こうして私はあなたを好きになった
綴りたいのは残された言葉、なつかしい匂い、
揺れる気持ち、忘れられない感触

2009年04月26日(日) 休日の電話


 ルナが近づいているから、体調も気分も下降気味の休日。

 彼からメールがあるまで私から連絡しないと決めていたのに…。

 ブルーな気持ちを引きずるのが嫌だったから、

 昨夜、彼に短いメールを送りました。

 予想していたことだったけれど

 彼はゴルフの打ち上げで深夜まで飲んでいたので、

 そのまま朝まで返信がありませんでした。

 今朝になってやっぱり声が聞きたくなって、

 時間がある時に電話でお話したいとメールしました。 



 正午過ぎに携帯電話に彼から着信。

 オフィスにいる時とは違う彼の声。

 二人でベッドにいる時のような甘い、優しい声です。


 「今、どこにいるんですか?^^」


 と聞いてみたら、




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 以前に私も連れて行って貰ったことのある場所です。

 昨日は夕方までゴルフで、その後深夜1時頃まで飲んでいたというのに、

 早起きして一人でスパに来ているなんて彼は本当にタフな人です。


 「俺、筋肉痛がひどいんだよ。誰かのせいで。(笑)」


 「えっ、誰のせいですか?^^」


 「先週理沙子に会った後にひどくなったんだよ。

  知り合いの整体師にマッサージして貰った。」


 「マッサージは嫌いだって言ってたのに…。

  整体師さんに診て貰ったの、初めてでしょう?」


 「こんなの初めてだよ。」


 「それって誰か他の人のせいじゃないですか!?」


 「はぁ〜??

  他に誰がいるって言うんだよ!!」


 「それじゃあ、今度のデートの時はお互い頑張って…。」


 「頑張って何よ?(笑)」


 「一生懸命頑張って…。」


 「頑張って、するのか?(笑)」


 「お互い頑張って我慢しましょう。(笑)」


 「あははは、本当に理沙子は面白いよな。^^」


 「だって、去年付き合い始めた頃には、

  Tさん、凄く元気だったのに。」


 「やっぱり弱ってる?^^;」


 「前は『疲れてる?』って聞くとムキになって否定してたけど、

  最近は『疲れた、疲れた』ってよく言うから。」


 「そうか?」


 「今度のお泊りデート、大丈夫ですか?」


 「大丈夫だ。」


 「ほんと?^^;」


 「大丈夫!!大丈夫!!

  ホテルも予約してあるんだし。^^」


 「うん。^^

  旅行に行く場所ももう決まったんですか?」


 「ああ、もう予約したよ。」


 本当に彼は行動が素早いです。


 「どこに泊まるんですか?^^」


 「いや、教えない。(笑)」


 「知りたい!^^

  どこですか?

  教えて下さい!!」


 「絶対に教えない。^^」


 私達の初めての旅行は、

 到着するまで私には行き先を知らされないままになりそうです。^^



 今週末のデートでは、

 以前から彼が話をしていた鰻屋さんに行くことになりました。

 今まで定休日などと重なって、ずっと行きそびれていたお店です。

 私がひつまぶしを食べてみたいと言っていたのを

 彼はずっと覚えていてくれたのです。


 「楽しみ〜。

  でも、それまでに痩せなきゃ。

  滅茶苦茶太っちゃったんです。」


 実は今年になって私は2kgも体重が増えたのです。^^;


