おうち鑑賞

2011年05月30日(月) 『グッドナイト&グッドラック』


『グッドナイト&グッドラック』Good Night, and Good Luck. 
               2005年/日=仏=英=米 ジョージ・クルーニー監督


まず物語の状況設定が、ニュース映像等の台詞の理屈によって行われているので、

1959年代のアメリカの「赤狩り」を知っていれば解釈の助けになると思うが

導入部分から、この作品の世界観がわかり辛い。

登場人物たちの、闘いや、苦悩、葛藤が直接的に響いてこない。

表現し切ってるというよりナルシスト的。自己満足の領域の範疇に見える。

たぶん思いのたけが先行して、それを表現する描写が不足しているのだ。

ゆえに感情移入や自己投影がイマイチできない。

白黒のトーンや構図が特別に美しくもなく

全編、モノクロで表現しているだけの意味をなしていないと思う。

むしろカラーの方が伝わったのではないか。

気持ちに響く、魅力的なテーマではある。

このような社会的なテーマであればあるほど、突き放した客観的な視点と

緻密な描写が必要、と考えさせられる。



ツカミ1  エドワード・R・マローがパーティ?の壇上でマスコミの現状を明かす?
      スピーチを始める。
ツカミ2  エドワード・R・マローとプロデューサーのフレッドが
      空軍中尉が共産主義者とみなされ?除隊処分になった事件を
      ニュースで扱うことについて話し合う?

ポイント1 エドワード・R・マローとプロデューサーのフレッド
      空軍中尉除隊処分のニュースを番組で扱う?

Mポイント エドワード・R・マロー、圧力に屈せず共産主義者取締り?に
      冠するニュースを伝える?

ポイント2 エドワード・R・マローとマッカーシー上院議員との
      番組内での対決?

エンディング エドワード・R・マロー司会の番組、視聴者の支持(電話)を得る?
      ツカミ、冒頭部分に戻る。









2011年05月28日(土) 『フェイス/オフ』


『フェイス/オフ』Face/Off 1997年 ジョン・ウー監督


久々に見る。『男たちの挽歌』を初めて見た時の衝撃はなかった記憶はある。

バレエのような銃撃シーンや兄弟の強い絆など、ジョン・ウー節だ。

チョウ・ユウファがはまりそうな登場人物のキャラクターである。

ショーンやキャスターにチョウ・ユンファが見える。

タイトな『パルプ・フィクション』を見た直後のせいもあるのだろうが、

ジョン・ウー監督のなにわ節に、少々鼻白む気持ちで見た。

誤解が障害となり進行させる物語は個人的好みじゃないんだよな、やっぱり。

総体的に面白いとは思う。




ツカミ   ショーンの6歳の息子が殺される。

ポイント1 ショーン、細菌テロを阻止するため、キャスターとの顔の交換手術を受ける。

Mポイント  キャスターが昏睡から醒め、医者を脅しショーンの顔を移植させる?or
       ショーン、脱獄する?

ポイント2 ショーンが隠れていた家にキャスターが銃撃。









2011年05月26日(木) 『パルプ・フィクション』


『パルプ・フィクション』Pulp Fiction 1994年 クエンティン・タランティーノ監督


初見かも。『レザボア・ドッグス』とごっちゃになってたかも。

理屈じゃない。シビレる、カッコイイ、面白い。




ツカミ 1  レストランでのパンプキンとハニー・バニーの強盗。
ツカミ 2  ビンセントとジュールスの報復(落とし前)銃殺。

ポイント1  ビンセント、ボス(マーセルス)の妻ミアのお守りを頼まれ
        ミアを迎えに来る。

Mポイント   ビンセント、ブッチに殺害される。

ポイント2  冒頭のツカミ1の状況設定に戻る。

エンディング ビンセントとジュールス、パンプキンとハニー・バニーの
        強盗を収め処に収める。


「ブックエンド」というのだ。









2011年05月23日(月) 『ヘアスプレー』 『魔法にかけられて』


『ヘアスプレー』

『魔法にかけられて』Enchanted 2007年 ケビン・リマ監督


ジェームズ・マーズデンが出演していることがわかり、見てみることにした。

『ヘアスプレー』のコーニー・コリンズが魅力的だったからだ。

『きみに読む物語』にも出演していたみたいだが、こちらは印象に残っておらず。

エイミー・アダムスのことをエミリー・ブラントだとずっと勘違いしていた。

『ジュリー&ジュリア』のエイミー・アダムスもエミリー・ブラントだと思って見ていたのだ。

この二人、容姿も演技の雰囲気も凄く似てる。



エイミー・アダムス演じるジゼルの演技が魅力的だったり、

アニメーションが可愛かったり、部分々に魅力は感じるが、

作品全体を見た時に、結末がジゼルと人間界のロバートが恋に落ちるのであるなら

そこへ向かうエピソードの積み重ねが弱いと思う。

結局、エドワード王子の存在は何だったのかよくわからない。

おとぎの世界の物語なら潔くもっとベタに、ロマンチックに

感情の変化を描写した方が作品が生きたと思う。

前半から中盤までの力の入れ方に比べて、終盤バタバタと

尻すぼみに終焉した印象だ。

ジゼルの友だちのリスのピップは超可愛かった。さすがディズニーだ。




ツカミ   ジゼルとエドワード王子、森で出会う?

