チフネの日記
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2006年12月24日(日) |
塚リョ(手塚が高等部一年で、王子が中等部二年の設定) |
24日は家へ来いという誘いに、文句もあるはずなく頷いた。 誕生日を祝ってくれるのだと、柄にもなく浮かれて。 高等部と中等部と別々になってからは、やっぱり前よりも一緒に過ごす時間は減った。 でもイベント時なんかははちゃんと二人でいようと真面目に考えてくれる、部長が好きだ。 もう部長じゃないからその呼び方をいい加減止めるべきなんだろうが、 俺にとって部長とは彼一人なのだからどうしようも無い。 そういう事なら仕方ない・・・とかなり残念そうな顔してたのは、ひょっとして名前で呼ばれたかったのか。まさかね。 ともかく付き合い始めて、二回目の誕生日とクリスマス・イヴ。 今年も部長と仲良く過ごすはず、だったんだけど。
「なんでお前はそんなに仏頂面しているんだ?」 ほら、プレゼントもちゃんと用意してやったのに、と綺麗にラッピングした包みを差し出して来た。 部長が選んでくれたものだから、どんなものだって欲しい。 でも、今はそんな場合じゃないから。
「こんな所で呑気にプレゼント渡してる場合じゃないだろっ! 部活は!?練習日だってこと、知っているんだからね!」
信じられなかった。 たまたま中等部にやって来た不二先輩と菊丸先輩から話を聞かなかったら、わからないままだっただろう。 24日。中等部は顧問の都合で練習や休みなんだけれど、高等部はしっかり朝から予定が入っているって。 愚痴る菊丸先輩を前に、俺は頭が真っ白になった。 『でも、部長はそんな事一言も言っていない・・・。約束したのに、どうするんだろ』 結局、当日になってもキャンセルの連絡は来なくて。 ひょっとして伝え忘れているんじゃ・・・とドキドキしながら部長の家まで来たってこと、わかってんの? なのに当人は「よく来たな」とか普通の顔でお出迎え。 一体、何がどうなってんだ。 不二先輩と菊丸先輩が嘘言ってたとは、思えないんだよなあ。 散々文句言ってたから、本当だと思う。
じっ、と部長の顔を見ると、「知ってたのか」と溜息をつかれる。 それでやっぱり練習はあるんだとわかった。
「何してんの、早く、今からでも行かなきゃ。たとえグラウンド100周になっても、部活を休むなんてありえないから!」 「落ち着け、越前」 「落ち着いてるよっ!大体、こんな事でサボりなんて・・・ダメ、でしょ。普通」 強く言おうとしたけど、段々語尾が小さくなっていく。 だって、部長があんまりにも動じないから。 部活さぼりなんだよ?自分が部長だった時、部員がそんな事したら罰走100周じゃん。 無断で休むのは許さん、と俺ルールを通してた部長がサボりなんて、ありえないだろ。
たかが、誕生日。丸一日一緒にいようなんて、思わなくていいのに。
「越前」 部長の手が肩に触れ、座るように促す。 ソファに座った俺の前にしゃがんで、手を伸ばし顔を引き寄せられる。 俺が上から部長を覗き込む形で。 そのままの姿勢で、唇が動く。 「他の日だったら、絶対部活をさぼったりしない。 ただ今日はお前の誕生日だから、どうしても一緒にいたかったんだ。 だから俺は自分の我侭を優先した」 「でも、きっと怒られるよ・・・?」 なんてことの無いように、笑う。 その表情にドキッとさせられるが、動揺しないように顔に力を込める。 チクショウ。反則だろ。 あんたみたいに真面目で融通も利かない男が、俺の為にサボっちゃうなんて。 悔しいが、かなり嬉しいよ。
「心配するな。元より覚悟だ。お前といられる幸せに比べたら、なんてこと無い」 「・・・なんで平然とそういうこと言える訳!?」 「真実なんだから、しょうがないだろう」 「・・・・・・・・・・」 それに加えて、この天然発言。 本当、この人に敵うこと一生無いんじゃ・・・と時々思う。認めないけど!
「と、いう訳で他のことは気にすることなく、お前の誕生日を祝いたい。 いいか?」 仕切りなおし、と立ち上がって手を引く部長に、こくんと頷く。 折角、一緒にいてくれるのを選んでくれたんだから、楽しまなきゃ勿体無い。
「うん、ありがとー部長」 「礼を言うのはまだ早いぞ。一日掛けて、お祝いするんだからな。 ・・・・誕生日おめでとう、越前」
額に軽く触れたキスを合図に、幸せで満ち足りた誕生日パーティが始まった。
ちなみに翌日。 当然のことながら部長は、高等部の部長から(ややこやしいなあ)罰としてグラウンド150周を言い渡された。
「いくら大切な人の誕生日だからといっても、大目にみませんからね」 「はい・・・わかってます」
俺は、というと中等部の部活が終わってからすぐに高等部に向かい、 寒い中でも負けずにベンチに座り、部長を待ち続けてる。 これくらいは、しなくちゃね。
「後、32周ー。頑張って、部長!」 「おー・・・」
終わったらお疲れ様、と温かい飲物でも差し出してやろうと、考えながら。
終わり
チフネ
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