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----------2005年08月31日(水) 燃え尽きた
白い箱の中で燃え尽きて灰になった。
今日ばっかりは腕も目も休めてやらないと明日から仕事にならないのでこのへんでおやすみなさい。
----------2005年08月30日(火) 迷走スパイラル
止まっているよりは動いているほうがいいし、どうせ動くのだったら走っているほうがいい。けれど地球の裏側まで走ったところで「自分」から逃れることはできず、結局「自分」の枠内でぐるぐると迷走を繰り返しているに過ぎない。
「外」からの呼び声は聞こえない。
此処を通ったのは何度目?
どんどん狭くなりどんどん深くなりどんどん暗くなる。
迷走スパイラル、光は同情なんかしない。
速度をあげて、「何か」が凝縮するまで。
胎動を、感じたなら、突き破れ。
----------2005年08月29日(月) 静かな一日
静かな一日と無為な一日はいったい何処が違うのだろうと自問自答してみたくなるほどにコトリとも音を立てずに過ごした一日。
読んでも、書いても、聞いても、それが音を立てない限り無為なのだ、多分。
----------2005年08月28日(日) 自浄作用
皮膚の内側で熱を孕み化膿していたものたち
言えなかった言葉言わなかった言葉書かなかったメール
捌け口を求めて
下へ 下へ
私の海は満ち
そして溢れてゆく
流れ
そして
穢せ
「無垢」な「外部」を、漂白された布地のような存在を、
「汚れた血」
他を穢す痛みに刺し貫かれる身体
こうして浄められ
月が生まれ変わる
----------2005年08月27日(土) とにかく手を叩こう
賑やかなオンガクが鳴り止まない。夏は次第に痩せていこうとしているのに、私のアタマは今夜まるで手品師のシルクハットのようで、色々な計画が次から次から、色とりどりのハンカチのようにとっかえひっかえわきだしてくる。
だけどこんな心境はたえてなかったことなので
多分そのうちの半分以上が計画だおれに終わるであろうことは経験上承知しているけれど
とにかく めでたい ってことで
パソコンの画面の向こうにいらっしゃる皆様も
なんだかよくわけが分からないけどとにかくめでたい ってことで
パチパチと手を、叩いてください。
はい、せーの。
きっとね。
----------2005年08月26日(金) 毛皮なんか
今日、いつも洋服を買っているショップにブーツを買いに行ったら、スワロフスキーを両目に嵌め込まれたフォックスの毛皮と目が合った。てっきり、売り物ではなくて飾りものだろうと思ったのだけれど、私がそれをじっと見ていたら店員さんが「おしゃれですよー」と例によって例のごとくの営業トークで話しかけてきた。
それはたしかにふわふわで暖かそうだった、とくにグレーの毛皮は本当にシックで、店員さんの言うとおり、たとえばジーンズに何気なく合わせたりしたらものすごく「おしゃれ」なのだろう。
だけど日本は亜熱帯化してるわけだし
キツネさんの原型をそのまんま留めているような
そう、ホントにキツネさん1匹そのまんま
尻尾も、足も、そのまんまの毛皮なんて
店員さんは「一生ものですよ」と言ったけど、スワロフスキーを嵌め込んだりじゃらじゃらと宝石をつけたりしているデコラティブなのはここ数年の流行に過ぎない。そんなもののために、たかが「おしゃれ」のためだけに、キツネさんを、キツネさんを、うがーっ。
なんて書いておきながら今日買ったブーツにはパイソンの皮がふんだんに使われているのだった。キツネさんはダメでヘビさんならいいという法はない。ときどき人間なんて滅亡しちゃえばいいのにと思う。いや、ときどきじゃない、しばしば、思う。
アンタが買わなきゃいいとかそんな問題じゃないでしょ多分。
----------2005年08月25日(木) イキタクナイ
