こうして私はあなたを好きになった
綴りたいのは残された言葉、なつかしい匂い、
揺れる気持ち、忘れられない感触

2009年05月31日(日) 感染


 抱き合った後、

 ベッドの枕の方に私、

 そして何故か足元の方に彼がいて、

 ぼんやりテレビを見ていると、


 「理沙子〜。足の裏揉んで。^^」


 と両足を私の方に向けて、彼が言いました。



 私は彼のリクエストを聞きながら、

 彼の足の裏をマッサージしました。


 「気持ちいいよ。

  理沙子って握力あるね。」


 「そんなことないと思うんですけど…。^^」




↑エンピツ投票ボタン

 「うふふ、そうなんですか〜。^^;」


 「ああ〜、そこ気持ちいい。

  理沙子、マッサージ上手いよ。」


 彼はおだてるのが上手です。^^


 「じゃあ、マッサージのお店で働こうかなぁ。

  そうしたら、特別サービスしてあげますから来て下さいね。^^」


 「お金払ってしてもらうのは嫌。(笑)」



 彼は外では私をしっかりエスコートしてくれる大人の男の人だけれど、
 
 二人っきりになると結構甘えん坊だったりします。

 私は今まで男の人に依存されたことはあっても、

 そんな風に甘えられたことはありませんでした。

 私は彼に膝枕したり、マッサージしてあげることが好き。

 彼の嬉しそうな顔を見ることが出来るからです。



 彼と私がお部屋で二人っきりになると、

 笑顔も心地良さも時には切なさもあっという間に感染してしまいます。

 それはお互いの呼吸が聞こえるほどに、

 私達がずっとくっつき合っているからでしょう。



2009年05月30日(土) 共有


 旅行から帰って来て5日ぶりに彼に会いました。

 たった5日間のインターバルなのにとても新鮮に感じるのは、

 その間にお互いほとんど連絡を取り合っていなかったから…。


 私達は会っている間はずっと話をしています。

 話をしないのは映画館で映画を観ている時ぐらいかもしれません。

 あとは食事の時も車の中でも抱き合っている時さえも

 言葉を交わさないことは無いから。




 私が最近見つけた美味しいお蕎麦屋さんに初めて彼と行きました。

 鴨せいろと卵焼きを頂きました。

 彼は気に入ったお店だと気軽にお店の人と話をしたり、

 お料理やお酒について質問したりします。

 そして、どこのお店も彼と一緒に行くと対応がいいのです。^^

 彼の馴染みのお店ならともかく初めてのお店でもそうなのだと

 最近気付きました。




 お蕎麦屋さんを出てから車でレンタルショップへ向かう途中に

 有名なショコラティエのお店がありました。

 お店を通り過ぎる時に


 「最近新しくなったみたいなんだよ。行きたい?」


 と彼が私に尋ねました。


 「もう通り過ぎちゃったから、今度でいいですよ。^^」


 「本当は行きたいんだろう?(笑)

  そういう顔してる。^^」


 彼はそう言って車を引き返しました。



 店内はとても新しく広々としていて、

 ケーキやチョコレート、マカロン、焼き菓子などが

 美しく並べられていました。

 お洒落なカフェも併設されていました。

 私がフルーツのタルトとプリン、

 彼がチョコレートのムースを選びました。^^



 DVDを借りるためにレンタルショップへ行きました。

 お喋りしながら、ゆっくり店内を見て回った後、

 二人で観るための邦画を1本と

 彼が一人で観たい洋画を1本レンタルしました。



 5日ぶりに彼と抱き合った後、借りてきたDVDを観ました。

 二人で観たいと思って選んだ映画だったのに、

 彼は音声が聞こえにくいと言って途中で寝てしまいました。


 彼がお昼寝から目を覚ましたのは

 豊川悦司と寺島しのぶが焼肉を食べているシーンの時でした。

 
 「急に焼肉が食べたくなって来た!!」


 起きるなり、彼が言いました。(笑)




 映画のシーンに感化されて、夜は焼肉を食べに行きました。^^

 私達はカウンターに座って赤ワインを飲みながら、

 赤身、ホルモン、ラムなど次々出されるお肉を美味しく頂きました。

 お店のシェフと彼と私でお喋りしていた時、


 「話をしながら食事する方が料理が余計に美味しく感じるよね。」


 と彼が言いました。


 「Tさんのお家はそうだったんでしょう?

  私の家は父が食事中は話をするなっていう人だったからなぁ。

  そんな習慣って日本だけでしょう?」


 「確かに口の中に物が入っている時に話をするのはマナーが悪いけど、

  そうじゃない場合は全く問題ないと思うけどね。」


 彼と共に食事をすることがとても楽しいと感じるのは、

 彼と私が二人とも食べることが大好きだからということだけではなく、

 美味しいお酒とお料理があれば二人の会話が一層弾むからでしょう。




 この日の夜、ベッドで彼と抱き合いながら、

 彼は私の耳元で何度も大好きと囁きました。


 「私とこういうことするのが好きなの?

  それとも私が好きなの?」


 吐息混じりに彼に尋ねました。


 「両方。^^

  理沙子は?」


 「私も両方。^^

  でも基本的にはTさん自身が好き…。」


 「自分ばかりいい子ぶって…。^^」




 身体を離した後、彼が私に腕枕しながら静かに呟きました。


 「あと、もう少しだな…。」


 それはあともう少しで

 彼と繋がっている時に私がいけるようになるだろうという意味でした。


 「一緒にいきたいけど、いきたくない…。」


 「どうして?」


 「だって、もしそうなったら離れられなくなりそうだから…。」


 何故あの時そんな風に言ったのか自分でも分からないけれど、

 私は言葉を続けました。


 「9月の末までは一緒にいようね。」


 「どうして9月の末なの?」


 「それでちょうど一年だから。

  私、それまで貴方といけるようになるかな。」


 「どうして、そんな風に決めるんだよ。

  あともう一年って思えばいいだろう?」


 「だって…キリがないでしょ。

  いつかは終わりにしなきゃいけないんだから…。」


 私の気持ちはいつになく冷静でした。


 「Tさんのセックスって相手が変わっても変わらないんですか?」


 「どういう意味?

  考えたこと無いけど、そんなに変わらないんじゃない。」




↑エンピツ投票ボタン
 私は彼の表情を見なかったので、

 彼がどんな気持ちで私の言葉を聞いていたのかは分かりませんでした。


 「朝になったら、またしたいな…。」


 「また、旅行に行こう。

  そしたら朝も出来るだろう?」


 「また、連れて行ってくれるの?」


 「ああ。

  また行こう。」


 私は嬉しくなって彼の顔を見ると、


 「ほんと?どこに連れて行ってくれるんですか?^^」

 
 とはしゃいで彼に尋ねました。


 「全く。^^;

