日常のかけら
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◇仕方ないじゃん…◇

だってぇ…つい動いちゃったんだって。
躯を割り込ませた方が早かったんだから仕方ないじゃん。
ちゃんとわかってるって。
でも、理屈ではどうしようもない時だってあるんだ。
三蔵だってそう言う時あるだろ?
別に自己犠牲…ってのが、いいなんて俺、思ってねえもん。
それでも、躯が動いちゃうんだから…さ…。
俺の性分、知ってるくせに…。
そんなに怒ることないじゃん。
悪かったって思ってるんだから…これでも…さ…

ごめん…なさい…

(悟 空)

2007年01月22日(月)


◇この…アホウ…◇

だから、何でお前はそう無茶苦茶なんだ。
自分の躯を顧みないで何だってんだ。
自分を楯にして人を守るなんて、どんなバカも考えることだと、何でわからない?
そんなことをして、守られた奴が喜ぶのか?
自分の所為だと、落ち込むのが相場だ。
まあ、中には守られて当たり前なんてバカもいるが、そんなのは例外だ。
人の命を楯にして守って良いものなんてこの世の中には無いんだよ。
そんなこともお前はわからねえのか?
一体何を見てきた?
何を学んできた?
いいか、二度と、馬鹿な真似はするな。
怪我をするのも、死ぬのもそいつの勝手だ。
それでも守りたいと思うのなら、自分の身も無傷で通せ。
いいな、悟空…

納得できるまで、部屋には戻ってくるなよ、サル…

(三 蔵)

2007年01月20日(土)


◇俺だけのあなた…◇

いいんだ、いいよ、三蔵。
俺はここにいる。
どこにも行かない。
三蔵を独りになんてしない。
三蔵を置いて逝ったりしないから。

いいよ、いいんだ、三蔵。
三蔵になら何されても。
三蔵なら何しても。
俺は三蔵から離れない。

だから…好きにしていいよ。
三蔵が安心するまで。
俺は構わない。

俺は三蔵のモノだから…。
俺はここに居るから。

俺だけの、あなただから────

(悟 空)

2007年01月17日(水)


◇雪の中◇

煙るような雪の中、あの人が佇んでる。
じっと、何かを耐えるように、何かを忘れようとするように。

何も言わない人だから、見ているしかない。
強くて脆い人だから、このまま折れてしまう気がする。

煙るように降る雪の中、あの人は消え入りそうで…。
でも、手を伸ばせない俺は、その背中をみているしかない。

ねえ…置いて行くことだけはしないで…

煙るように降る雪があの人を抱いて、悲しい声で泣いた。

(悟 空)

2007年01月09日(火)


◇七草粥◇

「セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ」

指折り数えて、悟空が笙玄の横で唱えている。
春の七草か。
もう、そんな時期か…。

今日は朝から吹雪いているのに、春の七草とはな。
まあ、悟空の気が紛れるのならそれもいい。

雪が降れば、昏い顔をして蹲っていることを思えば、どんなにかいい。

「これがセリ?」

指差す悟空に笙玄が頷く。

「こっちが、ゴギョウです。ハハコグサっていうんですよ?」
「ハハコグサ…あ、黄色い花が咲くんだよな?」
「そうです。で、こっちが、ナズナで、ぺんぺん草って言った方がわかりやすいですよね」
「へえ…ぺんぺん草も食べるんだ」

指先にナズナを摘んでしげしげと眺めて、悟空は不思議そうな顔をする。
俺だって不思議だ。
どう考えてもニワトリのエサか、雑草にしか見えねえ。

「ハコベラというか、ハコベがこれで、こっちがホトケノザです」
「うわぁ…マジ、雑草じゃん」

悟空の言葉に笙玄が苦笑を浮かべる。

「で、スズナって?」
「これ、カブラのことで、スズシロは大根のことです」
「へぇ…これをどうするの?」

小さなカブラと大根を弄りながら悟空が問えば、

「お粥に入れて食べるんですよ。そうすると今年一年、災いを除け、長寿富貴を得られるんです」
「ちょーじゅ…ふ、き?」
「病気もしないで豊に暮らせて、長生きが出来るという意味です」
「そっか」

笙玄の説明に悟空は頷くと俺の傍に駆け寄って来た。
そして、

「三蔵、たくさん食べて元気で長生きしてくれよな」

と、言うから、思わずハリセンで殴った。

「何すんだよぉ…」
「俺はジジイじゃねえ」

睨めば、

「知ってるもん。俺はずーっと三蔵と一緒にいたいだけだもん」

そう言ってむくれた。
それに返す言葉を考えてる内に、笙玄が堪えきれずに笑い出した。

ったく…

何となく頬が熱くなったのは気のせいだ。
そう、俺は思うことにした。

(三 蔵)

2007年01月07日(日)