西:93・4・5……6年くらいのマイケル・ジャクソンはやばかったですね。97年に僕がデビューしてからは、周りのプロのエンジニアやアーティストは誰もマイケルを馬鹿にしなかった。 菊:つまり、わかってる人はちゃんとわかっているのに、ストリートのユースカルチャーがマイケルを踏みにじったのが許せない、と。 西:ここ数年のマイケルは上昇していたと思います。マイケルが好きだとカニエが公言したり、YOUTUBEでマイケルの動画が簡単に視聴できるようになったりして……このへんは『アフロ・ディズニー』に詳しいですけど、パーソナルなメディア体験って言うか。もし「THIS IS IT」ツアーが実現していたら……。 菊:世論ががらっとひっくりかえってたってことでしょ? あれ、1回でも、50回といわず1回だけでも実現していたら、マイケルはアップセットして、日本人のマイケル観は再インストールされたと思うんですよね。「マイケル・ジャクソンかっこいい」っていうのがかっこいいよね、っていう世論になっていたはず。今はこの本(『マイケル・ジャクソンの教科書』)で日本人は再インストールしているわけだけれども……。 西:ある番組、ツイッターには書かないでくださいよ(笑)、僕、ある番組でマイケル・ジャクソンの先生、みたいなことをやったんですよ。マイケル・ジャクソンを全然知らない若いタレントの知識に採点を加える、みたいな役を。そしたらミキティとか、全然知らないって言う割に良く知ってて驚きましたね。 菊:マイケル・ジャクソンのことなんか全然知らないよ、って人の方が多いと思ってたってこと? 西:そう、それがさー「ネバーランドは千代田区と同じ大きさ」だとか、「マイケルはケンタッキーが大好き」とか、みんな普通に知ってるんですよね。 菊:ウィキで調べたんじゃない(笑) 西:わはは。知らない知らないって言ってても、実はみんな知ってるんですねー。 菊:でもさ、正しい知識をリインストールするのはこの本しかないでしょう。 西:ありますよ、ウィキとか……(笑) 菊:ウィキも西尾さんの言ってることの流用って話、したじゃん(笑)! 西:松尾さんもコピペされたりしません? クインシー・ジョーンズ……久石譲さんのことですけど……それはいいとして(笑)。 松:うーん……僕はクインシーに憧れてきただけだからねー大したこと書いてないし…… 菊:何をおっしゃるんですか! 僕なんかニュージャックスウィングについてとか、松尾さんの御本で全部知ったんですよ! 松:「最初に発言する者」として誤読を招かないように書く姿勢は心がけてきましたね。そのせいか、もしコピペされるようなことがあっても「正しく言ってくれていて良かった」と思うだけ、というか……このひと月は僕、スモーキーロビンソンの80〜90年を聴いています。あまりよくないと言われている時代ですが、イケてますね。ええとつまり、過小評価、という話題ですが、僕は好きな人がマイノリティであることに慣れているのかもしれません。 西:でもスモーキーとマイケル・ジャクソンの過小評価のされ方は違いますよね? スモーキー・ロビンソンは知っている人が少ない、というだけのことでしょう? マイケルは知っている上で馬鹿にされていた。 松:知られてる、って幸せなことじゃん? 僕ね、仕事で名刺渡すでしょ、名刺見た日本の人に「どういう意味ですか?」って訊かれる時の脱力感ね。相手も音楽関係者なのにね。アメリカの人に名刺を渡すと必ず名前の読みを確認する前に「NEVER TOO MUCH」を口ずさむ。隣の日本人が「松尾さんが名刺を渡すと、どうしてみんな歌うんでしょうね」って言われたりとか。菊地さんはそんなことないでしょう。 菊:僕はずっとレコンキスタですね。ジャズってやられちゃってるからね。昔は、洋行するような文化人が、日本には知られていないいいものを外国で聴いたりして、それをオレが日本に紹介してやる、って感じがあったじゃないですか? 松尾さんのお仕事というのはそういうものですよね。知られていない、ってことで踏みにじられてはいない。要するに殉教してるかどうかですよね。松尾さんも初期にはそういう気持ちがあったんじゃないですか? 