ひとりごと
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雪の大晦日 2004年12月31日(金)

こんなに何もしていない大晦日は初めてだった。
大掃除も年賀状も、おせちの買い物さえしていない。
ずっと風邪をひいていたのだから仕方ないのだけれど、あせってしまう。
でも、昨日から休みに入った夫は、ちっともあせっていないようだった。
いつもと同じようにのんびりと本を読んだり、音楽を聴いたりしている。
ばたばたと気持ちだけ忙しがっている自分がバカらしく思えてきた。
「何もしなくてもお正月はちゃんと来るわよ」と、
半分自分に言い聞かせるように言っていた、母の言葉を思い出した。
そうだ。
あわてなくても、きっとお正月はやってくる。

雪の中、なんとかとりあえずの買い物にだけは出かけられた。
食料品と、プリンタのインクと、風邪薬を買った。
買い物と雪かきで疲れたにもかかわらず、気持ちは元気になっていたので
その調子でおせちを作ることもできた。
今年は出来合いを買わなくてはいけないかな、と思っていたので
簡単なものだけでも作れたことが嬉しかった。

ひと仕事を終え、お風呂に入って、ゆっくりと年越しそばをいただいた。
紅白歌合戦も始まって、いつもの年末らしくなってきた。
陽気な歌にあわせて、ジュジュもさえずった。
そのジュジュを見ながら、夫となんとなく今年を振り返った。
「まさかインコが1羽だけになるなんてねぇ。」
「べべちゃんが死んじゃうなんて思わなかった!」
「それから魚も。」
「うん、アカヒレちゃんは、ずっといてくれるかと思っていた。」
「ジュジュちゃんにはずっとそばにいてほしいよね。」
「ほんとにね。」
「毎年思いもしないことが起こるよね。」
「来年も同じように思うのかしら。」
「いい年になるといいね。」

本当に。
もうそこまで来ている新しい年は、平和でおだやかないい年になりますように。
大きな災害が起こりませんように。
いろいろあったこの年ももうすぐ終わる。
最後に雪が清めてくれた。
外に出て空を見上げるときらめく星たち。
つややかな月の光が雪を照らして、あたりはほんわりと明るかった。
もうすぐ新しい年が始まる。
元気に楽しくやっていこう!


さようなら私のピアノ 2004年12月29日(水)

小さな姪がピアノを習い始めると聞いて、
私の電子ピアノをあげることにした。
この頃あまり弾かなくて、すっかり飾り棚と化していたのだもの。
それを姪が喜んで弾いてくれるのなら、私だって嬉しい。
迷いはなかった。
ちょっと寂しいけれど、惜しいという気持ちはなかった。
おずおずと相談すると、夫も快諾してくれた。
そして今日、初雪が降ったこの日、私はピアノとさよならをした。

義弟が甥をお供に連れて、父の大きな車で取りに来ることになっていた。
「そろそろ家を出る」の電話を聞いてから、私はそわそわと落ち着かなくなった。
ピアノをきれいに拭いた。
久しぶりに楽譜を出して、ヘッドフォンなしで弾いてみた。
お隣の小学生のお嬢さんの方がずっと上手なのが恥ずかしくて
いつもヘッドフォンをつけてこっそり弾いていたのだ。
窓の外はしんしんと降る雪の静かな青い景色。
たどたどしい旋律が、明かりをつけたリビングに響いた。
聴いているのはインコが1羽。
ページをめくって、懐かしい曲を弾き続けた。
あぁ、もう少しでこれも弾けるのに。
もっと練習したらよかったな。

雪が降っているのに、思ったよりも義弟の到着は早かった。
まだ一番好きな曲を弾いていなかった。
でももうおしまい。
電源を切って、パタンとふたを閉じた。
義弟はお茶も飲まずに、すぐにてきぱきとピアノを分解し始めた。
部品になって行くピアノを、私はひとつずつもう1度拭いては床に広げた絨毯に並べた。
小さな甥も、珍しそうにさわっていた。
ペダルの裏から、ほこりと一緒に懐かしいトトの青い羽が出てきて胸がつまった。
最後のねじが抜かれ、ピアノはすっかりばらばらになった。
6年ぶりの床が出てきて、そこに丁寧に掃除機をかけた。

