舌の色はピンク
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2020年05月02日(土) |
その他好きなもの-2 |
武士道[新渡戸稲造][一般書籍]
「武士道は、語られず、書かれてもいない掟でありながら、それだけにいっそう武士たちの内面に刻み込まれ、強い行動規範として彼らを拘束した。それは、有能な者の頭脳が作り出したものでもなければ、有名な人物の生涯にもとづくものでもない。数十年、数百年におよぶ武士たちの生き方から自然に発達してきたものである。」
新渡戸稲造の名著。 意外と本の厚みはなく、また現代語訳版は読みやすい。 この一本気なタイトルからは、旧来のがちがち日本思想が想起されるかもしれない。というか僕はそうだった。 が実際には、この本は新渡戸稲造がアメリカにいながら英語で執筆したもので、向こうの人間を正面きって相手取っただけあって、欧米人に馴染み深いはずの文学者や哲学者がバンバン引き合いに出されている。数多の引用も文章中の補語として登場させるなどスマートであるし、極めて理知的で現代的。欧米諸国でベストセラーになったことも実感として頷ける。旧来の日本思想を称えてはいても、それが論拠の希薄な牽強付会に陥らず、多角的な観点をもってして比較検討の上で主張しているのだと呑み込める。 なんどでも読みたい枕頭の書。
武士道における美徳の神髄、生き様の心得を、これほど簡潔に、力強く、誇らしげに語ってもらえると、なんと武士とは素晴らしいものなのかと心服したくもなってくる。まったく目次を眺めるで読みたい項目ばかりで、本文はさらに面白く、読み終えてなお精神に居つく影があり、読んでよかったと心から思える。外国から見た武士道なんて本来なら得体のしれない価値観をものの見事に整序しきっている手並みも心地いい。(読み終えた当時の感想より)
テクノヘゲモニー[薬師寺泰蔵][一般書籍]
「当時、青銅器の大型大砲製造技術は、伝統的にイタリア人が握っていた。そして、同じハプスブルグ家統治下のドイツやローカントリーもその技術を学び、質の高い大砲を生産していた。なぜイタリア人が青銅鋳造技術を独占していたのかといえば、それは、長らく協会の鐘を作り慣れていたからである。」
技術力がいかに国家における覇権を揺り動かしてきたかという見地から世界史を紐解こうとする新書。 ここでは、国家や権力者が必ずしも歴史の主語にはならない。 職人だったり、市井の人が、歴史の流れをかたどっている。だから歴史に息遣いを感じることができる。 よく、世界史の教科書は無味乾燥だといわれる。完全に同意見だ。 興味をもちたいならば別口のアプローチをすべきなはずで、僕にはこの本がぴったりだった。
男と女の家[宮脇檀][一般書籍]
「パリの市民はそれぐらい街の中に住んでいる。つまり囲まれている人間だという意識が強かったんですね。これはパリだけでなく、城壁を持ったヨーロッパの都市に共通することです。そのように部屋のインテリアも家も街も容器である。ですから、家は女性定冠詞がついたラ・メゾン、ラ・カサ、家は女だということになるわけです。」
建築家として第一線で活躍されてきた宮脇檀さんが晩年、"男"と"女"と"男と女"を基点に建築の話をとりまとめてくれたエッセイ仕立ての本。 二十年以上前の本ながら、男女論が激している現在でも十二分に読み応えがある。 男にも女にも厳しく、男にも女にも優しい。
写本したくなるほどの面白さ。上っ面の教養ではなく、知見と知識がしっかり噛み合った見識、見識と意識がしっかり噛み合った意見、それらと一体化している肉厚な教養を感じた。建築にまつわる挿話を男女論に絡めて述しているわけだけれど、建築にも男女論にも一切興味なくたって面白がれる、そういう開かれた内容になっている。読めば教養が身につくってわけじゃない。ただ、読むと教養の価値を実体験できる。(読み終えた当時の感想より)
