こうして私はあなたを好きになった
綴りたいのは残された言葉、なつかしい匂い、
揺れる気持ち、忘れられない感触

2009年04月20日(月) やわらかい空気


 私がバスルームの前の大きなミラーの前で髪を乾かしていると、


 「理沙子〜。」


 と私の名を呼ぶ彼の声が何度か聞こえました。

 私はもっと名前を呼んで欲しくて、彼が聞こえるか聞こえないかの声で


 「は〜い。」


 と返事をしました。




 「用意出来たか?」


 しばらくして、彼が私の所に来ました。

 さっきまでベッドで裸で寝ていた彼は、既に着替えていました。


 「まだ、寝ていて良かったのに。

  髪を洗ったから、もう少し時間がかかりそう。」


 「俺が乾かしてやろうか?」


 「大丈夫ですよ。大人なんですから。^^」


 「それは知らなかったよ。」


 「少し、ソファで休んでいて。眠いでしょ?」




 髪を乾かした後、ソファの所へ行きました。

 薄暗い部屋の中、彼の表情はひどく疲れているように見えました。


 「今日は疲れちゃったね。」


 彼に寄り添うように隣に座って言いました。


 「本当に疲れたよ。」


 「Tさんが欲しがるから。^^」


 「よく言うよ。誰のせいだよ。^^」


 「もう駄目って言ったのに。」


 「体はそうは言ってないから。」


 何だか彼に無理をさせているようで、胸がチクリと痛みました。




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 彼が静かに笑いました。


 「ほんと、面白いこと言うよなぁ。^^

  ルールだなんて…。」




 部屋を出てから、エレベーターの前で

 なるべく軽く聞こえるように尋ねました。


 「来週いつ会えるかお電話くれますか?」


 「どうしようかなぁ。無言電話でいい?(笑)」


 彼が意地悪を言います。


 「次に会う日が決まっていないと、それまでの時間が寂しいの。」


 彼は私の右手をそっと握り締めました。



 抱き合った後の気だるい会話。

 今までセックスの後の男の人は

 抱いたばかりの女と距離を置きたがるものだと思っていたけれど、

 彼に抱かれた後は

 その場から離れ難いような柔らかな空気に包まれます。




 外に出ると、彼は片手を上げタクシーを止めました。

 時計は既に12時を回っていました。


 「ちょっと待って。」


 私が乗り込もうとする直前、彼は私に千円札を二枚渡しました。


 「ありがとう。」


 私はお礼を言って受け取ると、タクシーに乗り込みました。

 私は運転手さんに行き先を告げました。

 それから、窓越しに彼を見て手を振りました。


 アルコールが残っていて彼が運転出来ない時は、

 いつも同じように私をタクシーに乗せます。

 私は彼とのデートの帰りに、

 一度も一人でタクシーを止めたことはありません。

 彼は必ず運転手さんの顔を確認してから私を見送ります。



 帰ってからお礼のメールをすると、彼からすぐに返信。

 赤いハートマーク3つと一緒に、明日電話するねと書かれていました。


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理沙子

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