玄関に並べた部品を、義弟とふたりで車へ運んだ。
うっすらと雪が積もり始めたレンガ敷きのアプローチや階段はすべりやすい。
慎重にゆっくりと、そろそろと歩いた。
どんどん降ってくる雪がピアノの上で雫になる。
私のピアノがぬれてしまう。
気になるけれど、急いで転んで壊したら大変。
ハッチから車に収めて、梱包用のタオルケットでそっと拭いた。
ありがとう、さようなら、と心の中で言った。

少し広くなったリビングで、義弟と甥に簡単な昼食を出した。
ふたりはぺろりとピザを平らげるとすぐに立ち上がった。
「もう帰る?」
「雪で道が混むといけないから」
「そうね、向こうでも楽しみに待っているものね」
滞在1時間ほどで、義弟と甥は、ピアノを連れて帰ってしまった。
あっと言う間のことだった。
広くなったリビングで、ちょっと踊ってみたりした。
インコが見ていた。

私の電子ピアノは、15年前にうちに来た。
新婚早々、長い海外出張に出ることになった夫が、私が寂しがらないように、と
思い切って買ってくれたのだ。
狭いマンションにも、若い私たちにも分不相応な、贅沢な買い物だった。
それだけに宝物だった。
畳敷きの小さな部屋で、私はピアノを弾いていた。
しばらくは教室にも通っていたのに、なんでやめてしまったのだろう。
思えば、あまりちゃんとした曲を奏でることもなかったこのピアノはかわいそうだったかもしれない。
もっと練習して楽しんで、もっともっと歌わせてあげられたらよかった。

夕方、妹からお礼の電話がかかってきた。
うしろでは、はしゃいでいる姪たちの声がする。
嬉しくてたまらないらしい。
本当によかった。
これからは、姪が毎日弾いてくれるだろう。
どんどん上達していくのだろう。
きっと大事にしてくれるだろう。
いつか素敵な曲を聴かせてもらおう。
私も時々は弾かせてもらおう。
私のピアノは、きっと幸せになる。


招待状 2004年12月24日(金)

陽射しが暖かかったので庭に出た。
気になっていたパンジーやビオラのポット上げをした。
窮屈な苗床から、1本ずつの個室に移って
苗たちはぐーんと背伸びをした。
急がなくていいから、春になってからでいいから
かわいい花を見せてちょうだいね。

パンジーたちが落ち着いたころ、日は傾いて肌寒くなってきた。
今日のところはこれで終わり。
潔く部屋に引き上げた。
温かいお茶が飲みたい。
やかんを火にかけて、夕刊を取りに玄関を出た。
ポストを開けると、夕刊の上に1枚の紙がひらりと乗っていた。

「しょうたいじょう」
色画用紙に書かれた色鉛筆の文字を見て顔がほころんだ。
パーティーをしましょう、と前からお隣さんに誘われていたのだ。
まぁ!
ちゃんと招待状が来るなんてパーティーだなんて!
なんて素敵なの?

日にち→12月25日(水)
時間→学校から帰ったらすぐ
場所→○○家
持ち物→プレゼント(でる人数分)など
やる事→クリスマスパーティー

さあ、大変!
プレゼントを考えなくては。
明日は楽しいクリスマスパーティー。
呼ばれて嬉しいクリスマスパーティー!


私の小鳥たち 2004年12月16日(木)

今日はべべの四十九日だった。
もうあれから7週間もたったのか。
白い丸い月が美しすぎる夜だった。
べべがいない生活を、そんなに長いことしていたなんて不思議な気がする。
お墓にろうそくとお香をたてて、しばらくべべとお話をした。
いつかまた、きっと会おうね。

そして昨日はピピちゃんの一周忌だった。
そう、ふたご座流星群のころだった。
ある日突然やってきて、みんなに楽しさをくれて、あっという間に去っていったピピちゃん。
流れ星を見送って、あれはピピちゃんだ、と思ったのだった。
とってもかわいい子だった。

お風呂に入っていたら、トトのことを思い出した。
夕食後、いつものようにかごから出して遊ばせているとき、
あとを夫に任せてお風呂に入ったことがあった。
ところが夫が居眠りしてしまって、寂しくなったトトが私を探して飛んできたのだったっけ。
リビングから、暗いキッチンや納戸を通り抜けてお風呂場まで。
どんなに勇気が要ったことか、どんなに寂しかったことか、と思うと本当に愛しかった。
私もトトに愛されていた。

逝ってしまった小鳥たちのことを、ひとりで歌うジュジュを眺めながらゆっくりと思い出していた。
ジュジュも私と一緒に、あの3羽を見送ったんだよね。
たまには思い出すことがある?