 「デブ子か?(笑)」


 「そうですよ〜。

  Tさんは最近ゴルフで痩せて黒くなったから、

  私も痩せて黒くならなきゃ。(笑)」


 「黒くはならなくていいから。^^」




 電話を切った後、

 昨夜からのモヤモヤが消えて元気になっている私がいました。

 前回彼に会った日から今度会う日まで、やっと半分の日数が経ちました。

 いつものように残り半分は

 きっと穏やかな気持ちで過ごすことが出来るでしょう。



2009年04月25日(土) 宝探し


 約束の日の数日前になったら必ず彼から連絡があるから、

 それまで私は彼にメール一通も出さずに待つことにしました。

 今度会う時までに彼は来月の旅行のプランを立てて、

 ホテルのお部屋もリザーブしてくれるでしょう。

 1週間と少しの間、会わないけれど、

 その間の大切な時間の一部は私のために使われているのです。



 先日、ベッドで抱き合っている時に彼が言いました。


 「3週間会わずにいたらどうだろう。




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 「3週間も会わないなんて、我慢出来ないと思うわ。」


 あの人とは2、3ヶ月会わなくても平気でいられたのに、

 私はいつから忍耐というものを忘れたのでしょうか。



 私には彼から求められても恥ずかしくて躊躇してしまう行為があって、

 元彼とはそのような行為は無かったのかと彼に聞かれました。

 私はその時、

 彼にも嫉妬心のようなものはあるのだと何となく感じました。

 彼は負けず嫌いで征服欲が強いから、

 私が知っている男の人の中で彼が一番だと思いたいのでしょう。

 私は彼に恋をしているから、

 私にも彼の一番になりたいという想いがあります。

 それが彼がよく言う面白い女だとしても構わないのです。

 彼の興味を惹きつける一番の女になれるなら。


 「今度はお酒は一滴も飲まずに一晩中理沙子を抱くよ。」


 あの日の夜、酔って帰って来たホテルのベッドで

 彼は私にそんなことを言いました。



 感じたい、それにも増して感じさせたいと思う気持ちは

 愛なのでしょうか。

 それともただの欲望なのでしょうか。

 人は欲望に目が眩むものだから、

 欲望の中に本当の愛を見つけることは

 宝探しのように難しいことなのかも知れません。



2009年04月24日(金) 欲望と愛情の狭間で


 彼が待ち合わせの時間よりも10分早く着いて、

 私が15分遅れてしまったから、

 結局彼を車の中で30分近く待たせてしまった私。

 きっとそのせいで

 一昨日の彼は初めから意地悪モードのスイッチが入っていたようです。

 こういう時に限って、私はつい彼の気分を刺激してしまうようなことを

 言ったり、したりしてしまうのは何故なのでしょう。




 いつもの和食のお店のカウンターで、

 彼は日本酒、私はシャンパンを飲みながら食事をしました。

 彼は時々私に意地悪を言いつつも、いつものように陽気で饒舌でした。


 「最初は緊張してたけど、もうリラックスしてるだろう?^^」


 既に何度も彼と訪れ、

 女性のご主人や女の子達とも顔なじみのお店です。

 カウンターだと初めは緊張してしまうのですが、

 お酒がすすむにつれ、ごく自然に振舞っていたようです。


 5月の旅行の話をしました。

 彼は私に何を見たいか、どこへ行きたいか尋ねました。

 私は行きたいと思っている場所を幾つか挙げました。

 彼はリクエストの多い私に、


 「全くわがままなお嬢さんだなぁ。」と言いながらも、


 私からしばらく話を聞くと何か思いついたかのように、


 「分かった。後は俺に任せて。」


 と言いました。




 この日、お店の女主人との会話で、

 旬の美味しいお魚が食べられる日には

 お店から彼にメールを送ってもらうというやり取りがありました。

 彼の言葉の中には私に本当に美味しいものを食べさせたいという

 気持ちが感じられました。

 お店を出る時、彼はご主人に


 「彼女は食べることが大好きなんだよ。」


 と私のことを言いました。

 カウンター越しに丁寧な接客をしているご主人には

 既にお見通しのことだと思うのに、 

 あえてそんな風に言ってくれる彼の気持ちが嬉しく感じられました。




 ホテルに戻るタクシーの中で、

 
 「ああいう若い女性のスタッフばかりのお店で、

  私のことはあまり話さないでね。

  貴方だけが悪い人だってことにしておいて。^^」


 と言いました。

 ホテルのエレベーターを待つ間に、彼は


 「お互い同じようなもんだろ。」


 と言いました。

 シースルーエレベーターで私達二人きりになると、

 彼は私を夜の街が見える一面のガラスに押し付けて、

 扉が開くまでの間、激しいキスをしました。




 お部屋に戻って、長いソファに座りました。

 ほろ酔い気分になっている私に、


 「本当に理沙子は面白いよな。」


 と彼が言いました。


 「そんな、私が凄く変わってるみたいに…。^^;」


 「これは褒め言葉なんだよ。」


 彼は黒のストッキング越しに私の脚を優しく撫でました。

 それから、黒のパンプスを脱がせると、

 私の両方の足の甲にキスをしました。

 それから、いつもの言い方で、


 「早く、シャワー浴びて来いよ。」


 と言いました。




 ベッドの中で抱き合いながら、


 「いっぱい感じる理沙子が好き。」


 と彼が言いました。


 「こうしてる時の私だけが好きなの?」


 と聞くと、


 「食べている時の理沙子も好き。」


 と言いました。


 「今日行ったお店のご主人や女の子達、私に優しいよね。

  そのうち貴方に振られちゃうって思ってるからじゃないかな。」


 「自分だけが悲劇の主人公みたいに…。

  そんなことを言うなんて理沙子はナルシストだ。」


 私はこの時、彼の表情を見なかったので、

 彼の真意がはっきりとは読み取れませんでした。

 ただ、前後の会話やこの日の彼のセックスから

 彼の言いたかったことが後になって見えてきました。


 「理沙子は本当にいやらしいな…。」


 「貴方に会ってからいやらしくなったの。」


 「そんなこと無いだろ。

  いやらし過ぎて前の彼に振られたんだろ。」

 
 彼のストレートな言葉に胸が痛みました。


 「女がいやらしいと男に振られるよね。」


 「俺はいやらしい理沙子が好きだよ。

  男ってさ…。」


 彼は私を愛撫しながら、静かに言葉を続けました。


 「相手がいっぱい感じてくれると、凄く気持ち良くなるんだよ。

  自分だけが感じるんじゃなくてさ。」


 「女もそうよ…。」


 「じゃあ、おんなじだ。」


 私は快感に集中しようと目を閉じました。

 やがて、私が彼に逝かされた後、




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 彼があの時言いたかったことは、恋はいつでもフィフティ・フィフティ