  どこどこってすぐにそんな風に言わなくてもいいだろうが。

  色気無いなぁ。」


 「あはは…。

  だって嬉しかったんだもん。^^」




 この後、彼はしばらく寝息を立てて眠っていました。


 「もう、帰るね。」


 遅い時間になったので私がベッドを離れようとすると、

 彼は後ろから私を抱き締め、再び私を自分の方へ引き寄せました。


 「帰るなよ。」


 何度私が帰ろうとしても、その度に彼に引き戻されてしまうのでした。

 そのうち彼も諦めて腕の力を緩めたので、


 「もし、私が本当に帰りたくないって言ったら、

  困るのはTさんでしょう?」


 と言って、私はベッドを離れました。




 シャワーを浴びてワンピースに着替えてから、

 既に身支度を終えていた彼の前に立つと、

 彼は私を抱き締めて床から5cm位持ち上げました。


 「重い。(笑)」


 と彼が大袈裟に言いました。


 「ひどいなぁ。

  じゃあ、お姫様抱っこは無理ですね。」


 「ゴルフが出来なくなるから今は無理。

  冬になったらしてやるよ。^^」


 彼は今年の冬も私と一緒にいると思っているようでした。




 二人きりのエレベーターの中で、

 彼は手を伸ばすと私の胸に触れ、

 それから私を引き寄せキスをしました。

 いつも別れ際に感じる切ない気持ち。

 でも、その気持ちを彼と共有していると感じるだけで、

 少しは優しい気持ちになれるのでした。 



2009年05月29日(金) 美しい風景と彼の笑顔


 ホテルをチェックアウトしてから、山の方へドライブしました。

 カーブの多い山道のドライブで少し酔ってしまったので、

 山の頂上で車を止めて、外に出ました。

 相変わらずの曇り空でしたが、かろうじて雨は上がっていました。


 「大丈夫?」


 「はい、外に出たらだいぶいいです。」


 とは言ったものの、私の顔色は青白かったに違いありません。

 彼は私の顔を心配そうに見ると、真面目な顔で、




↑エンピツ投票ボタン

 あまりにも突飛な冗談(?)に私が大笑いしたら、

 彼は赤くなっていました。^^



 山から下りてきて、なだらかな土地を走り出すと、

 私の気分も次第に良くなってきました。

 小さな丘の上にあるコテージのような可愛いカフェで、

 少し遅めのランチをしました。

 携帯電話のカメラで店内やお料理の写真を撮っていたら、

 目の前に座っている彼のことも撮りたくなって、

 思わずシャッターを押しました。

 撮った画像を彼に見せたら笑顔で承諾してくれたので、

 その場でしっかり保存しました。^^



 お店を出てから天然温泉に行こうかという話もあったのだけれど、

 結局そのまま高速道路を使って帰って来ました。

 高速道路に入るなり、激しい雨が降り出しました。

 旅の疲れで私は少し眠くなっていたけれど、

 私が寝るとドライバーの彼も眠くなってしまうと思い、

 彼に心理テストを出したりして車の中ではずっとお喋りしていました。



 市内に着いてから、シティホテルの中のスパに行きました。

 それぞれ入浴を終えてから、

 ラウンジのデッキチェアに座ってお喋りしました。

 私達が昼間ランチのために立ち寄ったカフェの話になりました。

 見渡す限り何も無いような大自然の中にある小さなお店です。

 そのお店を営むご夫婦について、

 
 「理沙子はああいう所に住めると思う?」


 と彼が聞きました。


 「パートナーが面白い人なら住めるかもしれないです。

  Tさんは?」


 「俺は絶対無理。(笑)」


 予想通りの答えが返って来ました。



 ホテルを出た後、彼は留守番をしていた愛犬の岳にご飯をあげるために

 一度家に帰りました。

 その後、彼ともう一度待ち合わせをして、

 おでん屋さんに飲みに行きました。



 彼と別れて家に着いてから、

 旅行中に撮った画像を3枚添付して彼にお礼のメールを送りました。

 お土産は何も買わなかったけれど、

 旅先で撮った何枚もの画像が私の宝物です。



 あれから一週間が経ちました。

 私達は慌しい日常の生活に戻ったけれど、

 携帯電話を開けばいつでも

 旅行中に出会った美しい風景や

 彼の優しい笑顔に出会うことが出来ます。



2009年05月28日(木) 曇り空


 早朝、浅い睡眠から目覚めました。

 すっきりするためにバスルームでシャワーを浴びました。

 真紅のキャミとショーツを着けてお部屋に戻ると、

 彼はまだ寝息をたてて眠っていました。

 窓際へ行き、カーテンの隙間から外を見ると、

 今にも雨が降り出しそうな曇り空が広がっていました。


 「どうしてそんなに早く起きるの?」


 寝起きの彼の掠れた声が聞こえました。


 「ごめんなさい。

  あまり眠れなくて…。」


 「天気はどう?」


 「今日もあまり良くないみたい。」


 ベッドに戻り、彼の腕の中に潜り込みました。

 彼の温もりを感じると、私は再びうとうとと眠くなり、

 それからしばらく彼の浅黒い腕の中でまどろんでいました。



 それからどれくらいの時間が経ったでしょう。

 バスルームから聞こえるシャワーの音で私は目が覚めました。

 間もなくして彼はベッドに戻って来ると、

 優しくキスをしながら、私の胸元に指を滑らせました。

 それから私の右手を取ると、彼のものを握らせました。

 彼のものが少しずつ、

 私の掌の中で硬くなっていくのが分かりました。

 リゾートホテルの壁は薄く、

 朝から恥ずかしい声を漏らすことはためらわれました。


 「今日も天気が悪くて良かったよ。」


 「また、そんなこと言って…。^^」


 「部屋の中で理沙子とずっとこうしていられる…。」


 今回は二人の旅行のために

 彼は貴重な時間を空けることが出来たけれど、

 また今度いつこんな旅行が出来るかなんて誰にも分からないことでした。



 愛し合った後も

 彼は私を抱く腕を解こうとはしませんでした。




↑エンピツ投票ボタン
 そんな風に言うくらいなら、この先ずっと離さないで…。

 私は心の中でそう思ったけれど、

 ネガティブな想いは胸の奥にしまい込み、

 彼の厚い胸にキスをしました。



2009年05月27日(水) 刻まれた記憶


 スパからお部屋に戻って来て、

 私達はそのまますぐにベッドに入りました。


 「これ、早く脱いで。」


 私が彼に可愛くないと言われたスウェットを脱ぐと、

 身に着けていたブラとショーツもあっという間に剥ぎ取られました。

 私達は素肌を合わせ、貪るようにキスをしました。



 翌朝、目覚めた時に、

 前の晩に彼に抱かれたことは身体がはっきり覚えていたのだけれど、

 何時頃、どんな風に愛し合ったのかは

 おぼろげにしか思い出すことが出来ませんでした。



 ただ記憶の片隅に残っていたのは、

 愛し合った後に交わした映画の話だけでした。

 その映画は、

 日本占領下の上海で抗日運動に身を投じる若く美しい女スパイが

 敵対する特務機関のリーダーに近づき、

 危険な逢瀬を重ねるうちに互いに激しく求め合うようになり、

 悲しい運命に翻弄されていくというストーリーでした。

 結局、女は男に惹かれ過ぎたために自分の立場を見失い、

 男の命を救うために自分の身分を男に知らせてしまうのでした。


 「あの男は女を本当に愛していたの?」


 私は彼に聞きました。


 「そうだよ。」


 「愛していたのに、

  彼女の素性を知った時に何故彼女を殺したの?

  愛じゃなくて欲望だけだったのでは…と私には思えてしまったの。」


 「それはあの時代と状況の中でなければ分からないことだよ。

  生きるか死ぬかの極限状態でのエロティシズムなんだろう。」




↑エンピツ投票ボタン
 でも、私は彼にそれ以上は尋ねませんでした。

 彼は会う度に私を求めるけれど、

 それが愛なのかどうかを確かめることと

 同じ意味になるような気がしたからです。



 心とは別に身体に残る記憶というものがあります。

 あの映画の男女のように、

 決して忘れ去ることが出来ないような記憶を互いの肉体に刻み込めば、

 その繋がりが精神的な愛を超えることもあるのでしょうか。



2009年05月26日(火) 夜の静けさと木々の匂いと…


 お部屋に戻ると、

 彼が部屋の明かりを全て消して、私を窓際に呼びました。

 山の中腹にあるホテルの高層階の窓から小さな町を見下ろすと、

 昼間は山と緑ばかりに思えた田舎町にも

 人の営みを表す幾つもの白い灯が見えました。

 たった二日間だけれど、

 都会の喧騒を離れて彼と二人きりで過ごせることが

 とても贅沢に感じられました。



 ホテルのスパへ行くために

 お部屋に備え付けのスウェットスーツに着替えていたら、


 「理沙子、それ、下は穿かない方がいいぞ。

  可愛くないから。(笑)」


 と彼が言いました。


 「あら、そう?^^

  体育会系の男の人ならこういう格好に萌えるのかと思いました。(笑)」


 「俺はそういうの全然だから。(笑)」


 「高校でバスケ部の主将だった時に、

  女子バスケ部のジャージ姿に萌えたりしなかったんですか?^^」


 「ぜ〜んぜん!!