そんな今日、嬉しい小包が届いた。
つがいのインコが描かれた、アンティークのカップとお皿のスナックセットだ。
最初ウェブ上で見たとき、目が離せなくなった。
これは私のところに来るものだと思った。
それでも悩んで悩んで、何回も眺めて、夫にも見せて、
自分へのクリスマスプレゼントとして、やっと買うことにしたのだ。

厳重な包みを解いて、もこもこのパッキングの中からインコたちを取り出した。
薄手の磁器は、意外なほど軽くて華奢だった。
カップとお皿のそれぞれに、ペアのインコたちが仲睦まじく顔を寄せ合っている。
まん丸な目(妹に言わせたら「素っ頓狂な目」)がユーモラスだ。
野原の中でお花いっぱいの木の枝に止まって、インコたちは幸せそうだった。

4羽のインコは、トト、べべ、ジュジュ、ピピかな。
色や模様はジュジュとピピちゃんに似ているね。
これからずっと私の手元で、仲よくおしゃべりしているのよね。
私の小鳥たち、みんな大好きよ。


帯飾りはお財布飾り 2004年12月15日(水)

赤い分厚い封筒がポストから出てきた。
かわいい小鳥の切手ににこにこしてしまう。
封を切ると、もっと嬉しい。
注文していた帯飾りが届いたのだ。

去年、町子さんのところで知った「nui+yui」
手作りが好きな方やお店のサイトを持つ方が集まって
この期間、手作り小物のコラボレーションショップを開くのだ。
予告されたときからわくわくと待って、プレビューが始まったら
ひとつひとつのお店をうきうきとウェブウィンドウショッピング。
ほしいものを決めて、そして販売開始を待ってメールする!
これがどれも競争率が高くて、なかなか買えないのだ。
でも今年は!
プレビューのときからひと目ぼれしていたCyu2さんのお店の帯飾りを注文することができた。

赤い封筒からピンクの手紙と、セロハンの袋に入った白い箱が出てきた。
添えられていたサンタさんのチョコはクリスマスプレゼントかな。
楽しくなってしまう。
和紙の細い帯をそっとはずして箱のふたを開けると、ふわふわのパッキングに埋もれた
ちょっと古風で優しい色の帯飾りがあらわれた。

ぽっこりふくらんだ小さな楕円にカメオのように繊細な菊の花と葉が彫られている。
隣に2つつながって下がっているチューリップのヴィンテージビーズは
夢見るような虹色にほんのりと光っていた。
菊とチューリップをつないだピンクの紐は、細長い透明なプラスチックにつながっている。
このプラスチックの板を帯の間にはさみこみ、帯の上に飾りを出して見せるのだ。
そうだ、新春のお初釜のときにつけていこう。
どんな着物や帯が似合うか、早速あれこれと考えた。
あまり柄がある帯ではないほうがいいかな。

これは、透明の板からはずすと根付けとしても使えると言う。
せっかくのかわいい菊とチューリップ、着物のときだけでは寂しいから
ふだんはお財布につけて連れ歩こう。
先月買ったばかりの小さな小銭入れのがま口につけてみた。
とっても似合っていた。

小さな愛らしいものを持っていると嬉しくなる。
何度もがま口を出しては、根付けを揺らしてみた。
大きなお財布がトレードマークの私だけれど、
これからは人前で、意味もなく小さなこのがま口を出すことが多くなるかもね。


実家でお仕事 2004年12月14日(火)

「住所録の入力が早いの。自分でびっくり!」と母に自慢したばっかりに
「それじゃ、うちのもお願いしようかしら?」と言われてしまった。
「任せておいて!」と気安く請合ってから
「それで、何枚くらいあるの?」と聞くと、「今年は800枚買ったわ。」…。
妹たちの分を抜いても、700件近くはあるらしい。
どひゃ〜〜〜。

そう言われてからも、なかなか実家に行く時間がなかった。
「いいわよ。毎年のことだから、少しずつ書いていくから。」と諦めたように言う母。
たしかに、パソコンで打ち出した文字より、母の達筆の宛名のほうが
受け取ったほうも嬉しいに違いない。
積み上げた年賀はがきを前に、墨を擦り擦り夜鍋する母の姿は
小さいころから見慣れた年末の風物詩でもある。
それでも、ただでさえ忙しく疲れる年末、目をしょぼしょぼさせながら1枚1枚書いていく
年をとった姿を思い浮かべると、つらくなってしまった。
それで今日の午後、「いっぺんに全部は無理かもしれないけど。」と前置きして、
思い切って実家に住所録の打ち込みをやりに行った。