ポイント1 ジゼル、ナリッサ女王にニューヨークへ突き落とされる?
      ジゼル、弁護士のロバートに助けられる?

Mポイント  ジゼル、ロバートからお金を持たされ別れるが、
      ロバート、ジゼルを追いかける?(別れない。)

ポイント2 ジゼル、エドワード王子とニューヨークの街で再会する。

エンディング ジゼル、ロバートに惹かれる。愛し合う。









2011年05月20日(金) 『ヘアスプレー』


『ヘアスプレー』 2007年 アダム・シャンクマン監督


最高にハッピーな映画!

初見の時は音楽のインパクトに圧倒され、

アレよ、アレよ、という間に勢いが目の前を通り過ぎていった。

見る程に、この映画の魅力があふれかえる。

全ての登場人物に(通行人に至るまで)キャラクターの背景が見える。

キュートな美術、ファッション、そしてダンス!

ちょっとした表情やシーンのコミカルがたまらない。

トレイシーを演じたニッキー・ブロンスキー、

ママを演じた(!)ジョン・トラボルタはもちろん、

全てのキャラクターが魅力的だった。

そんな中、一番打ち抜かれたのはリンクを演じたザック・エフロン。

どちらかと言えば、日本女子の好みの顔立ちではない気がするが、とにかく演技の情報量が多い。

見れば見るほど、演技の上手さに魅了される。

ザック・エフロンの他の作品もすごく見たくなった。

エンドロールに至るまでグルービーで最高に楽しい映画だった。



ツカミ   トレイシー、テレビでオーディションの告知を知る。

ポイント1 トレイシー、コーニー・コリンズ・ショーに出演することになる。

Mポイント  トレイシーたち(ペニー、リンク)、シーウィードから黒人のパーティーに誘われる?

ポイント2  トレイシー、デモ行進で警察から追われる。

エンディング トレイシー、ミス・ヘアスプレーのコンテストに警備の目をくぐり会場に現れ、ダンスの渦の中へ!









2011年05月19日(木) 『折り梅』


『折り梅』2001年 松井久子監督


アン・ホイ監督の『女人、四十。』がオーバーラップする。

日本映画において、アルツハイマー症の義母を介護する嫁、

その家族のあり方をテーマにしたこの映画は存在意義がある。

作品自体、佳作だと思う。

だけど、『女人、四十。』にしろ、外国には、あらゆる現代社会の

人間が抱える問題を描いた作品が、何十年と前から存在している。

それも、重いテーマをエンターテイメントにまで昇華させて・・・だ。



『折り梅』は松井久子監督が、日本映画に一石を投じる(女性が女性の目線で描いた)

パイオニア的作品と言えるのかもしれない。初めの一歩だと思う。

一方、日本映画の本音をどこかに隠したまま、

本質から目をそらしたような作品の在り方に疑念を感じずにいられない。

もっと現実問題に根ざした豊かで自由な追求があっていいと思う。

そういう意味で『折り梅』が佳作だと承知した上で思うのは、

道徳的に描かれているところがもどかしいということ。

テレビ放映版は、数分カットしてあったみたいだ。

ノーカット作品をちゃんと再見したい。

人生は芸術。





ツカミ   義母・政子が三男宅、裕三、嫁・巴の家で生活することになる。

ポイント1 嫁・巴が義母・政子を病院に連れて行く。アルツハイマー症と診断される?

Mポイント  夫婦でグループホームを見学に行く?

ポイント2 嫁・巴、義母・政子を入所するグループホームへ車で送る?

エンディング 嫁・巴、義母・政子とお寺の集まりに参加する?









2011年05月17日(火) 『鉄道員(ぽっぽや)』


『鉄道員(ぽっぽや)』1999年 降旗康男監督


NHK BSプレミアム 山田洋次監督が選んだ日本の名作100選〜家族編〜で

放送されたものを見る。山田洋次監督がこの映画を選んだ理由は

高倉健へのオマージュと司会者が話していた。

高倉健へのオマージュの意味を納得する。

この映画を選ぶ理由があるとしたら、たぶんそれしかない。

映画として全然ダメだと思った。

高倉健がいくら魅力的な俳優さんだとしても、この映画で演じている乙松が

どういうキャラクターなのかわからない。

乙松だけでなく、全ての登場人物のキャラクター描写の掘り下げが浅い、

というよりないに等しい。

一体、物語がどこに向かっているのか、物語の芯を感じない。

全編通して説明台詞での進行。

唯一良いところをあげるとしたら、北海道の大地の雪景色の美しさだった。



ツカミ   乙松が定年を迎える?

