日常のかけら
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◇さんぞー・オ・ランタン◇



出来上がったジャック・オ・ランタンを寝所の居間の食卓の上に置いておいた。
笙玄に言われて、失敗したカボチャの残骸を集めて、カボチャの中身と皮付きのとを分けた。

「中身の実はお菓子やスープにしましょうね」

そう言って、笙玄は黄色いカボチャの中身をいくつかに小分けして袋詰めした。

「こっちは寺院の厨房で処理してもらいましょう」

って、大きな袋にひとまとめにして。
笙玄と一緒に寺院の厨房へ持って行った。

戻れば、部屋に八戒と悟浄がいて、

「悟空、上手くできましたね」
「なかなかの出来じゃん?」

そう言って、褒めてくれた。
そして、

「ちょっといいですか?」

って、八戒が俺の作ったジャック・オ・ランタンの額に赤いマジックで三蔵のチャクラと同じものを書き込んだ。
それを見ていた悟浄が、笙玄に何か囁いて、笙玄がにこにこと頷いて…。

「こうすっと、そっくりだぜ」

って、笑った。
何がそっくりなのかって、ジャック・オ・ランタンの前に行ったら、そこに三蔵が居た。

「このたれ目具合と言い、この眉間の皺といい、そっくりですよ」
「ああ、ホント、ホント」

顔を見合わせて八戒と悟浄が、笙玄までが頷くから。

「べ、べつに三蔵を意識した訳じゃないかんな」

って、言い訳したら、三人に頭を撫でくられた。


その日の夜、仕事から戻った三蔵がそのジャック・オ・ランタンを見てものすごーく嫌そうな顔をしてた。

(悟 空/illust by みつまめ様)

2006年10月21日(土)


◇ジャック・オ・ランタン◇

がりがり、ごりごり、ばきっ…朝からそんな音が寝所の居間から聞こえてきます。
一抱えもある程の西洋カボチャが、いくつか昨日、八戒さん達から届けられました。
それを悟空は三蔵様に隠すように厨にしまって、今朝から一生懸命底をくりぬき、カボチャの中身を一心に掘り出して。
表の皮に目や鼻、口をマジックで書いて、そこを刳り抜こうとそれは危なっかしい手つきで悪戦苦闘しています。
でも、力加減が上手く行かなくて、ぱっくり半分に割れたり、目と鼻が繋がったり、口が顎ごと外れたり。
カボチャの残骸が増えて行きます。

えぐり出した中身は、カボチャのスープやお菓子に使って、壊れたカボチャは夕餉の食材に厨房へ持っていって、皆さまのお腹に納めて貰うとして…。
でもね、いくら西洋の収穫祭だと言っても、食べ物をこんなに粗末にしては、収穫の神様もお怒りになると思います。

あ、ほら、また…。

「泣きそうな顔で大きく穴のあいてしまったカボチャを眺めても修復はできませんよ?その諦め悪さも、チャレンジ精神も尊敬しますが、悟空、いい加減にしてくださいね。」

そう言って注意したら、ようやく最後のカボチャでジャック・オ・ランタンが出来たと笑顔を向けられてしまいました。
誇らしげな輝くような悟空の笑顔はとてもステキで、大好きですが、食べ物を玩具にしてはいけないんです。

「では、後片付けと、この山のようなカボチャの残骸、ちゃんとお腹に納めて下さいね」

そう言ったら、悟空がイタズラを見つかった時のような顔をしました。

「当分、おかずもおやつもカボチャ…ですね」

片づけを手伝いながら、そう呟けば、悟空は一瞬、びっくりしてその後、うんざりした顔をしました。
後始末まできちんとして、初めて完了って言うんです。
覚えておいてくださいね。

(笙 玄)

2006年10月20日(金)


◇カボチャ?◇



回廊を歩くたび、最近目に付くモノがある。
緑色、黒っぽい色、オレンジ色…どう見ても「カボチャ」だ。
それがぽつり、ころりと置かれている。
それも、俺が通る所にばかり。
笙玄に訊いても、

「さあ…何の意味だか私にはさっぱり…」

という、困惑しきった返事が返るばかりで。
意味がわからねえ…。
サルに訊こうとしてもこう言う時に限って捕まらねえわ、仕事は忙しいわで、足下に転がるカボチャを蹴飛ばして仕事に向かう。

「一体…何なんだ?」

入り口に転がっていたカボチャを掴んで見つめても意味が分かるわけもなく、ため息しかでねえ。
振り返れば、そこここに転がったカボチャの様子がこの間までと違うモノが混じっている事に気が付いた。

「…顔?」

転がった?置かれた?カボチャの中に目や口、鼻と思しき穴をくりぬいたモノがあるのだ。
なんだか嘲笑われているような笑い顔。
だから…どんな意味があるんだ?
思わせぶりにこんなことしやがって。
誰に入れ知恵されたのか、わからないとでも思っているのか?

「あんの…サル…」

今夜、問いつめてやる。
覚悟しやがれ。
外野に入れ知恵されたことを後悔させてやる。
俺は、顔の描かれたカボチャを蹴り飛ばした。

(三 蔵/illust by みつまめ様)

2006年10月19日(木)