陰翳礼讃[随筆][谷崎潤一郎][随筆]
「私は、吸い物椀を前にして、椀が微かに耳の奥へ沁むようにジイと鳴っている、あの遠い虫の音のようなおとを聴きつつこれから食べる物の味わいに思いをひそめる時、いつも自分が三昧境に惹き入れられるのを覚える。」
谷崎潤一郎が建築や小道具や何気ない生活様式に潜んだ陰影にまつわる美を語る。 誰しもに見落とされてしまいそうな薄弱な美をすくいとる手並たるやあざやか。 なにより文章が美しい。ぞんぶん、うっとりできる。
ふつう自分が感じていることの掌握すらままならないのに、この人ときたらそれをしっかと掴まえて過不足なく文章化するのみならず、あろうことか他人に伝達させる…どころか感得させてしまうのだから圧巻だ。自我と世界とが言語によってもののみごとに交通している。話の一つ一つも面白すぎる。この本は面白すぎる。いくらなんでも面白すぎる。どうにかなってしまいそう。(読み終えた当時の感想より武士道[新渡戸稲造][一般書籍]
枕草子[古典随筆]
「人はなほ、暁の有様こそ、をかしうもあるべけれ。」
才女のくせしておめでたい気取り屋のおちゃっぴいおきゃんで有名な清少納言。 彼女が才色兼備のお后様、中宮定子に仕えたのは七年間あまり、そのうち栄華を誇っていたのは一年半程度。 あとはあまりに不遇な時期が続く。 しかし枕草子には、ちいとも暗い重い悲しい話は出てこない。驚くほど明るくきゃぴきゃぴした日常観に終始している。 ひたすらに枕草子へ明るい話題しか持ち込まなかった清少納言の腹づもり、その決意、気高さを想うと、僕はいつでも涙がでる。 こんなに強い人はいない 高校の時分、そんな清少納言にずいぶん惚れ込んで、以来私淑のつもりで彼女の高潔さにあやからせてもらった。 僕は今でも彼女が大好きだ。
フェルマーの最終定理[サイモン・シン][ノンフィクション]
「フェルマーの最終定理をめぐる物語は、数学の歴史と分かち難くからみ合い、数論の主要なテーマはすべてこれにかかわっている。この物語は、数学を前進させるものは何かという問題、そして、数学者を奮い立たせるものは何かという、おそらくはいっそう重要な問題に対して比類のない洞察を与えてくれる。数学界の偉大な英雄たちを一人残らず巻き込んで展開する、勇気、不正、ずるさ、そして悲しみに彩られた魅力あふれる冒険物語--その中心にあるのが、フェルマーの最終定理なのである。」
堅苦しい数学の教本ではなく、これはドキュメンタリー。 古くはピタゴラスの時代から数学者の足取りを追っていった末に、いかにしてあの"フェルマーの最終定理"が解かれるかを、スリリングに書き記している。 それまでは数学に馴染みがなかったという著者だからこそ、数学および数学者が、知ればどれだけ魅力的であるかを説く文章には得心できるものがある。
宇宙 日本 世田谷[FISHMANS][CDアルバム]
これさえあればもう何もいらないというような酩酊感、夢見心地へいざなってくれるドラッグ的なアルバム。 夜中に暗い部屋で聴き入るのがいちばん。 何もせず、できれば何にも考えず、ただその音楽に身も心も預けてしまえば、浮世の憂いから解き放たれることうけあい。世捨人のできあがり。
Drop your vivid colors[Louminas Orange][CDアルバム]
試聴
シューゲイザーに溺れるきっかけとなった思い入れ深いアルバム。 アルバム名がかっこよすぎる…。 5月の晴れた昼下がりに、窓を開け放った部屋のソファに腰かけて大音量でこれを流すと脳内麻薬がじゃぶじゃぶ出る。 ルミナスオレンジといえば昔、中心人物の竹内さんソロのライブを、原宿のマンションの一室みたいなところで堪能させてもらった。これは夢のような時間だった。このときは轟音でなく静かめなアコースティック。複雑怪奇な音の洪水ばかりでなく、しっとり聴かせてくれる美しい曲が多いのもルミナスオレンジの強み。