行きたくない行きたくない行きたくないがいつの間にか生きたくないに勝手に変換されているこの不思議。
行きたくないのか
生きたくないのか
それとも逝きたくないのか
逝きたくないけど生きたくもない、とにかく会社には行きたくない。
イキタクナイ、をアタマの中で弄びながら、とりたてて他に行くところもないので会社に行った。
----------2005年08月24日(水) あまりにも醜い
何の罪もない小さなドウブツに対して自分の苛々や鬱憤をぶつけることほど罪深いものはないと思う。愛くるしい表情や身体のぬくもり、小さな心臓の音、ふとしたときに擦り寄ってきたり気がつけば寄り添って眠っていたりする気持ちの可愛らしさ、到底言葉では言い表せないたくさんの贈物を日々受け取っているというのに、昨夜私はネコに手を上げた。
ウシ模様のネコは臆病なのですぐに母のベッドの下に隠れた。けれどトラ模様のネコは勝気なのでフーッと威嚇しながら背中の毛を逆立てて、私の手に向かってきた。それからのことはあんまり覚えていない。私はタオルでぶった、と思う。枕でぶった、と思う。それでもまだ飽き足らなくて、トラ模様のネコが一番嫌っている掃除機を引っ張り出して、何度もぶった。そのたびにネコは威嚇の声をあげ、猛烈な勢いでネコパンチを繰り返す。私の側にも、ネコの側にも、理性などは一切残っていない。
そんなことが数十分は、続いたと思う。私は疲れ果て、多分ネコは寿命を3年ばかり縮めた。これでもう、二度と触らせてくれないだろう、二度と許してくれないだろう、と思った。
それなのに今朝起きたらネコは私の枕元で眠っていた。名前を呼ぶといつもどおりうにゃんと鳴いてほおずりしてきた。私はもう、自分が情けなくて、ネコを抱きしめて、泣いた。
父が私の上に馬乗りになって顔面を何度も殴った夜のことを今でも鮮明に覚えている。その夜は深く刺さって抜けなくなったトゲのように皮膚の内側にとどまり続けていて、口の中に広がった血の味はじくじくと今の時間の中にも染み出してくる。
*****
どうして私などを許してくれるのですか。
キミのその小さな心臓が張り裂けんばかりの恐怖を与え、爪が折れるほどに激しく抵抗させた私など
キミのその鋭い爪で、喉を引き裂かれてしまえばよかったのに。
私はあまりにも醜く、キミの飼い主を名乗る資格すら、ないというのに。
----------2005年08月23日(火) 沈む
一滴、また一滴と腹の底に溜まり続けた鉛の雫が臨界点を突破したせいで、背骨が激しく軋んだ。
この身体は投げ捨てるには重すぎる。
だからベッドに沈むことにする。
----------2005年08月22日(月) ドウブツがいっぱい
昨日はセミとサイクリングをしましたが、今日は念願の「大熱帯展」に行ったらでっかいカメに足をむんぎゅと踏まれました。イグアナに白い目で見られました。そのあと500円の席料を支払うとイヌにもてなしてもらえるイヌキャバに行ってブルテリアを思う存分撫で回しました。ゴールデンには吠えられました、マヂで怖かったです。母という獰猛なイキモノを連れていったので非常に疲れてしまいネコと眠りこけました。そのあとはもうヤケクソになって一日をぽーいと気前よく投げ捨てパソコンの画面に向かって延々チョウを捕まえ続けました。
休み返せよ
なんてことは言いません。ドウブツさんありがとう。
----------2005年08月21日(日) 同伴者は
「明日は日本的に雨らしい」という母の警告の言葉をはいはい、と聞き流し、自転車で会社に行った。お昼に白い箱から出たら雨が降っていた。母の言葉も時には信用しなければならないな、と反省した。
いつまでも残業地獄が終わりそうにないので適当に力を抜くことにして今日は定時上がり。日曜日がいっちばん忙しいのだから日曜日にこそ残業して欲しいのだろうけれどそこであえて帰ることでささやかな反抗心をあらわにしてみる、本当にささやかな、可愛らしいくらいささやかな、反抗心。
