My life as a cat
My life as a cat
DiaryINDEXpastwill


2013年11月29日(金) 美女と野球

会社の野球部の忘年会へ。野球など見たことがないのに、なぜか退職した同僚の引継ぎで数年前からマネージャーという名ばかりのポジションに置かれ、年の暮れに忘年会に参加するのがもっぱらの活動だ。日頃はシャイな彼らも、酒の席ではよく喋ってくれる。中身は知らないが、リリー・フランキーの著書のタイトルに「美女と野球」というのがあったが、彼らの興味はまさにこの二つに集約されるのではないかというシンプルさを会話の中で感じた。屈折していなくて、まっすぐ、気持ちの良い人々だ。

30代で教授をしているアメリカ人の知人が発した言葉で強く記憶にのこっているものがある。

「僕は人生の中でこれだけはしないと決めてることがあるんだ。それは男達とパブに集って、スポーツと女の話に明け暮れること」

典型的なアメリカの田舎の風景が目に浮かんできたが、そこにすんなり溶け込む気はないのだという彼の人生に対する姿勢の高さをひしひしと感じた。そうじゃなければ、30歳そこそこで教授などにはそうなれるものではないのだろうけど。しかし、こういう非凡な発想を持つと人間はより多く苦悩する。彼にとっては目の前にある″典型的な光景″に溶け込むことも、苦痛であるに違いないが。わたしは彼のような人が好きだし、苦悩のない人生に価値を見出してもいない。どちらがより良いという優劣はないが、「美女と野球」に生きる男達は彼よりもずっと幸福感が漂っている、というのは事実だ。

と、酒のまわった頭でぼんやりそんな感想を持った。孤独に試験勉強に追われる夜の多い年だった。だからこそ、たまにやってくるこんな賑やかな夜は特別で楽しいものだった。


2013年11月26日(火) 生きる知恵

パリの街角で湧いた疑問について、カミーユ君に尋ねてみた。

「フランスは移民問題(貧困と治安)が深刻だというけど、パリの街に寝転がっているホームレスはみんなフランス人と思われる白人ばかりなのはどうして?」

「だって移民というのは、そもそも貧しい自分の国から出て外国で生計をたてようなんて人達なんだよ。フランスまで来たという事実だけで、もうその生きるための賢さは身に着けてという証拠でしょ。それに移民同志のコネクションは強力だから、寝る場所がなければ助け合うよ。だからホームレスはフランスで生まれて、勉強も仕事もせず寝転んでるフランス人だけなんだ」

確かにね。日本に出稼ぎに来る外国人だって、ホームレスにはならないもんな。

東欧などでは冷え込みの強まるクリスマス前になるとホームレスの死亡が増えるという。富も太陽も平等には降り注がない。でもだからこそ生きる知恵が必要になる。燃え盛る暖炉の脇でクリスマスツリーのオーナメントをデコレートする家族がいて、その前の通りでは寒さに凍えて死んでしまう人がいて、という光景はあまりにも切ない。


2013年11月22日(金) 見ていてくれたんだ

「日本の野菜レシピ」より″チーズ漬け″を作ってみた。塩もみして押したキャベツにレーズンとベイビーチーズを合わせるだけのシンプルなレシピ。飽きのこないやさしい味だ。ボール一杯食べてしまう。この本は、人気の「野菜の便利帳」シリーズなのだが、野菜ごとに目次がひけて、思い立ったらすぐに作れるシンプルなレシピばかりなので、キャベツ一玉とかジャガイモ一袋とか買った日にはこの本をひいてみる。ベジタリアンでも食べられるレシピ満載だ。「世界の野菜レシピ」のほうも買ってみようかと考え中。

自分のファームや庭で採れた野菜などを分けてくれる年上の同僚が、わたしのデスクの上に置いてあったカレンダーのカバーをかけた本とビニールカバーをかけた手帳を見て、

「いいね、ちゃんと物を大事にしてるね!」

と褒めてくれた。20代の女の子に、″きゃぁ〜、その髪型似合ってます〜″と言われるのももちろん嬉しいけど、誰にも見られてないようなところで自分がしっかりやってることにをちゃんと見て評価してくれるのは、やっぱり年上の40代以降の女性なのだ。その人が着々と人生に積み上げてきたものからくる余裕が伺える。こんなことを言える大人になりたいね。彼女は目に付いたことを軽く言っただけに過ぎないのだろうけど、わたしには何よりも嬉しい褒め言葉だった。


2013年11月20日(水) Très joli!





















母を連れて昭和記念公園へ。空は青く澄み渡り、木々が綺麗に色付いていている。広い園内を写真を撮ったりしながら2時間かけてゆっくりと歩き、コーヒーを買って原っぱで寝転がって日光浴をした。電車に乗って遠出することを億劫がるようになってきた母も、それでも来てよかった、と喜んでくれた。それにしても年の功なのか、単にガーデニングが好きなせいなのか、母は植物に詳しい。説明書きなど見ずともその名前は特性を知っている良いガイドだった。母がひとつだけ知らなかったのはスズカケノキだ。これはオーストラリアの公園などではよく見かける木。葉っぱが大振りで、寒くなると綺麗な黄色に色付く。水鳥の池の周りにずらりと植えられていて、その景色はかつて″My garden"と呼んだパースの公園を思い出させた。