松:紹介……うーん、どうかな…… 西:僕も菊地さんも自分の名前で作品を出してきたが、松尾さんにとってはそれが文章やインタビューだったってことだよね。そこから実践したら、実践がまたものすごかった(笑)と。 菊:クインシーを目指してるなら松尾さんは大成功してますよね。 西:ニルヴァーナ打倒、みたいな話は松尾さんにはピンと来ないよね? 松:そんな大したことない…… 菊:クインシーを紹介したくてライターやって、書いたんでしょ? その情熱ってあたりの話がお聞きしたいんです。ファンクが好き、って言ったらパンク? って話があったじゃないですか。 松:あー、福岡の田舎でね「僕はファンクが好き」って行ったら「パンクかー、そうかー」って聞き間違えられた、ってアレね(笑)。その時も自分がマイノリティだとは感じなかったな。ああ、でもマイノリティ感じた、さっき挙手が上げにくそうだった時(笑)。 菊:だからレコ大2年連続が何を……! 西:盗みたいですよね。 菊:盗みたいんか(笑)! 西:だってレコード一番売る、ってすごいことだよ。 松:蛮勇なんだよ。 西:でも僕、ダンスしたいって思ったことはないんだよね。 松:結局郷太くんはアーティストなんだよ。女性と1000回付き合うよりひとりの女性と深く付き合うほうがいい、っていうやり方と同じで、ロックウィズユーを100回も1000回も聴くタイプなんだ。「これがやりたい」ってなったら、周辺的、立体的に分析するというのがプロデューサーとしては一般的なやり方なんだけど、アーティストで、しかも好きすぎる思いが強いとロックウィズユー1000回とかになる。 菊:プロデューサー志向とアーティスト志向の差ということですね。 松:まーた上から目線みたいで嫌われそうですけど(笑)、僕にとってはクインシーもプロデューサーとして好きな駒のひとつなんですよ。 西:僕だってプリンスも好きですよ。ビートルズだって好きです。でもマイケル・ジャクソンを知ってる人は、やっぱり少なかった。 松:プリンスとビートルズ! すげえ王道好きじゃん(笑)! 西:そうなんですよ、馬鹿にされるんですよね(笑)。でもマイケルにあって他にないもの、っていうのは他のアーティストを見ないと分からないよね。 松:それはハナからマイケル・ジャクソンが照準、ってこと? 確かにマイケルって公約数的なモノが多いけど。 菊:まだマイケル・ジャクソンの喪も明けていない……いつ明けるか分からないし、明けないかもしれないけれど……この時期は、「新しいマイケル・ジャクソンの教科書」をみんな熱に浮かされたように読んでると思うんですけど、冷静に読んだ時、この本にはダンスのことが書かれていないよね。それは西尾さんが自分がダンスをしないから、わからないことは書かない、っていう誠実な姿勢ではあるけれど。 西:だから僕は『アフロ・ディズニー』を読んでびっくりしたんですよ。音と映像が分離して再統合されていく中で、マイケルはすごく早くPVというのをやったし、自宅に普及し始めたビデオというかプライベートシアターにも早くから注目していた。お金持ったらソファー買って、機材を買って、プライベートシアターを作る、っていう一種の憧れパターンみたいなものがありますが、あれはマイケルがすごく早くにやっていたことなんだ。だってラトゥーヤがNYで映画を見たとき「映画館で映画を見たのはこれが3回目」……3回かどうか自信ないけど……とか言ってるんですよ、あれだけ映画好きでよく知ってるくせに、今ならいるかもしれないけど……。いないか。 菊:いや、いるでしょう。 西:当時そんな人は他にいなかった。 菊:それがマイケル・ジャクソンの幼児性につながると? 西:うん、映像を売るという体験を、マイケル・ジャクソンは良く知っていたと思うのね。僕がずっとひとりでそう思ってたことがアフロ・ディズニーと同期してて驚いた。 菊:この本はね、要するに過剰同期は子供になるよ、という本なの。この本ではファレル・ウィリアムスを取り扱ってたの、俺たち。ファレルがパリコレに、とか言って。ところが書き終えたらマイケル・ジャクソンが死んで……あの本の冒頭になった。 西:確かにダンスについては、僕の本には書いていない。 