チフネの日記
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2007年12月24日(月) 2007年12月14日不二リョ小ネタ



「越前、お疲れ」
「先輩…」

「ぐったりした顔してるけど、大丈夫?」
「まあ、ね。テニスしてるよりは疲れたけど」

「一年はほぼ裏方だからね」
「先輩も一年の時、あんな準備とかしたの?なんか想像つかない…」

「やったよー。当時の部長、あ、大和先輩ね。ああいうの大好きだから、色々企画したなあ」
「ふーん。いつでも集まって騒ぐのが好きな人っているんすね」

「それはちょっと違うけど、まあ独特のノリで楽しかったかな。
今年は桃と荒井が色々仕切ってたんだっけ」
「荒井先輩なんて、手塚先輩が来るからって張り切って…その気合いに疲れたっす」

「荒井は手塚を尊敬しているからなあ。頑張る気持ちもわからないでも無いかな」
「その尊敬する先輩に、あんな芸見せていいんすか?」

「あー、あれね、手塚も喜んでいたから、いいんじゃない?」
「喜んでたんだ!?笑っているようには見えなかったけど」

「でも『グラウンド10周!』が無かったでしょ。手塚も今日くらいは無礼講ってわかっているよ。
皆で集まる数少ない機会だからね。きっと楽しんでくれたよ」
「…そういうもんすか?あのノリと部長ってあんまり結びつかないけどなあ」

「でも意外と手塚ってお笑いとか好きなんだよ」
「嘘っ!?意外過ぎて想像つかない…テレビ見て笑ってたりすんの」

「それは見たことは無いけど。してるんじゃないかなあ」
「へえー。そういや桃先輩の舞台、食い入るように見てた気が…。
あれ注意する為じゃなかったんだ」

「僕は越前の出番をじっくり食らいつく位の気持ちで見てました」
「知ってるよ…。別にマジックのアシストだけなんだから、そんな見なくてもいいのに」

「でも猫耳で出てくるとは思わなかったなあ」
「そ、その件は忘れて下さい!どうしてもって渡されて、仕方なく。大体、芸なんてなんで絶対やんなくちゃいけないんすか」

「伝統だからね。1.2年主催で、3年生をもてなす意味で続いているみたい。越前も三年になったら楽出来るよ」
「来年も何かやらなくちゃいけないんすか…」

「あ、でも次は猫耳なんて僕のいない所で付けちゃダメだよ」
「そこ念押しする所!?」

「うん」
「はあ…来年は、さぼるっていう選択は無い訳?」

「え、でも…いいの?」
「今年は、強制参加って言われてむかついたけど、ちゃんと来たのは…先輩も参加するって聞いたから、なんだけど」

「僕は、君は強制参加させられると思ったから、行くって決めただけで。ひょっとして、最初から誘ってたら一緒に、抜けてくれたのかな?」
「先輩はそういうこと、言わないでしょ。皆との時間を大事にしている位、知ってる」

「まあ、ね。でも、折角の君の誕生日なんだから、ちらっと連れ出してしまおうかなとも考えたよ」
「お開きになっちゃえば、こうして一緒にいられるんだからさ。今からいっぱいお祝いしてくれるんでしょ?」

「勿論。残り時間、全部君の為に使うつもりでいるんだからね」
「うわあ、なんか張り切ってる?」

「だって、さっきまで皆が周りにいて全然近づけなかったから、ちょっと寂しくなったみたい。
越前はそこにいるのに触れられないって相当ストレスだよ」
「よく言うよ。プレゼント交換の時、さり気無く隣に座って来て…手、触れて来たじゃん。皆浮かれて気付かなかったから、いいけど」

「…………」
「…………」


「手、だけでも触れていたかったんだよ。越前、ちょっとドキドキしたよね?顔、赤くして可愛かったなあ」
「知らない。あの会場、暑かったからその所為じゃないの?」

「そういう事にしてもいいけどね。越前」
「な、何?」

「もう周囲に誰もいないし、こんなに暗くなっているから。手、繋いでもいい?」
「い、いいよっ」



暗がりに紛れて、そっと二人は手を繋いだ。
手袋越しの感覚に、もどかしい気持ちになって互いに顔を見合わせる。

もっと近くにいて、触れ合いたい。

二人きりになるまで、同じことを考えて帰り道を急いで歩いた。




チフネ