雑念だらけ
DiaryINDEXpastwill

【whoisMy】をOFF設定にしています。


2006年09月30日(土) 不思議

なんの変哲も無い生活を送っています。
一度仕事を変わったくらいで。

平坦な日々だと刺激が欲しいと思い、待ち望んでいた荒波にもまれて疲れると平凡な生活が欲しいと願ってしまう。
人は不思議。

懲りない私は欲の深い人間なんだろう。
反省してきたつもりなのに、彼を選んでいたんだから。

彼のせい、とは言わないけど
あれから「嫌いなもの」が増えた。
彼との生活でイヤだと感じたことが記憶の中でリアルに甦る。

「好きなもの」は減った。
あれこれ思い出すので手を付けたくない。
極端な話、好きな食べ物もそれにまつわる事柄を思い出すので食べなくなった。
好きだったこともしなくなった。

昔好きだったことをすると、なんとなくだけど罪悪感を覚えることが多い。
自分がイヤになり嫌いになっていく。


ただ、やりたくても出来なかったことは出来るようになった。
本を読む、手足を伸ばして昼寝する、好きな時間にテレビを見る、友達と話す・・・
ささやかなことだろうけど。

たぶん、私は今 幸せなんだと思う。



◇◇◇

もう少し何か書いたらこれは終わりにしようか、と思ってる。
今まで、自分の回りにあったわけの分からない感情を形にして再認識出来たんじゃないかな・・・と思えるようになったから。

◇◇◇


2006年09月28日(木) 本当にありがとう

家人が誰も居ない時間帯に友人宅を出ることになってしまった。
鍵だけちゃんとしてくれたらいいよ、と言われた。
長い間ありがとう、と友人にメールを送り、玄関で誰も居ない家の中に向かって頭を下げ、鍵をかけた。



友人宅で寝ていた頃は夢をほとんど見なかった。
が、新しい生活を始めたら 夢を見始めた。
例の「彼の部屋から逃げる時の夢」だ。
見るときは続けて毎晩のように。

今は回数が減った。
でも夢にあの部屋が出た次の日は本当にしんどい。
精神的ダメージが大きく数日間引きずる。



《手紙、出しておきました》

というメールが友人から来た。
友人に頼んだ彼への手紙だ。

それから3日くらいして電話したら

「アイツからメール来たんだよ、
《彼女からの手紙がきました》
って」

どんなこと書いてあった?

「うーん。
ほぼ諦めた、みたいなこと。
でもまだ多少の望みは捨てない、って。
あんなに僕達は心が通じ合っていたんだから、
それに手紙を読んだら彼女の僕への愛がまだまだ感じられるから、って。

でもまあ、ほとんど諦めてるみたいよ、
後はラッキーを待ってるんじゃないかなあ」

自分の都合いいように解釈する人だからねえ

「ほんと、その傾向があるね。
これで一段落ついた・・・かな?

あたしはアイツにメールの返事してないんだけど」

いいよ、いろいろありがとう

「落ち着いたらまた会おうね」

ありがとう



本当にありがとう。



友人との電話を終えて、ひとつ終わったかな・・・と、物事の区切りを感じた。
後は自分次第なんだろうと。



彼から友人へのメールはそれが最後だったそうだ。


***

今は平凡な生活。
平凡で穏やかで何も特別なことはない。
「普通」って、簡単そうで難しいな・・・とか思う。
退屈かもしれないけど大切です、私には。

自分を見失うのが怖い。

もしかしたら、刺激的な出来事や波乱万丈の人生はイヤでも訪れるのかもしれないけど、自らは求めません。

もう暫くこんな日々を過ごしたい。
わざわざ嵐や台風を呼びたくない。


2006年09月27日(水) 手紙

一ヶ月近くが友人宅で過ぎた。
友人への彼からのメールもほとんど来なくなった。
たまに来るメールには
《僕は諦めていません》
みたいなことが書いてあった。

諦めていないけど相変わらず行動はしていないようだった。

私は 彼に行動を起こしてもらいたい、探し出してもらいたいんじゃなかった。
やれるもんならやってみろ、みたいな気持ちだった。
何か行動を起こしても私は帰らないけど。
彼は何もしない、ラッキーを待ってるだけだ。
そんな彼を再確認しただけ。

そのうち
《せめて彼女の物だけでも送ってあげたいんです。
僕に会いたくないかもしれませんが生活に困るでしょうし。
住所を知りませんか?
あなたの家に送ったら彼女に届けてもらえないのでしょうか》
というメールが。

「うちに届いたものをヨウさんに渡すってことは、私はヨウさんの居所を知ってるってことよ、ね?
断っていいかな?」

もちろん
知らないし迷惑だって断ってください

「ついでに、物を全て残して出たってことはそういう覚悟だったんだろうって書いておくわ」




彼は所有欲の強い人間。
一度手にしたものはたとえゴミ同然になっても捨てたくない。
だから私が服や靴や大事にしていた物を捨てて逃げるなんて考えてもいなかっただろう、自分の価値観は絶対だから他人も同じと思っていた。



新しい仕事が決まり住む所も決まった。


手紙を書いた。
彼への最後の言葉。一方通行だけど。
私の住所も何も無しで名前だけ入れた。

『私の持っていた物は売るなり捨てるなり好きにしてください。
そうすれば私のせいで狭くなった部屋も広く使えるでしょう。
書類や通帳や年金手帳などは再発行するから捨ててください。
あなただけが全て悪いのではないと思います。
でもこれまでのことを考えると、
私達の何がいけなかったのか、なぜ私があなたから去るかを説明してもあなたには解らないと思います。
知りたければ自分で考えてください。
自分でこれからの人生で躓いて理解するしかないでしょう。
だから私からは何も説明をしません。
短い間だったけどお世話になりました。
もう会うことはありません、お元気で。』

そんな手紙を書いた。


それを封筒に入れ彼の住所を書いて友人に渡した。
今度の出張の時、投函してもらうことにしていた。

手紙を書きながら、彼にさようならのメールを送った日を思い出した。
あの時よりずいぶん冷静になれた。
そしてそれまでの自分は、なんてグルグルだったんだろう・・・と。

前に友人に言われた「グルグル」。

ようやく私は理解したような気がした。
自分がどれだけ狭い世界で浅い考えで小さいモノサシだったか、他者の言葉が解らなくなっていたか、自信を無くしていたか、そんなことがやっと・・・。
変な言い方をすれば、憑物が落ちたような感覚。

記憶の中、彼のあの部屋で小さくなっていた自分が見えた。
異次元、別の人間のようだ。
でも夢でもウソでもない、過去の事実。

そう思える現実に感謝した。


友人が出張に行く少し前の日、お世話になった友人宅を出ることにした。


2006年09月25日(月) 少しずつ平穏な日々へ

次の日も友人の携帯に彼からのメールが。


《彼女から連絡がありません、携帯を解約したのかもしれません、
別れは彼女の意思とは今も思えません、あんなに愛し合っていたんです、
今は自分のふがいなさを責めるばかりです、僕は最低ですね
彼女の気持を分かってなかったのでしょう、
もう一度彼女と話し合いたいです
なんとか連絡がつかないでしょうか、
あなたのことを彼女は頼りにしていました
必ず連絡があると信じてます
僕への連絡、そして僕の気持を伝えて下さい》