 だということだったのではないでしょうか。

 だから、その真実から目を逸らし、逃げようとしている私のことを

 彼はナルシストと呼んだのでしょう。

 楽しさも切なさも不安も嫉妬も欲望も全ては二人で共有していることで、

 どちらか一方のせいにすることなど出来ないと。




 部屋を出る時に、


 「また帰りが遅くなっちゃった。

  何だか悲しくなって来ました。

  自分の欲望が強過ぎて…。」


 と私が呟くと、

 彼は黙って私の右手をぎゅっと握り締めました。



2009年04月20日(月) やわらかい空気


 私がバスルームの前の大きなミラーの前で髪を乾かしていると、


 「理沙子〜。」


 と私の名を呼ぶ彼の声が何度か聞こえました。

 私はもっと名前を呼んで欲しくて、彼が聞こえるか聞こえないかの声で


 「は〜い。」


 と返事をしました。




 「用意出来たか?」


 しばらくして、彼が私の所に来ました。

 さっきまでベッドで裸で寝ていた彼は、既に着替えていました。


 「まだ、寝ていて良かったのに。

  髪を洗ったから、もう少し時間がかかりそう。」


 「俺が乾かしてやろうか?」


 「大丈夫ですよ。大人なんですから。^^」


 「それは知らなかったよ。」


 「少し、ソファで休んでいて。眠いでしょ?」




 髪を乾かした後、ソファの所へ行きました。

 薄暗い部屋の中、彼の表情はひどく疲れているように見えました。


 「今日は疲れちゃったね。」


 彼に寄り添うように隣に座って言いました。


 「本当に疲れたよ。」


 「Tさんが欲しがるから。^^」


 「よく言うよ。誰のせいだよ。^^」


 「もう駄目って言ったのに。」


 「体はそうは言ってないから。」


 何だか彼に無理をさせているようで、胸がチクリと痛みました。




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 彼が静かに笑いました。


 「ほんと、面白いこと言うよなぁ。^^

  ルールだなんて…。」




 部屋を出てから、エレベーターの前で

 なるべく軽く聞こえるように尋ねました。


 「来週いつ会えるかお電話くれますか?」


 「どうしようかなぁ。無言電話でいい?(笑)」


 彼が意地悪を言います。


 「次に会う日が決まっていないと、それまでの時間が寂しいの。」


 彼は私の右手をそっと握り締めました。



 抱き合った後の気だるい会話。

 今までセックスの後の男の人は

 抱いたばかりの女と距離を置きたがるものだと思っていたけれど、

 彼に抱かれた後は

 その場から離れ難いような柔らかな空気に包まれます。




 外に出ると、彼は片手を上げタクシーを止めました。

 時計は既に12時を回っていました。


 「ちょっと待って。」


 私が乗り込もうとする直前、彼は私に千円札を二枚渡しました。


 「ありがとう。」


 私はお礼を言って受け取ると、タクシーに乗り込みました。

 私は運転手さんに行き先を告げました。

 それから、窓越しに彼を見て手を振りました。


 アルコールが残っていて彼が運転出来ない時は、

 いつも同じように私をタクシーに乗せます。

 私は彼とのデートの帰りに、

 一度も一人でタクシーを止めたことはありません。

 彼は必ず運転手さんの顔を確認してから私を見送ります。



 帰ってからお礼のメールをすると、彼からすぐに返信。

 赤いハートマーク3つと一緒に、明日電話するねと書かれていました。



2009年04月19日(日) 言葉よりずっと


 昨日の午前中に彼から電話で話したいとメールがありました。

 オフィスにいる彼に私から電話をしました。


 「5月の3週目の週末に旅行出来そうだけど、

  GWの予定はどうする?」


 と彼に聞かれました。

 金曜日の彼との電話では旅行のプランは全くの白紙でした。

 そのため、彼がとりあえず旅行の代替案のような形で、

 GWの初めに市内のシティホテルを予約してくれたのでした。

 彼が予約してくれたのは初めて彼とお泊りした素敵なホテルでした。

 私は既にGWのお泊りデートを楽しみにしていたので、
 

 「それは、そのままということで。^^」


 と言いました。


 「そう言うと思った。(笑)」


 彼にとっても私の返事は想定内だったようです。

 来週はゴルフよりも仕事で忙しくなると言う彼に

 私と会う日の予定を聞いてみると、


 「その日は空けておいたから大丈夫だ。」


 と言いました。

 彼と会えない日も私の気持ちが安定しているのは、

 彼がいつも私の会いたい気持ちを尊重してくれているからだと

 思うのです。

 私はあの人と付き合っていた頃のように、


 「あなたがそれほど気が進まないなら、今回は止めましょうか?」


 などと彼に聞いたりはしません。




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 会えない日はほとんど私に連絡しない彼に、


 「会えない時に私のことを思い出すこともある?」


 と聞いてみたら、


 「思い出すというより、理沙子のことを考える時があるよ。」


 という答えが返ってきました。


 

 彼が私に会いたいと口にすることはほとんど無いけれど、

 その気持ちを明確に示すような彼の行動が

 今までの恋愛よりもずっと私の気持ちを穏やかにしています。



2009年04月17日(金) 恋のサジ加減


 彼と食事する時は二人が好きなものをアラカルトで注文し、

 全てのお皿をシェアして食べることがほとんどです。

 昨夜はお気に入りのワインと中華料理のお店の一周年だったため、

 珍しくアニバーサリーのディナーコースを頂きました。



 お料理がサーブされる度に「美味しい!」を連発する私に、

 彼が笑って言いました。


 「今日は二人とも同じ量を食べてるんだからな。」


 彼の意図するところを知りつつ、私はとぼけてみせました。


 「どういうことですか?^^」


 「食べるのが速過ぎだろう。

  俺も速いけど、俺より速いんだから。」


 「だって、今日はすっごく美味しいんだもん。^^

  ずっとお腹空いてたし。」


 「日本語間違っていないか?

