日常のかけら
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◇すす払い◇

寺中のお堂の扉と言う扉が一杯に開かれて、そこからもうもうと煙が上がってる。
あれは、煙じゃなくてお堂の中の埃だって去年、三蔵が教えてくれた。
今日は寺の大掃除の日。
えっと…「すす払い」って言うんだってさ。
え、その間、三蔵は何してるかって?
その間は当然お休みで、今、俺の横で昼寝してる。
ここは寺の埃が来ない。
そんで、日当たりが良くて、とても温かくて、冷たい風の殆ど当たらない俺のお気に入りの場所。
ここからは見晴らしも良くて、埃の雲に包まれた寺が一望できる。
三蔵と時々来ては、ここで昼寝したり、話したりするんだ。

あ、笙玄が居た。
うわぁ…埃まみれだ。
これが終わったら俺たちの部屋、掃除するって言ってたよな。
確か手伝えって言ってた気もする…。
と言うことは、笙玄が部屋に戻ってくるまでに、部屋に戻ってないとやばいんじゃね?

い、急いで三蔵起こして戻ってなきゃ…。

(悟 空)

2005年12月28日(水)


◇お籠もり◇

「臘八大接心(ろうはつおおぜっしん)」は十二月八日にお釈迦様が悟りを開かれた日にちなんで十二月の一日から八日まで、不眠不休で座禅をくむんだって。
三蔵は偉いから下っ端の坊さん達みたいに夜も寝ないで座禅をくむことはないんだけど、監督役?っていうので一緒に禅堂に籠もるんだってさ。
すっげえ面倒臭いとか、このクソ忙しいのにとか文句をさんざん言ってたけど、この座禅は仏教の修行僧にとってはとても大事な修行だからおろそかにはできないんだそうだ。
だから、どんなに文句を言っても、嫌でも三蔵はその修行に付き合うんだって。
座禅の監督をしない時は本堂でお経を上げるのが三蔵の仕事。
結局はみんなとお籠もりなんだよな。
でも、笙玄だけは朝と昼と夜、俺のご飯を作りに特別に戻ってくる。
それでも用意をしたらすぐ禅堂に戻らないといけないから、ろくな離しもできないんだ。
用意をしてくれてる間に、三蔵の様子を訊くと、すっげえ不機嫌な顔で仕事してるって笑ってた。
あと四日。
淋しいけどこれは毎年のことだし、遠くへ出掛けてるんじゃない。
何より三蔵の気配を感じられるから我慢できる。
うん、我慢できるんだ。

(悟 空)

2005年12月04日(日)