VITA HOMOSEXUALIS
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私は就職してから朝の満員電車での通勤というものを味わうようになった。
だいたい朝は8時ごろに起きた。急いでヒゲをそり、顔を洗い、歯を磨いて着替えてアパートを飛びだした。
駅まで急ぎ足で5分だった。
それから、どう見てもこれ以上人が乗れそうにない電車に体を押し込めた。
電車はいくつかの駅に停まるが、小さな駅なので人の乗り降りはあまりなく、ぎゅうぎゅうに詰め込まれた状態でそうしておよそ20分。わりと大きな駅に着いて私たちは吐き出される。
それからバスで30分。山の中の小さな停留所に降りる。そこから職場までは坂道で、その坂道のふもとに小さなパン屋がある。そのパン屋でパンを買って、始業前の職場で食べる。それが私の朝食だった。
ある日のこと、電車に何かあったのか、いつもに増してぎゅうぎゅうに人が詰め込まれていた。そうなると困ることが起こる。
だいたい、どんなに混んでいても、人間というのはお互い同じ方向を向いて立つものである。つまり直前の人と顔を合わせることはない。
ところがその日はそうではなかった。対面したまま詰め込まれ、動くことができない。私が対面させられることになったのはスーツを着込んだ若いサラリーマンだった。
その男とは体も密着してしまった。
そうして電車は揺れる。
そうするとどうしてもお互いの股間が当たり、その状態でこすられることになる。
私は勃起してきた。相手も勃起してきた。電車の新藤は私たちの勃起した股間に愛撫のようなリズムを与える。
男の顔は赤くなってきた。私から目をそらし、下を向いたり横を向いたりしようとするが、顔も思うようには動かない。私の正面に固定されたままだ。ついに男は頬を赤くしたまま涙目になった。熱い息がかかった。
私の方は、そろそろ下着が濡れ始めていた。
今は相手も何か感じているのは明白だった。
もう少しで振動の感覚から性の快感が湧き上がってくるというとき、電車は大きな駅に着いた。 そこで私たちは降り、20分間の愛撫は終わった。
私は何だか疲れた。相手は私の顔も見ずにそそくさとどこかへ行った。
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