  今日は…じゃないだろうが。

  お腹空いてるから美味しいって失礼だろう。^^」


 「はい、今日も美味しいです。

  いつも美味しいけど、お腹が空いているから特別美味しいです。^^」


 「そうだ。^^

  でも、理沙子は本当にいいよ。

  俺は味のわかんない女は駄目だな。」


 「ん?凄い美人でも駄目ですか?^^」


 「いや、駄目だな。

  まぁ、一回位はエッチするかもしれないけど。(笑)」


 「ひどい!!」


 憤慨する私を見て、彼は面白がっています。


 「三回位はするかな。(笑)」


 「もう!!頭に来ました!!」


 「理沙子は反応がいいよな。可愛いよ。^^」


 「私は何かにつけ反応がいいんです。^^」


 グラスの中のシャンパンを見ながら言いました。


 「俺は何でもいいっていう奴が駄目なんだよ。」


 「それは分かります。

  そういうのってあらゆる部分に通じることですものね。

  映画とか本とか…。」


 「同じものを食べて美味しいとか、同じ映画を観て面白いとか、

  そういうのが共有出来ないとつまらないだろう?

  例えば、今日理沙子が俺と二人で観たいってDVDを持って来たけど、

  そういう気持ちって大事だろう?」


 「そうですね。^^」




 私達のテーブルはアンティークな何枚もの扉で仕切られていて、

 個室のようになっていました。

 若い女性のホールスタッフが飲み物のオーダーを取って出て行った後、

 彼が急に笑い出しました。


 「どうしたんですか?」


 「いや、この前のこと思い出したからさ。(笑)」


 彼は先週のデートで私がワインバーの女の子に焼餅を焼いたことを

 思い出したのでした。


 「さっき、彼女に話しかけようとしたけど止めておいたよ。

  ここはこうやって仕切られてるからいいね。^^」


 彼はこの日も男性のホールスタッフがテーブルに来る度に、

 お店やお料理について色々話をしていました。

 でも、私のことを気遣って

 女の子に声をかけることは差し控えたようです。


 「普段なら全然気にならないんですよ。^^」


 「あの時よっぽどお腹空いてたんじゃないか。

  今日はお腹いっぱいだから気にならないんだろう?^^」


 「う〜ん、それもあるかもだけど…。

  でも、何だかあの時は嫌だったんです。」


 「ところで、GWは元彼に会うことにしたのか?」


 「いえ、もう会わないことにしました。」


 私の答えを聞いて、彼は優しい笑顔を見せました。

 彼のその笑顔を見て、私は会わないことに決めて良かったと思いました。


 「あっ、嬉しそうな顔してる。^^

  嬉しいですか?」


 「ああ、嬉しいよ。




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 私は彼の信頼の言葉を聞いて嬉しくなりました。

 余所見している相手の心を繋ぎ留めておくものは、

 温かい信頼の言葉なのだと思いました。


 「じゃあ、GWは私に会ってくれますか?」


 「ああ、それなら会おう。^^」


 彼はそう言って携帯電話のスケジュールを開きましたが、

 以前から聞いていたように東京から毎年恒例の来客があるため、

 GWのほとんどは昼間のゴルフと夜の食事のお付き合いで

 既に埋まっていました。

 その上、ずっと前から話してくれていた旅行の話も

 夏以降に引き伸ばしになるようなことを聞かされました。


 「でも、楽しみはずっと先の方がいいような気もします。」


 「じゃあ、来年な。^^」


 彼が調子に乗って私をからかいます。

 私が落胆していると、


 「また、そんな顔をして。(笑)」


 と彼がすぐに私の気持ちを察して言いました。


 「うちの岳みたいだな。^^」


 彼はよく寂しそうな時の私の表情が愛犬の岳に似ていると言うのです。




 今朝、彼から電話があって、来週とGWのデートの日を決めました。

 これからのシーズンは彼はゴルフを優先させたいので、

 週に何日かはフリーにしておきたいようでした。

 それでも、彼は会う日が決まっていないと寂しがる私の気持ちを知って、

 空いている日に予定を入れてくれました。

 GWの前半で私が会える日を彼に告げ、

 その夜は泊まることが出来ると伝えました。


 「ちょっと待って。スケジュールを確認してまた電話するから。」


 しばらくして彼からもう一度電話がありました。


 「ホテルを予約しておいたよ。」


 「嬉しい。ありがとう。

  Tさんは大丈夫なんですか?」


 「大丈夫だよ。」


 電話を切った後、少し無理を言ってしまったかなと思いました。




 昨夜、ベッドを離れようとした私をギュッと抱き締めて、


 「ずっと朝までこうしていたいと思うだろう…。」


 と呟いた彼。

 彼の甘い言葉は少しずつ私をわがままにさせているようです。

 彼に重荷を感じさせない位の

 可愛いわがままのサジ加減が分かればいいのだけれど…。



2009年04月15日(水) 満月


 朝、彼から電話がありました。

 今週のデートの待ち合わせの時間を伝えるためです。

 私達のデートは今まで一度も代替案無しにキャンセルされたことが

 ありません。

 これはお互いの会いたい気持ちが一致しているからでしょう。


 「昨夜はよく眠れましたか?」


 「ああ、良く眠れたよ。

  そっちは?

  あれから気持ちがすっきりした?」


 「はい、もう大丈夫です。^^」


 私が二人の関係について踏み込んだ質問をしたことで

 二人の間にわだかまりが残らないか心配だったけれど、

 彼の声のトーンでその心配は無用だということが分かりました。



 彼に会えない時間を寂しく思うのは、別れてから3日目位まで。

 それが過ぎれば、また会う日を楽しみに過ごすことが出来るのです。



 先週末、私達は深夜にホテルを出ました。

 彼が車で私を送ってくれました。

 マンションが近づくにつれて私が寂しい気持ちになっていると、

 彼が運転席から、


 「ほら、満月だよ。」


 と言いました。

 フロントガラスから紺色の空を見上げると、

 そこには美しい満月が浮かんでいました。



 彼に初めて抱かれた日の帰り、

 彼の車の中から満月を見たことを思い出しました。

 あの時は私が先に見つけて運転席の彼に声をかけたのに、




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 と言っていたことを思い出しました。



 あの頃よりずっと、私達の気持ちは近くなっているようです。

 それはほんの少し悲しくなるほどに…。



2009年04月14日(火) 会えば言えなくなるから


 夕方、三度目の彼からの着信で、

 私はやっと彼と話すことが出来ました。

 彼はゴルフから帰って来たばかりで自分の部屋にいました。

 愛犬の岳とじゃれつく声が聞こえてきました。



 きっと彼にとっては面倒な話だったに違いありません。

 でも私が切実に彼と話しておきたいことがあるということを察して、

 彼は何度もかけ直してくれたのだと思います。

 彼に見つめられたり、触れられたりしたら、

 きっと理性が曇って言えなくなってしまうことだから、

 私は一番冷静な気持ちでいられる電話で尋ねたかったのです。



 私は彼の気持ちを考えながら、

 彼が以前言っていた『割り切った関係』について尋ねました。


 「ゆっくり考えて答えて下さい。」


 彼の答えを聞く前に私は言いました。



 彼の返事を聞いて、私の『割り切った関係』の解釈は

 彼の意味するところと同じだということがはっきり分かりました。




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 「それだけ?

