歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2008年10月23日(木) 小学生パン咽喉詰め窒息死に思う

既に皆さんもご存知のことと思いますが、千葉県で小学校6年生の生徒が給食中、パンを咽喉に詰まらせ、死亡するという痛ましい事件がありました。

以下、朝日新聞からの引用です。

千葉県船橋市立峰台小学校(末永啓二校長)で、6年生の男児が給食のパンをのどに詰まらせ死亡していたことが21日わかった。窒息死とみられる。
 同校によると、男児は17日午後0時45分ごろ、給食に出た直径10センチ余りの丸いパンを一口ちぎって食べ、残りを二つに割ってほおばり、のどに詰まらせた。気づいた担任が注意し、男児は友だちに促されてスープを飲み、廊下の手洗い場ではいた。いったん教室に戻り担任らが背中をさすったり、たたいたりしたが苦しいと訴え、再び廊下に出て横になった。男児の意識が薄らぎ、救急車で病院に運ばれたが同日夕に亡くなった。
 末永校長は「軟らかいパンでこんな結果になるとは予想できず、驚いている。友だちとも仲良くする優しい子で残念だ」と話している。
 同校は20日朝臨時の全校集会を開き、児童に事故を伝えたが、泣いている児童もいたという。「児童のショックが大きい」として校内にスクールカウンセラーを待機させている。


大切なお子さんを亡くした親御さんの気持ちは如何ばかりのことでしょう?朝まで元気だった子供が昼食を食べて亡くなるなんて想像もしていなかったと思います。本当にお気の毒であるとしかいいようがありません。

以前にも書いたことですが、食べ物の咽喉詰め事故で多いのがパンなのです。ゼリーや餅などが咽喉詰め事故で多いという印象が強いですが、実際多いのがパンを食べる際の咽喉詰め事故なのです。

パンというと誰もが気軽に食べることができる食べ物ですし、朝食を中心に毎日食べられている人も多いことでしょう。何回も充分に噛んで食べる分に関しては問題なく飲み込むことができます。ところが、問題なのは噛まずに飲み込むような場合です。

よく高齢の方がパンを食べる際、水分や汁気をパンにつけて食べることがあります。こうすると、何度も噛まずに飲み込むことができると思いがちですが、これは非常に危険な行為なのです。充分に噛みこまず水分を含んだパンを飲み込もうとすると、咽喉に詰まるのです。これは水分によって表面張力が高まり、飲み込もうと咽喉を通る際、咽喉の粘膜にくっついてしまうからだと推測されます。
また、高齢者の場合、体力的な衰えから飲み込む反射、専門的には嚥下反射といいますが、この嚥下反射が鈍くなっている側面があります。嚥下反射の衰えと水分を含んだ大きな塊のパン。これは咽喉の窒息を起こして下さいといわんばかりの状況なのです。

食事の際、食べ物による窒息事故を防ぐためには、充分に噛むこと、咀嚼することが大切です。口の中で歯で何度も食べ物を噛み、細かく砕いてから飲み込むことです。子供や歯が少なくなった高齢者の場合、あらかじめ食べ物を小さくしてから食べる配慮が必要でしょう。

今回の事故ですが、別のマスコミ報道では、友達同士競い合うかのように早食い競争でパンを塊で飲み込もうとしていた時に起こった事故だという報道もありました。実際のところは不明ですが、どうして、このような死に至る可能性のある食べ方をしていたのか?このようなことが起こる前に何とか止めさせる手立てはなかったのかと思わざるをえません。
教育現場では、事前にパンを含めた全ての食べ物に関し、飲み込むような行為を慎むよう指導を徹底し、生徒たちに浸透させなければ、今回のような事故を繰り返すかもしれません。

今、小学校では食育といって食べ物に関する教育が見直されていますが、食べ物だけでなく、美味しく食べる食べ方も教える時期に来ているのではないか?そのような思いを強くした、歯医者そうさんでした。


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