私が来ると聞いて、父は一応名簿を整理していてくれたらしい。
だけどそれは、あっちへ飛び、こっちへ飛びしてややこしい。
これは○○会、こっちは××の会、そしてこっちは会社関係、その他いろいろ。
住所や名前を打ち込みながら、それも分類して行く。
パソコンに入っている住所録ソフトは、郵便番号を入れたら
途中まで住所が出てくるようになっているのでとても楽だ。
でも父の手書きの文字が読めなかったり、住所表示が変わって見当たらなかったり、
意外と手間取ってしまう。
それに、昔の人の名前って、なんでこんなに難しい漢字を使ってあるのだろう?
間違えた字を使うわけにはいかないので、部首や画数で調べて漢字を探していった。
おかげでずいぶんいろいろな字や名前を覚えた。
中には、小さいころの社宅でかわいがってくれた懐かしいおじさんの名前も出てきたりして
母や妹とそんな思い出話もしたりした。
お茶やお菓子も出てくるし、おしゃべりしながらのこんな仕事はなかなか楽しいのだった。

でも1時間もやっていると、指先が冷たくなってきた。
北向きのこのダイニングキッチンは、煮炊きしたり、みんなが集まったりするわりには寒い。
手をこすり、指先をもんだりしながらやっていたけれど、だんだん指が動かなくなってきた。
ちょっと休憩。
母が作ってくれた熱いココアをふーふーしながら飲んだ。
首や肩を回して、足を屈伸させて、ちょっとテレビを見たりもした。
あまり見たことのない昼間の番組が新鮮だった。
母がいて、妹がいておしゃべりをして、一緒にお茶を飲みながら昼間のテレビを見て。
こんな風景が昔にあったようで、懐かしい気持ちになった。

休憩をはさみ、だんだん仕事のペースが進んできた。
やがて午後遅く、幼い賑やかな声がはずみながらやってきた。
すぐ下の妹が、幼稚園から帰った姪たちを連れて遊びに来たのだ。
姪たちは、私がいることを喜んでくれた。
「おねえちゃまはお仕事だからね。ごめんね。」と言い渡しながらも、
ついついかわいいおしゃべりにつきあってしまう。
幼稚園の先生の話や劇の話、サンタさんに書いたお手紙の話。
アドベントカレンダーから、小さなチョコも取り出してもらった。
キーボードを打つ手のほうがおろそかになってしまう。
でも小さな子たちの話は楽しい。
そして日が暮れ、今度は保育園から甥が帰ってきた。
賑やかになっていく小さなダイニングで、私は父の手書きの名簿をパソコンに打ち込んでいった。

温かいおいしそうな匂いが漂ってきた。
「もうその辺でいいわよ。」と母の声。
もう夕食の時間になっていた。
夫は今日は出張で帰りが遅いので、あわてて家に帰って食事の支度をすることはない。
一段落したところでパソコンを閉じて、母の料理を妹たちや姪たちといただいた。
結局入力できた名簿は360件ほどだけだった。
まだ半分残っている。
「また来なくっちゃね。」と言うと、「あとは手書きでもいいし、○子にやらせてもいいから。」と母。
「少しは楽になりそう?」と聞いたら、「もう〜全然違うわよ!ありがとう。」と言われた。
それならよかった。
今年からは、ちょっとずつ実家の年賀状も、デジタル化されていきそう。
どんどん交友関係を広げていく父のお世話を、母だけが背負わなくてもよくなりそうだ。

夕食後、妹が姪たちに帰る支度をさせ始めた。
私も夫が戻る前に、家に帰らなくちゃ。
荷物をまとめると、持ってきたトートバッグがふくらんでごろりと重い。
中にはいつの間にかみかんやりんごやおせんべいでいっぱいになっていたのだった。
こんな荷物だったら重くても大歓迎。
途中の駅まで、母に車で送ってもらった。
その車内で「これ、ビール券とアルバイト代ね。」と封筒を渡された。
「いいわよ、こんなに!結局できなかったんだから。」と遠慮すると
「いいから取っておきなさい。ずいぶん助かったんだもの。」と母が言った。
こんな年になって、お小遣いをいただいていいのかな、と思いながらもありがたくいただいた。
夫へのクリスマスプレゼントでも買おうか。
それとも、両親への小さなプレゼントが何か買えるかな。


素敵な手作り石けん 2004年12月13日(月)