そんな私は多分本当に可愛らしかったのだと思う、だから仕事が終わって外に出たら雨はやんでいてけっざまみろ母よ私は神様にまで愛される、ふふん、と自転車をこぎはじめて数分、空からは大粒の雨が降り注ぎまたも、またしても、ずぶ濡れ、今月3度目のずぶ濡れねずみ。やっぱり私は可愛らしくなんかないし母の言葉は懐疑的に信用しなければならない。
そして家に帰ってぐしょぐしょのシャツを脱いだらカサッという耳慣れない音がして異様な気配が満ち満ちたその瞬間
ヒィィィィィィィィィィィィィィィィ
という元ヴォーカリストの超絶ハイトーンが部屋中に響き渡った。その声に驚いたのかその物体は部屋中を飛び回り、娘はロブ・ハルフォードも腰を抜かす金切声で、母はサラ・ヴォーンも吹っ飛ぶダミ声でヒィィギャアヒィィギャア、そしてその物体はかつて中島みゆきがそれに対抗できるのはジャニス・ジョップリンだけではないか、と書いた猛烈な声で
ミィィィィィィィィィィィィィィィィィン
と鳴き続け、その騒音のるつぼの中でただひとり父だけが森本レオのような穏やかな声で
「セミやんけ、夏やなあ」
と呟いて、その物体をそっとつまみあげるとベランダに放った。
結論としては母の言葉は盲目的に信ずるべきだし忙しい日には残業をするべきだし何処から背負っていたのか知らないけれどセミにまでストーキングされるくらいだから私は可愛らしいのだ。
----------2005年08月20日(土) 断乎、支持。
国政だって熱に浮かされている。もういいじゃないか、誰がやったってどこの党がやったって日本はアメリカの犬であることにかわりはない、政治家の周辺で黒い金がばらまかれ一部の人間が甘い汁を啜る構図だってかわりゃしない。
要は面白けりゃいい、衆愚政治の花盛り。
以前からそうだけれど、私は小泉純一郎を断乎支持する。
アフガン犬に似てるから、
ってーのもあるけど、総理は非情で、スピードに溢れている(8月15日に靖国に参拝しなかった点において腰抜けであるということが露見したけれど)。ちんたらちんたら、高級料亭でセンセイここはまあひとつよろしくおねがいしますよいやいやそれがなんたらセンセイが承服してくれんのだよはあそれでしたらなんたらセンセイにでも一度お話を、なーんてまどろっこしいことをまた繰り返したって意味がない。
政治的空白? 大歓迎じゃないか、ホリエモンというトリックスターも加わったことだしもうこのさい一切合財めっちゃくちゃになればいいんだ。
ってーなことしか書けないから時事的な問題はあんまり書かないように心がけているんだけれどたまには。
非情であること。
野うさぎのように、スピードに満ち溢れて。
----------2005年08月19日(金) 37.2℃
夕刻だるいなあと思って体温計を脇にはさんだら37.2℃だった。ここんとこずっと忙しくて体温計を脇にはさむヒマすらなかった。だから多分ずっと37.2℃だったのだと思うことにした。
いつだって、熱に浮かされたような、ぼんやりした輪郭の毎日を送っている。身体の奥底で滓のように沈澱している疲労はもはや取り去り難く、両腕の筋肉は熱を孕んで強張っている。思考はまとまらず、視点も定まらない。どこに向かっているのかも分からず、何のために、誰のために存在しているのかも分からず、情報の海で溺れ、見えない悪意や作為に凍え、いつだって、足は地についていない。
常につきまとう、軽い眩暈と、嘔吐。
いつだって37.2℃、ベティ・ブルーの狂気の体温、それが、平熱。
----------2005年08月18日(木) 寝坊
いつ眠ったのか覚えてない。化粧ももちろん落としてない。まだ昨日着てた服のまんまだ。帰ってきてちょっとベッドに横になった、だけなのに。
11時58分、なのに外は明るい。
ワタシハダレココハドコキョウハナンガツナンニチナンヨウビ??