沢山日光を浴びて、沢山歩いた。心地良い筋肉の疲れに、うとうとと居眠りしながら電車に揺られて帰った。

東京の秋を見ずに去ったカミーユ君に写真を送るとすぐに返事がきた。

″Très joli! (すごく綺麗!という意味)"

そして来年仕事でまた東京に来ることも決まっているとも書かれていた。でも会いたいのかなぁ、わたし?会ってまた別れるの?複雑だなぁ。


2013年11月19日(火) 悪い冗談

週末に試験も終わってほっと一息。久々にコトコト夕飯を拵えて、映画を観ながらゆっくり食べた。今年はさつまいもが豊作なのか、低価格で、とても甘い。″北海道産″と自慢げにうたっていても南瓜はアタリ・ハズレが大きいが、はずれた場合はポタージュやケーキとなり、当たるとこうやって煮物になる。

先週はなんだか心がボロボロだった。夜は誰とも口をきかずひたすら孤独に試験勉強。さらにちょっと風邪気味で心身共に弱っていたのに、慰めてくれるはずのカミーユ君がくだらない悪い冗談を言った。いつもなら、適当にあしらえるような冗談も、神経過敏になっているからぐさりと突き刺さる。口もききたくないという気分になっていたら、あちらは週末中ずっと気にしていたようで、日曜の夜に連絡をくれた。悪い冗談は、顔を合わせて楽しい時間を過ごして、その中で言われるのと、久々に話した相手に顔も見えないツール(チャットやメール)で言われるのではとても受ける側の気持ちへの作用の仕方が違う。それに女の人は体温の上下に気持ちもつられやすいのだ。ひとつ勉強になった。


2013年11月16日(土) Fly high

翼を持たずに生まれてきたのなら、
翼を生やすためにどんな障害も乗り越えなさい


とは、ココ・シャネルの名言。実の父親に捨てられて、孤児院で育ったとか、そんな不運な生い立ちはないけど、最初から上手に飛べるような翼を持っていないことには変わりない。わたしなんかは人並の努力じゃダメなんだろうな。人の倍やらないとね。


2013年11月13日(水) 必要なものだけ

ベッドの下を掃除しようと物をどかすと、色んなものが出てくる。ボールペン、洗濯ばさみ、何かのメモ。クロエちゃんが転がして遊んで、手の届かないところに転がってそのままになっていたのだろう。どれもこれも発見されるまで探しもしなかったものばかり。必要な物しか買っていないつもりでも、それは単なる思い込みで、本当は大して必要じゃないものばかりなのだ。失くしたら必死に探すものだけ手元に集めて暮らせたら、どんなに美しいだろう。

土に還らない物を買う時はとても慎重だ。それでも"縁がなかった″かのように、家の片隅に忘れ去ってしまうものがある。

そういえば土に還らないスーパーマーケットのプラスチックバッグ。最近、近所でも続々と有料化されてきている。この町に越してきたばかりの時、買い物に誰もバッグを持参してきていないことに驚いた。それが有料化された途端にピタリとみんなエコバッグ持参で買い物に来ているではないか。これまた驚きだった。一枚5円。結局タダだからもらっていただけで、本当は不要なものだったのだろう。


2013年11月01日(金) ニッポンのミカタ

マヨネーズ工場で、黄身は製品に使われ、卵の膜は肌の再生を助けるとして化粧品に、殻は気泡がうまく湿気をコントロールする効果があるとして、砕いて紙に貼り付けて壁紙になる。ゴミはゼロだ。家庭の揚げ物などから出る廃油は集められて、濾過されて、燃料となり車が走る。高度成長期に飛ぶように売れて、ブームが去ったら粗大ゴミとなり始めたピアノは、綺麗に傷を取り、磨き上げ、調律して、甦らせて、海外に輸出する。日本のピアノは質が良いと定評があるが、新品は高いため、やや安価な中古は人気があるそうだ。ピアノを作った人も、ピアノの最初の持主も、磨いて製品にして売る人も、またその買い手も、関わる人全員がハッピーであるということが素晴らしい。

それにしても。。。トピックとはずれるが、車や楽器は日本製の物というのは信頼が厚い。日本人だけが贔屓目にそう思うのではなくて、海外でも定評がある。生来の生真面目で繊細な気質がそうさせるのだろうと思うのだが、納得の行くものを製作して、そこに買い手がつくというのはなんと恵まれたことか。粗悪な製品ばかりを生み出すと言われる国だって、低賃金の労働力と量産を要求されているからに過ぎないのかもしれない。彼らに十分なお金と時間を与えれば、日本も顔負けの良い物を創るかもしれない。阪急のメニューの偽装などと騒いでいるが、きっとあのメニューに書かれたものは″理想″であったのだろう。しかし、理想を追い求めれば価格が跳ね上がる。この国は良い物づくりを出来る資質が整っているというのに、一方で製品が無闇に買い叩かれて、その現実を前に作り手の高尚な理想もくじかれてしまうこともあるのだろう。

″たけしのニッポンのミカタ″、金曜の夜に放送するのは″モッタイナイ″面白い番組だ。

「これからの物づくりは再生や廃棄のことまで考えて作らなければいけない」

というたけしの言葉があったが、どう循環させるよりも、そこがそもそもだ。

(写真:金曜の夜はまったりテレビがいいね〜 by クロエ)


Michelina |MAIL