  今でも滅茶苦茶うるさい奴とかいるんだよ。

  そういう奴っていつまでも性格変わんないのな。^^」


 彼は今でも高校の男女バスケ部のOB・OG達と交流があります。


 「Tさんは運動神経の鈍いインドアタイプが好きなんだものね〜。^^」


 「それ、自分のこと言ってるのか?(笑)」


 「高校の初恋の人がそうだって言ってたでしょ。だから。(笑)」


 可愛くないと言われつつも、お揃いのスウェットスーツに着替えて、

 二人でスパに出かけました。

 スパへ続く長い通路を歩きながら、彼とお喋りしました。

 翌週の火曜日のゴルフの話になったので、


 「今まで、火曜日って会ったことないですね。」


 と彼に聞きました。

 
 「火曜は毎週オーナーの定例会があるんだよ。」


 簡単に言うと、定例会という名の飲み会だそうです。^^


 「そうなんですか。

  これで謎が解けました。(笑)」


 「今度、理沙子も一緒に来るか?^^」


 「私なんかが行っちゃ駄目でしょ。^^」


 勿論行くつもりはないけれど、

 冗談半分でも彼が誘ってくれたことを嬉しく感じました。




 スパで分かれて入浴した後、ラウンジで待ち合わせをしました。

 私がラウンジに来て彼の姿を探していると、

 彼がオープンテラスから私を見つけて呼びました。

 彼は私を待つ間、オープンテラスのデッキチェアに座って、

 ビールを飲みながら文庫本を読んでいたようです。

 私もカウンターで飲み物をオーダーして、彼の所に行きました。

 屋外に出ると、湯上りの火照った肌に

 ひんやりとした夜の空気が心地よく感じられました。

 サイドテーブルに林檎ジュースを置いて、彼の隣に座りました。


 「静かですね。」


 「雨が降っていたから、音が吸収されて余計に静かなんだよ。」


 「うん。」


 「意外に寒くないだろう。」


 「うん…。ひんやりして気持ちいい。」


 「なかなかこういうホテルってありそうで無いだろう?」


 すぐ近くに自然を感じられるホテルという意味で彼が言いました。

 デッキチェアにのせている素足のすぐ先には深い木立が見えました。


 「本当ですね。

  緑のいい匂いがする…。」


 「さっきから、ここで俺一人だったんだよ。

  寒いと思って誰も出て来ないんだ。^^」


 少し遅い時間だったからでしょうか。

 オープンテラスには私達だけ。

 ラウンジの中も僅かなお客さんが出入りするだけでした。

 私達は二人のグラスが空になるまで、そこに座ってお喋りしていました。



 私は今まで彼のように気持ちや考えを言葉で明確に表す男の人と

 付き合ったことがありませんでした。

 彼には冗談を交えながら陽気に話をする時と

 まるで独り言のようにポツリポツリと静かに話をする時があります。

 私の自惚れかもしれないけれど、

 後者の彼は彼が本当に心を許した相手にしか見せていないような

 気がするのです。

 だから、静かにゆっくりと話す彼の言葉を聞いていると、




↑エンピツ投票ボタン
 私は隣に座っている彼の方を見て、


 「連れて来てくれて、ありがとう。^^」


 と言いました。

 いつものように彼は何も答えなかったけれど、

 彼の優しい表情で私の言葉が彼に届いていることが分かりました。



2009年05月24日(日) 初めての旅行


 週末、彼と初めての旅行に出かけました。

 二日間ずっと、朝から晩まで彼と一緒に過ごすことが出来て幸せでした。



 初日はお昼過ぎに現地に着きました。

 一週間前から二人で週間天気予報をチェックしていたのに、

 予報が外れて当日はあいにくの雨。

 彼はドライブの予定を変更して、

 以前行ったことがあるという、その土地を愛した日本画家の美術館へ

 連れて行ってくれました。

 美しい自然を見渡すように小高い丘の上に建てられた美術館は、

 とんがり屋根の素敵な建物でした。

 併設されているレストランで、

 地元の野菜をたっぷり使った美味しいランチを頂きました。

 彼は国内や欧米の数多くの美術館を訪ねたことがあって、

 自分でも幾つかの絵を持っている人です。

 そんな彼と絵を見ることは私にとってとても楽しく、勉強になります。

 彼と話をしながら、一つ一つゆっくりと館内の作品を見ました。




 3時過ぎに山の中腹にあるリゾートホテルにチェックインしました。

 ダブルルームの窓からは美しい山々を眺めることが出来ました。

 雨のせいで少し肌寒かったので、

  
 「早くスパに行きたい。」


 と私が言うと、彼が


 「一汗かいてから行こうよ。」


 と言いました。




↑エンピツ投票ボタン


 バスルームで熱いシャワーを浴びた後、

 彼に抱かれました。


 「昼間から恥ずかしい…。」


 「恥ずかしくないよ。二人だけなんだから。」


 お互いの汗と体液が交じり合って、

 あっという間に真新しいシーツを濡らします。


 「気持ちいい…。」


 快感が高まって、思わず声を上げると、


 「ゆっくり気持ち良くなって。

  時間はいっぱいあるんだから…。」


 と彼が優しく言いました。


 ドライブの途中、ずっと美しい大自然を見て来たせいでしょうか。

 都会のシティホテルで抱かれる時とは違う

 リラックスした気持ちで彼と抱き合いました。




 愛し合った後、ベッドでまどろんでいると、


 「レストラン、フレンチと和食があるけどフレンチでいい?」


 と彼が夕食について尋ねました。


 「はい。^^」


 彼は私に腕枕しながら、ベッドサイドの携帯電話を取ると、

 ホテルのメインダイニングルームにディナーの予約を入れてくれました。




 ホテルの最上階にあるアーチ型のメインダイニングルームは

 両側が一面ガラスのパノラマビューになっていて、

 山の景色が間近に見られるようになっていました。

 私達のテーブルはちょうどレストランの中央にあって、

 黄昏時の淡い山肌から

 漆黒の闇にライトアップされて浮かぶ幻想的な表情まで、

 食事をしながら眺めることが出来ました。

 彼がオーダーしてくれた赤ワインを飲みながら、

 レストランお薦めのコース料理を時間をかけてゆっくり頂きました。


 「車の中で聞いていたCDいいですね。^^」


 彼は今回の旅行に

 色々なアーティスト達がそれぞれのアレンジで

 ビートルズの曲を歌っているCDを持って来てくれました。


 「あれ、あげるよ。」


 「そんな…いいですよ。自分で買うからタイトルを教えて下さい。」


 「あれはあげないけど、買って来てやるよ。^^」


 「自分で買うからいいですよ。」


 彼がちょっと困ったような顔をしました。

 私は彼の手に自分の手を重ねて、


 「あっ、分かりました。

  じゃあ、買って下さい。^^」

 
 と素直に言いました。




 レストランを出た後、彼が少し散歩しようかと言いました。

 ホテルのエントランスを出て少し歩くと、そこには小さな門があって、

 門の向こうには幾つもの小さな灯りが見えていました。

 可愛い門をくぐるとそこは童話の中に出てくる小さな村のようでした。

 丸太が敷き詰められた遊歩道には、

 小さなお店がコテージのように点在していました。

 ログハウスの形をした全ての店舗は、

 クリスマスのデコレーションのようにライトアップされていました。

 ほとんどのお店が既に営業を終えて、辺りはとても静かでした。

 雨に濡れた丸太は滑りやすくなっていました。

 彼はそっと私の手を繋いでくれました。


 「こういうの…照れるね。」


 本当に照れた様子で彼が言いました。

 彼にはこういう可愛いところがあります。^^


 「Tさんも照れるなんてことがあるんですね。^^」


 「だって、あまりにも完璧過ぎるシチュエーションでしょ。」


 「うふふ。」


 遊歩道を歩いているのは私達だけでした。

 
 「俺達、ここに似合ってるかなぁ。(笑)」


 「似合ってなかったら嫌ですよね。(笑)」


 彼自身は意識していないかもしれないけれど、

 彼の言葉はいつも私を幸せにします。

 あの夜、童話の中の小さな村で私達は二人っきりでした。

 誰も見ていないそんな場所で彼が照れるなんて意外でした。

 もう既に何度も抱いている私の隣で、しきりに照れている彼。

 そんな彼が無性に愛おしく思えるのでした。

 空は雨雲で霞んで星一つ見えなかったけれど、

 あの時の彼の言葉や仕草はいつまでもきっと忘れないでしょう。



2009年05月19日(火) 愛してるなんて言えない


 人の日記を読むと、人の恋が客観的に見えます。

 誰かの恋が私にはただの欲情に見えたり、

 誰かの永遠の愛が私には恋の季節に見えたりします。

 そして、ここに書くことによって、

 私は彼や私の言葉、行動、気持ちを客観的に見つめることが出来ます。

 この日記を初めからゆっくり読んだ後に私の想いを分析してみました。

 私の想いの成分は恋心と欲情が半分ずつ。

 愛という領域とは幾分離れた感情のように思えます。




↑エンピツ投票ボタン
 それは、私の想いよりももっと愛という領域には程遠いようです。

 私は二人の気持ちのアンバランスを垣間見る度に

 戸惑ったり、切なくなったり…。 

 けれど、彼には戸惑うことも切なくなることもないように思えるのです。




 お互いに心地よくこの関係を続ける術は、

 私が彼に二人の気持ちのギャップを

 埋めて欲しいと望まないことでしょう。

 二人の気持ちが愛という領域から離れている以上、

 お互いの想いの成分が幾らか違っていても

 今この時だけを大切にしている私達の関係に変わりはないから…。



2009年05月18日(月) 意地っ張り


 土曜日の夕方、彼と映画デートをしました。

 私がシネマコンプレックスに着いた時、

 彼は既に二人分のチケットを買って私を待っていました。

 ディナータイム前の約2時間というのは、

 恋人達が映画を観るのに最適な時間帯だと思うのに、

 私達の入ったシアターは信じられないほど空いていました。




 映画を観終わって、エレベーターに乗る前に




↑エンピツ投票ボタン
 「えっ…。」


 私は驚いて、一瞬言葉を失いました。


 「今日は初めからそのつもりだっただろう。

  理沙子がそう言ったんだから。」


 確かに映画を観ることを最優先したかったから

 真面目な映画デートをしようと彼にメールをしたのは私だけれど、

 食事もしないで帰るなんて思ってもいませんでした。

 当然映画の後はその作品について

 彼とお喋り出来ると思っていたのです。

 彼もそれを楽しみにしていると思っていたのに…。

 私が何と言っていいのかわからずにいるうちに、

 エレベーターは駅に繋がっている一番下の階まで降りていました。


 「食事だけでも一緒にしませんか?」


 彼は既に映画の後に他の予定を入れていると言ったので、

 私は無理を承知で言いました。

 考えてみれば、今までにもこういうことはあったのです。

 彼にDVDを返した日はそのまま車で家まで送ってもらっただけでした。

 あの時はすぐに気持ちを切り替えられたのに、この時は駄目でした。

 彼は少し困った表情を見せながらも仕方が無いなぁという様子で、


 「何が食べたい?」


 と私に聞きました。




 結局、映画館の近くの天麩羅屋さんに入りました。

 私は彼に申し訳ないような複雑な気持ちでいました。

 同時に、私が彼に対して少しずつ我侭になっていることを

 はっきりと知らされたような気がしました。


 「映画を一緒に観て食事にも来たのに、

  そんな顔されたら、俺、嫌なんだけど。」


 「ごめんなさい。

  私、どんな顔してましたか?