----------2005年08月17日(水) まさに、雑記。
帰り道、道路が雨で濡れていたせいか、自転車で転びました。左手の甲が、打ち身と擦り傷でぐちゃぐちゃになりました。一年に一回は必ずこけます。それが私です。ついでに「ふぁーっく!!」と吠えることももちろん忘れません。
街路樹にひっかかっていたビニール袋をそっと手に取って持ち帰るおじさんを見かけました。とてもいい人だと思いました。
その数秒後、歩きタバコをしていた女がぺっと吸殻を投げ捨てて、踏むことすらせず気取ってそのまま歩き出すところを見ました。こんな女は殺してもいいなと思いました。
湿布をはるかガーゼをあてるか今無茶苦茶迷っています。すりむいたところにガーゼをあててその上から湿布、という荒業に挑戦してみようかなとも思っています。私は包帯がとてもよく似合います。
よく考えればこけたのはこれで今年2回目でした。
それではみなさんごきげんよう。
----------2005年08月16日(火) 残りはもう全然、ない
身体中痛くて、一日死んだように眠っていたので書くことが、本当に、何も、ない。
「今日は無駄な一日、表から削られた一日よ。今日という日は他人に盗まれたので、残りはもうあんまりないわ」(サルトル「自由への道 第一部」/人文書院 p.63)
ううん、イヴィッチ、残りはもう全然、ない。
----------2005年08月15日(月) 家の背骨
どんどん弱っていく祖母と、どんどん粗暴になっていく母と、どんどん寡黙になっていく娘。
何も話したくないので黙々と墨をすり、黙々と写経をした。そうして仏壇のある部屋のはじっこにじっと座って、延々イタコ話を繰り返す祖母の背中をぼんやり眺めていた。
小さい頃、祖母の白髪をよく抜いた。
もう祖母の白髪を抜くことはできない、そんなことしたらばーちゃんハゲちゃう、よく叩いたり揉んだりした肩も細くなり、時にはその上に乗ったりした背中も曲がって小さくなった。
その間ずっと母は台所にいてドンガラガッシャーンを繰り返していた。
送り火を見つめながら、ご先祖様、そこで見てらっしゃるのなら、どうかこの家を救ってくださいとお願いしたくなった。
何処かが確実に病んでいて、何かが確実にずれている。
この家の背骨を正したいと、真剣に思う。
----------2005年08月14日(日) 弔いの雨
私は雨に打たれなければならなかったのだ。あの場所で、神様が死んだあの場所で。
背を丸めて、激しく降り注いでくる雨に打たれながら、多分泣いた。でもそんな涙は雨と一緒に流れていった。
たった10分間の、最後の祈りだ。
your GOD is dead,
and no one cares.
もう、これで、すべての弔いは終わった。
もう、二度と、振り返らない。
----------2005年08月13日(土) 星占いってあたるのかも
ローゼンの心意気を学ぼうと思っていた矢先、給与明細が送付されてきてアタマの血管2、3本ブチッと音を立てて切れた。もうブリンカーなんかつけてられねえ。派遣会社が給料の計算間違えるとはどういうことだ、それも「世界最大の人材派遣サービス企業」が私にでもできる計算を間違えるとはどういうことだ、オレサマが作ったエクセルファイル送りつけてやるからもいっぺん顔洗って出直して来いやこのボケが
と吠えようと思ったのだけれどいかんせん帰宅時間が遅かったものだから留守番電話、明日の朝まで待てないのでかわりに此処で吠えておく。
ちょっと最近ホントに吠えすぎてるのでクビが飛ぶのも遠くはないかも、と思っている。尾を振る犬は叩かれず、って言うけど吠える犬は叩かれる、それもこっぴどく。
こうして結局宇宙的次元の闘争に巻き込まれる羽目に陥る。
やっぱり私は馬になんか似ていない。
----------2005年08月12日(金) ローゼンカバリーにならえ
昨日美容院でちらちらと読んだ星占いに、今月ふたご座さんの頭上では水星と木星がケンカしてるので言動が攻撃的になりがち、お口を慎みなさいまし、といった趣旨のことが書いてあった。
だけど右を向いても左を向いても下を向いても上を向いても前を向いても後ろを向いても食ってかかりたいことばっかりで