なんじゃこりゃ

綺麗すぎる。



友人も言った。
「言葉はすごく綺麗で、事情を知らない人には彼がすっごい善人に思えるだろうね・・・
でも穴だらけだよ、コイツの言ってる事。

コイツさあ
私のとこにヨウさんが居るって前提で話をしてるよね、
コイツのメールをヨウさんも読んでるって前提の文章だよ」


元々外面のいいヤツだ。
誠実で真面目で純情な男を演出するのは慣れていた。


何度も何度も、友人にメールがきた。
これは予想外のことだったし、彼女には申し訳なかった。

連絡があったらそっちに伝えるけど今のとこ何もありません、と彼女は返事をしてくれた。



その日、私が最後に送った荷物が届いた。
それまでの分と合わせてみて足りない物を買った。
ブラシ付きのドライヤーがどうしても欲しくて大型家電店で一番安いのを購入。
たしか670円。
無事動くので今でも使ってる。


その日の夜、友人と話した。
彼はここ(友人宅)まで確認にやって来るだろうか、と。


確信しない限り来ないと思う
恥ずかしいことをしたくない人だから
あなたに「彼女が居なくなりました」ってメールしたのが彼のなりふり構わない行動の限界だと思う
何かをするとしたら彼じゃなくてお母さんだろう
でもあのお母さんも知らない土地に行けない人なんだよ、
だから、灰色のうちは誰も行動しない、そう思う


彼女は、
「アイツの性格を一番知ってるのはヨウさんだから、ヨウさんがそう思うならたぶん当たってるだろうな。
ただ、逆上した人間はメーター壊れてるから、気を付けて過ごすに越したことはないね。
▲▲さん(元ダンナ)には私から気をつけるように言っておくよ。

ヨウさんがあいつのとこに居ないって分かったら、遠慮なく慰謝料の請求を始めるかもしれないけど。

それはもう仕方ないことだから。
ヨウさんが口出ししちゃダメだよ」


次の日あたりから 彼から友人へのメールが減った。
一週間くらい過ぎると2日に一通くらいの割合に。

私はその頃には 友人の協力を得て、新しい仕事新しい住処を探していた。
自分の足で立たなくてはならない。

『幸せになるんだよ』という前の職場のオバチャンの言葉を時々思い出した。

友人の住んでいる地域は近所付き合いが盛んなので、不審者は目立つしすぐに話題になるような雰囲気だった、
でも外に出るときは友人も私も一応辺りに気をつけた。



それでも精神的にずいぶん安定したのが自分でも分かってきた。
彼からのメールも減り、友人もホッとしたと思う。


2006年09月24日(日) あたり前の世界で

ホームのゴミ箱に封筒とストラップを捨てた。

懐かしい街。
私が数ヵ月前まで居た街。

あたり前の広い世界に戸惑う。
知ってる土地なのに。
異世界を見るような気持ち。
暫く入院した後、退院して街を歩いた時の感じと似ていた。
自分に自信が持てない。不安。不安定。
(その感覚は、この先しばらく続いた)

私は「金魚鉢から逃げて川に流れていった金魚」みたいなものだったのかも。

駅を出て真っ先に向かったのは携帯ショップだった。
新しい携帯を手に入れなくては。

一番近くのショップに駆け込み、新規で契約。
(ショップの人と話してて、自分が何か変なことを言っていないか気になった)
データを移動してもらったり手続きの時間がかかるので本屋に入った。

前から気になっていた本を買った。
緑の表紙にクローバーが描いてある、「GOOD LUCK」という本。

これまで自由に本が買えなかった、彼がやかましいから。
その本を駅の待合で読んで新しい携帯が仕上がるのを待った。

一時間後、ショップで携帯を受けとる時メールのやり方を説明してもらった、今までの携帯とは会社も機種も違ったし一番に使わなくてはならないのがメールだったから。


駅に戻って東京のKさんにまずメールした。それから私を助けてくれたこっちの友人に。
すぐにおいで、と返事が来たので電車に乗り彼女の町へ。

午後六時過ぎ。
駅で彼女は待ってくれていた。
懐かしかった、嬉しかった。

「よかった!
なかなか連絡ないからダメだったのかって心配したんだよ!」

私はひとしきり事情を説明した、友達と会ってから来たこと、計画通りに手紙をポストに入れれなかったこと、携帯を変えなくてはならなかったことなど。

「あのね」
彼女は、ちょっと困った顔で私に言った。
「あいつから私にメールが来たんだよ」


え!?


彼には彼女の住所も電話番号もメールアドレスも教えていないし彼は知らないはずだ。


「こんなメールがさあ」


彼女が私に見せてくれた彼からのメールには
丁寧な言葉で、私が急に居なくなったことが書かれていた。

彼女はいつものカバンしか持っていません、心配です、別れを意味するメールが来たのですが彼女の意思とは思えません。
僕たちは愛し合って苦労をともにしてきたのです。
事件でしょうか。でも間違っていたら何かと面倒な事になるので警察抜きで確認を取りたいのですが。なにか情報をご存じないでしょうか。
僕の至らない面はたくさん有ります、それはわかっていますが彼女とは何もかも話し合って今日がありました・・・云々


驚きもしない内容だった。いつも彼が言ってる言い訳の羅列だった。

私が驚いたのは
彼が友人への連絡先を知ってたこと、
それからそのメールにあったのだが、彼は私の元ダンナの住所や電話番号、メールまで知っていたことだ。
おまけに私の実家の電話番号まで。

ああ・・・わかった・・・

いくら探しても見付からなかった私の前の携帯だ。
あれにはいろんな情報が入ったままだから。
それしか考えられない

彼のメールには「心当たりはこれだけですが何か知りませんか」とあった。
彼が自分からそこへ連絡するんじゃなくて。
つまり「良かったらそこへ連絡してみて下さい、僕はしないけど」ってことだ。


彼があれこれ知っている、と思うと面倒だった。
この先も彼女へのしつこいメールが来るだろう。
あの性格だから電話はしないだろうが。
顔を合わさず自分を上手に隠せるメールでの問い合わせを何度もしてくるだろう。


「なんにも知らないって返事しておいたよ。
『ヨウさんはあなたに言えない苦労があったんじゃないの、
あなたはヨウさんのことを愛してるのかもしれないけど、努力ってした?』って。

そしたらさ、
『僕なりの努力を必死でしたました、
でも僕は人生経験が少ないから足りない部分があったと思います、
もう一度彼女と人生をやり直したいのでなにか連絡があったら必ず僕に教えてください』
・・・だってさ。

