日常のかけら
◇新しい緑の葉◇
目に眩しい新しい緑の葉。 キラキラ光って、陽に透けてキレイ。 木の根元に寝転んで梢を見上げてそう言えば、
「…ぁあ…」
って、気のないナマ返事が返る。 仕事、抜け出して来て、こんな所でサボっていて大丈夫なのかな? 忙しい三蔵がこうして傍に居てくれるのは嬉しいけど、あとで笙玄に怒られるんじゃないかなあって、思うんだけど…。 でも、最近、ずうっと働き詰めだったから、息抜きも許してくれるよね。 そう言って三蔵を振り返ったら、幹に背中を預けて眠っていた。
ここは風が通って、日陰で涼しくて気持ちがいいから、眠っちゃうよね。 木漏れ日に三蔵の金糸がキラキラ光ってた。 笙玄が捜しに来るまで傍に居てね。
「ね、三蔵…おやすみ」
(悟空)
2007年05月31日(木)
◇どうしたらよかったの?◇
あのさ、何で失敗した奴をみんなで怒るんだ? 好きで失敗する奴なんていないのに。 それにさ、ちゃんと人の言うことを聞かない方が悪いのに、何でちゃんと言った奴がみんなに責められるんだ? これって、理不尽って言うんだろ?
なあ…三蔵ってば。
俺、全部見てたんだ。 でもさ、俺が出て行ったらもっとアイツいじめられるし、三蔵に迷惑がかかるからさ…じっと我慢してた。
でも、ここが…胸の辺りがチクチクしてさ、治らねんだ。
やっぱり、あの時、アイツのことちゃんと言った方がよかったのかな? そうすると三蔵に迷惑がかかって…
なあ…なあってば、俺、どうしたらよかったんだ?
(悟空)
2007年05月23日(水)
◇ま、いいか…◇
「こら、そんなところで寝るな」
そう言ってみたところで、起きる気配もない。 居間の床に散らばるクッションの中で小猿が寝てやがる。
「布団に入れ」
爪先で突いてみても、妙な声を上げて、寝返りを打つだけで。
「……ったく」
ため息が漏れた。
こっちだって仕事で疲れているんだよ。 わかってんのか?
俺も小猿の横にクッションを枕にして寝転がった。 意外な寝心地の良さに、ほうっと息が漏れた。
「ま、いいか…」
日向の温かさと疲れがあっという間に俺を眠らせた。
(三蔵)
2007年05月16日(水)
◇どうしたんです?◇
「えっと…僕の顔をそんなに見つめて…悟空?あの…僕の顔に何か付いています?」
と訊けば、違うと首を振られました。
「違うんですか?では、何でしょう?」
そう言って可愛い悟空の顔を覗き込めば、悟空は困ったような、難しい顔付きになってしまいました。
「悟空?!」
僕まで困った顔付きなったんでしょうか、悟空が慌てて椅子から立ち上がると、僕の手をぎゅっと握ってくれました。 そして、
「そんな顔しないでくれよな…困らせたい訳じゃないから、さ…」
いつものような歯切れのいい言葉ではなかったのですが、僕を気遣ってくれる悟空の気持ちが嬉しくて、思わず抱きしめてしまいました。
「八戒?」
ぽんぽんと、悟空の背中を叩いて、
「話したくなったらでいいですからね」
そう言って笑ったら、悟空にもそれは明るい笑顔が浮かんでくれました。 でも、一体何があったのでしょうね?
(八戒)
2007年05月10日(木)
◇似てるよな?◇
例えばそれが何気ない仕草や言葉だったとしても気になるんだよな。 別に何が似ている訳じゃない。 だが、似てると思うんだよ。
誰と似てるって? ま、何だ…アイツだよ、アイツ。
ほら、あの底知れない気がする笑顔? ほら、三蔵にかける言葉の端々?
似てるだろ? な?
でもよ、そう思う俺ってどっか歪んでるのか? 思わねえよな? お前も感じるだろ? な? 俺の気のせいじゃねえよな? うん、気のせいじゃねえ。
(悟浄)
2007年05月06日(日)
◇お帰り◇
「今回はずいぶんと来ないと思ったら、こんなに稼いでたんだ」
そう言って、目の前に広げられたアタッシュケースの札束に軽く瞳を見開き、ふわりと柔らかな笑顔を目の前に立つ三蔵に向ける。 その笑顔に三蔵は口角を上げて応えると、くわえていた煙草に火をつけた。
「じゃあ、預かっとくな」 「ああ、頼む」 「うん」
いつものように頷いた俺はトランクのフタを締めた。 それを待っていたかのように三蔵が俺の顔を覗き込んできた。
「てめぇ、今夜は?」
訊かれて一瞬、何のことかと目の前にある三蔵の顔を見やれば、綺麗な紫色の瞳が傍に居ろと言っている気がして、何のことかわかった。
「…えっと…そっちに帰る。だって今夜はいるんでしょ?」
笑えば、
「ああ」
と、満足そうな返事が、触れるだけの口付けと一緒に返った。
「出来るだけ早く帰るからさ、待っててな」
踵を返す三蔵の背中にそう言えば、片手が上がってすぐにその姿はドアの向こうに消えた。
(悟空/parallel)
2007年05月03日(木)
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