手作り石けんのことは、前から気になっていた。
作るのはおもしろそう、でも大変そう、でも使ってみたい。
そう思っていたら、この夏、友だちが作ったものを送ってくれたのだ。

白いかさかさした紙のかわいいラッピングをほどいてため息が出た。
なんてきれいでおいしそうなの!
それになんていい香り。。
手触りはしっとりと手に吸いつくよう。
かっきりした直方体の断面が手作りらしくて誠実な感じがする。

紙に書いてくれた原材料名を見ると、まるでデザートのレシピのよう。
オリーブオイル、ココナッツオイル、アプリコットカーネルオイル。
オレンジピールパウダー、杏仁霜、はちみつ、ヨーグルト。
香りのもとは、カモミールやラベンダーのエッセンスオイル。
呪文のように、口の中で唱えてみる。

今まで市販の石けんしか使ったことがなかった。
手作りの石けんって、どれくらい石けんなのかしら?と思っていた。
でも、このフルーツのような花のような優しい色の石けんからは
真っ白なクリームみたいな泡が、ふわふわもこもこと生まれてきた。
本当に石けんだ。
手を洗ってみると、細やかな泡が手に柔らかい。
そしてすすいだあとのしっとりとした感じは、今までにないものだった。
今度は顔を洗ってみた。
ふわふわの泡に顔をうずめて、そっと息をしてみると自然の果物みたいな香りがした。
心配だったくしゃみも出なかった。
そしてやっぱりすすいだあと、ほほの手触りがしっとりと柔らかになっていた。

それ以来、顔を洗うのも、手を洗うのも、お風呂で体を洗うのも、この手作り石けんひとつ。
信頼できる人の作った手作り石けんは、材料も作り方もはっきりとわかっていて安心だ。
この石けんの泡は、流されても微生物で分解されるので環境にも優しいと言う。
ただ溶けやすいので、お風呂場に置きっぱなし、と言うわけにはいかない。
洗面所に何個か並べた中から選んで、お風呂場に持って入り、持って出る。
この連れて歩く感じが、またかわいくて楽しい。
日替わりで、気分によって、石けんを選んで楽しく使い分けている。

友だちは髪も洗っているらしい。
本当の自分の髪に出会えると言う。
リンス代わりになるクエン酸を買ってきて、試してみよう。
そう、それから食器洗いにも使ってみよう。
キッチンの出窓に、お菓子のような石けんが並んでいるところを想像すると嬉しくなる。
今使っているのが、最後のふたつ。
さあ、またお願いしなくっちゃ。


きれいでおいしそうな(食べちゃダメよ)無添加手作り石けんと
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私のでこぼこ真珠 2004年12月10日(金)

買い物帰り、駅に向かうためにファッションビルの1階をを突っ切った。
特にそこで買うものはなかった。
でもきれいなものがいっぱいのアクセサリー売り場は楽しい。
きらきらやふわふわに目を奪われながら歩いた。

フロアの真ん中に伊勢の真珠屋さんの特設コーナーができていた。
ショーケースに並んだネックレスやイヤリングをちらちらと見た。
きれい。素敵。
でもネックレスなら1本持っているし、今はこんな高価なものはいらないわ…。

そう思いながら通り過ぎるとき、ショーケースの端の札に目がとまった。
「真珠一粒42円」。
平たい器の中に、ざらざらと山盛りの真珠が入っていた。
気になって近寄った。
手に取ってみると、ちょっとはげていたり、形がいびつだったり、しわしわだったり、
みんな「難あり」の真珠の粒なのだった。

売り場の女性が声をかけてきた。
「この真珠は検品の段階ではねられたけれど、もともとはこちらのネックレスと同じ和珠なのですよ。」
隣のネックレスに目をやった。
色も形も均一なつややかな珠が連なって美しく輝いていた。
それに比べて、こちらの器の中の真珠たちは不ぞろいな光を散らばらせて、
子どもたちがざわざわと集まったかのようにあっちこっちを向いている。
でもそれがユーモラスに見えて温かみも感じられるようだった。
「お安いですし、お気軽にビーズ感覚でどうぞ。」とお店の女性はにこやかに言ってくれた。

うんとでこぼこの一粒を手に取った。
ネックレスになっているものよりも大きくて、虹色も深いような気がする。
個性的な形がかわいく見える。
こんなでこぼこばかりの真珠を選んでネックレスにしたら、わりと素敵なのじゃないかしら?
そう思いついて、備え付けの小さいカップを手に取った。
器からすくい取った真珠の中から、できるだけ個性的なものを選んでカップに入れた。
途中から、お店の人も手伝ってくれて、カップはすぐにいっぱいになった。
一粒が7、8ミリの大きさがあるので、5、60個でネックレスができあがる。
結局、気に入った珠を60個選んで買った。
ひとつひとつが違う色と形を持った、かわいい私のでこぼこ真珠たちだ。