なかなか宇宙的次元の闘争には逆らえそうにない。
お口を慎んでいるにはローゼンカバリー並みのブリンカーが必要だ、と思った。
(あ、そっくりだ、タテジマだし)
----------2005年08月11日(木) 半径500メートル
(今日は別に思考回路が繋がらないからというわけではなく意図的に箇条書きで)
■自分の部屋の電波があまりに悪すぎるから、という理由でauのケイタイを持ったのが去年の8月だ。でもその電話番号を最も伝えなければならなかったはずの人とお別れしたのも去年の8月だ。とりあえず年割も入っちゃったしな、とにかくまあ電波はいいしな、と1年持ってはみたけれど4月9日の着信がまだ履歴に残ってるような状態だ。でもう1本のdocomoのほうはどうかといえば去年の11月21日の着信が残ってるよこのやろー。
□そういうわけで解約。
■タテジマアタマにされたのもたしかだけれど、昨今の流行なのかどうなのかトップの髪を非常に短く切られてしまったのでしばらくストレートにしてなかったからぽわんぽわんに膨れ上がって格好がつかない。
□そういうわけで2週間も経ってないけどまた美容院。
■「ピッ」「ピッ」が本気で耐えがたいので音のでないリモコンを買うためにビックカメラに行く。いつものことながら店員がなかなか来ないことに苛々して、やっとつかまえたおにぃちゃんに「音鳴らんやつちょうだい」と言ったら「今お使いのものも、音でないように設定できますよ」とホントに申し訳ない、土下座したい勢いで申し訳ないくらい丁寧に対応していただいて。
□そういうわけで【テレビ】+【マイナス】のボタン長押しで「ピッ」地獄から解放された。
最初からケイタイは1本でよかったわけだし、先月末美容院に行ったときに素直に「ストレート+カット」にしておけばよかったわけだし、取扱説明書を捨てさえしなければ「ピッ」「ピッ」に神経やられなくて済んだわけだし、まったく背骨が歪んでるからって半径500メートルの円の中をぐるんぐるん迷走する必要はまったくなかったのだよ、その背骨にしたってこれまでに支払ったマッサージ代の4分の1くらいの値段でぐきっと元に戻してもらったわけだしさ。
これで迷走しない、とは限らないけど。
----------2005年08月10日(水) 雨に打たれて迷走
帰り道、額にぽとりと冷たいものを感じたと思ったらあっという間に街は「雨のにおい」に満たされ、むっとした、湿っぽい空気が纏いついてきて、メガネに水滴がはねて視界を奪われ、文字通り迷走した。
あぶないからー!!
あぶないけど、冷たいけど、アタマのてっぺんから足の先までずぶ濡れになってみるのも悪くはないかな、と思った。
人は時に濡れなければならない、雨に、涙に。
----------2005年08月09日(火) 白い箱の中で考えたこと
我らは刻一刻若さを失っていくのだ、肌が衰え、筋が傷み、目が弱り
我らの血肉を養分として箱が育つ
矛盾と誤解と憤怒と諦め
打算と裏切りと嘘と意地
すべて押さえ込んで
我らをすべて黙らせて
箱はますます傲慢になる、冷淡になる
箱の中で
顔をなくしたマリオネットがごった煮にされる
箱の中で
わずかの金銭と引き換えに人が数になっていく
箱の中で
ありとあらゆるペルソナを剥がれて我らは
何ひとつ、戦う術をもたない
誰かがついたため息は箱の中を循環し、決して換気されず浄化されず誰かはそのため息を吸い込んでまたため息を返す、次第にため息の濃度は増し箱の中に白く濁った空気が沈澱する、息苦しい、
から一方的に用件だけ伝えて相手がまだごにょごにょとごねている最中にガッチャンと受話器を叩きつけたので隣にいた新人さんが泣きそうな顔をした。
大丈夫、2年経てばこうなる。
向かいに座っていた番長がにやりとした。
我らはにやりと黒い笑いだけを覚えていく、白い、白い箱の中で。
----------2005年08月08日(月) 「ピッ」。
近頃自分の迷走度合いが急激に増しているのは父と母が常時奪い合いを繰り広げているテレビのリモコンがついにぶっ壊れ、新しいのに変わったからなんだ、と思う。新しいリモコンはボタンを押すたびに「ピッ」と鳴るのだ。チャンネル変えるたびに「ピッ」、音量上げる、下げるたびに「ピッ」「ピッ」。