  何だかTさんに悪いことしちゃったと思ったから。

  本当は帰るべきだったのにね。」


 彼は嫌なことは嫌だとはっきり言う人です。

 でも一言言ったら後になってごちゃごちゃ言わない人だということも

 半年の付き合いでよく分かっています。



 その後はいつもの私達に戻って、

 観たばかりの映画や彼の仕事のことなどについてお喋りしました。

 彼は私にビールを勧めたけれど、

 彼はこの後、車に乗らなければならなかったのでお酒も飲めず、

 彼に食事を付き合わせてしまったことを悪く思いました。 

 そんな気持ちだったので、

 この時はほとんど大人しく聞き役に回っていました。^^


 「ここの天麩羅より前行った店の方が美味しいだろう?」


 彼は少し声を潜めて、以前ランチで行ったお店の話をしました。


 「あのお店、美味しいですよね。

  でもここのも美味しいですよ。」


 「夜、カウンターで目の前で揚げてもらうと美味しいんだよ。

  今度行こう。^^」


 「はい。^^」




 お店を出てからエスカレーターで降りる時に、

 彼が後ろを振り向いて、


 「今日は健全なデートだったね。^^」


 と笑って言いました。


 「ほんとですね。

  また今度こんなデートしましょうか。

  たまにはこういうのもいいですね。^^」


 私が精一杯の痩せ我慢をして言うと、

 彼は笑いながら私の目を見て、


 「いや、あんまり良くない。^^」


 と言いました。




 彼と素っ気無く別れてからすぐに、

 映画と食事のお礼のメールをしました。

 夜寝る前に彼がおやすみメールをくれたので、


  やっぱり健全デートはもうやめようね。


 と今度は正直な気持ちを打ち明けました。


  わかったよ。

  そうしましょう。

  おやすみなさい。^^


 私が意地を張っていたことなど、

 きっと彼にはお見通しだったことでしょう。



2009年05月17日(日) 季節はまた巡り


 去年の10月、美しい雁の群れを見た帰りに彼が連れて行ってくれた

 ワインと串焼きのお店に行きました。

 私が彼に恋をしているとはっきりと自覚したのは、

 去年のあの日だったように思えるのです。

 あの日と同じように彼が全てのお料理を注文し、

 全てのお皿を二人でシェアして頂きました。

 あの日は私が早々に酔ってしまって涙もろくなっていたから

 お料理の美味しさが十分に味わえなかったけれど、

 今回は〆のガーリックライスとデザートまで

 とっても美味しく頂きました。

 あの日、ワイン2杯で酔っていた私が、

 最近では彼と同じペースで飲めるようになったのだから、


 「理沙子は本当にワインに強くなったよな。」


 と彼に言われるのも無理はありません。



 私の白い肌はアルコールで赤くなりやすいのですが、

 ワイン色に染まった私の手の平を見せていたら

 彼も自分の手の平を見せました。

 以前同じようにお互いの手の平を見せ合って気付いたことだけれど、

 私達の手相は両手ともとてもよく似ているのです。

 その話から色々な想いが私の胸に蘇ってきました。

 このお店の美味しいワインとお料理は私を涙もろくさせるようです。
 


 お店を出て、彼がタクシーを拾いました。

 私の目はわずかに潤んでいました。

 私は彼にそのことを気付かれたくなくて、

 タクシーの中でずっと窓の外を見ていました。

 その時はどうして涙が出るのか自分でも分からなかったけれど、

 拭ってもまた新しい涙が零れ落ちるのでした。

 彼は黙って私の右手をずっと握っていてくれました。




 お部屋に戻ると、


 「まったく…。

  泣くからもうあの店には連れて行かないぞ。」


 と彼が優しい声で言いました。

 彼は服を脱ぐと先にシャワーを浴びました。

 私がバスルームを出てダブルベッドの中に入った頃には、

 彼は既に寝息を立てて眠っていました。

 きっと朝から早起きしてゴルフした後のデートだったから

 疲れていたのでしょう。

 私も眠っている彼の隣に寄り添って、

 彼の体温を感じながらまどろんでいました。

 ただそんな風にしているだけで温かいと感じられる人に

 私は今まで出会ったことが無いような気がしました。

 初めて恋を意識したあの日に行ったお店を再び訪れ、




↑エンピツ投票ボタン

 深夜0時を回ってそろそろ帰る支度をしようと思っていた時に、

 彼が目を覚ましました。

 私達はどちらともなく求め合い、愛し合いました。

 多少の眠気と酔いが羞恥心を消すのでしょうか。

 或いはこのまま離れたくないという気持ちが募るからでしょうか。

 私の身体はその日初めて抱かれた時よりももっと感じていました。



2009年05月16日(土) 優しい時間


 ゴルフから帰って来た彼が

 いつもの場所に車で迎えに来てくれました。

 シティホテルのお部屋に入ると彼はすぐに、


 「理沙子、ビール取って。」


 と言いました。



 近くのコンビニで買って来たばかりの缶ビールを

 彼はグラスについで一気に飲み干すと、


 「やっと飲めた〜。^^」


 と言いました。


 「今日はゴルフ、どうでしたか?^^」


 「勝ったよ。^^」


 「良かったですね〜。^^」


 それから、彼は携帯電話から映画館のサイトにアクセスしました。


 「理沙子はいつがいい?」

 
 彼は私の都合を聞きながら、

 一緒に観ようと話していた映画の上映時間をチェックしました。

 あっという間に映画を観に行く日時が決まりました。




 「今日の夜、○○予約しておいたから…。」


 彼はその日私に会うまでの時間に、

 私がずっと行きたがっていた串焼きのお店に

 予約の電話をしてくれていたようです。


 「わっ、凄く楽しみ〜。

  初めてあのお店に行った帰りに、

  Tさんに抱擁されたんだっけ。^^」


 「それっていつだっけ?」


 「覚えてないんですか?^^;

  雁を見に行った帰りですよ。」


 「覚えてるよ。^^」


 「私が大泣きした日ですよ。」


 「覚えてるよ。^^

  それって去年?今年?」


 思わず絶句してしまいました。


 「去年の秋ですよ!!

