彼と食事する時は二人が好きなものをアラカルトで注文し、
全てのお皿をシェアして食べることがほとんどです。
昨夜はお気に入りのワインと中華料理のお店の一周年だったため、
珍しくアニバーサリーのディナーコースを頂きました。
お料理がサーブされる度に「美味しい!」を連発する私に、
彼が笑って言いました。
「今日は二人とも同じ量を食べてるんだからな。」
彼の意図するところを知りつつ、私はとぼけてみせました。
「どういうことですか?^^」
「食べるのが速過ぎだろう。
俺も速いけど、俺より速いんだから。」
「だって、今日はすっごく美味しいんだもん。^^
ずっとお腹空いてたし。」
「日本語間違っていないか?
今日は…じゃないだろうが。
お腹空いてるから美味しいって失礼だろう。^^」
「はい、今日も美味しいです。
いつも美味しいけど、お腹が空いているから特別美味しいです。^^」
「そうだ。^^
でも、理沙子は本当にいいよ。
俺は味のわかんない女は駄目だな。」
「ん?凄い美人でも駄目ですか?^^」
「いや、駄目だな。
まぁ、一回位はエッチするかもしれないけど。(笑)」
「ひどい!!」
憤慨する私を見て、彼は面白がっています。
「三回位はするかな。(笑)」
「もう!!頭に来ました!!」
「理沙子は反応がいいよな。可愛いよ。^^」
「私は何かにつけ反応がいいんです。^^」
グラスの中のシャンパンを見ながら言いました。
「俺は何でもいいっていう奴が駄目なんだよ。」
「それは分かります。
そういうのってあらゆる部分に通じることですものね。
映画とか本とか…。」
「同じものを食べて美味しいとか、同じ映画を観て面白いとか、
そういうのが共有出来ないとつまらないだろう?
例えば、今日理沙子が俺と二人で観たいってDVDを持って来たけど、
そういう気持ちって大事だろう?」
「そうですね。^^」
私達のテーブルはアンティークな何枚もの扉で仕切られていて、
個室のようになっていました。
若い女性のホールスタッフが飲み物のオーダーを取って出て行った後、
彼が急に笑い出しました。
「どうしたんですか?」
「いや、この前のこと思い出したからさ。(笑)」
彼は先週のデートで私がワインバーの女の子に焼餅を焼いたことを
思い出したのでした。
「さっき、彼女に話しかけようとしたけど止めておいたよ。
ここはこうやって仕切られてるからいいね。^^」
彼はこの日も男性のホールスタッフがテーブルに来る度に、
お店やお料理について色々話をしていました。
でも、私のことを気遣って
女の子に声をかけることは差し控えたようです。
「普段なら全然気にならないんですよ。^^」
「あの時よっぽどお腹空いてたんじゃないか。
今日はお腹いっぱいだから気にならないんだろう?^^」
「う〜ん、それもあるかもだけど…。
でも、何だかあの時は嫌だったんです。」
「ところで、GWは元彼に会うことにしたのか?」
「いえ、もう会わないことにしました。」
私の答えを聞いて、彼は優しい笑顔を見せました。
彼のその笑顔を見て、私は会わないことに決めて良かったと思いました。
「あっ、嬉しそうな顔してる。^^
嬉しいですか?」
「ああ、嬉しいよ。
私は彼の信頼の言葉を聞いて嬉しくなりました。
余所見している相手の心を繋ぎ留めておくものは、
温かい信頼の言葉なのだと思いました。
「じゃあ、GWは私に会ってくれますか?」
「ああ、それなら会おう。^^」
彼はそう言って携帯電話のスケジュールを開きましたが、
以前から聞いていたように東京から毎年恒例の来客があるため、
GWのほとんどは昼間のゴルフと夜の食事のお付き合いで
既に埋まっていました。
その上、ずっと前から話してくれていた旅行の話も
夏以降に引き伸ばしになるようなことを聞かされました。
「でも、楽しみはずっと先の方がいいような気もします。」
「じゃあ、来年な。^^」
彼が調子に乗って私をからかいます。
私が落胆していると、
「また、そんな顔をして。(笑)」
と彼がすぐに私の気持ちを察して言いました。
「うちの岳みたいだな。^^」
彼はよく寂しそうな時の私の表情が愛犬の岳に似ていると言うのです。
今朝、彼から電話があって、来週とGWのデートの日を決めました。
これからのシーズンは彼はゴルフを優先させたいので、
週に何日かはフリーにしておきたいようでした。
それでも、彼は会う日が決まっていないと寂しがる私の気持ちを知って、
空いている日に予定を入れてくれました。
GWの前半で私が会える日を彼に告げ、
その夜は泊まることが出来ると伝えました。
「ちょっと待って。スケジュールを確認してまた電話するから。」
しばらくして彼からもう一度電話がありました。
「ホテルを予約しておいたよ。」
「嬉しい。ありがとう。
Tさんは大丈夫なんですか?」
「大丈夫だよ。」
電話を切った後、少し無理を言ってしまったかなと思いました。
昨夜、ベッドを離れようとした私をギュッと抱き締めて、
「ずっと朝までこうしていたいと思うだろう…。」
と呟いた彼。
彼の甘い言葉は少しずつ私をわがままにさせているようです。
彼に重荷を感じさせない位の
可愛いわがままのサジ加減が分かればいいのだけれど…。
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