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扁桃腺にはじまって、耳がまたダメになって眩暈、あげく帯状疱疹というのかどうか、身体中に蚯蚓腫れのような発疹？ なんだこれ？ まで出てきた。いちいち説明するのが情けなくて、もはや恥ずかしくて、体調が悪いの、とごまかした。そっか、お大事に、と答える声の調子が変わるのはいつだろうかと、ため息をつく。
■ブラックホールに言葉を投げ入れているつもりはない。
■「どうせ分かってもらえない」「分かるわけがない」が己のアイデンティティになっていやしないか。
■求められてもいない言い訳や訊ねられてもいない説明を準備するのは時間の無駄だ。それほど世間に対して申し訳の立たないような生き方をしていない。
■今更自信がない、というのはみっともない、と同義。
| 2007年03月29日(木) |
キーパンチャーの憂鬱 |
ただ生きられただけの、物語る意志すら持たない事実の羅列が、圧倒的な重みをもって、押し寄せてくる。孤独な生の無数のヴァリエーションが脅迫的な行進をデスクの上で続けるものだから、迎え撃つ指は震えて、怯えて、いつもの精彩を欠いていた。老いたくない。老いたくない。たったひとりで、老いたくない、けれど。
点滴を打ちにいって、そのあとは、パソコンを触ったり、本を読んだり、ケイタイでメールのやり取りをしたりして、ちょっとだけ打ち解けた、くつろいだ気分で過ごした。ご褒美みたいな、一日。
けっこう穏やかに、あっさりと着陸したはずなのに、扁桃腺が腫れて、発熱。余計なことは考えないよう、うまく防衛機能が働いている証拠。
もう二度と会えない、ということが、どういうことか分かっていないから、そんなふうにあっさりと、別れたりする。いつか泣くよ。いつかきっと、遠い未来、静かな雨の日の朝に。
地面がぐらっと揺れたあと、ヘッドセットから聞こえてきたのは紛れもなくキミの声だった。ちょっとしたアクセント、０８からはじまる市外局番、まさか、そんなことが、あるはずがない、と考えて、そう、絶対に、あるはずがない、と納得したとたん、涙が溢れて、嗚咽した。キミがいなくなったことに、まだ慣れない。
頭の片隅で警鐘が鳴り始める。今日一日を通してその響きは刻一刻大きくなり、オマエハヒドクバカナコトヲシヨウトシテイル、と聞き取れなくもない。温い雨が頭痛を助長する。雨は凍るように冷たいか、若しくは痛いほどに激しく降らなくてはならない。こんな雨に濡れても、勘が鈍るだけだ。割れそうな頭を抱えてさて、どうするんだろう。
それにしても性懲りもなく、よく飛ぶ。何度羽をもがれても、何度傷を抉られても、今度ばかりはとどめを刺されたと思ったけれどそれでも飛ぶ。夜の中を、一直線に、たった一人のもとへ、迷いなく、躊躇なく。これが最後だ、と、どの瞬間にも思ってきた。だけどどれも最後じゃない。何度だって飛べる。飛んでみせる。何度叩きつけられたってかまわない。
勢いだけで乗り切ってしまうこと、と今月３日に書いているが勢いがつきすぎてずるずると上滑りを繰り返し気づいたら次のお昼になっている。こんなにもめいっぱいの日々が突然終わったら、きっと寂しく感じるだろう。うまく着陸できるかどうか、心配になってきた。
省略してもなんら差し支えのない一日。差し支えるような日があるのかと問われれば多分ないけど。
我より偉く見える日よ。すべての選択は常にどこか綻びているのだから、多分お互い様だとは思うが。
| 2007年03月19日(月) |
Lion and Lamb |
だから温めたミルクを飲んでたくさん眠った。そのほかにできることなんて何もなかったから。案の定、甘ったるい夢を見た。幼さと不可分の若さを恥じて、窮屈そうにしているライオンと、怯えたふりの上手な子羊。馬鹿馬鹿しくて、起きたとたんに冗談にしたけど。
| 2007年03月18日(日) |
never was the cornflake girl... |
電池が足りなかったみたい。最近ではもうあらゆるところで枯渇していて、ついに内臓まで干からびたみたいで。まるでミルクをかけないまんまのコーンフレークのようだと、思うのだった。
なんだこれなんだこれなんだこれ。21:15頃から尋常じゃない動悸と吐き気。22:05最初の嘔吐。悪寒。ベッド退避。22:25二度目の嘔吐。23:00三度目。蘇る救急車のサイレン。明日も仕事なんで当該時刻に藁人形に釘打った或いは愛を叫んだ方は申し訳ないけど明日にして。
