途中、滝を見るために一度だけ小さなパーキングエリアで降りただけで、
私達の車は日本海沿いの道をひたすら北へ走りました。
目的地の小さな街に着いたのは午後2時頃でした。
地元のお寿司屋さんで、私達は少し遅いランチをしました。
この日、彼は朝から「腰が痛い!」を連発。
先週からの腰の痛みが今回のデートで悪化してしまったようです。
お寿司屋さんを出てから、
私達は日本海に臨む丘の上の小さな記念館に入りました。
のんびり館内を見学した後、私達は再び車に乗って市内へ帰りました。
彼の車のCDチェンジャーには10枚のCDが入っているのですが、
そのどれもがノスタルジックな曲ばかり。(笑)
今まで付きあってきて一番ジェネレーション・ギャップを感じた
ひとときでした。^^
彼が曲を聴きながら一緒に口ずさんでいたので、
過去に付き合った人とのドライブでは
いつも私が助手席で口ずさんでいたから、
こんなことは初めてでした。^^
市内に入ると既にあたりは薄暗くなっていましたが、
まだ二人ともあまりお腹が空いていなかったので、
彼がよく利用するシティホテル内のスパに行きました。
初めて彼とそのスパへ行ったのは去年の秋で、今回は二度目でした。
あの日と同じようにそれぞれ入浴を楽しんだ後、
中央のラウンジで待ち合わせしました。
お揃いのバスローブ姿でデッキチェアに座って、
冷たい飲み物を飲みながら彼とお喋り。
彼は長時間のドライブから解放されてほっとしている様でした。
スパを出てから、ワインと中華料理のお店に行きました。
個室のように仕切られたそのお店では、
二人っきりの時のように会話が弾みます。
「しかし、俺って偉いと思わない?
昨夜から3回して、往復8時間近く運転して。^^」
「本当です。お疲れ様でした。^^」
「理沙子、言っとくけど、俺もう無理だから!!」
「無理って…私、何もお願いしてないじゃないですか。^^」
「理沙子にお願いされても、もう無理だからな。」
「ほんとにもう!(笑)
腰、大丈夫ですか?^^;」
「やっぱり今朝のがいけなかったな。
昨夜みたいにしてって理沙子が言うから…。^^」
「ええ〜っ!!
私…そんなこと言ってないですよ〜。」
彼が黙って笑っています。
「口に出して言ってないですよね。
確かにそう思ってたけど…。^^」
「そうだろう。^^」
「でも、言わないのに通じるなんて…。
私達って相性いいんですね。^^」
「可愛いよ。^^」
彼は甘い眼差しで私をじっと見つめました。
それは彼が私を欲しがっている時の表情でした。
私はそのことを彼に伝えたくなりました。
「どうしたんだよ。^^」
「ううん、何でもない。^^」
「何だよ、言ってみろよ。^^」
口にするのは恥ずかしかったので、
私はその場で彼にタイトルだけの短いメールを送りました。
彼はそれを読むと目の前で返信のメールを打ち始めました。
すぐに送信してとお願いした私に、
「後で送るよ。^^」
と彼が言いました。
帰りに私の荷物を取るため、二人で立体駐車場へ戻りました。
彼は珍しく酔っているようで、
私の右手を握ると、大きな声で話し始めました。
「理沙子、もう俺無理!!^^」
「もう、何度も言わないで下さいよ〜。
まるで私がおねだりしているみたいでしょ。
私は何も求めたりしてないのに!!」
「ちょっと誰か〜、今の聞きましたか?(笑)」
彼の声が私達以外誰も居ない駐車場に響き渡ります。
「ひどいなぁ。私だってもう無理です。普通に無理だから。^^」
駐車場のエレベーターに乗ると、どちらからともなくキスをしました。
「防犯カメラに見られてる…。^^」
キスを止めて、彼が言いました。
「ほんと?」
私がはっとすると同時にドアが開きました。
エレベーターを降りて車に向かって少し歩いたところで、
彼は私を力強く引き寄せると、
その広い胸にすっぽり抱えこむように抱き締めました。
私は背伸びするように彼の大きな背中に腕を伸ばしました。
彼という人の温かさが伝わるようなハグ。
それは彼の優しさや包容力を感じさせるものでした。
彼の車のトランクから荷物を取って、
タクシーを拾うために通りに出ました。
二日間一緒に過ごしたせいで、
別れ際がいつもより余計に寂しく感じられました。
タクシーが走り出してまもなくすると、彼からメールが届きました。
今度逢うまで我慢してね。
昨日から楽しかったね。
ありがとう。^^
別れたばかりなのに、もう彼を恋しがっている私がいました。
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