こうして私はあなたを好きになった
綴りたいのは残された言葉、なつかしい匂い、
揺れる気持ち、忘れられない感触

2009年05月26日(火) 夜の静けさと木々の匂いと…


 お部屋に戻ると、

 彼が部屋の明かりを全て消して、私を窓際に呼びました。

 山の中腹にあるホテルの高層階の窓から小さな町を見下ろすと、

 昼間は山と緑ばかりに思えた田舎町にも

 人の営みを表す幾つもの白い灯が見えました。

 たった二日間だけれど、

 都会の喧騒を離れて彼と二人きりで過ごせることが

 とても贅沢に感じられました。



 ホテルのスパへ行くために

 お部屋に備え付けのスウェットスーツに着替えていたら、


 「理沙子、それ、下は穿かない方がいいぞ。

  可愛くないから。(笑)」


 と彼が言いました。


 「あら、そう?^^

  体育会系の男の人ならこういう格好に萌えるのかと思いました。(笑)」


 「俺はそういうの全然だから。(笑)」


 「高校でバスケ部の主将だった時に、

  女子バスケ部のジャージ姿に萌えたりしなかったんですか?^^」


 「ぜ〜んぜん!!

  今でも滅茶苦茶うるさい奴とかいるんだよ。

  そういう奴っていつまでも性格変わんないのな。^^」


 彼は今でも高校の男女バスケ部のOB・OG達と交流があります。


 「Tさんは運動神経の鈍いインドアタイプが好きなんだものね〜。^^」


 「それ、自分のこと言ってるのか?(笑)」


 「高校の初恋の人がそうだって言ってたでしょ。だから。(笑)」


 可愛くないと言われつつも、お揃いのスウェットスーツに着替えて、

 二人でスパに出かけました。

 スパへ続く長い通路を歩きながら、彼とお喋りしました。

 翌週の火曜日のゴルフの話になったので、


 「今まで、火曜日って会ったことないですね。」


 と彼に聞きました。

 
 「火曜は毎週オーナーの定例会があるんだよ。」


 簡単に言うと、定例会という名の飲み会だそうです。^^


 「そうなんですか。

  これで謎が解けました。(笑)」


 「今度、理沙子も一緒に来るか?^^」


 「私なんかが行っちゃ駄目でしょ。^^」


 勿論行くつもりはないけれど、

 冗談半分でも彼が誘ってくれたことを嬉しく感じました。




 スパで分かれて入浴した後、ラウンジで待ち合わせをしました。

 私がラウンジに来て彼の姿を探していると、

 彼がオープンテラスから私を見つけて呼びました。

 彼は私を待つ間、オープンテラスのデッキチェアに座って、

 ビールを飲みながら文庫本を読んでいたようです。

 私もカウンターで飲み物をオーダーして、彼の所に行きました。

 屋外に出ると、湯上りの火照った肌に

 ひんやりとした夜の空気が心地よく感じられました。

 サイドテーブルに林檎ジュースを置いて、彼の隣に座りました。


 「静かですね。」


 「雨が降っていたから、音が吸収されて余計に静かなんだよ。」


 「うん。」


 「意外に寒くないだろう。」


 「うん…。ひんやりして気持ちいい。」


 「なかなかこういうホテルってありそうで無いだろう?」


 すぐ近くに自然を感じられるホテルという意味で彼が言いました。

 デッキチェアにのせている素足のすぐ先には深い木立が見えました。


 「本当ですね。

  緑のいい匂いがする…。」


 「さっきから、ここで俺一人だったんだよ。

  寒いと思って誰も出て来ないんだ。^^」


 少し遅い時間だったからでしょうか。

 オープンテラスには私達だけ。

 ラウンジの中も僅かなお客さんが出入りするだけでした。

 私達は二人のグラスが空になるまで、そこに座ってお喋りしていました。



 私は今まで彼のように気持ちや考えを言葉で明確に表す男の人と

 付き合ったことがありませんでした。

 彼には冗談を交えながら陽気に話をする時と

 まるで独り言のようにポツリポツリと静かに話をする時があります。

 私の自惚れかもしれないけれど、

 後者の彼は彼が本当に心を許した相手にしか見せていないような

 気がするのです。

 だから、静かにゆっくりと話す彼の言葉を聞いていると、




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 私は隣に座っている彼の方を見て、


 「連れて来てくれて、ありがとう。^^」


 と言いました。

 いつものように彼は何も答えなかったけれど、

 彼の優しい表情で私の言葉が彼に届いていることが分かりました。


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理沙子

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