VITA HOMOSEXUALIS
DiaryINDEXpastfuture


2016年11月17日(木) はたち

 彼の精と私の精を拭き取ったティッシュペーパーはおよそ一箱の半分にもなり、大きな牡丹の
花のように私の部屋のゴミ箱におさまり、その精の匂いは数日部屋に漂っていた。

 「あっ」という小さな叫び声とともに胸まで飛び散った彼の精は濃い真珠の粒のようにキラキラ輝いていた。

 その少し前、小柄な体のわりには大きな彼のペニスを口に入れて私は舌と首を熱く動かしていた。舌の先に塩の味が感じられ、私は彼がガマン汁を流し始めたことを知った。

 私たちは狭い寝台に裸で抱き合い、硬く反り返ったお互いのペニスをこすり合わせ、体のすみずみを愛撫し、舌を絡めた濃厚なキスをした。6月にしては寒い日だったが、私たちの体は熱くなり、背中に少し汗が浮いた。

 彼はこうなることを期待してやってきた。だから私が部屋の灯を暗くすると自分から服を脱ぎ始めたのだった。

 私たちは焼き肉を食べた。彼は大きな会社の技師で、工業高校を出たあとすぐにスカウトされ、職能のコンテストで入賞するほどの腕前だった。

 駅前で待ち合わせていたとき、私はどんな青年が来るのだろうと思った。遊び人のような想像をしていた。学生ではないが、けっこう忙しいという話で、私は彼のことを水商売でもしているのだろうと思った。だが、現われたのはこざっぱりした素直な青年で、朴訥な印象を受けた。後にわかったことだが、そのとき彼は郷里から出てきて一年しか経っていなかった。

 私が驚いたのはその顔の美しさだった。今までたくさんの男と逢ってきたが、これほど整った顔立ちの青年は見たことがなかった。

 私たちは並んで手をつないで仰向けになった。私は彼に九州の隠れキリシタンの話をした。「まだ若いのだから君はこれから結婚するだろう。ゲイは良い夫で良いパパになる。優しいから」私がそう言うと彼は「イヤだ。結婚なんかしない」とつぶやいた。

 私は彼に本気で恋をした。私たちはTwitterでしばらくつながっていた。寮に住んでいる彼は好きな先輩のことが気になったりオナニーをしたりした。郷里から友人が訪ねてくるときにはゲイビデオの隠し場所に困っていた。

 その年の夏、彼は知らない人と逢い、生まれて初めて尻を与えたらしいことをTwitterにつぶやいた。私は彼に振られたと思った。それは寂しい喪失感だった。

 私は今でも彼の面影や姿態を思い出す。体をひくひくさせながら短い喘ぎ声を漏らし、私の口の中で痙攣しながら塩辛い粘液を漏らしていた彼のペニスを思い出す。


aqua |MAIL

My追加