ポイント1 乙松の同僚の仙次が乙松を訪ねてくる?

Mポイント  仙次が帰る?

ポイント2 乙松、仙次の息子から幌舞線が廃止になることを聞く?

エンディング 乙松、亡くなった娘とやさしいひと時を過ごす?









2011年05月16日(月) 『無法松の一生』


『無法松の一生』1958年 稲垣浩監督 
              脚本 伊丹万作/稲垣浩


純日本的なこの物語の構成が、ハリウッド的だったのがすごく意外だった。

僭越ながら、この時代に脚本を書いていた伊丹万作氏脚本家の方達?は

外国の映画も見て血肉にされていたのだ、改めてと発見した思い。

良い映画だとは思ったけど、正直そんなに刺さらなかった。

1943年版の作品の方が佳作とするレビューもちらほら見受けられる。

1943年の作品も見てみたい。



ツカミ   松五郎と吉岡大尉とその夫人、息子の敏雄との出会い

ポイント1 吉岡大尉が亡くなる

Mポイント  大正13年 敏雄成長 以降の関係性? 

ポイント2 敏雄、大学進学?ため家を出る 以降の関係性?

エンディング 松五郎、夫人への思いを抑える?シーン重ね?









2011年05月13日(金) 『ノー・マンズ・ランド』


『ノー・マンズ・ランド』2001年/伊=英=ベルギー=仏=スロベニア
            ダニス・タノヴィッチ監督


戦争という傍観者になりそうなテーマを、感情移入させ自己投影させて見せる物語の構築の上手さ。

虚しい殺戮の背景に絡む不条理な人間の行動。

善悪の対決ではなく、どちらも善、あるいは意味をもたない関係性の中で

描かれていることに共感する。

作品上のインパクトのための表現手段ではない、きれいごとで済ませない現実描写。

エンターテイメントと言っては語弊があるけど、観客の心をつかむ表現と

現実を描写するバランスが絶妙だと思う。

ヘビーなラストではあるが、胸に刺さってくる戦争という命題と

作品に対する感動が錯綜する。良い映画だ。









2011年05月12日(木) 『山の郵便配達』


『山の郵便配達』1999年 霍建起フォ・ジェンチー監督


この作品の前に見た『ミッシング』は、社会の不条理のテーマを

父息子の関係を背景に描かれた作品だった。

くしくも、この作品も父と息子の(ある意味)ロードムービーであった。

郵便配達に出発した父息子が歩む、山々、田園、村々の美しい風景に心が奪われる。

あえて言うなら、登場人物の父親、息子を演じる役者さんたちが

物語の状況設定で生活する人々にイマイチ感じなかった。

物語は山間?の農村?の設定だが、役者さんたちの背景に感じるものは、

プライベートで生活しているだろう都会だ。

次男坊と呼ばれていたわんちゃんまで、どこかのチャンピオン犬みたいで

都会ナイズされているように見えた。(可愛いから許せる。)

