だろ。^^」


 「どうしよう。Tさん、ガラガラ声は嫌でしょ?」


 「それはガラガラ声じゃないよ。ハスキーな声だ。

  嫌じゃないけど、笑っちゃうよ。(笑)」


 「もう!!

  今度会う時まで絶対に治します。」


 「あの時に凄い声が出るんじゃないか。^^」


 「何されても声が出ないと思いますよ。^^;」




 結局、薬を飲んだり、のど飴を舐めたりしたのですが、

 今になっても声はハスキーなまま。

 話すと喉が痛みます。

 私達のデートは会話が基本なので、声はとても大事。

 話せないとストレスがたまりそうです。

 しばらくは睡眠時間をたっぷり取って、

 会う日までに喉を治したいと思います。


 < 過去  INDEX  未来 >


理沙子

My追加