VITA HOMOSEXUALIS
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| 2016年08月29日(月) |
少年の日の回想(3) |
高校にはブラスバンドがあった。
野蛮なブラスバンドで、一日の練習のほとんどの時間を、ピーピー豆のようにBbの音を揃えるのに費やしていた。
このブラスバンドは野球の応援をした。暑いグランドのスタンドで校歌や応援歌を吹く。生徒たちはグランドに集められて練習をさせられた。集合が遅いと言ってはなぐられ、元気がないといってはなぐられ、歌が音楽のように聞こえるといってはなぐられ、まるきりリンチのような練習だった。下級生のときボコボコに殴られて涙顔になっていた少年たちも、自分が上級生になるとにたにた笑いながら下級生をなぐった。
ブラスバンドはどんな応援歌でも必ず、ピッコロからチューバまでが同じ旋律を吹き、各小節の頭あにドオン、ドオンと太鼓が打ち込まれた。
私はこんな練習が嫌で、先輩が後輩を苛めるのも嫌だった。だから後輩にも優しい態度で接した。
ブラスバンドの並んだひな壇を私は見回っていた。それも、他の同級生のように怒鳴りながら、バンドの連中を脅かしながら回るのではなく、ていねいに、やさしく姿勢の注意をしたりしていた。
ユーフォニウムを吹いてたのは小柄なSというオトコだった。Sは私を見て軽く笑った。私も笑い帰した。これはあり得ない応対で、笑いかけられたときには「何がおかしいか!」と殴るのが正解だった。ただ、私たちは笑い合って、こんなことがバカバカしいということをお互いに了解したようであった。Sは私の首を抱き、頬にチュッと接吻をした。「あんたという人を知ってるからあ」と彼は言った。
練習のあと。私たちは学校の裏山で会った。彼はブラスバンドへの不満をいろいろ訴えた。私も学校への不満を語った。
私たちは抱擁した。抱擁すると彼のペニスが硬くなっているのがわかった。
「立ってるじゃん」と私は言った。
「先輩もじゃん」と彼は答えた。たしかに、私のペニスはビンビンで、先端からはすでに汁が流れていた。
私たちはそのままキスをした。彼の唇はほのかにミルクの香りがした。
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