VITA HOMOSEXUALIS
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2015年05月23日(土) 東京

 高校を卒業すると私は東京に出てきた。

 初めて見る東京は見渡す限り山が見えない。どこへ行っても祭りかと思うほど人が多く、人々は急ぎ足で歩く。その話す声はまるで怒っているかのように尖って聞こえた。

 私は今スカイツリーがあるあたりの近くに住んだ。それは木造の古い二階建てのアパートで、ぎしぎしときしむ階段を上がった二階の端が私の部屋だった。廊下を挟んで片方に三部屋あり、階段を上がった手前からトラックの運転手、バーテン、そして私の部屋があった。廊下の向かい側は階段を上がったところが共同トイレと洗面所で、二部屋あり、それぞれ学生が住んでいた。

 トラックの運転手はほとんど部屋にいなかった。バーテンは昼間は部屋にいて、ギターをかき鳴らして「旅の宿」を歌っていた。学生は同じ学校に通っていて、出身地が一緒らしく仲が良く、いつもどちらかの部屋にいた。

 階下には大家さんの部屋と、二部屋を子供連れの一家が借りていた。その他に誰がいたかは知らない。

 裸電球のぶら下がった四畳半が私の住むところだった。古い畳は少しふわふわした。私は布団と小さな机を買い、品川の方にあるコンピュータの専門学校に通った。アパートの近くの酒屋でアルバイトをした。「岡田商店」と白く染め抜かれた青い前垂れをして、ビールケースを運んだり品物の数を数えたりするのが仕事だった。

 ともかく一人になった。そこには大きな解放感があった。私は裸になって思う存分オナニーをした。同居する家族をはばかることもなく、誰にも見られず、隣のバーテンや向かいの学生を気にする必要もなかったので、私は喘ぎ声をあげてペニスをこすり、雄叫びをあげて射精した。

 このアパートは私が出てから取り壊された。シロアリが食っていて危険な状態だったという。


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