  他の人とのこととごっちゃになってるんじゃないですか?」


 私が憤慨するのを見て、彼は楽しそうに笑っています。




 それから、彼は私の膝を枕にして、

 長いソファに横になりました。


 「あ〜、こうすると気持ちいい。^^」


 「うふふ…。^^」


 私の膝枕で彼は色々なことを話し始めました。

 ゴルフの話や今度の旅行の話、横浜にいた頃の仕事の話など…。

 しばらくそんな風にお喋りした後、

 彼は私の腰を抱き締めると、


 「ほら、早くシャワーを浴びておいで。」


 と言いました。




 彼に抱かれる前に、


 「腰、もう大丈夫なんですか?」


 と聞きました。




↑エンピツ投票ボタン

 と彼が言いました。




 私は彼が果てた後もしばらく私の中にいて

 ずっと抱き締めていてくれることが好きです。

 そして、繋がりを解く時、優しいキスをしてくれることも。

 彼はベッドに横たわる私にバスタオルをかけてくれると、


 「これだけ運動すればダイエットになっただろう?^^」


 と言いました。


 「ウエストにいっぱい汗かいてました…。^^」


 私は彼がかけてくれたバスタオルを身体に巻きました。


 それから食事に出かける時間まで、

 彼の腕枕でお喋りして過ごしました。



2009年05月15日(金) 彼の女友達


 私のネガティブな想像は、

 翌朝の彼からの電話の初めの5分ほどの会話で

 あっという間に打ち切られました。


 「昨夜メールもらってたけど返事出来なかった。

  飲んでたんだよ。」


 「帰り遅かったんですね。」


 「ああ…昨夜は遅かった。

  今、車でゴルフ場に向かってるところなんだよ。

  昨夜の時点では雨で中止になりそうだったゴルフが

  今朝になってやることになったから、

  スタートが遅れてこっちに戻る時間が遅くなりそうだ。」


 「うん…。

  今日会うのやめにしますか?」


 「俺は会えるよ。

  やめにしたいの?」


 彼の言葉はいつもストレートです。


 「私は映画が観たいと思ってたから…。

  もしTさんがそれほど観たいと思ってないなら、

  友達と観に行ってしまおうと思ってたんです。

  それで、昨夜はメールしたんです。」


 私の言葉は半分は真実で、半分は嘘でした。


 「映画は観ようよ。

  ちゃんと他の日に時間を取って。

  真面目な映画デートをするんだろう?^^」


 「あはは、真面目なデート?^^」


 「理沙子のメールにそう書いてあったから。^^」


 「うん、あの映画、早く観たくてたまらないんです。」


 「今日会った時にいつ観に行くか決めよう。」


 「はい。^^

  昨日は誰とゴルフだったんですか?」


 少しドキドキして尋ねました。


 「昨日はバーのゴルフだったんだよ。

  前に言わなかったっけ?」


 「あっ、この前見せてくれたあのメールの?」


 「そうだよ。」


 先日のデートで彼が見せてくれたのは、

 バーのママさんから送られて来た同報メールでした。

 それは数人のお客さんに送られたゴルフのお誘いのメールでした。


 「あれって昨日だったんですね。

  じゃあ、夜はそのバーに飲みに行ったんですか?」


 「そうだよ。」


 ゴルフのためなら前の晩に2時、3時まで飲んでいても、

 翌朝は6時前にしっかり目が覚める彼なのです。^^


 「じゃあ、ゴルフから戻ったらまた電話するから。^^」


 彼の明るい声を聞いて、

 前の晩からの落ち込んだ気分はどこかへ消えていました。




 彼が十年来通っているバーのママさんと

 東京で旦那様と会社を経営するスペイン在住の時からの親友は、

 私公認の彼の女友達です。

 初めの頃は色恋抜きの異性の友達というのがよく分からなくて、

 彼女達にジェラシーらしき感情を抱いたこともあったけれど、

 彼の人柄を知るにつれて、

 彼が好意や信頼を抱く対象として男女の区別は無いということが

 自然と理解できるようになりました。

 精神的な繋がりという点で言うなら、彼女達との関係に比べたら

 私達の関係はまだまだ浅いものと言えるかもしれません。




 それでも、私と付き合い始めてから、

 バーに行く回数はめっきり減ったと彼は言います。

 シーズン前は楽しみにしていた毎月のバー主催のゴルフコンペも




↑エンピツ投票ボタン
 「最近来ないわね〜って

  バーのママさんに言われないんですか?^^」


 「客商売としてそういうことは絶対言っちゃ駄目でしょ。

  言葉尻にでもそういうニュアンスを含ませるようなことがあったら、

  俺はもうその店には行かない。

  客にプレッシャーを与えるようなことは言っちゃいけないんだよ。」


 「でも、そんなことは言わないママさんなんでしょ。」


 「そうだよ。だから何年も通ってる。」


 職業柄なのか、彼はお店や人をよく見ていると思うのです。

 その眼差しは時に厳しく、時に温かく。

 彼の共感と信頼を得れば一生モノと言えるほど長い付き合いになるし、

 失えばその関係はあっという間に切れてしまうでしょう。



 4年近く続いていた元カノとの別れについて、

 彼は今までその理由を曖昧にしていたけれど、

 別れの時点でその関係は既に終わっていたと彼は言いました。

 つまり、その時点で気持ちはもう残っていなかったと。

 私は彼と長く付き合っていきたいと思うのです。

 永遠に彼の恋人でいられることが最も幸せなことだけれど、

 ときめく頃を過ぎても仲の良い友達でいられたら、

 それも素敵なことだと思えるのです。



2009年05月13日(水) 可能性


 午前中、彼から電話があって明日のデートの約束をしたのに、

 それ以降メールも電話も繋がらなくなりました。

 私が彼と付き合い始めてからメールも電話もほとんどしないのは、

 こういう状況を恐れているから。

 自分からメールをしなければ返信を期待しなくてもいいし、

 電話をしなければ繋がらなかった時の不安を回避できるから。




 でも、会えない時でもふと彼と繋がりたくなることはあります。

 そういう時に繋がることが出来なければ、

 やはり色々な可能性を想像してしまうのです。

 一番楽観的な可能性は、既に就寝中という可能性。

 ゴルフで早起きしたから疲れて寝てしまっているんだろうという想像。

 そして、いくらかましな可能性は誰かと飲んでいるという可能性。

 私といる時もそうだけれど、

 彼は飲んでいる時はメールも電話も着信音をオフにしているし、

 メールに関しては気付いてもその場で返信することは

 ほとんど無いのです。




 最悪な可能性は他の女の人と二人でいるという可能性。