  それ以外は普通の恋人同士の恋愛と同じなのね。」


 私はほっとして言いました。


 「でも、それって凄く大きいことじゃないか。」


 きっと私が一度結婚に失敗しているからなのでしょう。

 結婚に対して甘い期待が無い分、

 彼の答えに失望することは全くありませんでした。

 私がなりたいのは彼の妻ではなく、彼の最後の恋人だからです。


 「いつか私達が年老いて男女の関係じゃなくなっても、

  私達は気の合う友達としてずっと一緒にいられますか?」


 「それは勿論だよ。」


 「他の我侭なら許してもらえるなら、私は焼餅を焼いてもいいのね。」


 「ああ、いいよ。

  だけど、一体誰に焼くんだよ。(笑)」


  
 二人が結婚出来ないことを「ただそれだけのこと。」と

 考えていた私に対して、

 「それは凄く大きいこと。」だと言ってくれた彼のその言葉だけで、

 私は十分だと思いました。

 朝5時前に起きたと言う眠そうな声の彼に

 私はおやすみなさいと言いました。

 彼への愛おしい気持ちが胸いっぱいに広がりました。



2009年04月13日(月) 恋の割り算


 割り切った恋なんて出来ないと一度は捨てようと思った関係が

 半年経った今もまだ続いています。

 あれから私達の関係は変わったかといえば、

 そうではないとはっきり知らされた彼との電話での会話。

 彼ははっきりと


 「ずっと一緒にいようなんて俺は言えない。

  明日、自分の気持ちがどうなるかなんて分からない。

  明日とは言わなくても、あと半年、一年もしたら

  別の人を探しているかもしれない。

  それは俺だけじゃなくて、お互いに。」


 と言いました。


 「先のことは分からなくても、

  今好きだということを伝えたっていいじゃない。」

 
 と私が言ったら、


 「それは会っている時にいつも言ってるだろう。」


 と言われました。

 私はそれ以上何も聞けませんでした。

 最近私と一緒にいる時の彼は

 その場限りの恋と割り切っているようには見えなかったのです。

 彼は私に恋をしていて、私との時間を大切にしているように見えました。


 「初めに貴方が言っていた割り切った関係ということは、

  この半年間ずっと気持ちのどこかで意識していたの…。

  私には出来ないことだと分かっていたけれど、

  最近の貴方を見ていたら貴方も出来ないんじゃないかって思ってた。」


 私の言葉に彼は黙っていました。

 俺も割り切れないと言って欲しかったけれど、

 そうは言ってくれませんでした。



 それから、彼は

 相手の気持ちが信じられずに言葉で確かめたくなるということは

 自分の気持ちにも疑問が生じているからだと言いました。

 つまり、私の彼に対する気持ちや信頼が揺るぎの無いものであれば、

 相手の気持ちを問いただしたりはしないだろうと言うのです。

 「貴方は本当に私のことが好きなの?」という女の言葉は、

 「私は本当に貴方のことが好きなのかしら?」と聞こえ、

 「貴方は誰か別の人を探しているんでしょう?」という女の言葉は、

 「それなら、私も他の誰かを探すわ。」と聞こえるそうです。

 アメリカ人の英会話の先生の話によれば、

 “Do you love me?”とよく聞くのは日本人女性だけなんだそうです。

 アメリカ人女性の愛の言葉はいつも“I love you.”だと言っていました。




 決して約束しない彼。

 それは私を甘やかさないことでもあり、

 関係に一定の緊張感を与え続けることでもあるのでしょう。

 先日、肌寒い夜の舗道で、

 彼は自分のコートを私に着せ、マフラーを巻いてくれました。


 「私達は絶対に夫婦に見えないね。恋人同士にしか。」


 と私が言ったら、




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 永遠の愛の言葉はチョコレートみたいにとても甘くて

 耳に心地よいけれど、

 それは依存や怠慢を生み、恋を駄目にしてしまうこともあるでしょう。




 電話で彼に聞いてみました。


 「貴方は恋愛のことがよく分かっているのね。

  元カノにも私と同じようなことを言われて別れたんですか?」


 「いや、全くそういうことは無かった。」


 「えっ、そうなんですか?

