患者さんを診る際、最初に必ず行うことは患者さんの問診です。患者さんの主訴を聞き、実際に口の中や顔面、頭部、場合によっては全身の状態を探っていくわけですが、過去においてどんな病気や怪我になったかという既往歴や現在何らかの病気に罹っているか、どこか他の病院、診療所に通院しているかどうかも確認します。特に、ある程度以上の年齢の方は高血圧症、糖尿病、高脂血症といった生活習慣病に罹っている場合が多く、通院治療しているケースがあるからです。
基本的には患者さんから話を聞きますが、中には患者さん自身の記憶があやふやであったり、誤解していたり、実際の症状と患者さんの認識が異なるケースもあります。患者さんを信頼しないわけではありませんが、歯医者として知っておきたいことは正確な医学情報です。患者さんから正確な医学情報が得られないような場合、僕は患者さんの了承を得てから、通院している主治医の先生がいる病院、診療所へ手紙を書きます。現在の患者さんの病状、病歴、検査データ、出している薬の内容等の医療情報を教えてもらうのです。
手紙のやり取りには多少時間がかかりますし、患者さんの症状次第では、主治医の先生からの情報を得る前に治療をしてしまうこともあります。しかしながら、主治医の先生から頂いた返事には正確な医療情報が添えられています。これは歯科治療を行う上で大変有用な情報となるのです。
患者さんの主治医に手紙を送る際、僕は必ず診療所の名前と主治医の先生の名前を書いて手紙を出します。ところが、場合によっては主治医の先生の名前がわからない場合があります。 また、患者さんを他の病院へ紹介するような場合、患者さんが指定された病院へ行く場合であれば問題ないのですが、時としてどこの病院へ行くか不確定な場合があります。このような場合、宛名には病院や診療所の名前をかかずに
主治医先生 御侍史
とか
担当医先生 御机下
といったような宛名を書きます。
僕はこの宛名の書き方は今もって好きになれません。そもそも、手紙というのは特定の相手に対して出すもの。宛名も特定の人の名前を書くのが当然ではあるのですが、先に書いた事情のように紹介先が決められないような場合、やむを得ず
主治医先生 御侍史
担当医先生 御机下
と書いてしまいます。非常に心苦しく感じますし、何だか無責任なことをしてしまい申し訳なく感じるのですが、何も書かないよりはいいと割り切って書いています。 できれば、このような書き方はしたくないのですけども。
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