 この可能性には二通りあります。

 一つは私の他に誰か女性がいて彼女とデートしているという可能性、

 もう一つはどこかで他の女性にアプローチしているという可能性。

 前者であれば、多分明日には容易に否定されるでしょう。




↑エンピツ投票ボタン

 でも、もし後者だとするなら…。

 多分それは前者よりも悲しい可能性になるでしょう。


 私は彼にこれだけはとお願いしたことがあります。

 私と付き合っている状態で他の女性を探さないでと。

 好きな人と会えないことより辛いのは

 心ここにあらずの男性と二人の時間を過ごすことだから。



 半年経ったらお互い別の人と付き合っているかもしれないと言った彼。

 本気で恋をしているなら、

 あらゆる可能性を覚悟しておかなければいけないのかもしれません。

 弱気になっている時はつい後悔してしまうのです。

 彼とは友達のままでいるべきだったのかなと。

 それが唯一永遠に彼を失わずにすむ方法なのだから。



2009年05月11日(月) 彼とワイン


 先週末、イタリアンレストランで彼と飲み物のリストを見ながら、


 「今夜はずっとワインにします。^^」


 と言った私に、彼は微笑んで、


 「大人になったなぁ。」


 と言った後、


 「あっちもこっちも…。(笑)」


 と続けました。




 ワインの美味しさを覚えたのは彼と知り合ってから。

 彼と初めてデートした日、

 待ち合わせの前の彼からのメールで


 「今夜映画の後にワインを飲みたいんだけど、付き合ってくれますか?」


 と誘われました。

 それ以来、彼と食事の時には一緒にワインを飲むことが多くなりました。




 この日は私が


 「今日はお魚メインの食事がいいです。^^」


 と言ったのに合わせて、

 彼は初めに白のグラスワインを2種類オーダーしました。



 アンティパストを食べ始めてから、

 彼は自分が飲んでいる方のグラスワインを私に味見させて、


 「どっちが好き?」


 と尋ねました。

 私は自分が飲んでいる方が好みだと伝えると、

 彼はそのワインをボトルでオーダーしました。

 この時、彼は私の好みに対して何も言わなかったけれど、

 後になって彼と好みが同じだったということが分かりました。

 二人のグラスが空になった時に、

 ワインクーラーからボトルを取って彼と自分のグラスに注ぐ私を見て、


 「理沙子はそんなに頑張って飲まなくていいぞ。^^」


 と彼が言いました。


 「どういうことですか?^^」


 「理沙子は酔うと後で大変なことになるから。」




↑エンピツ投票ボタン
 この日、彼は私に正しいワインの注ぎ方を教えてくれました。^^




 熟成されたワインが美味しいように、

 人生や恋愛の経験が深い彼と付き合うことは

 私にとってはとても刺激的で楽しいことです。

 ワインも恋も最近になってようやく

 その辛さや渋みを味わえるようになってきました。



2009年05月10日(日) 哀しい気持ち


 いつもの角を曲がると、いつもの場所に彼の車が止まっていました。

 私が助手席に座るとすぐに、


 「今日は映画は止めにしよう。」


 と彼が言いました。

 そして、彼が既にチェックインしていたシティホテルへ行きました。




 ダブルベッドで彼と身体をくっつけ合って話をしました。


 「私もTさんの友達になりたいなぁ。

  そうしたら、ずっと一緒にいられるから。」


 車の中でGW中に東京から来ていた彼の女友達の話を聞いていたから、

 少し羨ましくなって彼に言いました。


 「理沙子は友達で我慢出来るの?」


 「ずっと一緒にいられるなら、我慢出来るかも。」


 「俺が我慢出来ないよ。」


 それから、私達は今度の旅行の話をしました。

 彼は一日目が晴れの場合と雨の場合を想定して、

 二通りのドライブプランを私に教えてくれました。


 「もちろん、どちらも晴れれば一番だけど。^^」


 「晴れるといいですね。楽しみだなぁ。」


 お喋りをしながら、お互いの身体に触れ合う私達。

 幾つもキスをして、着ていた黒のキャミを脱がされて、

 一週間ぶりに彼に抱かれました。




 夜はイタリアンレストランに行きました。

 彼とワインを飲み、食事をしながら、

 また男女間の友情の話になりました。

 彼は美味しい食事や映画や美しい景色など

 感動を共有できる相手としか友達にはなれないと話しました。

 まずそれが前提だと彼が言いました。

 でも、男女の関係になるかならないかは、それから先の感情なのだと

 彼は言いました。

 今回東京から彼とゴルフをするために旦那様と一緒に遊びに来たのは、

 彼のスペイン在住の時からの女友達です。

 来月は一人で遊びに来て、また一緒にゴルフをするそうです。

 
 「彼女の方はもしかしたら貴方のことが好きかもしれないですよ。」


 私が女友達の気持ちを想像して言うと、


 「いや、若い頃はそんなことがあったかもしれないけれど、

  今は全くそんな感情はないと思うよ。」


 と彼がきっぱり否定しました。

 私は彼の友達としての条件をクリアし、さらに恋愛対象になれたことを

 幸運に感じました。




 ホテルに戻るとすぐに、食事をしていたイタリアンレストランから

 彼の携帯電話に着信がありました。

 お店で私の携帯電話を預かっているという話でした。^^;

 彼は一人で私の携帯電話を取りに行ってくれました。


 「ごめんなさい。」


 戻って来た彼に謝ると、


 「タダじゃ済まないからな。^^」


 と彼が言いました。




 ベッドで私が目を覚ました時、既に12時を回っていました。

 二人でベッドに入ったところまでは覚えているけれど、

 それから後の記憶が曖昧でした。

 しばらくすると、彼も目を覚ましました。


 「二人で朝まで寝てしまうところでしたね…。」


 と私が言うと、




↑エンピツ投票ボタン
 と彼が少し不満そうに言いました。

 どうやら私は先日のお泊りデートの時と同じように、

 彼に愛撫されているうちに寝てしまったようです。^^;

 もう帰らなければならない時間だったけれど、

 私達はどちらからともなく求め合い、もう一度抱き合いました。




 「私もいつかはTさんに忘れられちゃうのかな。」


 酔いと眠気の混じったぼんやりした頭で、私が呟きました。


 「面倒くさいなぁ。」


 「ごめん、ネガティブなこと言われるの、嫌いだよね。

  でも、Tさんの記憶にはっきり残る存在になりたいと思う…。」


 「もう残ってるよ。

  携帯電話を二度も取りに行かされたんだから。」


 「そうでしたね。^^;