  何の我侭も言っていないのに貴方に振られるなんて…。

  それならいっぱい我侭言っておいた方がいいですね!!」


 「みんなが自分みたいな女だとは思わないように。(笑)」


 最後はいつものように冗談を言い合って電話を切った私達。

 彼がいつも言っているように

 電話だと言葉が上手く繋がらなくてもどかしくなります。




 「私のこと好き?」


 の答えは男の態度から察して欲しいと有名な野球選手が言ってたっけ。

 私はなかなか素敵な大人の女にはなれそうにありません。



2009年04月11日(土) 長い一日


 色々なことがあった一日でした。

 久しぶりに行ったワインバーでは

 ホールスタッフが二名入れ替わっていました。



 私の小さな焼餅が原因で彼と口論になりました。


 「いきなり帰るってどういうことだよ。」


 お店を出るなり彼が声を荒げました。


 「理由は言いたくない…。」


 「俺、頭に来てるんだよ。

  急に帰るって言い出したり、GWは元彼に会うって言ってみたり。」


 「さっき、私がお店の外からメールしても全然気付いてくれないし。

  電話もしたのに…。」


 「気付かなかったんだから仕方ないだろ。

  理沙子が電話で席を外して何分も帰って来ないなんて

  よくあることじゃないか。

  俺にはさっぱり訳が分からないよ。」


 「お店の女の子と夢中になって話してたからでしょ。

  隣にいる私のことなんて忘れて。」


 彼は急に顔を崩して笑い出しました。


 「もしかして、焼餅焼いてるの?」


 「だから、理由は言いたくないって言ったでしょ。」


 「可愛いなぁ。」


 「すぐに私の気持ちに気付いてお店を出て来てくれると思ったのに。」


 「あんなんじゃ分かりにくくて、全く気付かないだろうが。」


 「あの新しい女の子、変わってるね。

  カップルの会話に入ってきて自分のことばかりずっと話してるし。

  私は前に働いてた女の子が好きだったのに。」


 「変わってるというより、無神経なんだよ。

  俺も客に対する言葉遣いじゃないなと思ったよ。

  でもそれをあの場で直接本人に言うのも大人気ないし、

  後で他のスタッフに一言注意しておこうかと思ってた。」


 彼は長くそのお店に通っていて、

 以前から働いている他のスタッフのことはよく知っています。


 「でも、楽しそうに話してたよ…。」


 彼はいつもフレンドリーなのです。

 それは相手の年齢や性別に関わりなくそうなのだけれど、

 何故かその日はそんな彼の態度に胸がチクチク痛んだのでした。



 ホテルに戻ると彼はソファーに座っている私の膝の上に頭を乗せて

 横になりました。


 「私は焼餅焼きなんです。」


 「知ってる。」


 「いつも私ばっかり焼餅焼いてる。

  Tさんは焼餅焼くことなんてないでしょ。

  いつも女の人に愛されてばかりだから…。

  新しいお母さんにもいっぱい愛されてたんだと思う。

  それはTさんがそういう風に振舞っていたからなんだけど…。」


 「それは…俺の一番痛いところなんだよ。」


 それから彼は若くして亡くなった彼の母親について話し始めました。

 それは以前聞いた話よりもずっと詳しいものでした。

 私の膝枕で静かに話をする彼の表情は

 ワインバーで女の子と話をしていた時とは別人のようでした。




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 彼は話を終えて起き上がると、

 私の顔を見ていつもと同じ口調で言いました。


 「何泣いてんだよ。」




 この夜、彼に抱かれて快感が高まるにつれて、

 彼の悲しみや孤独感が私の身体に深く刻まれるような気がしました。


 愛し合った後、彼の腕の中で長いこと話をしました。

 彼はまた旅行の話をしました。

 時間が空けられそうな日程が決まったらすぐに知らせるからと

 言いました。


 「元彼に会うって言ってたけど本当なのか?」


 彼は急に思い出したように尋ねました。


 「会ってもTさんは気にならないでしょ。」


 「最後に会いたいなら仕方ないじゃないか。」


 「もしかしたら、また抱かれることになるかも。

  それでもいいの?

  それとも、そうなったら別れるの?」


 「別れないよ。
  
  嫌だけど、七年も付き合っていた二人が会って

  そういう流れになることもあるかもしれないだろう。

  最後にそんな風にしたってどうせいいもんじゃないだろうけど。」


 「自分の方がいいって自信があるのね。(笑)」


 「俺は自信なんて無いよ。」


 「貴方は元カノと会った最後の日は抱かなかったの?」


