スパからお部屋に戻って来て、
私達はそのまますぐにベッドに入りました。
「これ、早く脱いで。」
私が彼に可愛くないと言われたスウェットを脱ぐと、
身に着けていたブラとショーツもあっという間に剥ぎ取られました。
私達は素肌を合わせ、貪るようにキスをしました。
翌朝、目覚めた時に、
前の晩に彼に抱かれたことは身体がはっきり覚えていたのだけれど、
何時頃、どんな風に愛し合ったのかは
おぼろげにしか思い出すことが出来ませんでした。
ただ記憶の片隅に残っていたのは、
愛し合った後に交わした映画の話だけでした。
その映画は、
日本占領下の上海で抗日運動に身を投じる若く美しい女スパイが
敵対する特務機関のリーダーに近づき、
危険な逢瀬を重ねるうちに互いに激しく求め合うようになり、
悲しい運命に翻弄されていくというストーリーでした。
結局、女は男に惹かれ過ぎたために自分の立場を見失い、
男の命を救うために自分の身分を男に知らせてしまうのでした。
「あの男は女を本当に愛していたの?」
私は彼に聞きました。
「そうだよ。」
「愛していたのに、
彼女の素性を知った時に何故彼女を殺したの?
愛じゃなくて欲望だけだったのでは…と私には思えてしまったの。」
「それはあの時代と状況の中でなければ分からないことだよ。
生きるか死ぬかの極限状態でのエロティシズムなんだろう。」
でも、私は彼にそれ以上は尋ねませんでした。
彼は会う度に私を求めるけれど、
それが愛なのかどうかを確かめることと
同じ意味になるような気がしたからです。
心とは別に身体に残る記憶というものがあります。
あの映画の男女のように、
決して忘れ去ることが出来ないような記憶を互いの肉体に刻み込めば、
その繋がりが精神的な愛を超えることもあるのでしょうか。
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