  何となく思ってたの。

  私もいつかTさんの人生を通り過ぎた何人かの女の人のうちの

  一人になっちゃうんだろうなぁって。」


 「そんなわけないだろう。」


 彼が私の唇を塞ぎました。


 「好き?」


 「好きだよ。」


 私は少し哀しい気持ちで彼の声を聞きました。

 心は嘘を吐くことを知っているから、

 女は身体で男の愛を確かめようとするのかもしれません。



2009年05月08日(金) やっと会える


 仕事中に彼から二件の着信履歴がありました。

 仕事が終わったことをメールすると、すぐに彼から着信。

 東京から来客があって、

 5日間連続でゴルフと食事のお付き合いをしていた彼。

 最後のゴルフをして、お客さんを空港まで送り届けてから

 オフィスで仕事をしていました。 


 「疲れた〜。^^」


 「お疲れ様でした。

  色々気を使われたんじゃないですか?^^」


 「それは無いけど、5日間、ゴルフで歩き回って疲れたよ。

  明日は大丈夫?」


 「はい、実は私、観たい映画があるんです。^^」


 映画のタイトルを言ったら、彼もそれを観たいと思っていたとのこと。

 明日か来週のデートで観に行くことになりそうです。


 「腰はもう大丈夫ですか?」


 「大丈夫だ。明日揉んでくれる?^^」


 「いいですよ。^^」


 「他の所は揉まなくていいから。(笑)」


 「あんなとことかそんなとこもですか〜?(笑)」


 「あんなとこやそんなとこもやってくれるの?(笑)」


 「いいですよ〜。^^」

 
 他の人に聞かれたら呆れられそうな会話なのに、




↑エンピツ投票ボタン


 一週間というインターバルは、

 会いたい想いを募らせるのにはちょうどいい時間なのかもしれません。
 
 三日前から決まっている明日のコーディネートは、

 ペールブルーのニットアンサンブルと白のタイトスカート、

 エナメルとスエードのコンビのベージュのパンプスです。

 ずっと彼に会いたかった気持ちが伝わるでしょうか。



2009年05月07日(木) 思いがけない言葉


 お泊りデートから帰って来た日の翌朝、

 電話で話したいと彼にメールを送りました。

 しばらくして、今なら電話出来ると彼から返信がありました。


 「おはようございます。」


 「おはよう。どうしたの?」


 ただ声が聞きたかったからという言葉を私は飲み込みました。


 「昨夜、あれからすぐに帰ったんですか?」


 「そうだよ。メール貰った時にはもう寝てたよ。」


 「うん…。」


 「どうしたんだよ。」


 心なしか彼の声が素っ気無く聞こえてきます。


 「腰、大丈夫ですか?」


 「大丈夫じゃ無い。」


 「そうですよね。昨日すごく辛そうだったから。」


 彼の返答がぶっきらぼうなので、

 ついネガティブなことを想像してしまうのでした。


 「二日間もずっと一緒にいて飽きちゃった?^^」


 「俺、そういうこと言われるのって面倒なんだよ。

  そんなことないよ。」


 「だって、Tさんがもう無理だって何度も言ってたから。

  鰻屋さんに携帯電話を取りに行ってくれたこととか、

  長時間運転してくれたこととか、

  帰りの車の中でずっと歌ってくれたこととか、

  色々無理させちゃったのかなと思って。^^」


 「肝心なことを言ってないじゃないか。(笑)」


 「えっと…。^^;」




↑エンピツ投票ボタン
 「あはは、そういうことですね…。^^」


 「今度会う時までに他の方法を研究しておいて。(笑)」


 「他の人と研究していいんですか?^^」


 「インターネットやAVを見て研究しなさい。(笑)」


 「やっぱり、Tさんの腰が治るまで会うのやめましょうか?」


 「そんなことしなくて大丈夫だ。^^」


 「本当?」


 「ほんとだよ。ただの腰痛なんだから。」


 「良かった〜。^^

  明日からお客さんがいらっしゃるんですよね。

  私、その間はメールしませんね。」


 「うん…。」


 「何か、言って。^^」


 「愛してるよ。」


 永遠に彼の口から聞くことはないと思っていた言葉が

 受話器から流れてきました。

 幸せな気持ちが胸いっぱいに広がりました。


 「今度会う時までに、研究しておきますね。(笑)

  腰、お大事にして下さいね。」




 電話を切った後、

 「愛してるよ。」と囁く彼の優しい声が、

 しばらく耳元でリフレインしていました。



2009年05月06日(水) 恋しくて…


 途中、滝を見るために一度だけ小さなパーキングエリアで降りただけで、

 私達の車は日本海沿いの道をひたすら北へ走りました。

 目的地の小さな街に着いたのは午後2時頃でした。

 地元のお寿司屋さんで、私達は少し遅いランチをしました。

 この日、彼は朝から「腰が痛い!」を連発。

 先週からの腰の痛みが今回のデートで悪化してしまったようです。




 お寿司屋さんを出てから、

 私達は日本海に臨む丘の上の小さな記念館に入りました。

 のんびり館内を見学した後、私達は再び車に乗って市内へ帰りました。

 彼の車のCDチェンジャーには10枚のCDが入っているのですが、

 そのどれもがノスタルジックな曲ばかり。(笑)

 今まで付きあってきて一番ジェネレーション・ギャップを感じた

 ひとときでした。^^

 彼が曲を聴きながら一緒に口ずさんでいたので、




↑エンピツ投票ボタン
 過去に付き合った人とのドライブでは

 いつも私が助手席で口ずさんでいたから、

 こんなことは初めてでした。^^




 市内に入ると既にあたりは薄暗くなっていましたが、

 まだ二人ともあまりお腹が空いていなかったので、

 彼がよく利用するシティホテル内のスパに行きました。

 初めて彼とそのスパへ行ったのは去年の秋で、今回は二度目でした。

 あの日と同じようにそれぞれ入浴を楽しんだ後、

 中央のラウンジで待ち合わせしました。

 お揃いのバスローブ姿でデッキチェアに座って、

 冷たい飲み物を飲みながら彼とお喋り。

 彼は長時間のドライブから解放されてほっとしている様でした。




 スパを出てから、ワインと中華料理のお店に行きました。

 個室のように仕切られたそのお店では、

 二人っきりの時のように会話が弾みます。


 「しかし、俺って偉いと思わない?

  昨夜から3回して、往復8時間近く運転して。^^」


 「本当です。お疲れ様でした。^^」


 「理沙子、言っとくけど、俺もう無理だから!!」


 「無理って…私、何もお願いしてないじゃないですか。^^」


 「理沙子にお願いされても、もう無理だからな。」


 「ほんとにもう!(笑)

  腰、大丈夫ですか?^^;」


 「やっぱり今朝のがいけなかったな。

  昨夜みたいにしてって理沙子が言うから…。^^」


 「ええ〜っ!!

  私…そんなこと言ってないですよ〜。」


 彼が黙って笑っています。


 「口に出して言ってないですよね。

  確かにそう思ってたけど…。^^」


 「そうだろう。^^」


 「でも、言わないのに通じるなんて…。

  私達って相性いいんですね。^^」


 「可愛いよ。^^」


 彼は甘い眼差しで私をじっと見つめました。

 それは彼が私を欲しがっている時の表情でした。

 私はそのことを彼に伝えたくなりました。


 「どうしたんだよ。^^」


 「ううん、何でもない。^^」


 「何だよ、言ってみろよ。^^」


 口にするのは恥ずかしかったので、

 私はその場で彼にタイトルだけの短いメールを送りました。

 彼はそれを読むと目の前で返信のメールを打ち始めました。

 すぐに送信してとお願いした私に、


 「後で送るよ。^^」


 と彼が言いました。




 帰りに私の荷物を取るため、二人で立体駐車場へ戻りました。

 彼は珍しく酔っているようで、

 私の右手を握ると、大きな声で話し始めました。


 「理沙子、もう俺無理!!^^」


 「もう、何度も言わないで下さいよ〜。

  まるで私がおねだりしているみたいでしょ。

  私は何も求めたりしてないのに!!」


 「ちょっと誰か〜、今の聞きましたか?(笑)」


 彼の声が私達以外誰も居ない駐車場に響き渡ります。


 「ひどいなぁ。私だってもう無理です。普通に無理だから。^^」




 駐車場のエレベーターに乗ると、どちらからともなくキスをしました。


 「防犯カメラに見られてる…。^^」


 キスを止めて、彼が言いました。


 「ほんと?」


 私がはっとすると同時にドアが開きました。




 エレベーターを降りて車に向かって少し歩いたところで、

 彼は私を力強く引き寄せると、

 その広い胸にすっぽり抱えこむように抱き締めました。

 私は背伸びするように彼の大きな背中に腕を伸ばしました。

 彼という人の温かさが伝わるようなハグ。

 それは彼の優しさや包容力を感じさせるものでした。

 


