日常のかけら
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◇ドングリ◇

「笙玄、笙玄!」
「はい?」

庭掃除をしていた笙玄を呼んだら、「何ですか?」って首を軽く傾げた。

「あのね、これ!」

ズボンのポケット一杯拾ったドングリを掴みだして見せたら、ちょっとびっくりした顔をして、そして、にっこり笑ってくれた。

「たくさん拾えたんですね」
「うん!」

頷いたら、ちょっと考えて、

「じゃあ、小さな玩具でも作りましょうか?」

って、俺の顔を覗き込んできた。

「玩具?これで?」

今度は俺がびっくりした。
ドングリで玩具が作れるんだ。

「はい。可愛い弥次郎兵衛とかコマが出来ますよ」

そう言って、楽しそうに笑った。

「ここの掃除が終わりましたら、すぐ行きますので、お部屋で待っていて下さいね」

って、手に持った竹箒をちょっと上げて見せた。
それに、俺は大きく頷いて、

「早く来てくれよな」

ぎゅっと、ドングリを握った。

(悟 空)

2006年11月25日(土)


◇秋 色◇

「綺麗だねぇ…」

って呟いたら、聞こえたのか、モミジの赤が濃くなった。
照れてるのかな?
綺麗だから綺麗って言っただけなのにね。

今、山は秋の色に染まり始めた所で、赤や黄色や橙に緑って、色々な色が山を覆っていてとても綺麗なんだ。
三蔵に見せたいなあって、思うけど、三蔵は今、遠出の仕事でいない。
あと…3回寝たら帰ってくるって、笙玄が教えてくれた。
淋しいけど待ってる約束したから、ちゃんと待ってるんだ。

三蔵が帰って来る頃には山ももっと綺麗にというか、秋の色に染まっているはずだから、一緒に見に来よう。
うん、笙玄も一緒にお弁当持ってくるのもいいよな。

同意をお求めたら、モミジの木が笑った。

(悟 空)

2006年11月14日(火)