菊:ダンサーはマイケルのことを全く馬鹿にしていない、むしろ尊敬してるよね。アメリカンスターでディスられた末に死んで、それから再評価された人ってエルヴィス・プレスリーくらいしか思いつかないよ。ドーナツ食い過ぎてぶくぶく肥ったとか。ジョン・レノンはディスられてない。 西:でもヨーコが……。 菊:ヨーコね(笑)! 西:僕ね、ジョンにはめっちゃ腹立ってるのね。中1の時、リヴァプールのビートルズ博物館に家族で行ったのね、ファンやから行きたくて、で、ある部屋のドアを開けたら……フルチンのジョンとヨーコのでっかい壁画がどどーん、と……僕と両親と弟と、ファンやから、て楽しみにして行って、開けたら、フルチン、どーんですよ? ……めっちゃ腹立ったわ(笑)。そういう変な人扱いみたいなのはジョンにもあったよ。 菊:でも馬鹿にはされてないじゃん? プレスリーの話に戻りますが、彼はものすごく重要なある種のポイントだった。56年、チャーリー・パーカーが死に、プレスリーがデビューし、マクドナルドとビルボードとディズニーランドができた。56年にアメリカは今のアメリカになったんです。それから今までずっと、アメリカはアメリカで変わらない。マイケル・ジャクソンもそういう流れの中心人物です。プレスリーってさ、今あの有名なポスターを冷静に見たら、爪先立ちしてるんだよ、全体の強烈さに負けて気づかないのか誰も指摘する人がいないけど、完璧爪先立ってて、おかしい。それが――僕のバイアスかもしれないけど――マイケル・ジャクソンとダブって見えてしょうがない。 西:ドン・キングっていうおっさんの存在もでかい。84年に、ジャーメインも戻ってきて6人でビクトリーツアーをやるっていう時に――マイケルはスリラーツアーをやりたかったはずの時期だけどイヤイヤながら参加してた――彼はマイケルに言った。「お前はニガーの、ニグロの王様になればいい、白人はお前を絶対にエルヴィスの上には置いてくれないぞ」。 菊:ニガーの王様、それでいいじゃないか、と。 西:そう。マイケル・ジャクソンは腹立てるわけです。それから「キング」という名称に対するマイケル・ジャクソンの複雑な気持ちが発生したわけ。マイケル・ジャクソンの「エルヴィスを越える」というスイッチは、ハートブレイク・ホテルとか、あのあたりで入ったと思う。クインシーはね、ドン・キング寄りの考え方をしていたと僕は思ってる。『This is it』はマイケルにとって『BAD』の再評価?だ。 菊:スリラーは売れすぎたからね。 西:『BAD』を模倣する人って実はあんまりいない。あと今回のツアーはダンサーが若いんですよ。今までマイケルと踊っていたダンサーは彼と同世代だった、でも映画の中で若いダンサーたちが「わーっ、すげー」ってマイケル・ジャクソンを見てる。今までのマイケルにはなかった経験だったと思います。 菊:ダンサーはマイケル・ジャクソンをディスってないことの証明だよね。 西:映画『This is it』のすごくいい場面だよね。こないだ『アンヴィル!』を観たんですが、あの盛り上がりにちょっと近い。今までのマイケル・ジャクソンに欠けていたもの――ダンサーとしての視点、若者としての視点――がある……だから我々はあの映画に感動するんじゃないかな。ヒストリーツアーはあんな風じゃなかったと思うもの。マイケル・ジャクソンは映画作りたかった人なんだよね、ああいう形で叶ったってことですよね。遺志ではあるけれど。僕ね、『This is it』ツアーはやれへんと思ってたんですよ。 菊:西寺さんでさえやらない派だったと。 西:マイケル、ゴメン……(笑)。ちゃんとやれんのかな、ってずっと疑ってた。40万円のライブの時なんか「オレは絶対行けへん」って激怒してた。「40万で、なんやわからんイベントなんて、オレはそんなマイケル・ジャクソンを支持しない!」と。後悔してるけど(笑)。 菊:日本人でそういう気持ちの人は多いよ。西寺さんでさえそうなんだから。それが映画を観たら全然やれそうだったじゃん? みんな思ったと思うな、「マイケル、ゴメン……」って。だいたいこの本読むまでマイケル・ジャクソンがクロだと思ってた日本人、沢山いるでしょう? 西:でも僕のゴメンとみんなのゴメンは違うよ……(笑)。