 「勿論何もしなかったよ。

  そこでセックスしたら、

  煙草を吸いながらこの一本で煙草は止めると言っているのと

  同じことだろう?

  もし、元彼と会ってそういうことになっても

  俺にそのことは言わないでくれ。」


 彼の話を聞きながら、

 私はもう二度とあの人には会うことはないだろうと思いました。

 あの人と一緒にいても私はその間ずっと彼のことを思い出して

 会ったことを後悔するだろうから。



 彼に抱かれる度に彼と朝まで一緒にいられたらと思います。

 彼の腕の中で話をしながら眠りにつけたらどんなにいいだろうと。

 私がベッドを離れようとする時、

 彼は必ずもう一度と言って私を抱き寄せます。

 一週間もしないうちにまたすぐに会えるのに別れ際が寂しいなんて、

 私はいつからそれほど欲張りになったのでしょうか。



2009年04月07日(火) 食感


 昨日は彼と何度も訪れている和食のお店へ行きました。

 旬の野菜や魚を生かしたお料理がとても美味しい

 私の大好きなお店です。

 女主人はとても素敵な人で、

 温もりのあるカウンターや美しい食器、生け花や自筆のお品書きなど

 至るところに彼女の木目細やかな心遣いが行き届いています。

 彼にとっては十年来の行きつけのお店で、

 女主人とも気心が知れています。

 彼にはこういうお店が何軒かあって、

 そういう場所へ行くとつい彼が以前連れて来た女性と比べられていないか

 意識してしまうのでした。

 私が二人のプライベートな会話を他者に聞かれることを気にするので、

 最近彼はテーブル席を予約してくれることが多かったのです。

 でも、本来彼は好きな時にオーダー出来て、

 お店の人と気軽に話が出来るカウンター席を好みます。

 この日は平日の夜で空いていたので、カウンターの端っこに座りました。

 女主人の話はお酒や食べ物に対する愛情に溢れていて、

 そういう話を聞きながら食事をするのはとても楽しいことでした。

 初めは少し緊張していた私ですが、

 美味しい白ワインと日本酒で酔いが回ってきたせいか

 いつもと変わらない調子で彼とお喋りしていました。


 「本当はこういう食事が一番好きだろう?」


 「実はこのお店が一番好きなんです。」


 お互い饒舌になって二人だけの話で盛り上がっていたところで、

 私が調子に乗って携帯電話からこの日記にアクセスしました。

 彼は私から携帯電話を取り上げると

 最近の私の日記を幾つか読んでいましたが、




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 と言いました。


 「私がどんなことを考えているのか興味無いの?」


 「普段のコミュニケーションがちゃんと取れてるでしょ。」


 「今はそうですね。

  じゃあ、コミュニケーションが上手くいかなくなったら

  読んで下さい。(笑)」


 「しかし、暇だよなぁ。

  読む方も書く方も。(笑)」




 お店を出た後、私達はホテルのお部屋に戻りました。

 ベッドで抱き合ってキスしながら、


 「今日食べた筍、色っぽい味がしただろう。」


 と彼が言いました。


 「色っぽい?」


 吐息混じりに聞き返しました。


 「ああ…何とも言えない色っぽい食感というか…。」


 私は彼の言葉の意味を理解して、

 アルコールで敏感になっている舌を彼の舌に絡めました。



2009年04月06日(月) 桜の季節に想うこと


 彼と何の連絡も取らない日が続くと、

 この恋もまた錯覚であるかのように思えるのでした。

 あの人との7年間は既に曖昧な記憶の中に消え去ろうとしています。

 あの人の無関心や嫌悪感を示す表情はおぼろげながら思い出せても、

 あの人のどんな言葉や仕草に愛情を感じていたのか、

 あの人とどんな風に抱き合っていたのか、

 あの頃の日記を読んでも思い出すことが出来ないのです。

 たまに電話で話すあの人は

 もう私が好きだった人とは別人のように感じられます。

 7年間という長い年月でさえそうなのだから、

 もし今の彼と急に会えなくなっても

 半年間の想いなど容易く忘れてしまえるものなのかもしれません。




 去年の秋、まだ彼と付き合い始めの頃に、

 もし春まで私達の関係が続いていたら桜のトンネルを見に行こうと

 話していました。

 桜の咲いている期間は長くてもせいぜい一週間、

 その時期が二人の都合に合うかどうかは極めて微妙なところです。

 先日、私が諦め半分で、


 「桜のトンネル、遠いし、やっぱり行けそうにないですよね。」


 と彼に聞くと、


 「でも、一度も行ったことがないんだろう?

