| 2008年10月24日(金) |
専門用語を言い換えるより大切なこと |
先日、僕の恩師の一人と電話で話す機会がありました。最近の近況を話し合っていたのですが、その恩師が僕にこんなことを尋ねてきました。
「インフォームド コンセントのコンセントって電気のコンセントのこと?」
恩師は僕も尊敬するくらい幅広い知識、教養を持っている方で、医学知識もかなりお持ちの方です。歯科に関することもよくご存知で、僕の患者でもあるのですが、僕と話をする時は、「右上の4番が痛くてねえ・・・」 なんて言われるくらいの方なのです。 (右上4番とは右上の第一小臼歯のことを指します)。 そのような方がコンセントの意味をご存知無かったとは僕は意外でした。
インフォームドコンセントとは英語のinformed consentのことで、治療を行う前に患者さんの病状や検査結果、今後の治療方針やその予後といった医療情報を事前に患者さんに伝え、治療を行う同意を得ることを差します。コンセントとは同意という意味なのです。参考までに、電気のコンセントのことは英語ではelectrical outletというようです。
歯医者さんの一服日記では歯科で用いる専門用語はなるべく使用せず、一般の方にもわかりやすい言葉で書くように心がけています。 例えば、義歯のことは入れ歯、齲蝕はむし歯、クラウンのことは被せ歯、歯髄のことは神経といった具合です。一般の方にも浸透してきたと思われる専門用語も言い換えたりしています。例えば、ブラッシングは歯磨き、歯周病は歯槽膿漏、メインテナンスは定期検診といった具合です。
それぞれの業界には業界用語や専門用語で満ち溢れているものですが、これらが身内意識を高める効果があるのは否定できません。医療業界でもそうで、業界内でしか使われない用語というのが数多く存在します。これはこれで役立っているものですが、医療は患者さんがあって初めて成り立つもの。多くの患者さんは医療に関する正確な情報を持ち合わせていないのが現状です。そうした人に対し、わかりやすく、専門用語を言い変える作業というのは医療業界人にとって必要不可欠なことだと思うのですが、ついつい専門用語で言ってしまうことがあるものです。僕もそんな失敗をやらかしたことがあります。
ただ、専門用語を言った後、患者さんの反応を見てみるとどこかよそよそしい、おかしな雰囲気があるものです。これを感じ取るか感じ取らないかが大切ではないかと僕は思います。患者さんが醸し出す微妙な空気の変化を汲み取り、説明を繰り返したり、わかり難いことを聞き出したりする。そんな意識、努力を医療業界人は常に持つ必要があると思います。
確かに専門用語よりも一般にわかりやすい言葉で話すことは大切だと思いますが、医療で大切なのは患者さんとのコミュニケーションです。たとえ患者さんにわかりやすい言葉で言っても、言葉の裏に誠意がなければ何も言わなかったのと一緒ではないか?そのようなことを強く感じる、歯医者そうさんでした。
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