裁判とかすごい調べたし。もー裁判ね、死にたいくらいですわ……(笑)。忘れもしない僕の誕生日、11月27日ですよ。エヴァン・チャンドラーの息子が直接ジャーメインに電話してきて「ジャーメインさんごめんなさい、マイケル・ジャクソンには何もされていません」と言ったなんてニュースが流れた。「うそー、それやったら100パー、シロやんか、って思って、仲間内に知らせまわったんですが、実はジャーメインしか言ってないんですよ、その話。要するに……妄想? 「虚偽のゆすりをした罪悪感に耐えきれずピストル自殺したんだ、だったらマイケルはシロでしょう?」っていうジャーメインの考えがなんとなく言わせた、というか……どうせ本人はピストル自殺しちゃってますしね。でもそんな重大なことなんとなく言うなよ、ジャーメイン!! ……あ、すいません、松尾さんはジャーメインのファンですよね(笑)。本当に本人が嘘でした、って言ってくれたらええんですけど、そんなん言うたら何十億円返せ、とかそういう話ですからね、とても言えないですよね。ひとり1円くらい出して……マイケルのファン何十億人いるでしょ、いないか(笑)、なら僕は5000円くらい出してもいいわ、ほんまのこと言ってほしいですよね。ほんまのことが知りたいだけなのに。裁判の話はどっかでしたかったんで良かったです。 菊:が、頑張ってくださいとしか言いようがない……。 西:少年性欲の本とか、ギリシアまで遡って(笑)、そういうのが文化だったこともあったりとか、調べました。 菊:お稚児さんとかね、そりゃありますよ。 西:たくさん読んだんですよ、本。何でこんなこと調べなあかんのやろ、ホンマのこと言ってくれたらそれで済むのにと思いながら。それなのにジャーメインにぬか喜びさせられた俺の気持ち!!! 菊:……予想通り2時間でも1回でも済む話じゃないんですが、その辺りがまさに世紀末というか…… 西:モータウンが今年、50周年ですしね。 菊:ほー。 西:何か象徴的ですよね、ライオネル・リッチーが僕に「マイケル・ジャクソンが天使かもしれない」って言ったんだけど、めっちゃその気になってきた。ちなみにライオネル・リッチーは顔細いけどでかくはないです(笑)。クインシー・ジョーンズにすら、めっちゃマイケル・ジャクソンは誤解されて、彼の自伝に間違って書かれてる部分があって。 松:プロデューサーとアーティストってそんなモンじゃね? 西:『新しい……』はその部分、4刷から書き直してるんですよ、実は。 菊:どんどん書き足していって、ぶ厚くなるとかいいね(笑)。でもクインシーも気の毒な人だよね、お母さんがあんなでさ……。 西:ライオネル・リッチーは「クインシーにはオレが言っとく!」って。 菊:すげえ! 「マイルスに訊け! 」みたいになるといいよね! そんなわけで、予想通り時間をオーバーしまして、ホールから大きいバッテンが出されていることですし、この辺で……まあいいとこで終わりましたね。とは言え語り尽くしたとはとても言えませんので、21世紀に入ってからも(笑)続きがあるかもしれないし、ないかも……みなさんますます多忙になるでしょうからね。その時には、今日何度も振ってはぐらかされ続けた松尾さんのライター業についても突っ込んで行きたいと思います。本日はありがとうございました。以下、告知は巻きでいきますが、本日は松尾さんまでもが! サインをしてくださいます。間違いなく争奪戦ですね。あと……何コレ「Qコードで買えます」? ええと「Qコードで買える」そうですので、買ってください。笑われてますけど、合ってますか?(*配布のフライヤーに次回金原ひとみさんとのナイトダイアローグ、先行発売のコードが印刷されてた(笑)。
「東京→大阪間、6時間」 おおさか。 だ、と…………ッ! (服部ファンの声にならない祈りを察してkだs) リアルに見るとやっぱりなんかこう。 ね、ねえちょっとまって、6年置きなら十字路カムバーック!!!!! が、先、なんじゃないかと、
あ、あしたのメンズノンノがさあ……(話題変えてみる)
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