遠雷

bluelotus【MAIL

黄昏時
2007年09月29日(土)

会いたい気持ち。
いなくて寂しい気持ち。
会えなくて辛い気持ち。

同じようで、みんな違うと思います。

そしてこんな秋の空気を感じる日の夕方には、あのアパートで、掃き出し窓を大きく開けて腰掛けて友達のアパートのドアを見つめながら二人が出てくるのを待ったり、薄暗くなりかけた部屋で電気もつけずにゲームに興じたり、二人で夕食の買い出しついでに散歩をしたり、くだらないことをしゃべり続けてお腹が痛くなったり、していないことが不思議でならないのです。

これは彼と私の間の感情ではなく、彼に対する私の感情であるから、私だけの感情であって、成仏したとかそんなことは関係ないのです。
私が、私の気持ちで、私の事情で、会いたいと思うだけなのだから。

たとえこの気持ちが時間などというおせっかいなもののせいで、少しずつ薄れてきているのだとしても、今日の夕方、私は確かに、今が彼と過ごす夕暮れでないことが悲しくてならなかった、それは事実。


小さな拘束
2007年09月24日(月)

彼にもらった指輪をずっとしていました。
それは薬指には大きくて、中指に。

わたしがそういったものを貰いたがらないのを残念がっていて、たまたま買い物の最中に見つけた二人とも可愛いと思えるデザインを、自分が欲しいから買うのだと言い張って買って、わたしに渡した指輪でした。
そのときも大きいからと、中指にはめたわたしを少し恨めしげに、でも嬉しそうに見ていました。
照れくさくて薬指にはめられないのも、きっとわかっていたと思います。
指輪をしなれないわたしは、その後もあまりつけることはなく、寂しい思いもしたでしょう。
その代わりのように、彼は或る時私がつけていたブレスレットを欲しがり、それを自分がずっとつけていました。
今までは束縛されたくなんてなかったんだけど、こうすると君に手錠されているみたいで嬉しい、と。
いなくなって初めて、貰った指輪をし、ペンダントをし、勝手に彼にちなんだつもりの石の数珠で自分を拘束していったわたしは、彼の目にはどう写るのでしょうか。

指輪はガラスを使ったちょっと変わったもので、毎日身につけるには適さないデザインでした。
つけなれないわたしには特に。
つけっぱなしでぶつけたりもしたし、変色したりしていくうちに、段々アンティークのような雰囲気になっていき、なんだかよく褒められるようになりました。

いつしかつけていることに違和感もなくなり、つけていて当り前になって、何年もたって、そして今年の四月が来て、わたしは一歩踏み出しました。
近い将来、この指輪を外さなければならないのも、わかっていました。
ただ、まだすぐに外すつもりなどはなくて、いつか、と。
そんな風に思っていたら、ある日、左の中指の指輪の当たるあたりに急に湿疹ができてしまい、外さずにいられない状況になりました。
わたしの手は荒れやすくて、ここ数年軽くなったものの、すぐに湿疹やひび割れやらで来てしまうのに、なぜかこの指にだけは指輪をし始めてから何も起こらなかったというのに。

直りかけてはつけて、また荒れてしまって外す。
何度か繰り返しました。
あきらめて、しばらく外したままにしていました。
そしてもう、2ヶ月近く経ちます。
まだ、少しかゆみのある指を言い訳に、指輪のない状態に慣れるのはあっという間でした。
「今だからこそ、こんなになったのかもしれない」
「外させるきっかけなのかもしれない」
これもまたみんな自分を納得させる言い訳かもしれません。
けれど、わたしはもう、前のようにはこの指輪をはめ続けることはしないでしょう。

数珠を外すその前に、指輪をひとつ、作ろうと思います。
薬指にする指輪ではないけれど、シルバーのリングに彼のしていたタトゥーのデザインを彫ったものを。
それが出来上がったら、数珠も外して、一見何でもなさそうなその指輪だけをつけて、何でもない振りをして、生きて行こうと思います。


ただのゆめ
2007年09月01日(土)

ひさしぶりに、明確な彼の夢を見ました。

どこかで聞いたことのあるようなシチュエーション。
3日間だけ、戻って来るというものでした。

なぜか、彼がその日に戻って来ると言うことを私はあらかじめ知っていて、ちゃんとウィークリーマンションのようなところを用意しているのです。
そんな夢なのに、私の家に連れて行く訳でもないあたりに、夢の中でまで融通の利かない自分にあきれる思いもありますが、誰にも邪魔されたくなかったから、ということも言えるでしょうか。

あっけないくらいに彼はやってきて、どんなにか自分がヒステリーを起こすのだろうと思っていたのに、ただ涙を流すだけで責める訳でもなく、過ごし始めました。
あまりに何気ないような日常で、抱き合ったり、TVを見たり、食事をしたり。
ただ、「本当に好きだったと伝えられなかったことを、どんなに後悔したかわからない」ということを口に出さなければならないのに、なかなか言い出せなくて、そのことが幸せな時間に浸かりきれなくさせていました。

夢の中での私は、与えられた時間が3日間だけなのか、5日間あるのかを知りませんでした。
どこかで3日間だろうという気はしていたのです。
でも5日あるとも聞いたことがあるし、きっと5日なのだと思い込もうとしていました。
なのに、私は逃げました。
3日目の、その時間と思われる時間に、食料が切れたことを理由に、ひとりで買い物に出たのでした。
彼がいなくなる瞬間に耐えられない。
愁嘆場で、この3日間をすべてダメにしたくない。
私の恨みつらみも、哀しみも全部、彼には見えていたと思うから、今更責めたところで悲しませるだけだから、と。

こわごわ戻ると、そこには彼はいませんでした。
あまりにあっけないくらいに消えてしまっていたことに、私はどこか安堵したようです。
でもやはり、好きだったと伝えられなかったままで。

悲しい思いが伝わっているなら、好きな気持ちも伝わっているとは言えるでしょう。
でも、好きだと言うことを自分で言わなければいけないことは、それだけはしなければいけないことは、わかっていたのに。
やっぱりできなかったのでした。


実は、以前に書いた霊視をもう一度してもらう機会がありました。
そのときには前回伝えられなかった彼へのメッセージを伝えられました。
「ほんとうに、大好きだったのに、言えなくてごめんね」と。
「彼は、知っていましたよ。言われなくても、知っていたと言っていますよ」
それだけで、もう、どんなにか嬉しかったことか。

それなのに、今回の夢。
もう何ヶ月も経っていると言うのに、どうしたのでしょうか。
起きたばかりのときは、熱帯夜と同じように窓を開けたまま寝てしまって少し冷えた体に、彼の体の気持ちよい暖かさを思い出せて、「なぜ」という気持ちよりは先に、ただ心地よいその熱を反芻していただけでしたけれど。
ここまで書いていて、私は彼に伝えているのだと、確認することができて少し安心できました。
けれど、なぜ、でしょう。
まあ、夢ですから。
あまり見られない彼の夢を見られただけでも上々と、変に不安にばかりとらわれないように、することにしましょう。



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