貴金属はあまり身につけないけれど、真珠は特別に大好きだ。
生きている、と言う感じがする。
身に着けていると、暖かいような感じがする。
アコヤ貝がその一生をかけて、たった一個だけ作った真珠はとても貴いものだと思う。
いびつな形は、その貝の個性だ。
異物を丸め込もうとして、一生懸命に美しい真珠層を巻きつけていく。
熱心に巻きつけ過ぎた結果がでこぼこ真珠なのだ。
そう思うと愛しい。
私は考えすぎかしら。

でもこのでこぼこ真珠たちで作ったネックレスはきっとお気に入りになるだろう。
丁寧にひとつずつつないで、たったひとつのネックレスを作ろうと思う。


虹色の雲 2004年12月07日(火)

すぐ下の妹と新宿で買い物をした。
小さい子がいてなかなか外に出られない彼女とこうして会うのは珍しい。
デパートでお化粧品を買い、靴を見て、
ファストフードであわただしいランチをとり、
「お迎えの時間!」と妹はあたふたと帰っていった。
でも、久々の買い物は楽しかったようでよかった。
そのあと、ほんの少しだけウィンドウショッピングをしただけなのに
すぐに日が傾いてきた。
短い日に追い立てられるように帰ってきた。

駅前の駐輪場から自転車を出すとき、美しい雲を見た。
虹色に染まった彩雲だった。

本当はこの写真よりもっと虹色だったのよ。


素敵な寄り道 2004年12月06日(月)

夫の会社に忘れ物を届けに行った。
ひと仕事終えてほっとした帰り道、
なじみの薄いその駅で「京王線」の案内に気がついた。
そう言えば、友だちがよく素敵な写真を見せてくれる植物園が
この沿線にあるのだっけ。
行ってみようか?
お天気はいいし、時間だってまだ午後になったばかり。
思いついたまま改札をくぐり抜け、ホームで待っていた急行電車に飛び乗った。

こんな突然の寄り道って楽しい。
小さいころの冒険みたいでわくわくする。
さて…でもあの植物園は今日は開園しているのか、
それどころか、どの駅で降りるかさえ知らないのだった。
走り始めた電車の中を、吊り広告を見上げながら歩き回った。
もしかしたら、植物園の案内の広告があるかもしれないと思って。
でもひと車両を往復しても見つからなかった。
うろ覚えの駅で適当に降りてみようかな。
それでなかったら、なかったときのこと、引き帰したらいいのだし。
やがて友だちに訊いてみたらいいのだと気がついた。
空いている座席に座って、急いで友だちに携帯電話でメールを送った。
返事が来ますように…。

すぐに返事が返ってきた!
わぁ、うろ覚えの駅は間違っていた。
次の駅で降りて各駅停車に乗り換えなくてはいけない。
よかった、間に合って。
友だちは、開園していることも確かめてくれた。
感謝、感謝。
さぁ、楽しんできましょう。

その植物園は、駅を降りてすぐのところにあった。
花の盛りの時季ではないけれど、紅葉と冬枯れの木立の美しい静かな庭園だった。
池のほとりで頭を寄せ合ったモコモコのガマの穂たち。
真っ青な空に伸びたマグノリアの白い枝とふんわりした花芽。
日に透けて赤がまぶしいサルスベリやハゼの葉。
キャンディーみたいなヒメツルソバの愛らしい花。
花壇で笑顔を並べたパンジーたち。
すっきりと葉を伸ばして花を待つ水仙の波。
重たげな花をゆっさりと咲かす香り豊かな薔薇の花。
そして、キラキラと風の中で光るクヌギの木の美しさ。
芝生の上にも、ガーデンテーブルの上にも、木漏れ日が揺れていた。
葉ずれの音と光の中で、梢を見上げてぼんやりとたたずんだ。
ふわふわと手を振る風船のサンタさんだけがそばにいた。
今、この庭の木も花も、私だけのもののようだ。
日が傾き、カメラを持つ手が冷たくなるまで、ひとりで贅沢な時間を過ごした。

