VITA HOMOSEXUALIS
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映画館の暗がりでこすられたりトイレに連れ込まれたりするのを本当の性体験ではないとすると、私が初めて本格的に男性と関係を持ったのはその年の秋のことで、きっかけはやはり映画館だった。
男が私の手を引いて映画館を出たのだ。30代のなかばぐらいに見える男だった。綺麗な目鼻立ちをしていた。私は黙って男の後を歩いた。新宿から電車に乗り、荻窪で降りた。荻窪駅からしばらく歩いた。静かな町に出て、男は小さなアパートに入って行った。私も入った。
部屋は一つしかなく、小さな台所があり、冷蔵庫があった。小さな部屋には似あわない大きなベッドがあった。鳥かごがあって、インコが飼われていた。
「インコ飼ってるんですか?」 「そうだよ、かわいいよ」
男は自分を東北の横手の出身だと言った。冷蔵庫から缶ビールを出して飲んだ。私も飲んだ。
しばらくすると男が無言で私を後ろから抱きすくめた。
私は着ているものを脱いで全裸になった。男も全裸になった。叢に太いペニスがそそり立っていた。私たちはベッドに寝た。掛け布団のようなものはなかった。男はキスを許さなかった。
太ももを交差させて力を入れて締める。そこにペニスを差し込むように教えた。私は教えられた通りに男の股に自分を突っ込んで、往復に動かした。私はすぐにヌルヌルになってきた。そしてあっという間に射精してしまった。
私が急に小さくなったので男は怪訝な顔をした。
「いっちゃったの?」
私がうなずくと、「若いからだね。でも、いくときは言ってくれなくちゃあ」と言って、自分の股にまとわりついた私の精液をティッシュでぬぐった。「俺もいこう」と言い、私に股を組むように言った。男の勃起したペニスが私の股に差し込まれ、それはやがてヌラヌラと濡れ、精を吐き出した。
私たちは荒い息を静めるために少し並んで横たわった。
男は私を手でしごいた。私は再び大きくなった。男はもう一度股を組み、私はその中に射精した。
私も男のペニスをしごいた。それはまた大きくなった。私は手でしごきながら、それに口をつけてみた。
「気持ちいい」と男はうめいた。「両方やって」「両方?」「舐めながらしごいて」
私は言われた通りにした。私はサービスのつもりで男の袋を玩んだり、袋から臀部に至る線を撫でたりした。そのたびに男は小さなうめき声をあげた。
やがて男は私の口の中に射精した。
私は本当に生まれて初めて精液の味を知った。それは少し苦く、少し酸っぱいような、甘いような、不思議な味であった。私は口の中の液をティッシュの中にそっと吐き出した。
私たちはまた並んで寝た。
「こんなこといつ覚えた?」
「今です」
「うまいことを言う」男は少し笑った。
それから私たちは服を着た。「送って行こうか?」「大丈夫です。一人で駅まで歩けます」私はそう言って男の部屋を出た。
私は疲れていた。賑やかな町に出るとよろめいた。短い間に二回も射精したことはなかったし、手や口を懸命に動かして相手を射精させたこともなかった。精液の味がいつまでも口の中に残っていた。
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