教える?」


冗談じゃない
戻っても同じことの繰り返しだ、彼はもう変わらない

友人と食事をして家に。
その間にも彼からのメールが何度か。
そうとう焦っているみたいだった。

「焦ってるってことは、まったく気が付かなかったんだね。
ヨウさんのこと。
もう逃げたりしないって安心してたんだろうね」


私は友人の家の一室を貸してもらった。
ここで寝ていいのか・・・嬉しかった。

ひさしぶりに 静かな暗い部屋で、足を伸ばして、広い布団で眠った。
別世界、開放感。


***

その日 本屋で買った「GOOD LUCK」
内容が身にしみた。
今もそれに書かれていた言葉を心で繰り返して活力に。



2006年09月23日(土) ざまあみろ

私が乗った列車は定刻に東京を発った。
窓際に座って景色を眺めた。

さようなら、二度と来ることは無いでしょう、
短い間だけどお世話になりました。

脱出した、
確かに脱出した。
でもまだ終わっていない。



彼へのメールを打つことにした。

手紙を何度も書き直したのと同じようにこれも何度も打ち直した。

東京はどんどん遠ざかった。

メールを一旦保存。

彼との生活、彼とのやりとり、彼の部屋、彼との出会い、
思い返すうちに窓の景色はどんどん変わる。

携帯を見たら彼からのメールが。


《休憩は無いのか、休ませてもらえよ》


無いよ、
もう働いてないから

心配なの?
何が心配?
私が心配なんじゃないよね
自分が不安なことがたまらないだけだよね
100%じゃダメなんだよね、、何でも
私は全力でぶつかったつもりだよ
結局どんなに私が自分をすり減らしてもキリが無い
彼の欲求、彼の願望には際限が無い



保存していたメールを送信した。

さようなら、あなたの知らないとこに行きます、もう帰りません

と書いてあるメール。

ちゃんと送信出来たのを確認した後、オフラインにして電源を切った。
オフラインにしておかないとオンにした時メールやら着信やらが入る。
別に電源をオフしなくても良かったんだが、なぜかそうしたかった。
オフラインにしても彼からの何らかのメールや電話が入りそうな感じだた。そんなはずは無いのだが。



あ〜
終わったんだ・・・

メールを送信したら、初めて終りを実感した。


あんなに好きだったのになあ
なんだったんだろ
なんでだろ
何がいけなかったんだろ


流れる景色を見ていたら涙が出た。
こんなふうに終わるなんて思ってもみなかった、あの頃は。

ああ
疲れた
何もかも疲れた

終わったね



携帯のストラップを見た。彼がくれたストラップ。

外して手紙の封筒に入れた、後で捨てよう。

今頃彼はパニくっていることだろう
目に浮かぶ、目の前で見てるようだった。
仕事もしなくちゃならない、でも彼女が逃げた、連絡がつかない、探しに行く勇気も時間も無い
あれだろうかこれだろうかと原因を考える、でも分からない
誰に相談したらいいかわからない
狭い空間でクルクル回る



ざまあみろ


灰色の空を見てポロポロ泣きながらつぶやいた。


脱力感。

もう傷付きたくない、傷付けたくない、
もう恋なんかしたくなかった。誰かを好きになるのは止めよう、本気で思った。

しっかりしろ、私
何のために逃げたんだ
もうすぐ降りる駅。

ストラップを入れた封筒を捻って丸めた。


2006年09月20日(水) 「元気でね」

図書館で私は考えた。
どうしたものかと。

決めた、メールで最後のお別れの挨拶をしようと。
メールには真実があるとあれほど執着する彼だ、いいんじゃないか、と。
じゃあ私の携帯はどうしたらいいか、
そのままにしていたら彼からの電話やメールが来るだろう。

オフラインにしてしまおうか、電源を切ろうか

ええい、その時決めよう

携帯の取説を読んで使ったことのない機能を覚えた。


図書館を出て待ち合わせのショッピングモールに向かった。
時間があったのでそこでパジャマを買った。

10時半ちょっと過ぎ、友人Kさんはやって来た。

「あたしの仲のいい人はみんなどっか遠くに行っちゃうんだよ〜
すっごく気の合ってた近所の人は東北に帰ったし、ヨウさんも居なくなっちゃうし。
あー、ほんとさみしいわぁ〜」

私も、彼女がいたから慣れない仕事も楽しく出来た。
仕事の不満も言い合って気持ちが楽になった。

「もう会えないのかなあ」

たぶん・・・もう会えないね

「さみしいなあ〜
でも、メールするよ。離れても仲良しだよ」

うん、忘れないよ



一時間くらいお茶しながら話をした。
他愛も無い話ばかりだった、彼女は なぜ私がここを離れるのか、なぜ電話をしないでほしいと私が言ったのか深く追求しなかった。
ただ、「ヨウさん〜、荷物、少ないね」とだけ言った。

近くのN駅まで一緒に歩いた。

「元気でね!」

Kさんも元気で
ありがとう、すごく楽しかったよ


寂しかった。歳も同じだったし友達と言えるのは彼女だけだったから。
忘れない。


電車に乗った。
東京駅まで行かなくてはならない。
この頃は乗り換えもちゃんと迷わず出来るようになっていた。

時計を見たら12時前。
そろそろ彼が活動を始める時間だ。
お昼に私からの《休憩です》メールが来るのを待っているはず。

彼が外出するかどうか分からないが、それまでには 「どうにも手の届きそうにない場所」 に移動したかった。

東京駅に着くと切符を買って時刻表を確認した。
次のに乗ろう。間に合う。
乗り場に並んだ。

午後1時過ぎ。
彼は私からのメールが来ないとイライラしてる頃だろう。
ウソの休憩メールを送る気にはならなかった。
そんなもの送っても次のメールでウソだって分かるのだ、どうせ。
彼が怒っていようがイライラしていようが、もうどうでもよかった。


***


Kさんとは今でもメールのやりとりをしている。
お互いの仕事のグチとかだけど。
それでも嬉しい。
もう一度彼女に会ってみたい。










2006年09月19日(火) 嫌いなジャンルの話


個人的な話(?)です。
そして話が前後します。



***

昨日テレビを見てたら新しいホラー映画の紹介をしていた。



私はホラー系があまり好きじゃない。

ホラー映画を見たら暗闇が怖い、とか、ひとりが怖くなる、とか、自分がそんな目にあったら・・・とかじゃない、
あの独特のジメジメな世界が好きじゃないのだ。
好きなジャンルじゃない、ということ。
ノンフィクション物が私は一番怖い。
リアルだ。
自分をそこに置き換えてしまう。
夜も眠れなくなることがある。


***


彼は超の付くホラーマニアだった。
毎年新しいホラー小説は買い占めて怖さのランキングを付けていた。
ジメっとして暗いほど「良い」らしかった。

私に携帯ゲームを珍しく貸してくれたと思ったらそれ系、
付き合ってた頃も「今日の映画は見ろ」と言ったらそれ系、
病院の待ち時間に必ず読め、感想を後で話せ、と本を貸してくれたらそれ系・・・