電子音が繊細な神経に与えるダメージは大きい。自分の部屋にいて、「ピッ」という音が聞こえてくるたびに苛々ゲージが「ピッ」と上がる。「ピッ」「ピッ」「ピッ」「ピッ」「ピッ」なんて聞こえてきたら読んでる本を投げたくなる。「ピッ」「ピッ」「ピッ」「ピッ」「ピッ」「ピッ」「ピッ」「ピッ」「ピッ」「ピッ」だともう本棚の中身をぶちまけて足でぐしゃぐしゃに踏んづけてう〜〜〜あ〜〜〜と叫びながら髪の毛振り乱したくなる。
テレビに依存しているキミたちの神経は完全に受動的な状態にあることに慣れきっていて私のように常に選択的であろうとする能動的な神経とは完全に相容れないのだよ、真夜中まで断続的に鳴り響く「ピッ」が駄馬を奔馬にする。
----------2005年08月07日(日) 文章にするだけの余裕も時間も体力もない
■大熱帯展に行きたい。会社のすぐ近くでやってるのに行けない。オウムイグアナ放し飼い。かめと戯れたい。
■腕立て伏せできないのが悔しいので膝曲げた状態で腕立て伏せモドキをやりはじめたのが祟ったのか背中から腕にかけて鉄板入ってるみたいに痛い。ワタクシの香水は湿布でございますの。メントールの爽やかなかほりですのよ。
■あらクミコさまも残業されるの? ええ、もちろんですわ、ワタクシ働いたことがございませんからこうして下々の生活を経験するのがとても楽しゅうございますの。ワタクシもですのよ、迎えの者に「残業で遅くなるから」と言ってみたくてなりませんでしたの。あらナジャさまも? おほほほほ
■そんなあほらしーセレブごっこが流行っている。
■夜帰る前に休憩室で一服、しようとしたらタバコ手に持ってないのにライターの火をつけてしまいもうちょっとで鼻のてっぺんやけどするところだった。そんなセレブなんかいやしねえ。
■何処に行きたいか談義がついに「ザンビア共和国」まで来たところで虚しいからやめようということになった。
■だから大熱帯展でいいから。
■迷走しすぎだ、ちゅうの。
----------2005年08月06日(土) 黙祷
時事的なことはなるべく書かないようにしているのだけれど、日本とアメリカが戦争をしていたことすら知らないガキが実際に存在する世の中、戦後60年の、節目の年に、甲子園で黙祷くらいしたってよかったんじゃないかな、と思った、ことだけは書いておこうと思う。
「黙祷をせよ」と命ずる権利は誰も有していないし、8月6日だから、8月9日だから、8月15日だからといって遊びにいっちゃいけないだとか贅沢なもん食っちゃいけないだとかデートしちゃいけない、なんてな法も何処にもない、アメリカ映画を見てアメリカのビールを飲んでアメリカのオンガクを聞いて過ごしたって別に構わないけど、
黙祷くらい。
絶対に、忘れてはいけないことが、ある。
絶対に、知っておかなければならないことが、ある。
ああ、今日はそんな日だったんだ、と、心のはじっこで思うことくらいは、せめて。
----------2005年08月05日(金) 地震だ?
本日午後6時45分頃、大阪市中央区××1丁目付近にて局所的な地震が数度にわたって観測された。震度はM6.5強と推測される。その局所的な地震に見舞われたnadja.さんは「最初頭の中がぐらっとして、画面が揺れたんです。あ、地震だ、と思ったのですが誰も揺れに気づかないようなのでしばらく端末を打つ手を止めてじっと様子を伺っていました。そのうち本当に周囲がぐらぐらと揺れ始めたのに、誰もあわてた様子も驚いた様子も見せないので隣に座っていたノグチくんに地震やんな? と訊ねました。彼は訝しげな目をこちらに向けただけでした。結局、私一人が揺れていたんです。」とその瞬間のことを語った。今現在もnadja.さんを震源地とする局所的な地震は断続的に続いており、予断を許さない状況である。
*****
何かが揺れている。何かが起こっている。確実な、予感がする。今度ばかりは予感では終わらない気がする。
この纏いつくような不快な気配はいったい何だ?