NUM-HEAVIMETALLIC[NUMBER GIRL][CDアルバム]
わが青春。 聴くと若返る気がする。 いつか耳が肥えたり精神が成熟したりしてこのアルバムに魅力も感じなくなるんだろう、などと不安をもった時期もあったものの、いっこうにその気配はなく、聴いて興奮するたんび、安心もする。 これで興奮できないくらいなら大人にならないでいい。くたばる。
MAD TAPE[その他]
youtube
ニコニコ動画などで知られるようになった「MAD動画」は映像と音だけど、こちらは音だけのMAD。 というかこの手のMADの系譜の原点とされるようだ。 80年代に出回った、アニメや特撮の音声部分をたくみに編集して笑えるネタに仕立てたカセットテープ。 僕は幼少期、所持していた兄に聞かせてまた聞かせとせがんでは、笑いすぎて呼吸困難になっていた。 いま聞いても笑える。力づくでもあるし、なにやら得体のしれない知性も感じる…。
邯鄲の歩み[中国故事]
むかしむかし、ある田舎の若人が、邯鄲という都に憧れをもっていた。 邯鄲の人たちは歩き方まで洒落ているとの噂だ。 その歩き方をまねて自分も都人となるのだと、若人は故郷を捨て旅へ出た。 果たして若人は邯鄲に辿り着き、そして故郷に帰ってきた。 結局都人のその歩き方など会得できなかった。 それどころか、故郷にいたころの歩き方まで忘れてしまった。 帰り道は地を這って帰ってきたのだった…。 たしかこんな話だった。「荘子」に収められた話のようだ。 よくできている。教訓を抜きにしても話として面白く、そしておそろしい。 まだ幼いころに知った話だが、当時の時点で、なんだか身に覚えがある話だと急所を突かれた気がした。
電人ザボーガー[特撮]
ザボーガーはろくに苦戦しない。 だいたい、圧倒的なパワーで敵に楽勝する。 あまつさえ楽勝したあとに追い打ちまでかける始末。 その容赦ない残虐なヒーロー像に、自分の中の俗な部分の欲求がたいへん満たされる。 あと敵役にあたる悪之宮博士の可愛さったらない。 全然あくどいこと企んでるように見えない。サークル活動してるみたい。
[フェリックス・ヴァロットン][西洋画]
ひと目見て、目線が縛られた。見ているとひたすら不安に駆られる。 空間の表現、立体法に仕掛けがあるらしい。理論は呑み込める気がする。 もちろん仕組みなど謎めいたままでいい。 こちらはよくわからない不安に駆られたくて眺めるんだから。
赤いカーペットの少女[西洋画]
これも、見れば見るほどひたすら不安になる。 そして見れば見るほどこの世界に惹き込まれ、引きずり込まれるような心地にも浸れる。
桜花返咲図扇面[鈴木其一][日本画]
うつくしい…。 ただ単に美しい。 芸術への向き合い方の一つとして、見惚れるだけでもいいのだなと体感できた作品。 これを鑑賞した当時は精神が摩耗しきっていた頃合いで、この一枚にどれだけ救われたかしれない。 うつくしさには精神を浄化させる力があるのだと思い知った。
隅田川[作者不詳] 府中美術館の企画展で偶然見かけた一枚。 作者もわからず、またありふれた題だから検索もかなわない。 本当にこの題だったかも疑わしい。 静岡のどこぞの美術館所蔵と記載されていた気がする。
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このページは今後も更新していこうと思う。 …のだけども、記事作成エディタの仕様がおぼつかずまともなレイアウトにならないので、あきらめてしまうやも。
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