ゆっくりと歩き回ると、そこここに働く人がいるのだった。
ほっこり柔らかそうな黒い土をおこす人、コニファーに飾り付けをする人、薔薇の花殻を摘む人。
友だちが前に言っていたとおり、みんな気持ちよく丁寧に楽しげに仕事をしていた。
植物たちは慈しまれて、のびのびと育っていた。
たくさんの小鳥たちも、当たり前のようにそこで暮らしていた。
きれいで気持ちがいい、優しい空間だった。

もし夫が忘れ物をしなかったら、「京王線」の表示で思い出さなかったら、
こんなにお天気がよくなかったら、友だちが携帯メールに気がつかなかったら、
私は今日、ここに来ることはできなかった。
すべての偶然が嬉しくてありがたい。
今度は春に、花いっぱいのころに来よう。
いえ、雪が降った景色も素敵だろう。
夏の緑は美しいだろう。

いいとこ見つけた。
また寄り道しよう。


暖かい12月 2004年12月05日(日)

昨夜の暴風雨には、何回も目を覚まされた。
うとうとしながら、庭の木や花のことを心配していた。
朝、目が覚めると台風一過のようなピカピカの空。
窓を開けたら、暖かすぎるほどの空気が冷たい部屋に入り込んだ。
庭の花たちは無事だった。
それどころか、たっぷりの雨と明るい陽射しを浴びて
いつもよりも元気そうに見える。
ちょっと遅めに咲いたマリーゴールドもほっとしたように小さい花を咲かせた。

まだ強い風にてこずりながらもなんとか洗濯物を干し、
ぼんやりしているときに、友だちからの電話があった。
近くまで来ているので、うちに寄ってくれると言う。
うちに来てもらうのは久しぶりなので嬉しい。
だけれど散らかったこの部屋!
高速回転で掃除をした。
長袖シャツ1枚着ているだけなのに、汗ばんできた。
今日は25℃以上の夏日になるって言っていたっけ。
これが12月だなんて信じられないくらい。
あぁ、でも暖かいって動きやすい。

なんとか格好をつけたころ、友だちの車が到着した。
あまりじっくり見てもらうと恥ずかしい散らかった庭もちょっと見てもらった。
そして、友だちが持ってきてくれたお菓子をいただいた。
音楽に合わせて、ジュジュが歌い、暖かくのどかで楽しい午後のひと時。
お花や動物たちの話で盛り上がった。
どんなときも、友だちと会ってしゃべると心が晴れる。
突然プレゼントをいただいたような日曜だった。


うきうきお買い物ツアー 2004年12月03日(金)

遠いところに住む友だちが東京に遊びに来た。
大切な時間なのに、思い出して誘ってくれるのが嬉しい。
おしゃべりをしながらのランチのあと
彼女のお目当ての生地屋さんのバーゲンに行った。
最近はお裁縫からも離れていた私も
ついつい熱気に煽られていくつかの布と型紙を買った。
がんばってバッグを作らなくっちゃ。
友だちは、たくさん買ったその布で、また素敵な作品を作ってくれるだろう。
そのあとは代官山へ。
今日は楽しいお買い物ツアー!

とは言っても、私も代官山のことはほとんど知らないのだった。
このふたりがそろうと、いつもそうなるとおり、
今日ものんびりゆっくりさまようように歩き回った。
あぁ、街ってなんてきれいなものがいっぱいなのだろう!
それでなくてもクリスマスが近くて、お店も街行く人も華やかに見える。
目に付いたお店に入って、かわいいものを見つけては笑い合い
素敵な服やアクセサリーを見つけては顔に当て、鏡を覗き込んだ。
クリスマスの小物からも目が離せなかった。
私たちの荷物は、こまごましたものでだんだんいっぱいになってきた。

短い日が暮れて、イルミネーションが輝き始めた。
街はますますキラキラと夢のように美しい。
相変わらず道に迷いながらも、気が合いそうなお店を見つけて入ってまわった。
友だちは、おしゃれな雑貨屋さんで犬の刺繍がかわいいお財布に一目ぼれして買った。
私は、映画の中に現れそうな素敵な帽子屋さんで、気に入った帽子と出会ってしまった。
いいお買い物ができて、ふたりでほくほく喜んだ。

お留守番のお嬢さんへのお土産も買い、ケーキ屋さんでパンとお菓子も買った。
今まで見たくなかった時計が気になり始めた。
お別れの時間が近づいてきていた。
楽しい時間は本当にあっという間。
別れるときは、いつも寂しい。
でもね、またきっとすぐに会えるよね。

