VITA HOMOSEXUALIS
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「祭」に行くと、たいてい中年のおじさんがいた。
いろいろな人がいた。説教くさく、若い私に人生の教訓みたいなのを説く人もいた。
自分に男の相手がいないことを嘆く人もいた。
私が感じたのは、多くの人は生活に疲れ、同性愛者であることに疲れ、自分の現実にぐじぐじと不満を持っている人たちだということだった。
私が同性愛の世界に感じていた期待、何か胸のときめくような期待、アーティストや、体制に反抗する文化人の多いような、そういう期待は裏切られてしまった。私は数回そこに行っただけで既に幻滅した。
そこで私は新宿二丁目の「九州男」という店に河岸を変えた。こちらの方が大きくて、何か開けた雰囲気があった。
ここでも私の目の前にすっと水割りが出てきて「あちらから」と言われることがあった。
「どうも」という感じてあちらの方に挨拶する。するとあちらの方もグラスを少し掲げてこちらに挨拶する。
「これからどうかね?」と目が語る。「すみません、あなたは好みじゃありません」「そうか、じゃあまた機会が会ったら」
これだけのことを目線とわずかな手先の動きだけで表現する。
私はこうやってしばしおじさんとの言葉のない会話を楽しんだ。
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