  桜のトンネルは見られなくても、




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 と彼が言いました。




 去年の今頃、あの人と飲みに行った帰りに見た神社の境内の夜桜。

 ライトアップされた薄紅色の花びらはとても綺麗でした。

 恋は儚い桜の花に似ています。

 その繊細な美しさは短い命だからこそ心に残るのでしょう。

 過ぎ去ってしまえばその美しさも幻だったかのように思えてしまう…。

 恋を美しいまま終わらせたいと望むなら、

 散り際を心得ておくことが大切なのでしょう。



2009年04月04日(土) 忘れないで


 朝の電話で彼は開口一番、


 「昨夜はメールしたまま寝落ちしちゃったよ。(笑)」


 と言いました。

 
 「いいですよ。いつものことだから。^^」


 「月曜日は会えるだろう?」


 「はい、多分。

  GWは忙しいんですよね?」


 「前に話した来客があるから後半からずっとゴルフだよ。

  ただ前半は普通に会えるよ。」




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 「まだ連絡取ってるのか。」


 「最近はあまり…だけど。」


 「何だか歯切れが悪いな。(苦笑)

  会ってもまた傷つけ合うだけだろ。」


 「私はもう大丈夫ですよ。」


 「理沙子がそうでも相手がどうかわからないだろう?」


 「仲直り出来るかもしれないから。」

 
 「したいのか?」


 彼は驚いているようでした。


 「ちゃんと会って仲直りしてから別れたいんです。」


 「俺は会わない方がいいと思うよ。」


 「Tさんが元カノと別れた時は?

  ちゃんと会って話し合ったんですか?」


 「そうだよ。

  会って『もう別れよう。』って言ったんだよ。」


 「Tさんが言ったんですか?」


 「ああ…そうだ。」


 「その時はもう冷めてたの?」


 「そうだな。冷めてた。」


 「言葉で傷つけようとするのは、まだ冷めてないからなのかな。」


 「そうじゃないのか。俺はそう思うけど。

  こんな話、電話でするもんじゃない。

  来週会った時に話そう。

  それまでまだ決めなくていいだろう?」


 「はい…。」


 「何でそんなこと急に言い出すんだよ。

  昨夜のメールでは全然そんな感じじゃなかったのに…。」


 「Tさんが返事くれないから…。

  色々考えていたら、そんな気持ちになったんです。」




 彼にしてみたら、どうして私が急にあんなことを言い出したのか

 不思議だったのでしょう。

 最近の彼は私の彼への愛情を確信しているようです。

 彼がそんな風に確信出来るのは、

 女性に愛されることに慣れているからだと思うのです。

 愛され慣れている人は本質的に素直で愛され上手です。

 私は彼よりずっとひねくれていて愛され下手な女です。

 この間のデートで言ったこと、彼はもう忘れてしまったでしょうか。


 「普段はなるべくメールはしないようにしているの。

  特に何の用事も無いメールが私から届いたら、

  それはSOSだと思ってね。」



2009年04月02日(木) マジック


 「今夜のオーダーの仕方は失敗だったな。」


 と彼が認めたように、

 テーブルの上にはまだ沢山のお料理が残っていました。

 私の前のお皿に3分の1ほど残っている春キャベツのパスタを見て、


 「それ、残り食べてやるからこっち手伝って。」


 と彼の前に半分ほど残っているピッツァを勧めます。

 これらより前にサーブされた

 アンティパストとシーザーサラダとフォカッチャとワインで

 既に私達のお腹は十分なほど満たされていました。




 「来週はいつがいい?」


 とスケジュールを見ながら彼が聞きました。


 「土曜日なら夕方から大丈夫です。」

 
 と私が言うと、


 「そんなに待てないだろう?

  月曜日はどうだ?」


 と彼が聞きました。


 『Tさんがそんなに早く会いたいなら…。』

 
 という言葉を私は赤ワインと一緒に飲み込みました。

 彼は私に待ちきれないと言って欲しいのです。^^


 「この日はゴルフだから夕方からなら会えるよ。」


 と彼が言って、

 その日のデートが終わらないうちから

 来週のデートの日時が決まりました。




 この日、抱き合った後、




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 と呟きました。


 私の身体や精神の中で彼が好ましいと感じてくれるものがあるなら、

 そのささやかな自信だけで日々の暮らしが愛おしく思えるのです。

 恋の火が燃えている間だけの儚いマジックだと知っているけれど…。


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理沙子

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