見なかったり読まなかったら怒った。

実行したらしたでからかった。
怖かったろう、さぞかし怖かったろう、お前は気が小さいからビビったろう・・・
とても嬉しそうだった。

怖くない、と答えたら

「怖いやつほどそう言うんだ、お前はそういう奴だ、どうだい今夜から夜道が恐ろしいだろ〜〜
霊がお前を見てるんだよ・・・フフフフフフ
ほらほら、お前の後ろに〜〜〜ククク〜〜〜〜
ビビってんだろう!?クク〜〜〜子供だね〜〜〜」

そのくせ、私が体験した説明のしようのない不思議な話をしたら

「やめろ〜!
不思議ちゃんなふりをするな!!
そんな話して自分は他人と違うみたいな顔するな!!
そんな女と付き合ってるなんて、

気持ち悪〜い!!」

と、本気で叫んだ。
毎回同じ反応だった。



ますます嫌いになった、ホラー。
「気持ち悪〜い」という声を思い出す。


2006年09月15日(金) 行ってきます

よく知らなかったけど、テレビって何時になっても何か放送してるんだな、と思った。
テレビをつけたまま仕事をする彼。

追い込まれないと本気になれないのだろうか、番組がだいたい終わると灯りを消した。

ああ、止めるんだ
頑張らないとダメなんじゃないかな
あなた、二つのことを同時に出来ないでしょ
土日は私のことでイッパイイッパイになるから仕事、進まないよ、きっと
それもあなたの自業自得なんだよ
あ、でも この状態はお前のせいだって私に当り散らしてたのはもしかしたら私を困らせる演出だったのかな
私を追い込んで疲れさせて自分のことだけ考えさせるようにするって言ってたもの

それにしてもなんでいつもギリギリにならないと仕事しない?
締め切りまで2週間あっても動くのは最後の一日か二日だけ
その間に他に何でも出来るはずだし早めに仕事してたら新しい仕事依頼を断わらなくて済んだこと何回もあったでしょ
何日もアイデア練ってるんだって言うけど
悪いけど、私が働いてるからいいやって甘えが見えるんだよ

私のことを、不倫体質じゃないのに俺を誘惑した、向いてないのに自由に恋愛した、責任取れと罵ったことがあるよね
当たってるとしよう、それは。
そういうことでかまわない。
ならば私も言いたい、あなたは、共同生活が出来ない向いてない
生活力がないのをいつも理由にしてたけど、そこじゃない
口では綺麗事を並べるが、主従関係しか望んでいない甘えるしかしない、なのに、籍だの子供が欲しいだの夢のように簡単に言わないでもらいたい

だから
あなたがこれからどうなろうと知らない



部屋が暗くなったらウトウトした。
うっすら明るくなり始めた頃だ。

ウトウトしたまま、朝が。
携帯の目覚ましで時間がはっきり分った。

彼は寝ていた。
私は枕元の携帯充電器と取説をバッグに入れた。目は彼、手はバッグ。
ファスナーを閉めたら
「何してるの」

彼が目を覚ました。いや、彼もウトウトだったのだろう。



・・・目薬

とっさに出た言葉だった。

「え?」

目薬が無い
目が乾くの

私が目薬愛用者だと知ってる彼は疑わなかった。

「俺の貸してやるよ」

ありがと


手渡された彼の目薬を射した。


朝食、朝のテレビ、彼の朝の愚痴と嫌味。
いつも通り着替えた。朝食のヨーグルトは食べきった。私しか食べない、残ると腐るだけ。

化粧品はもうバッグにある。
朝使ってるのは「予備と残り物」だが彼は気が付かない。
何日も前からこれしか使ってみせていないから。


頭の中で計画してた通りの服を着た。
彼には、いつもの服装にしか見えないはず。
少し重いバッグを気付かれないよう肩に、ゴミ袋を両手に玄関に立った。

じゃあ行ってきます

彼はトイレに行くついでに玄関のドアを開けてくれた。


「気を付けて」

最後に聞いた彼の声はそれだったと思う。


早く部屋に入れ、と念じながら振り返ると彼はドアを開けたまま、階段を降りる私を見ていた。

もう会うことはないね。
軽く手を上げて さようなら 心の中で告げた。



いい天気だった。

困った。
通りに出てしまった、とりあえずゴミを指定場所に出した。

手紙をどうしよう。
後でソッと戻って、ポストに手紙を入れようか
いやだめだ
彼は音に敏感だ。
階段を登り降りする足音で誰か分かるらしい。
戻ると彼とバッタリ顔を合わすかもしれない。

困った。


私は橋の下まで歩き、少し考えた。
水鳥も、ホームレスの人たちの「家財道具」も見納めだ。


何度も書き直した手紙だけど、諦めよう。
なんとかなる、絶対なる。

友人との待ち合わせまで時間がある、私は図書館に向かった。



***

彼がどんな顔で私を見送ったのかよく覚えてない。


2006年09月14日(木) 一番長い夜・2

「でさあ〜」
彼は続けた。
「『時々一緒のとこ見るんですよ』って言われてさあ。
ヘーって思ったわけよ」

で、あなたはなんて答えたの

「ええ、まあ・・・って。
でさあ、そいつの話だと、あちこちで見かけたって言うんだよ。
で、そいつの知り合い(これも同業者)も、『○○さんって、彼女いたんですね、見かけました』って言ったんだって」

ふうん


で、何が言いたいんだろう・・・と思ってたら

「もうおしまいですよ」
と、さらにニヤニヤしながら
「こんなに見られてます!
俺達はそういう仲なんです!
目撃されてるんですよ!!」



目撃・・・
芸能人じゃないんだし、男と女が一緒に歩いて何が特別なのか・・・
付き合ってて一緒に出掛けたら誰かに会うだろう、わりと。
コソコソと密会してるつもりでも見られてるものなんだから。



「でさ、聞くとこによると〜
Fさん(同業)の彼女も年上らしいんだよ・・・
で、お前と一緒でバツイチらしくて・・・

いやあ〜よかった〜〜〜多いんだよ、彼女が年上バツイチって人〜〜〜

俺だけじゃないんだよ〜
おまけにみんなに見られてるんならさあ、わざわざ紹介する手間が省けたじゃん〜〜〜
どうしようかと、正直さあ、思ってたわけよ。
お前のことをどう紹介したらいいもんかと・・・
俺のイメージも変わっちゃうしさあ〜〜〜

でも、よかった〜
俺だけじゃないんだよな〜〜〜って」

嬉しそうな彼。
悪気は無しに言ってるんだろうが、そんなに私の経歴がイヤだったのか、と 怒りというより呆れた。
明日にはこの人を騙して逃げるんだ、と思っても情けなかった。


私の肩を ポン と叩いて、ものすごく真剣な顔を作って

「見られてるんです。
もう、目撃済みなんです。

お前にはそのつもりで居てもらわないと困るんです。

お前は俺より、いろんな意味で人生の先輩です。
だからしっかりしてください。
俺達はもう、そういう関係なんだと自覚してくださいよ」





「好きになったら バツイチなんて珍しくない、歳の差なんて気にならない」

昔、私にそれを熱く語った人が一番気にしていたわけだった。




その日の出来事を語るだけ語ったら気が済んだのか、彼はテレビを見て笑っていた。

「お前が寝たら、俺、仕事するから」

締め切りは?

