読書記録

2021年07月30日(金) 真夜中のたずねびと / 恒川 光太郎

 五編の短編集。


 第一話
震災で家族を亡くした少女が、やはり孤独な老婆と暮らし始める。ほっこりした話になるのかと思いきや、老婆が怪しげな商売をしているところから不穏な空気が漂う。

 第二話
人殺しを生業とする狡猾な父親と覚醒剤中毒の母親に育てられ、その後は施設で育ち一人で生きてきた青年が突然母親から会いたいとコンタクトを受ける。

 第三話
弟が身勝手な理由で殺人事件を起こしたために両親と主人公である姉もまた悪意の嵐に曝されることになる。

 第四話、
旅先で一晩一緒に過ごしただけの男から延々と過去の罪についての告白がスマホに送られてくる話は得体の知れない怖さがあったが、ここでこの話が前の話に登場したある人物と繋がることをようやく知る。


 第五話、
奥深い自然の谷間にあるレンタル民家を営む青年の元に、そうとは知らずに死体遺棄をしに女がやって来る。


第一話から第三話は本人には責任のないことで孤独な人生を進むことになる主人公たちの物語が続き、胸がつまされる。

どれも独立した話ではなく、ちょっとだけ…関係している連作のような・・・












2021年07月21日(水) 本性 / 伊岡 瞬


 読み始めは サトウミサキ という女性の結婚詐欺かと思っていたが、ミサキの弟が中学時代にかなりひどいイジメにあっていて、終章でいろいろな謎解きがある復讐のミステリー。
考えさせられる部分もあってかなり面白い。

第1章
梅田尚之
弟がいじめられていた中学校の担任。

第2章
小田切琢磨
イジメの実行犯

第3章
青木繁子
中学校教頭の妻

第4章
小谷沙帆里(旧姓 田中沙帆里)
イジメの実行犯

ミサキが実際に手を下したのは 安井刑事と宮下刑事が疑問を持った第5章の
廃屋での男性(イジメの司令塔役割)の焼死事件と、小谷沙帆里。

ベテランの安井刑事はガンで余命が迫っている中で、その当時イジメを真剣に捜査しなかった負い目があった。






2021年07月09日(金) 静寂の子 / 谷村志穂

 主人公の百合香と夫の靖季は大人や子供達に北海道の自然を体験させる「Burns」と言う私塾を開いていた。数人のスタッフもいて経営も含め、やりがいを実感していたある日、その私塾に通っていた銀行員の戸田が海の事故で亡くなり、「Burns」は世間から目の敵にされてしまう。
 三歳の娘がいるのに夫婦間に亀裂が生じ、お互いが不倫に走ってしまう。百合香は情緒不安定で靖季を自分だけのものにしたかったが、靖季は戸田の妻を見ていた。

 話の筋として塾のキャンプに子供達を参加させている間の塾とは全く関係のない個人で起こしたダイビングの事故でどうしてここまで塾長が罪悪感を持ったりバッシングを受けなければならないのかがナゾ?
子供を預けて周囲に黙って難しいポイントに潜りに行った夫婦の方こそどうかと思う。
就業中の事故でもないのに、なぜ労災を心配するとかあり得ない問題が生じるのか?

百合香の不倫も大きな代償を残して それでも最後は4人でいるみたいな感じ。



2021年07月04日(日) ライオンのおやつ / 小川 糸

 男手ひとつで育ててくれた父(実父ではない)の再婚を機に、ひとりで暮らしていた雫は病と闘っていた。
ある日医師から余命を告げられる。最後の日々を過ごす場所として、瀬戸内の島にあるライオンの家というホスピスを選んだ雫は、穏やかな島の景色の中で本当にしたかったことを考える。
ホスピスでは、毎週日曜日、入居者が生きている間にもう一度食べたい思い出のおやつをリクエストできる「おやつの時間」があった。

タケオさんの豆花、マスターのカヌレ、百ちゃんのアップルパイ、シマさんの牡丹餅、そして・・・雫のミルクレープ。

六花(犬)とのくらし、葡萄栽培するタヒチくん、そしてライオンの家の代表マドンナさんとの出会い。

さすがに本屋大賞を受賞するだけのことはある素晴らしい作品。

6月27日から8回連続のNHKプレミアム ドラマ化。

ライオンのおやつではなく ライオンの家でのおやつ。
タケオさんを演じた 綾田俊樹さんは中学校の同級生です。


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