チフネの日記
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2010年12月24日(金) 2010年 リョーマ誕生日話

誕生日は12月24日だと言うと、驚かれたり、笑われたりする。
聞かれたから答えただけなのに。
そんな反応にもすっかり飽きている。
好きでこの日に生まれたんじゃない、選べるものなら別の日にしたのに。
何で12月24日なんだろ。
自分には似合わないと、リョーマは自分の誕生日に不満を持っていた。

だって誕生日を聞かれたその場ではイヴ生まれなのかと盛り上がるが、
皆すぐに忘れてしまう。
当日にはクリスマスのことだけで頭がいっぱいになるからだ。
この日は家族で過ごすからと、一緒にパーティーを祝ってくれる友人などいなかった。

もういいよ、とリョーマは物心ついたころからクリスマスは自分の誕生日よりも重要なものだと悟っていた。
だから友人を呼ぶパーティーが数日遅れて開催されたとしても仕方無いものと割り切っていた。
街が綺麗に彩られるのもクリスマスを祝うもので、自分の誕生日など忘れられても仕方無いものだって。

一つ救いがあるとしたら、家族は決してリョーマの誕生日を蔑ろにしない。
クリスマスよりもリョーマの誕生日としてちゃんと祝ってくれるということだ。
あの南次郎でさえもプレゼントを必ず用意してくれる。
母と父からそれぞれプレゼントを貰う。誕生日おめでとう、という言葉と一緒に。
ここに祝ってくれる人達がいる。
その事実に、リョーマは満足していた。
これ以上のものは望まない。

だから他の人には忘れられてもしょうがないと思っていたのだが。

「……」

届いた荷物を前にリョーマは戸惑っていた。
宛て先は日本からだ
きっとこの日に間に合うよう計算して出したに違いない。
そういうのが得意な先輩がいるから。
中身はマフラーに帽子手袋と、全てお揃いのもので揃っていた。
サイズもぴったりだ。
あまり成長していないことは、ばれているらしい。
その点はムカッとするが、プレゼントに罪はない。

(先輩達、よく覚えていたよな……)

以前部室で、確か占いか何かの話で盛り上がっていた時に聞かれたのを思い出した。
『えー、おチビってイヴ生まれにゃのー?』
『なんか似合わねーなあ。パーティーとかやっても、白けた顔してるんじゃねえよな』
『ふん。生まれる日は選べねえだろうが』
『ふむ。越前の誕生日は12月24日、と』
『けどそれなら恒例のパーティーと一緒にお祝い出来るよな』
『ハハ。ものすごく盛り上がりそうだね』
『じゃあ、今年は越前の誕生日パーティーも兼ねてやろうか。ね?』
『異論は無い』

好き勝手に話している先輩達の会話に、どうせ忘れるくせに、とリョーマは思っていた。

なのに……。
わざわざアメリカまで『青学・レギュラー一同より』とプレゼントを送ってくるなんて。

「俺はあんた達の誕生日を知らないのに」
やってくれるね、と呟く。

黙って旅立った後輩に何てことしてくれるのだろう。
これではこちらが薄情者みたいではないか。
直接会って礼を言いたくなる位、かなり、じんとさせられてしまった。

(もう誕生日に間に合わなかった人がいるけど……)

でもまだ出来ることはある。

よし、とリョーマは拳を握り締める。

三月になったら黙って日本に乗り込んで行ってやろう。
そして言うんだ。

「卒業おめでとうございます」って。
まだ卒業を迎えていない二人には、この先の大会への激励の言葉を。

きっと先輩達は驚いた後、笑って迎えてくれると思うから。

その時に渡す花束も今から予約しておくか、とそんなプランを立てて浮き浮きとした気持ちになる。

「リョーマ、そろそろ食事の用意出来たわよ」
「あ、うん」

呼びに来た母の声に立ち上がる。
今回もお手製のバースデーケーキを焼いていた。
最後にそれが出て来るのが、いつも楽しみなのだ。

でも今年の誕生日はいつもよりも特別楽しい気持ちで過ごすことが出来そうだ。

日本からのプレゼントをもう一度ちらっと見て、ドアを閉める。

向こうにいる仲間達も、こんな楽しい気持ちでいるんだろうか。

一緒に過ごせないのが少し心残りのような気がしつつ、母と父がプレゼントを用意して待っているリビングへと向かった。


終わり。


チフネ