「月曜。月曜まではけっこう忙しいんだ」

そう、じゃあおやすみ


携帯の目覚ましをセットするふりをして設定を戻し、枕元に置いた。

月曜かあ・・・
私はもういないけど

今夜も灯りは消えないだろう。
どのみち眠れそうになかった、ゆっくり寝てられない気分だった。
寝たふりをしていよう、と決めた。
長く感じるだろうが確実に時間は過ぎるのだ、と言い聞かせた。


彼は暫くの間テレビを見てようだ。
深夜番組が始まった頃、仕事に取り掛かった気配がした。


2006年09月13日(水) 一番長い夜

帰り道、彼からメールが。

《気が変わった、もう帰る。買い物をしたいならH駅前で待て》

返事を送った。
《夕飯のおかずはあるよ》

すぐに彼からの返信が来た。
《面倒くさいんならいいです》

あ〜やっぱり・・・みたいなメールだった。
買い物があるなら待ち合わせだ、と言われたら、ありがとう待ち合わせましょう、と答えなくてはならないのだ。
私の用事があるから出掛ける、私が行きたいから行く、じゃないとダメなのだ。

面倒くさいよ、と思いつつ
《行きます》
と返事をしたら
《最初からそう言え》



私にとって これまでで一番長い夜が始まった。



彼と駅で落ち合ってひと通り彼の行きたい買い物コースを歩いた。
それから帰って食事の用意。

夕食を済ませ、私は携帯を彼に気付かれないように部屋着のポケットに入れた。
携帯の設定は既に サイレント、バイブなし、着信イルミネーションなし、にしていた。
明日朝会う約束の友人Kさんからメールや電話がかかるかもしれない。
彼に見られたりしたらどうしようもない。

食器を拭き終わってそっとポケットを覗いたらメールが。
トイレで水を流しながら読んだ。
(彼は携帯の開け閉めのカチ、という音や操作の音にさえ敏感だった)
案の定、友人Kさんから。

《明日朝の待ち合わせを30分遅くしてもいい?なんなら明日朝はっきりした時間が決まったら電話しようか?》

じょうだんじゃない〜〜〜
電話はするな〜〜〜

《時間はそれでいいよ。私、待ってるからゆっくり来て。電話は、悪いけどしないで欲しい、ごめん!》

返信して、携帯を風呂場の洗濯物の中に隠し、私はすぐにシャワーした。
部屋に戻る時は脱いだ服の中に隠して、着替えを片付けるふりをしながらバッグの中に戻した。

シャワーの間に携帯を見られないようにしなくては・・・と思っていたのでクリアー出来てホッとした。
頭の中で、明日の朝することを繰り返して確認してたら

「お前、携帯は?」

彼が言った、ドキリ、としたが


バッグにあるよ
なんで?


「いや、見あたらねーなあ、って思って」


ほら、と見せたら フウン、と鼻で笑うような返事。


セーフ!
心の中で叫んだ。


今日が給料日だと彼は知っている。
私は彼の前に3万5000円置いた。
家賃半分と文句を言われないだけの光熱費だ。
私は今払った分を使う事は無い、が、給料日に渡すことに決まっていた。

くれてやる、これで自由になるなら。

ありがとう、と彼はそれを自分の財布にしまった。
「2馬力だよ」と、言う彼。

それからニヤニヤし始め、その日あったことを思い出したらしく話しだした。

「今日〜同業の知り合いに会ってさ、
○○さん(彼)、彼女出来たんですよね〜って言われてさあ〜・・・」



2006年09月11日(月) ゴミ箱

仕事最後の日。

その日のお昼休みは食事会になった。
近くに出来た新しい店に行った、お餞別代りだからと言われご馳走になった。

私は気になることがあった、
この職場で一番仲が良かった女性(帰り道によく話してた人)が2ヶ月前に辞めていたんだけど、彼女には今回のことを全く話していなかった。
彼女が辞めてからもメールのやりとりを何度もしてたけど私がここを辞める話は敢えてしていなかった。
どこで間違って彼に知られるような事が起きるか分からないので。
ここを離れてからちゃんと連絡しよう、と思っていた。


食事会から帰ると、事務の人が言った。
「Kさん(その女性の名)、ロッカールームに来てますよ」

すごいタイミングだ・・・と、ロッカールームに行ってみたら、彼女は紙袋に残したままだった上着とかを詰めていた。


私今日で辞めるんだよ、明日にはここを離れるからね
と言った。
彼女は驚いて、なんで早く教えてくれなかったんだと怒ったが
「じゃあ、明日そこ(例のショッピングモール)で会えない?」

そこ、か・・・大丈夫、朝なら彼は出歩かない。
彼が午前中から活動するのは遠くに行く用事がある時だけ。

朝でもいいかな、と言うと
「いいよ、私今は働いてないから」

時間変更とかの連絡はメールでしてね、と頼んでおいた。


仕事が終わって、社長やみんなに挨拶をした。
「頑張ってね、人生いろいろあるけどまだまだ長いんだから幸せになろうね」
と、オバチャンたちに励まされ、社長の奥さんから手渡しでの給料を貰った。
「短かい間だったけどありがとう、元気でね」と。

私はロッカーを片付け、身の回りのものを詰めていた紙袋を持って会社を出るとコンビニに向かった。
ガムテープで袋に封をし、友人宛に送った。

会社の裏の大きな公園に行き、友人にメール。
《荷物送りました》と。
そして消去。
バッグから明日部屋のポストに入れる予定の手紙を出して読み直した。

彼は今日は納品。
これは間違いない。徹夜していたから。
《仕事終わりました。帰ります》
と、いつものメールを送った。
暫くして返事が。
《おつ。俺は今アキバ。もう少し遊んで帰る。お前はサッサと帰るように》
わかった、と返事してため息。

バッグからエプロンと上着を取り出し、ガムテープでグルグルに丸めた。
ふた付のゴミ箱には、来月からこの公園のゴミ箱を撤去します、と張り紙が。
ギリギリ間に合ったわけじゃん・・・と、私はそれらとガムテープをふたの下に押し込んだ。
もう使わないから洗う必要がない。もう要らない。
そして宅急便の控えも捨てた。

上着はナイロン製で、彼がくれたものだった。
ひどく着せたがった記憶がある。


2006年09月10日(日) ヒトの端くれ

彼への手紙を書いた。
当日ポストに入れる予定のやつ。

昼休み、公園のベンチで書いた。

別れる意思、もう戻らない意思をはっきり書いたほうがいいと友人にアドバイスされていたのでその辺は気をつけて書いた。
書き終わるとバッグの内ポケットに仕舞っておいた。

