歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2008年10月15日(水) 口臭予防に意味が無いガム

歯科医院に来院する患者さんの中には口臭が気になると言って来院される患者さんが少なくありません。また、歯科医院へ行っていないものの、自分の口の臭さを他人から指摘され、気になっている人はかなりいるはずです。

口臭の原因はいくつかあるのですが、大半が口の中に何らかのトラブルを抱えているケースです。むし歯であったり歯周病が進行しているような場合、口臭が生じることが多いのです。ということは、口臭を解決するためにはむし歯や歯周病の治療を行わないといけないことは自明の理です。

ところで、口臭を気にしている人の中にはガムを噛み続けることで口臭を消そうとされている方がいます。うちの歯科医院に来院する患者さんの中にも、来院する直前までガムを噛んでいたなあと思われる患者さんがいます。
ガムを噛むこと自体、僕はそれほど悪いことであるとは思いません。最近のガム、特に、むし歯になりにくいとされているキシリトールなどの代替甘味料を用いているものは、むし歯の予防効果があるとされています。また、ガムを噛むことである程度唾液も出てきます。常に噛み続けるという行為はマナー上はよくないとは思いますが、人に迷惑をかけない程度にキシリトールなどのむし歯になりにくい代替甘味料を用いたガムを噛むことは悪いことではないでしょう。

ところがです。ガムを噛んでも歯周病の進行を抑えることはできません。また、一度歯に穴が開いてしまったようなむし歯を治すことはできません。歯周病の場合は、適切な歯磨きを歯科医院で指導してもらい、定期的にチェックを受け、時には歯石を除去したり、手術を受けた方が良い場合もあるのです。むし歯の場合は、きちんとむし歯で侵された歯質を取り除き、詰め物や被せ歯を被せなければなりません。むし歯が進行して神経にまで達しているような場合には、神経の処置も必要でしょう。
上記のような処置を歯科医院で行うことにより、初めて口臭を絶つことができるのです。

ところが、周囲から“口が臭い”と言われ何も歯の処置をせずガムだけを噛んでいても根本的な解決には至りません。一時的にガムのにおいが口臭に勝り口臭を取り除いたように思えるかもしれません。これは例えるなら、生ゴミに何らかの強烈な香りがする香水をかけるようなものです。一時的に香水の香りが生ゴミの臭さに勝り、臭いがしないように思えるかもしれませんが、時間とともに生ゴミの臭いがきつくなる。これと同じことが口臭を抱える方のガム噛みにも言えるのです。ガムを噛むことは対症療法にはなりえても、根本的な治療にはなりえません。
口臭をきちんと治すには、必ず口の専門家である歯医者の下を尋ね、何が原因であるかを調べてもらうこと。そして、原因を見つければその原因に対する治療を受けることです。

僕も口臭で悩んでいた時期がありますからわかるのですが、口臭を周囲から指摘されると何だか人格を否定されたように感じることがあるものです。一人で悩まず、お近くのかかりつけ歯科医院を受診し、口臭の治療を受けることが大切なのです。


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