 彼の車のトランクから荷物を取って、

 タクシーを拾うために通りに出ました。

 二日間一緒に過ごしたせいで、

 別れ際がいつもより余計に寂しく感じられました。

 タクシーが走り出してまもなくすると、彼からメールが届きました。


  今度逢うまで我慢してね。

  昨日から楽しかったね。

  ありがとう。^^


 別れたばかりなのに、もう彼を恋しがっている私がいました。



2009年05月05日(火) 五月晴れ


 翌朝はとてもよく晴れていたので、

 ドライブをしようかと彼が言いました。

 彼がテイクアウトしてくれた早めの朝食を

 ホテルのお部屋で食べ終えたところでした。

 一度目が覚めてしまったものの、時刻はまだ七時前。

 もう一眠りしてから出かけようということになりました。


 「やっぱり、このまま一日ここでグタグタしていようか。」


 「うん、それもいいですね。」


 彼が私を求めようとしたので、


 「何回もしたら飽きちゃいますよ〜。」


 と私が言うと、


 「俺、そういうの嫌い。」


 と彼が言いました。

 彼は恋の駆け引きとか計算とかそういうことが嫌いなのかなと思うことが

 時々あります。

 
 「出し惜しみされるのは嫌い?」


 私の質問には答えずに、彼は、


 「ほら、もうこんなになってるよ。」


 と言って、私の濡れている場所に指を滑り込ませました。

 薄暗い部屋の中に

 カーテンの隙間から僅かな白い光が差し込んでいました。

 私達は前の晩の快感を辿るように、同じ形で愛し合いました。




 抱き合った後、彼はすぐに気持ちを切り替えるかのような声で、


 「やっぱり、予定通りドライブに行こう。

  ここはチェックアウトして…。」


 と言いました。

 愛し合った余韻を全く感じさせない彼の口調の変化を

 私が寂しく思っているなんて、彼は全く気付かなかったでしょう。




 11時前にチェックアウトして地下の駐車場から車で外に出ると、

 まさに五月晴れと呼ぶに相応しい美しい青空が広がっていました。


 「ほら、やっぱり外に出て良かっただろう。

  いい大人が盛りのついた高校生みたいに

  ホテルに閉じこもってないで…。」


 彼は車のルーフから心地よい風を入れました。


 「高校生って盛りがついてるんですか!?

  もっとロマンチックな言い方して下さいよ。

  二人だけの大切な秘め事なんだから。」


 私が憤慨して言うと、彼が大きな声で笑いました。

 そして、私にロードマップを見せて、


 「ここの海沿いを北に向かって走るから。^^」


 と陽気に言いました。




 彼は車の中でスペイン語の講義を始めました。^^

 動詞の変化について、例文を挙げながら私に教えてくれました。


 「愛してるって何て言うの?」


 「Te quiero.」


 「消えろってひどいじゃない!!」


 「Te quiero. だよ。(笑)」


 「ねぇ、愛してるってスペイン語で言って。」


 私はそう言って、彼の方を見ました。

 彼は私の目を真っ直ぐ見て言いました。


 「Te quiero.」


 ただのスペイン語のレッスンなのに、私の胸はドキドキしました。




↑エンピツ投票ボタン
 私は自分の気持ちを彼に見透かされたくなくて、

 軽い調子でこう言いました。


 「Te quiero.って何だかムードの無い発音だなぁ。^^」



 五月の爽やかな風の中、

 彼の車は日本海が見える小さな街を目指して走りました。



2009年05月04日(月) 快感


 串揚げ屋さんで速いピッチでビールを飲んだせいか、

 お部屋に戻った時には私だけがかなり酔っていました。

 ベッドに入ってからしばらくのことはほとんど覚えていないのです。

 私が覚えているのは彼に声をかけられた時から後のことです。


 「おい、寝てるのか!?^^;」


 彼の話によれば、私は彼に愛撫されながら熟睡してしまったようです。

 往復一時間かけて一緒に携帯電話を取りに行ってくれたお詫びに

 約束したご奉仕のことも忘れて。(笑)


 「俺が愛撫してるのに、寝てるなんてなぁ…。」


 今度は彼のぼやいている声がはっきりと聞こえました。


 「気持ち良くて、つい寝てしまいました…。

  ごめんなさい。」


 朝まで彼と一緒にいられるなんて滅多にないことなのに、

 ずっと一緒にいられる安心感から眠ってしまったようです。




↑エンピツ投票ボタン

 この夜、彼と繋がりながら、

 私は今までに経験したことのない強い快感を得ました。


 そして、朝までずっと

 彼の逞しい腕に抱かれて眠りました。



2009年05月03日(日) 二度目のお泊りデート


 お昼過ぎに彼が車で迎えに来てくれました。

 それから、彼が予約してくれていた『ひつまぶし』のお店へ。

 お座敷で彼と向かい合って、

 とても美味しい『ひつまぶし』を頂きました。

 お料理が届くまでの間、彼は私とほとんど目を合わさずにテーブルの上の

 グルメ本を見たりしていました。

 カウンターには常連さんらしい年配のご夫婦、

 私達の隣のテーブルにも

 同じような年代のご夫婦とどちらかの母親らしい高齢の女性がいました。

 いつもとは違って言葉少なで、静かな彼。

 後で聞いてみたら、

 私がやたらはしゃいでいて彼に旅行のことなどを質問していたので、

 他のお客さんに聞かれるのではと恥ずかしかったそうです。^^

 多分、落ち着いた年配のお客さんが多かったからだと思います。^^;



 食事を終えて、車で来た道を戻りました。

 しばらくすると彼が助手席の私に聞きました。


 「どこか行きたい所ある?

  それともすぐに俺と二人きりになりたい?」


 いつもは私に何も聞かずに行き先を決める彼なので、

 私は少し驚いた振りをして彼の方を見ました。


 「どうして黙ってるんだよ。

  ぼーっとした顔して。」


 初めからなのか最近になってから特になのか、

 彼の気持ちは私にとってとても分かりやすいのです。^^


 「Tさんが早く私と二人きりになりたいんじゃないですか?^^」


 彼は私の質問には答えずに、その日泊まるホテルに車を走らせました。



 フロントでチェックインした後、

 ヨーロッパ調の家具でまとめられた綺麗なお部屋に案内されました。

 広いバスルームにはシャワーブースも付いていました。

 ベッドの端に座っていた彼は、

 私を膝の上に乗せると後ろからギュッと抱き締めました。


 「ずっと、こうしたかった。」


 彼はそう囁くと、私の顔を彼の方に向かせ何度もキスをしました。



 バスタブにお湯を溜めて、交替で熱いお湯に浸かった後、

 最近会う度に日焼けの色が濃くなっている彼の腕に抱かれました。

 去年の秋から毎週のように愛し合っているのに

 彼とのベッドが少しも新鮮味を失わないのは、

 食べ物の嗜好と同様、

 私達が二人とも愛し合うことに貪欲だからなのでしょう。



 抱き合った後、ベッドの上でお喋りしたりお昼寝したりしていたら、

 あっという間に夕方になってしまいました。

 私がシャワーを浴びて、洋服に着替えて、

 これから彼が予約してくれたお店に食事に出かけようという時になって、

 鰻屋さんに携帯電話を置き忘れたことに気が付きました。

 私が彼に伝えると、彼はすぐに鰻屋さんとこれから行こうとしている

 串揚げのお店の両方に電話を入れてくれました。

 そして、


 「夜もまた鰻にするか?(笑)」


 と私に冗談を言いつつ、車を出してくれました。


 「ごめんなさい。

  私がうっかりしていたから…。」




↑エンピツ投票ボタン
 冗談とも本気ともつかない悪戯っぽい笑顔で彼が言いました。


 < 過去  INDEX  未来 >


理沙子

My追加