次の日、昨日書いた文章をもう一度読んでみると書き直したくなった。
そんなことを何度か繰り返した。
書くたびになんとなくニュアンスが変わった。




夜、シャワーしてトイレの掃除をして部屋に戻って、寒いので毛布に包まった。
「そんなにトイレの掃除をするな」
と言われた。
「洗剤が減る」から。
毛布に包まっていたら暖かくなって眠くなってきた。
彼の本の山にもたれて居眠りをしたらしい、
蹴られて怒鳴られて目が覚めた。

「・・・いい加減にしろよ!」

なんで怒っているのか分らなかった。

「誰の本だよ、それは!!
俺と話すのもイヤなんだな・・・寝やがって・・・!」

私は またか という気分でトイレに。
戻って来たらジロジロ睨まれた。
「まったくもう・・・だからブタなんだ、お前は」
と、お決まりのセリフ。

ちょっと時間が経った頃、テレビを見ていた彼がニヤニヤしながら言った。

「なんでお前は、俺にひどいこと言われても平気なの?」

ニヤニヤして言うことか・・・と少し腹が立ってきたが黙っていたら

「好きなんだろ、俺にブタとか言われるの・・・」


好きじゃない


どうでもいいや・・・と思いながら答えた。

「俺がいくらひどいこと言ってもじっと耐えれるんだもん・・・
ククク・・・
やっぱ、お前 ドの付くMだよ・・・」
後半の言葉を粘っこく強調する彼。

違うよ

「違わないよ〜〜〜
絶対そうだよ〜、そういうやつほど違うって否定するんだよ〜

ぷぷ〜〜〜

ドMなんだあ〜〜〜」

違う

「だったら証明しろよ〜
出来ないだろ?」

出来なくても違う


ニヤニヤしっぱなしの彼。
ドM、という言葉がそうとう彼のツボだったのだろう、繰り返しては喜んでいた。



絶望的な気持ちにはもうならなかった。
腹が立つばかりだ。

出口もあても無くただ「踏ん張れ」と言い聞かせてた頃とは違い目標がある。
どんなに悔しくても情けなくても「踏ん張れ」と言い聞かせたら本当に踏ん張れる。
それは友人のおかげだ。
「人間の感覚」を取り戻したような気がした。

彼は「俺のプライド」「俺の存在」「俺を否定するな」とよく言っていた、
私だってヒトの端くれ、プライドのひとつもある。
人でなしな人生だけど人格がある。

「おもちゃ」の生活から脱出するまでは頑張れる。
それまではおもちゃのふりをしてやる。


私は黙って毛布をかぶって横になった。
かぶらないと夜通しの灯りがまぶしい、明日は納品らしいから徹夜なんだろう。
彼は テレビを見ながら私をからかうようにまだ何か言っていた。



明日は仕事が最後の日。
それなりにすることがあるから頑張らねば。




2006年09月09日(土) コインランドリー

日曜日。
私は午後からコインランドリーに行った。

彼は仕事をする、と部屋に篭ったきりだ。

いつもの通り洗剤を入れてボタンを押した。
その日はTシャツが多かった。
押入れに溜めていた彼の洗ってないTシャツだった。

待ち時間、缶コーヒーを買って近くの公園に。


洗濯の待ち時間は私のホッとする時間だった。
彼からのメールも少ない。

昨日の彼の行動を思い出した。

カッとなって押さえが利かなくて自分の怒りでさらに高ぶってしまうのだろうか。
自分自身で火種を点けて煽ってるように思えることが多い。
自制が利かない、命令されるのが嫌い、精神的に幼いとか子供っぽいとかじゃないような気がする。
恐ろしいと感じることも多い。

正直、昨日は「この人、もしかしたら頭がおかしいのだろうか」と思ってしまった。
感性が鋭いのは知ってる。
でも、というか だから、というか 危うい。
きっと最初私は、そんな彼に惹かれた、でもそのうちそんな彼が解らなくなった、怖い。

昨日は「早く食え」と急かされて、マクドナルドで昼を済ませ、アキバを回り始めたら機嫌が戻った。
(彼は食べるのも、ものすごく早い)
その日のことは、マクドナルド事件以外はよく覚えていない。


ランドリーに戻って乾燥機に。
狭いしベランダに出てはいけないし洗濯物が多いので部屋に干せないのだ。
毎回ここで乾かしてから帰っていた。
乾燥が終わった洗濯物をたたみ、私の靴下と下着をバッグの奥に隠した。
明日会社のロッカーに入れるために。


洗濯の済んだ物を詰めた袋を両手に部屋に帰ると 彼はテレビを見ていた。
仕事に詰まった、休憩、と。

私はバッグから コンビニで買ったお菓子を出した、
「何にも買ってないのか」と、彼にバッグを探られるのがイヤだったから先に出した。
それから袋の中を出して片付けることに。
狭い、この作業はけっこう辛い。

「おいおい・・・いいかげんにしろ」
彼が不機嫌になった。
「また押入れかよ〜、さっき少し(中が)減って嬉しかったのに。
また元通りかい・・・テンション下がるなあ・・・
これだったら、汚れたままで風呂場に置いとくほうがいいじゃん」

洗わないと着れないでしょ
仕方ないよ


狭いと思うなら物を捨てなさい、片付けなさい、とは言わなかった。
好きにすればいい、と思った。
私が居なくなったら洗濯なんかせずにいればいい、好きにして、と。
どうせこれが最後の洗濯なんだから。



2006年09月08日(金) 最後の土曜日・2

話、戻ります。
すみません。

「マクドナルド事件」の続きです。



「並びたければ」と言われ彼の顔を見た、怒ってる。
怒ってるんだけど私が困るのが楽しみ、とも感じられた。
分かってはいたけど「S」だ、この人。


はあ、とため息が出てしまった。
「早くしてくれ」
と言われた。


またか、いつものことだ、と気を取り直して

じゃあ、並ぶね
時間かかりそうだね

「仕方ないだろ。お前が食いたいって言うんだから。我慢しろ」
イライラと返事する彼。

さっきの(駅の近く)ほうは人が少なかったねえ
あそこなら少し早かったかもね


パアっ・・・と顔に赤みが差したかと思ったら、私の肩をドン、と突いた。
そして店から飛び出した。

え?、と後を追うと
来た道を足早に戻っている彼が見えた。

まさか、とは思ったが戻っていた。
橋を渡ったとこで確信した、駅の近くまで戻る気なんだ、と。


角を曲がるとマクドナルドの前に彼は立っていた。
私を睨みながら店内へ。私は後に続いた。
やはりさっきの店よりも空いていた。

ぐい、と肩を摑まれた。
すごく怒っているのにやはり楽しげだった。
私を相手になんかのストレスを発散してるのだろうか、とその顔を見て考えていたら


「ほら・・・お望み通りに連れてきてやったぜ・・・
お前は、さぞ満足だろうよ・・・・

さあ食え」

驚くよりも呆れてしまった、正直。
冷たい声だな・・・と思いながらそこに並んで彼に声をかけた。


じゃあ待っててね
私は食べるから。あなたはどこで待ってる?

