翌朝はとてもよく晴れていたので、
ドライブをしようかと彼が言いました。
彼がテイクアウトしてくれた早めの朝食を
ホテルのお部屋で食べ終えたところでした。
一度目が覚めてしまったものの、時刻はまだ七時前。
もう一眠りしてから出かけようということになりました。
「やっぱり、このまま一日ここでグタグタしていようか。」
「うん、それもいいですね。」
彼が私を求めようとしたので、
「何回もしたら飽きちゃいますよ〜。」
と私が言うと、
「俺、そういうの嫌い。」
と彼が言いました。
彼は恋の駆け引きとか計算とかそういうことが嫌いなのかなと思うことが
時々あります。
「出し惜しみされるのは嫌い?」
私の質問には答えずに、彼は、
「ほら、もうこんなになってるよ。」
と言って、私の濡れている場所に指を滑り込ませました。
薄暗い部屋の中に
カーテンの隙間から僅かな白い光が差し込んでいました。
私達は前の晩の快感を辿るように、同じ形で愛し合いました。
抱き合った後、彼はすぐに気持ちを切り替えるかのような声で、
「やっぱり、予定通りドライブに行こう。
ここはチェックアウトして…。」
と言いました。
愛し合った余韻を全く感じさせない彼の口調の変化を
私が寂しく思っているなんて、彼は全く気付かなかったでしょう。
11時前にチェックアウトして地下の駐車場から車で外に出ると、
まさに五月晴れと呼ぶに相応しい美しい青空が広がっていました。
「ほら、やっぱり外に出て良かっただろう。
いい大人が盛りのついた高校生みたいに
ホテルに閉じこもってないで…。」
彼は車のルーフから心地よい風を入れました。
「高校生って盛りがついてるんですか!?
もっとロマンチックな言い方して下さいよ。
二人だけの大切な秘め事なんだから。」
私が憤慨して言うと、彼が大きな声で笑いました。
そして、私にロードマップを見せて、
「ここの海沿いを北に向かって走るから。^^」
と陽気に言いました。
彼は車の中でスペイン語の講義を始めました。^^
動詞の変化について、例文を挙げながら私に教えてくれました。
「愛してるって何て言うの?」
「Te quiero.」
「消えろってひどいじゃない!!」
「Te quiero. だよ。(笑)」
「ねぇ、愛してるってスペイン語で言って。」
私はそう言って、彼の方を見ました。
彼は私の目を真っ直ぐ見て言いました。
「Te quiero.」
ただのスペイン語のレッスンなのに、私の胸はドキドキしました。
私は自分の気持ちを彼に見透かされたくなくて、
軽い調子でこう言いました。
「Te quiero.って何だかムードの無い発音だなぁ。^^」
五月の爽やかな風の中、
彼の車は日本海が見える小さな街を目指して走りました。
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