しかし何と言っても、この美しい自然の映像がこの作品の圧倒的な力になっている。

だから、役者さん演技に感じたことは許容範囲に収まってしまう。

父と息子の葛藤などが淡々と、しかし丁寧に描かれていて佳作だ。









2011年05月10日(火) 『ミッシング』


『ミッシング』Missing 1982年 コスタ・ガヴラス監督


とにかく父親を演じるジャック・レモンが秀逸だ。

一度も息子と絡む場面はなかったが、父子の関係のイマジネーションが果てしなく広がる。

作品の主題が置き換わっても違和感がないくらいだ。

つまり、社会の不条理の物語を超えて父親の物語であると言っても差支えがない。

ジャック・レモンが素晴らしい父親を演じてはいるが、

その視点が、作品の前面に出ている印象ではないのだ。

作品上の視点のバランスがぶれていない。

ストーリーのための物語ではなく、

ストーリーは人物のキャラクターを深く掘り下げて描写する

ツールに成り下がるべきである、と再確認させてくれた。



この父親役の人、どこかで見たことあるなあ、

上手いなあ、と思いながら見ていたら、それがジャック・レモンだった。

当たり前だ。









2011年05月07日(土) 『パリ、恋人たちの二日間』


『パリ、恋人たちの二日間』2 Days in Paris 2007年/仏=独 
             ジュリー・デルピー監督

日本と外国の価値観の違いをまざまざと感じさせられたところが

この映画の一番の見所と言えば見所。そういう意味では面白かったが

作品として見ると製作者の自己満足の範疇にとどまってしまっていると思う。

枝葉の部分ではエキセントリックな会話に興味を引かれたりもしたが

ただそれだけ。作品が何に向かっているのか不明、というか甘い。

そして最大の欠点は、監督、脚本、主演を務めている

ジュリー・デルピー演じるフォトグラファーの彼女に感情移入、自己投影が出来ないところだ。

ぶっ飛んでいようが何だろうがどのような人物像かが問題じゃない。

内面的に共感できる描写が不足しているのだと思う。

『ビフォア・サンライズ』『ビフォア・サンセット』を否が応でも思い出すが全く似て非なりだ。

結局映画とは、映像技術と思いの丈の両輪の創造物なのだ、と改めて考える。









2011年05月04日(水) 『トウキョウソナタ』


『トウキョウソナタ』Tokyo Sonata 2008年/日=オランダ=香港
          黒沢 清監督


中盤ちょっと過ぎまでは、作品のトーンも素敵だと思ったし

家族関係がどのように変化していくのか引き込まれて見ていたけど

役所広司演じる強盗が佐々木家の主婦を演じる小泉今日子を拉致する

シーンの登場で一変、すごく違和感を覚えた。

この映画の主題から分離しているように感じる。

登場人物のキャラクターが、一見描きこまれているように見えるがイマイチ深くない。

邦画にありがちな、よくわからない観念描写というか

煙に巻いたような描写も好きじゃないところだ。

小泉今日子は好感の持てるタレントさんだが

出演している作品を見て例外なく思うのは、

その人物にキャラクターを感じないということだ。

演技派っぽくは見えるんだけど、その人物の背景が全然想像できない。

小奇麗なアラフォーである程度の演技力もあって・・・という

俳優の人材不足もあって登用される機会が多くなってしまう(?)のではないか。

小泉今日子の魅力を最大限に生かす設定は別にあると思う。

映像や美術に対しては佳作だと思えるけど

作品自体に対しては、佳作だとハッキリ言い切れないモヤモヤ感がある。

あのラストに集約されるためには、それぞれのベクトルに

密度と、散漫に見えて実はラストをとらまえているという方向性を感じたかった。









2011年05月03日(火) 『タワーリング・インフェルノ』


『タワーリング・インフェルノ』The Towering Inferno 1974年
               ジョン・ギラーミン監督


以前見たことはあるような気はするが、ほとんど未見感覚で見る。

面白かった。何が面白いって、強烈な設定の話だけど

ストーリー展開を追う、そこに一番の興味が存在する物語ではないのだ。

登場人物たちのキャラクターがしっかり描かれている。

そこが芯になっている。

多少ステレオタイプ的作りのキャラクターが時代を感じないではないが

この作品の秀逸さをもって埋没できる事柄だ。

スティーブ・マックイーンとポールニューマンが中心の物語ではあるが

決して二人のための作品にはなっていない。作品のための作品だ。

古き良き時代?の男らしさが新鮮に映って格好いいと思った。



ちょっと余談だけど、男らしさに通じる話かもしれないが

ポール・ニューマン演じるダグが、

ヘリ移動の長旅の後、フェイ・ダナウェイ演じる恋人と

休む暇なくベッドインしたり、高層ビル火災の大変な騒動のさなか

寸暇に再開した恋人とインターバルなしに情熱的なキスを交わしたりする

シーンを見て、何てタフなのだろうとびっくりしてしまった。

そりゃ、このくらいタフじゃないと、爆発したり火を噴いてるビルの中を

ワシワシ進んでいけないわなあと妙に納得したりして。

日本的アプローチではないので、異質に感じるインパクトと印象があった。









2011年05月01日(日) 『男と女の不都合な真実』


『男と女の不都合な真実』The Ugly Truth 2009年 ロバート・ルケティック監督


全然期待してなかったのが見事に裏切られた。

びっくりした。すごく面白い!

小さなスケール感の中で、小技を利かせて丁寧に作られている。

こういうタイプの映画、好きだ。

登場人物のキャラクターもキチンと描かれていて感情が伝わってくる。

良い意味で気楽に楽しめるエンターテイメント仕様になっていて嫌味がない。

アビーを演じたキャサリン・ヘイグルという女優さん、

前作の『幸せになるための27のドレス』が箸にも棒にもかからない作品だったから

あまり良い印象は残っていなかったが、やはり役者を生かすも殺すも

作品(監督、脚本)によるのだなあと実感。

ファンになるタイプの女優さんではないけど

この作品においては、すごく生かされていて魅力的だ。

かなり好きなラブ・コメだ。

再見必至。








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Barbara [MAIL] [バイオトープの庭]

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