「おい、ちょっと待てよ・・・」

脚で軽く蹴られた。
振り返ったらポケットに手を突っ込んで彼が立っていて

「俺はいらない、なんて言った覚えはない・・・
お前と同じ物でいいや・・・さっさと注文しろ」

淡々と言う。


なんなんだろうねえ・・・この人は・・・と、思いながら並びなおした。

楽しいんだろうな、きっと。
数日前に映画を見に行った時の彼とは別人のようだ、
でも私が今まで一番見てきたのはこっちの彼のほうだ。

どっちが本当なんて無いんだろうけど。


2006年09月07日(木) 夢で疲れる

◇◇◇

うなされたわけじゃないけど、明け方夢を見た。
ううむ、やっぱり疲れる。


***

一回仕事に行って、そこで職場の人と「じゃあ、あとでね」と約束やら打ち合わせとかして、部屋に帰って昼食を取った。
部屋はいつもより広かった。
二階建てになっていた。

彼も居て、一緒にテレビを見た。
ひどく楽しそうな彼。

もう一回仕事に行くから、と言うと彼は部屋から居なくなった。

私は歯を磨いた。
磨きながら、仕事じゃなくて出て行く日なんだ、でも歯を磨いてるなあ(←わけが分からないけど)とか考えた。
うまくいきますように、と思った。

階段を下りて靴を履く私。

『ねえ、カギをお願い。中から締めてね』
と言うと彼が奥から出てきて
『なんでお前が締めないの?持ってないのか?』
『あるけど出すのが面倒だから』
と答えた。
本当は部屋に隠して置いてある。
『カギ締めたら俺はトイレに行くよ(←ほんまにわけが分からない)』
と、言った。

いいよ、と笑うと彼も笑っていた。

じゃあね、行っています、と荷物を持って部屋から出て
行ってきますじゃないんだけど、と思った。

通りに出たとこで、彼が着いて来ないか心配になって振り返った。


歩いた、荷物を肩に掛けて。
途中、約束をした職場の人や友人と合流。
日が暮れ始めたけど歩いた。駅に向かって。

こんなに駅って遠かったかな、と言うと誰かがタクシーで行こう、そしたら誰かが歩こうよ、と言った。

歩こう、と私も言った。

早く駅に着きたいんだけど歩かなくてはならないような気がした。

どうして彼は機嫌がよかったんだろう、と考えた。

カーブを曲がると道が分かれてて、まっすぐ行くと駅。
もうすぐ。


次の場面では、もう電車に乗っていた。
無事に乗ったね、と言うと そうだね、と返事が返ったが誰も居なかった。

そしてまた考えた、どうして彼はあんなに機嫌がよかったのだろう、と。



***


何度も何度も目が覚めて、
ああ、違う、夢なんだよな・・・済んだ事だよな、と確認した。
夢ならいいんだ、夢なら、と。
もう一回あそこから出て行く事はやりたくなかったから。

まるで、高校受験の夢を見てて途中で目が覚めてホッとするような感じだった。
(私がよく見てた「焦る夢」です)
で、またさっきの続きを見てしまって・・・また確認して、
で、疲れる、のパターン。

やりたくなくても夢で体験してしまう、
何回でも体験できるわけだ。


それにしても夢ってほんと、めちゃくちゃ。

◇◇◇




2006年09月06日(水) 最後の土曜日

土曜日。
ここでの、最後の土曜日。

天気のいい日だった。

アキバに行こう、と言われた。
仕度して部屋を出る頃には午前11時近かった。

このまま出掛けるとお昼は抜きのパターンが当たり前になっていた、
歩き回るので私はけっこう辛い。

電車に乗る前に私は提案した。
何か食べよう、と。

彼は困ったように「え〜!?」と笑って、あまり乗り気じゃないのが分かる表情をした。

電車を降りたら駅のすぐ近くにマクドナルドがあるでしょ
そこでなんか食べよう、私が奢るから

「う〜ん」
電車の中でも顔は笑っていた。
乗り気じゃないらしく、それ以上返事をしてくれなかったし話題を変えてきた。

けっこう疲れるんだよ、ちょうどお腹が空くから
ね、先に食べてから歩こうよ

「(店の)中に入ってたら思ってるよりも時間がかかるからな・・・」

しつこいなあ、みたいな顔で苦笑いしているように見えた。
でも、本当に、そのまま何も食べず歩くのはしんどい。
これまでも「アキバ探索」は辛かったので、私はいつもより食い下がってしまった。

奢るから、いいでしょ
食べようよ

駅に着いて改札を出た。
「ええ〜!?」と言ったきり、はっきりと返事をせずに彼は歩き出した。
階段を上り、曲がると私の言っていたマクドナルドがある。
彼はその前をさっさと足早に通り過ぎた。
私はものすごい速さで歩く彼に着いていった。

こんな行動の時は、大抵怒っている。

以前も、職安帰りの私と納品帰りの彼がこのマクドナルド前で待ち合わせをして私が「俺の予定より」10分近く遅れたことがある。
その頃は乗り換えにあまり慣れてなくて時間がかかったのだ。
謝ったのだが彼は
「待つのはかっこ悪いんだよ!俺を待たせるな!」
と激怒した。
そしてものすごい速さで歩き出し、私を置いて行ってしまった。
一緒に居る人のことはなんにも考えていない歩き方。
私を置き去りにしたいんじゃなくて困らせたいのだ。




どんどん歩いた、グルグル回った、やっと追いついたら私のよく知らないとこだった。
彼は別のマクドナルドの前にいた。
さっきの店よりもずいぶんの客で時間がかかりそうな。

わざわざ、人がたくさん並んでる店に連れて行ってくれたのだ。

ぐい・・・と、私の肩を押して耳元でこう言った。

「さあ並べよ、並びたきゃ、な」



2006年09月03日(日) 思い出

「映画、見よう」

朝、突然言いだした彼。

「お前の仕事が終わったら行こう、駅前のホール。
今日はレディースデイだから女は1000円で見れる。
俺が久しぶりに奢ってやるよ」

仕事が終わり、一旦部屋に戻り軽く食事を済ませホールに向かった。
駅前のホールの地下一階が映画館になっている。
私は初めてだった。

彼は朝言った通りに私の券も払った。
本当に珍しい・・・と内心思った。

機嫌がいい。
映画の好きな彼、好きなことが出来るからか。
自分が今までこのホールで見た映画の話とかをしていた。

私たちが来た時はそうでもなかったのに待っている間に人が増えた。
女性が多い。
レディースデイ効果だろう。

前の上映が終わり入れ替えになった。
中はけっこう暖かかった。
ホール自体が新しいので何もかもがまだきれいだった。

私たちは並んでシートに座った。

思えば、一緒に暮らし始めて初めて映画を見に来た。
付き合っていた頃はよく一緒に見たのに。
彼は私が仕事に行ってる間に見てたらしいけど。
そう、彼は映画が好きなのだ。

予告の後、始まった。


私は付き合っていた頃を思い出した。
優しかった。
その日の彼は、昔を思い出させた。
でも、昔の愛情が熱意が蘇るわけではない。
時間は流れたのだ、あれから。
続かない優しさだって知ってしまった。

