読書記録

2019年12月24日(火) 妻の肖像 / 徳岡 孝夫


妻にガンが宣告された。残り時間は少ない―。
長年 連れ添った伴侶の死、それは珍しい話ではないが、とても優しく、感動的に、綴られている。

自分より長く生きると思っていた妻にガンが宣告され、施行されたばかりの介護保険制度に賭けて、救われた。
夏に余命宣告され、その年の12月に亡くなってしまい、その最後は自宅での闘病の日々のエッセイ。

それにしても、45年間の結婚生活、とても仲睦ましいご夫婦だったようで、亡くなってからも妻に対する愛情が文中のいたるところに見て取れる。
同じく妻に先立たれて自死した江藤淳を思い起こすも、徳岡孝夫はその後もしっかりペンを持っておられるようだ。




著者である徳岡孝夫氏は、文中では随分ご自身のことを謙遜されて書いておられるが、なかなかに活躍されている。

例えば今年逝去された日本文学研究者、ドナルド・キーン米コロンビア大名誉教授と長年親しく交流していた元毎日新聞記者で、作家の徳岡孝夫さん(89)は同日、毎日新聞の取材に対して「日本を愛して死んでいった。『ご苦労さん』と言うよりも、真面目で誠実なキーンさんはまだ研究への闘志を燃やしていたはず。まだまだ活躍してほしかった」と悼んだ。【中澤雄大/統合デジタル取材センター】








2019年12月20日(金) 火口のふたり / 白石 一文


 従妹の結婚式に出席するため故郷の福岡に帰省した賢太郎は、直子と挙式までの短い期間限定でかつての男と女の関係になった。

濃密な日々に区切りをつけたのに、自衛官の婚約者に重大な任務が下ったからと結婚式が延期になってしまった。
その重大な任務は分からないまま、直子は富士山の噴火を思うのだった。


人間なんて本当は一代限りで終わるのが正しい生き方なのだ。その分、人間には子孫など残さずとも充分に意味のある人生を送れるだけの頭脳が与えられている。そこが動物との決定的な違いなのだ。それを本能にたぶらかされて子供など作ってしまうから、肝心の自分の人生がおろそかになってしまう。



2019年12月06日(金) 始まりの家 / 蓮見 恭子

ヘアーサロン「宇奈月」が舞台。

大崎葉月 (ヘアーサロンの亡明・今の主 益美の4女。
ただし、葉月はこの夫婦の実子ではなかった。
有名美容師と結婚しているが、子どもが出来ない身体のため母に代理出産をもちかける)

宇奈月弥生(明・益美夫婦の長女。
ホステス上がりの女優・朝倉ミチの専属ヘアーメイクアップアーティスト)

宇奈月益美(明亡き後、ヘアーサロン宇奈月を仕切っている。
葉月に代理出産をもちかけられ、体力をつけるため始めたウオーキングで転んでしまう)

宇奈月睦(明・益美夫婦の長男。
美容室は継がないでイタリアンシェフとして、妻と一女がある。)

伊澤文(夫婦の三女。
母を助けてヘアーサロンで仕事をしている。
仕事が長続きしない夫との二人暮らしだが、妊娠が分かる。

廣島如恵(夫婦の二女。夫・高校生と中学生の二人の子供がいる。
文と共にヘアーサロンで働いて母を助けている。


そして 最後に登場するのは「朝倉ミチ」。
本名平井道子。葉月の産みの親。
彼女は宇奈月家の家族の歴史に大きく関わっており、そしてそのことをずっと引きずりながら生きてきた。そんなミチが、縛られていたものと決別し、歩き出す。どんな人生も、今日から始まるのである。

まぁ、一番見事なのは一男四女を育て上げた益美の生き様だろう。
あっぱれ、としか言いようがない。




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