日常のかけら
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◇残った痛み◇

初めて自分の感情のままに悟空を殴った。
苛ついていたのは事実で、放っておいて欲しかったのだ。
全てが鬱陶しくなって、何もかもが嫌になるそんな時は。
弱い己を受け容れるそんな時は。
あの明るさが、あの眩しさが疎ましくて。
身勝手な気持ちだと解っていても止めることは出来なかった。

叩き付けるような雨の音に重なった頬を打つ音。
見開かれた金瞳が瞬く間に歪んでいった。
傷付けたかった訳ではないのに。

あいつを殴った手が…疼いた。

(三 蔵)

2006年03月20日(月)


◇…雨だね◇

雨が降ると三蔵は無口になる。
何だか物憂げで、何処か寂しそうで悲しそうで…かける言葉が見つからない。

ねえ、傍にいてもいい?

雨は優しい歌声で大地を自然を潤し、慈しんでくれるんだよ。
だから、恐れないで。
疎ましく思わないで。

ねえ、三蔵…傍にいさせてね。

窓辺で片膝を立てて、そこで頬杖ついて外を見てる三蔵の傍にそっと近づいて───

「…雨、止まないね…」

かけた声は薄く曇ったガラスに当たって流れた。

(悟 空)

2006年03月07日(火)


◇聲が…◇

暗い窓の外。
昨夜から降り続く雨に零れる吐息は気だるい。
朝から仕事をする気になれず、寝所の居間の床に散らばったクッションに身体を預け、窓辺に踞る。
何がと言うわけでなく、気持ちは重くて。
窓に映る紫暗は、朧に霞んで。

聲が聴こえる…

ふと、視線を上げた先に見えるのは窓ガラスを伝う雨の透明な雫と薄暗い空。

…歌…?

静かに降る雨も激しく降る雨も等しく大地を潤し、命を育み、言祝ぐ歌を歌うのだと、柔らかな聲が笑う。
その柔らかさに胸の奥が僅かに暖かくなるのは何故だろう。

いつか…出逢えたら理由を訊いてみたい。

(三 蔵)

2006年03月06日(月)


◇…悟空◇

抱いた温もりと柔らかさに凍てついた気持ちが融ける。
小さな声で、舌足らずな口調で名前を呼ぶ。

ほら、その声が俺を溶かす。
煩いだけの存在ではなく、甘いだけ乃存在でもない。
対等に前を向いて、共に歩む翳ることのない真っ直ぐで綺麗な存在。

…悟空

名前を呼べば腕のなかで綻ぶお前。
ただ、抱いて、この腕に閉じこめて、薫る日向に思いを埋めて。

お前がいいるだけで満たされるこの気持ちは何なのだろうな…。

なあ…悟空…。

(三 蔵)

2006年03月03日(金)


◇三蔵?◇

どうかした?
なあ、三蔵?
なんかあったのか?

何度訊いても返事が無くて、ただ俺を抱き込む腕が微かに降るえてた。
また、何かあったんだ。
三蔵はいつも不機嫌な顔して、尊大な態度で俺様に振る舞ってるけど、本当はとっても繊細で優しいんだ。
たくさんの仕事とたくさんの重たい責任で参っちゃうことだってあるのに。

なあ、三蔵?
辛いときは俺に言ってくれよな。
こうして抱きしめてくれるのも嬉しいけど、何があったのかたまには話してくれよな。
一人で抱えてるより、二人で抱えた方が軽くなるって言うからさ。

三蔵?

って小さく呼んだら、また、腕に力が入った。

(悟 空)

2006年03月01日(水)