結末なんか永遠に知りたくない。
----------2005年08月04日(木) ガラスの破片
とにかく自転車を直してもらった。ガラスの破片が刺さっていたんだとか。そりゃあ空気も抜ける。
私の胸にも去年の夏からずっとずっとガラスの破片が刺さったまんまになっている。刺さったまんまなので出血もしない。痛くもないし、痒くもない。でも確実にそれは胸の深いところに刺さっていて、存在を主張する。
抜いてしまえば、いいのだろうけど。
そうしたらきっと動けなくなるから
もうしばらくこのままにしておこうと思う。
本当のことを、見ないようにばかりしている。
何もかもが錆びついていることに薄々気づいている。
だから、抜けない。
----------2005年08月03日(水) 圧倒的に知らない
とかげのような目つきが苦手であまり話したことがなかったその人が去年の5月に3週間の休みをとったのは知っていた。海外で挙式したらしい。今では姓が変わっているのも知っていたけれど会社では前の姓のままで働いていた。
ひどい顔色をして、何度も離席を繰り返し、端末を打つ手を止めて頭を抱えているその人が妊娠しているのはおめでたですか、と問うまでもなく明らかだった。
白い箱の中で単なる頭数として其処に座っているだけの誰もがそれぞれに物語を抱えていて、箱の外に出れば決して窺い知ることのできない表情を持っていることをあらためて思う。とかげのような目つきのその人の胎内で精液が放出され体液と交じり合って新たな命が誕生した瞬間のことを想像して少し身震いがした。
命の一番はじめのその瞬間。「父」と「母」が共有したはずの快楽と体温。「母」の身体を襲う吐気と貧血。猛烈なスピードで分裂を繰り返す細胞。
「それ」はいったいどんな気分がするのだろう。
私は、何も、知らない。圧倒的に、知らない。
----------2005年08月02日(火) ザ・サバイバル
そうして本当に黄色い車は交差点の向こうに止まっていたのだった。
街を走っている個人タクシーはたいてい黄色い。だからきっと違う車だったのだと思いたい。思っておく。思っておきながら四つ辻の手前の入り口から地下鉄の階段を降りた。
もう、いっそのこと、会社を全寮制にして一晩中端末稼動させたらどうかねなんてな冗談も飛び出し始めた今日この頃、滞留案件3万超。今週金曜日までに
ナニをどーしても片付くわけがない。お手上げ。
そういえば私が入社したのは2年前のちょうど今頃だったことを、不安げな表情でおそるおそる質問にやってくる新人さんたちを見て思い出した。今でこそ10人仲良く休憩行ったりしてるけど来週になれば7人に、来月になれば3人に、3ヶ月経って1人残ってるかなどうかな???
とほぼ同時期に40人で入って最後の2人になった私とワタナベは笑った。
ザ・サバイバル。
(ただし脱落した者勝ち)
----------2005年08月01日(月) ケッコンシテクダサイ?
朝自転車に乗ろうとしたら前のタイヤがパンクしていたのだった。自転車だと20分、電車だと30分、私が朝10分の余裕を持っているわけはないので仕方なくタクシーに乗る。確か去年の今頃も毎日タクシーで通勤していたような気がするけど気のせいにしておく。
個人タクシーの運転手は饒舌で、お仕事ですか、テレビ関係の方ですか(うちの会社はテレビ局の隣にある)、そういえばどっかで見かけたような気が(そんなわけねえだろテレビに出たのは15年前の話だ)、独身ですか(こんなタテジマアタマの主婦がいるかよ)、おいくつですか、えー、とてもそんな歳には(そりゃどーも)、結婚しないんですか(相手いねえよ)、そろそろ子供産んでおかないときついですよ(うちの母は33で私産んだんだけどナニか)、とたった10分程度の間に一通りまくしたてた後
ケッコンシテクダサイ
と唐突に言ったのだ。
それはそれはもう、仰天してしまって私は思わず背筋を伸ばしてはいと答えてしまいそうになった。
明日も私を乗せるために、交差点で待っていてくれるらしい・・・。
運転手、62歳、独身。バツイチ。虫歯だらけの欠けた歯が痛々しかった。
私はいったいどうすればいいのか。