優しかった彼、それはそれ。
変わったんじゃなくて、お互いに気が付かなかったのだろう。

そして時間は戻らない。
戻らなくていい。戻ってはいけない。

いろんな思いを噛み締めながらスクリーンを見詰た。



***

おそらく、これが 彼との最後の思い出だ。
「良い」思い出。

悪い記憶が多いほどこういう記憶は、はっきり残る。


嫌な思い出はまだまだ続いた。







2006年09月02日(土) 会社の話

郵便局に郵便物の転送届けを出した。
いつからの郵便物を転送するか日付を書く欄にその予定の日付を書いた。

でも区役所に住所変更の届けは出さなかった、と言うか出せなかった。
怖かったのだ、住所を異動して知られるのが。
大丈夫かもしれない、でも怖かった。

後で郵便のやりとりでも変更出来る事を知り、そっちを選んだ。
実際に住民票の異動を届けたのはずいぶん後に。
しばらく恐ろしかったのだ。


***

仕事が終わり一旦部屋に戻りまた彼と買い物に出るという生活を続けていた。

ある日、買い物先で会社の事務の女の人にエスカレーターで会った。

軽く手を振って笑顔だったのでホッとした。
余計な事を言わないかちょっと心配したのだが。
例えば、もうすぐ(会社から)いなくなっちゃうね〜とか。

彼がひどく機嫌の悪い顔をしていたからかもしれない、
ただでさえ無表情な彼が怒ると本当に怖い顔になる。
(ちょっと前に些細なことで不機嫌になっていた)


前にも書いたが、みんな私に気を使っていたのだ、使ってくれてたのだ。
余計な事は言わない、その横に居る男がもしかしたら原因かもしれないから、いろんな噂があったから。



例えば、何処かで私に会った、
そしたらひどく機嫌な顔の男が一緒に居て私は下を向いていた。
私とその男はたいてい一緒に買い物をしているがいつも男は不機嫌な様子。


例えば、会社の側の路地に男が居た。
会社の様子を気にしてるのだが、男性社員が見に行くと背中を向けたり携帯をいじり出す、
私が帰る頃居なくなる。


例えば、私があまり普段の生活の話をしない。
何を隠してるんだろうと思ったりする。
毎日しつこくメールが来る、あからさまに私が困っているのが分る。


それらが合体?してあれこれ推測を呼んだらしかった。
そこへ私が仕事を辞める、なんかある絶対、ということになったらしい、私の知らないとこで。
辞める話をした時、同じ担当の若い女の子がのことを教えてくれた。
・・・知らなかった。

さまざまな推測と私の現実が完全に違うわけじゃないから笑うに笑えなかったが。

会社にはなぜかバツイチ女性が多かった、だから個人の事情には敏感だけど寛容、という背景もあった。
バツイチ女性は「社長コレクション」と呼ばれてた。

みんないい人だった。感謝してます、今でも。
懐かしいです。


ワガママなH君、彼女とうまくやってんだろか、
モテモテな事務のSちゃん、その後彼とはどうなった、
オバチャンたち、まだまだ頑張ってるらしいけど無理しないで、とか。

もう会うことはないだろうけど忘れません。



2006年09月01日(金) 魔法

籍のことについて次の日も彼から話が出た。

「だって、お前と夫婦になるために俺は今日まで頑張ってきたんだから」と。

何を頑張ったんだろう、と思ったが言わなかった。

「いいかい」
私の目を見、両肩を掴んで穏やかにゆっくりとした口調で私を説得し始めた。
「お前への愛は一生変わらないんだよ。
こんなに愛してくれたかい?前の旦那は。
お前と一緒になれないなら、俺たちが今日までしてきたことは無駄なんだよ。
悔しくないかい?
幸せになって世間を見返そうよ、俺と。

俺みたいな生活力のない男と一生なんて不安かもしれない、でも、愛があれば大丈夫なんだよ。

俺と一緒にこれからやってくる試練を乗り越えよう、
俺と一緒に責任を果たそうよ」


私は、まるで何かのドラマみたいな感じだよな・・・と妙に醒めていた。
昔ならいざ知らず、もう通用しないよ、その作った真剣さは・・・とまで思った。
結局は「責任」に話が行くし。
彼の不安はそこしかないのだろう。

そしておそらく、だが
彼の母親も息子ひとりに慰謝料を払わせるのは無理だから夫婦にしてしまって私の稼ぎをそこに当てよう、と思ったんじゃないか、と。
私たちを応援してるんじゃなくて息子を助けたいのでは、と。

きっと私は、彼の母親にすれば
『純真で純情で優しい息子を誑かした悪い女』
に、違いない。
逃げ出せば更に『悪さ』が増すはず、
が、もうこうなったらどう思われても構わなかった。




悪いけど、私は籍は入れません
お母さんがどう言ったか知らないけど入籍は私たちのお互いの問題です
どんなにあなたが私を説得しても、入籍しません



・・・殴られるか、いや 彼は顔を殴らない。



ハンっ・・・と呆れたようなため息をして手を下ろした。

「なんだよ・・・俺の魔法がもう効かないんだ・・・
俺の言葉にはもう効力がないんだ、

変わったんだよ・・・お前が」


そうか、やっぱり自分の『効果のある言葉』『効果のある表情』を知って使ってたのか。
『魔法』を使っていた、と手の内をバラした彼にちょっと驚いた。

でも、魔法なんてない。
あっても、こんな場面で使ってはいけない。



男と女の形は夫婦だけじゃないでしょ

「結局俺だけか・・・」

何が?

「ひとりで一生、借金して払い続けるんだ・・・きっと」
諦めたように情けなさそうに フッと笑った。




でもこの人は知ってる、どのみち私を傍に置いてたほうがいいってことを。
仕事を増やす気も無い。
それに、いざとなれば自分の親がなんとかしてくれると思っている。
覚悟が無いならヤバい道に踏み込んだらいけないんじゃないのか。
そんな風に考えるようになったんだから終わってるんだ、私も。
変わったのは私か・・・
そうなのかもしれない。
変わってしまったのなら、それでよかった。
開き直りなのか、サバサバした気分だった。



あー、もうー!!と頭をかきむしるような動きをして
「お前の好きにすればいいさ・・・
お前が、俺のために、って気持ちで自分から進んでやってくれなきゃ意味がないんだよ・・・
忘れるな、俺の愛は一生のものだからな」
彼は背を向けた。
昔なら、こんな行動や言動が怖かったし機嫌を取らないといけないと思い焦ったけど。
もしかしたら私を焦らしビビらせるための『魔法』だったのかも、それらも。




好きにします、と心の中で答えた。

この先何度、籍についての話を振ってくるか分からないけど、何度話しても私の答えは変わらないよ、と。




メールは受け取っておりません。すみません。

[LINK] 「モラル・ハラスメント被害者同盟」
モラハラで苦しむ方々へのメッセージや皆さんの体験談があり
私の心の支えとなりました。

ヨウ