前髪と頭頂部にはストレートパーマを、毛先にはゆるくパーマをかけた。くりんくりんしていていい気持ち。こんなことで手に入る幸せなんて薄っぺらいもんだよな、と思うけど、「あたし化粧なんてしないし（そんなことしなくても愛されてるし）」とシミだらけの肌をさらしてふんぞり返ってるよりマシでしょ、とかなんとかえらく根性の悪いことを書いてみたりするのも女心ってことで。
またしてもライブ直前、ほとんどぶつかるようにして会った女がいたが、さりとてこちらは２３インチのクラッシュデニムにミリタリーワンピース、真っ赤な爪にグレーの目、厚底スニーカーで武装していたためなんらのダメージを蒙ることもなかった。ふん、足元にも及ばぬわ、といっぺん言ってやりたい女心である。
酔いつぶれてみた夢のなかで奇妙に明晰な言葉で叱られた。曰くもう、すべてがおっしゃるとおりなので、参ってしまってしょんぼり目覚めたら３時。とある人からいただいたメールで、という設定だったけど、結局は自分の深層心理に叱り飛ばされたわけで、わかっているならなんとかしろよ、という話。
騙されて、囚われて、それでも笑っている。巨大な諦めを背負って少年の背が丸くなり、罵声を浴びた少女の肌が年を取る。そんなただ、損われるだけの毎日だから、せめて、手を繋いで、誇りなき生を、精一杯、庇いあって。
| 2007年03月12日(月) |
just a little bit harder |
日ごろの睡眠不足を解消するため気合いをいれて眠った。１３時間くらい。おかげさまでからっぽの一日を、チンザノエクストラドライをグレープフルーツジュースで割って、ごぶごぶ飲んで満たす。そこにジャニスが染みたりして、また明日から、just a little bit harder、な感じでやってみようかな、と思う。
今日一日の会話が正しかったかどうかをいちいち確認して―ああ言えば良かった、こういう運び方もあった、と、人形芝居を繰り返し、疲れてしまう。発した言葉は取消しが効かず、同じ会話をやり直すことなどできないのだから、そんな無駄なこと、やめておけば良いのにね。
おふとんと同じで、ちょっと恋しい、くらいがちょうど良い、なにごとも。たとえ、傘がなくて、雨に濡れることになっても。
最近では花も見ない。コートの襟を立てて歩く。名前もなく、宛先もない、感情のようなものをつま先で蹴りつけながら。日々が硬い。変更の余地がどこにもない。こんなに寒いのだから、仕方がないか。桜が咲いたら。こぶしが咲いたら。何が変わる？何か変わる？
どこをどう歩いたのか覚えていないが、ふと足を止めると高校生の頃授業をさぼりに行った喫茶店の前だった。むっとした蒸気と煙草の匂い、年月の滓が染み付いた薄茶色の壁、喫茶店はカフェよりずっと暖かい。ブラックコーヒーを飲むようになったのは大学院に入ってからのことで、あの頃は巡回の教師が通りやしないか、どんな言い訳をしようかと、びくびくしながらミルクティを飲んでいた。今日、怯えることは何もなく、寝不足の頭に濃いコーヒーを流し込みながら、ややこしい問題に整理をつけた。
脳内ビジー状態につきアウトプット不可。
適わないことばかり、
敵わないことばかり、
叶わない、ことばかり。
だから今日はサイダーじゃなくてビール。
サイダーが飲みたくなるときというのはたいてい極端に疲労しているときである。喉に絡みつく偽善を洗い流し、１８階から雨に濡れた街を見下ろす。ため息からは嘘の匂いがする。貴方はごまかしとはったりをとうに見抜いている。分かっているから、そんなふうに微笑まないで。
実際どうにかなる。ちょろいもんだ（とかなんとか、こうしてくだらない経験を重ねることで次第にしたたかになっていくのである）。どんなにいやな時間であっても、歯を食いしばってじぃっと一秒一秒カウントしていればそのうち終わる。24hoursは誰の前にも平等である。
いやだな、と思ったら負け。行きたくないな、と思ったらどうしても足がすくむ。一歩でも引いたら総崩れ。とにかく勢いだけで乗り切ってしまうこと。夜はヴェルモットと薬で塗りつぶす。毎朝、賽を投げ続ける。時計の針は止まったりしないのだから、どうにかならぁな。
狭い狭い世界では消去法が一般的であり、選択は常に消極的な理由しかもたない。だから何も選ばないほうが良いのだろう。来月の今頃はもうすべて忘れているはずだ。
「ん、いいよ、俺やっとくし。」
「いや、すごい、難しいと思うから。」
「お電話かわらせていただきました」といって処理を引き継いでその後えんえん受話器に向かって頭を下げ続けたことが何度も何度も何度もあるのでなんら特別なことではないのは分かっているがすごーくうれしかったんだ、できなくていい、分からなくていい、無理なこともあるよな、と言ってもらえたことが。
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