楽しかった1日をくれた友だちに感謝して笑顔で別れた。
お疲れさまでした。
気をつけて帰ってね。
私もたくさんのお土産と思い出を抱えてラッシュの電車に乗り込んだ。


今日はこんな日 2004年12月01日(水)

ふわりと12月に入っていた。
1ヵ月後がお正月だなんてウソのよう…。
べべにお線香をあげに庭に出たら、冷たい空気に顔を洗われた。
球根を植え終わってなくて落ち着かないのだけれど、
まだ風邪が治りきっていないので、
もう1日家の中でゆっくり過ごすことにした。

朝遅く、窓の上のほうに日が射してきた。
だんだんカーテンのその明るい幅が広くなってくる。
買っておいたキラキラ光る小さな飾りをカーテンレールにぶら下げた。
透明なピンクがちらりと揺れた。
ひとつ飾りを下げただけで、クリスマスの華やかな気分になった。
ツリーを出すのは来週かな、その前に掃除もしなくちゃ、などとぼんやり考えた。

昼間は、土曜日に妹たちと参加するフリーマーケットに出すものを探した。
丈が短くなりすぎたり、おなかまわりが気になったりで、あまりはかなくなったスカートや、
顔映りが悪くてほとんど袖を通さなかったセーター、ちょっと重いコートなど、
まだきれいで十分着られるのだけれど、私には必要のない衣類をベッドの上に並べていった。
景品でいただいたけれど使っていないバッグやアクセサリーも探し出した。
埃が舞って、くしゃみ連発。
ぜいぜいと喘息も出始めたので、ここで一段落。
もっとちゃんとお掃除しなくてはダメね。

夕方、母と電話で12月の予定を話した。
クリスマスパーティーのこと、帰省のこと、そして年賀状の話になった。
そこで、パソコンが夏に壊れて住所録も消えてしまったことを思い出した。
今のうちに入力しておかないと、年末あわてることになる。
電話を切ったあと、今年の年賀状をもとに、新しい住所録に入力を始めた。
珍しく集中していたらしい。
2時間半で、親戚の分と私の友だちの分、160件あまりを入力することができた。
ひゃー、1件当たり1分足らずでできた計算!
ひとりで得意になったけれど、集中しすぎたのか、熱が少し上がってしまった。

夕食は、買い置いておいた食材で中華風のメニューをいくつか作った。
参考文献、久々に買ったオレンジページ。
新婚のころ、せっせと買って読んでいた雑誌だ。
懐かしくて、気分も初心に戻って、本のとおりにきちんと作ってみた。
自分の味とは違う、ちょっと変わったおいしい料理ができて、夫にも好評だった。
私も調子に乗って食べ過ぎて、マヌケにもめまいを起こしてしまった。

食後、疲れて横になっていて、洗濯物を取り込んでいないことを思い出して飛び起きた。
そうだ、今日は何日分かをまとめて洗っていたのだっけ。
大変、大変。
2階に上がり、窓を開けると、ベランダで湿って冷え切った洗濯物が揺れていた。
明日、干しなおさなくては。
うっかりを後悔しながら、ハンガーを引き寄せ、ふと空を見上げた。
わぁ!
息を呑むほどの美しい夜空。
星の光がキラキラキラ…と澄んだ音を立てそうなほどに瞬いていた。
たくさんたくさんの星が見える。
ずっと見ていたら、流れ星だって見えるかもしれない。
目の前で手を広げているオリオンの三ツ星も、その下の小三ツ星の星雲もきれいに見えた。
もう少し顔を上げるとつやつやと明るい月がころんと星空の上に転がしたように光っていた。
寒さも忘れて、ベランダに立ち尽くし、ぼーっと空に見とれた。
そして、悲しいことを思い出さずに星空を見たのは久しぶりだったことに気がついた。

パソコンをつけて、友だちの言葉にふれた。
今日がべべの誕生日だと思い出してくれていた。
そうだった。
べべは(生きていたら)今日で7歳。
冬生まれ、射手座のべべちゃんだったのだっけ。
思うと胸がつまるけれど、もう泣かない。
ふんわりかわいいヒナだったことをほのぼのと思い出す。
おだやかにほほえめてくる。
ね、もう大丈夫でしょ。

クリスマスツリーを出すときが、べべのかごをしまうときだろう。
ゆっくりゆっくりと、べべに別れを告げて行く。
またどこかで会えると言う、妙な確信があるから悲しくない。
私はてきぱきと自分のことをやっていこう。
あと1ヶ月で今年が終わる。


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