歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2008年07月15日(火) 病は突然やって来るのではない

このニュース、かくれファンの一人としてショッキングなニュースでした。あんなに元気な人が咽頭癌となったのだけでも信じられず、病を克服して、再復帰したのも信じられなかったのですが、再発がわかり腸骨転移ともなると・・・。
適当な言葉がみつかりません。

さて、うちの歯科医院に来院される患者さんの中に

「食事をしていたら突然しみてきた」
「何もしていないのに突然詰め物が取れた」
「夜寝ていると突然歯が痛くなってきた」
「朝起きたら顔の右半分が腫れていた」
など訴えられる患者さんがいます。何の前兆もなく突如ある症状に見舞われ、歯医者に駆け込んでくる患者さんというのはどこの歯科医院にも必ずいることでしょう。患者さんからすれば、本当に何の前触れもなくという感覚の人がかなりの割合でいます。以前、歯科医院を受診していた時は何ともなかったのに、どうしてこのようになってしまうのか?と嘆いてしまう患者さんも少なくありません。

こうした患者さんの言い分はわからないではないのですが、歯医者として、そして、医療の専門家の一人として言わせてもらうならば、歯の病を含め、どんな病も突然襲ってくることはないのです。病には病になるだけの条件があり、病が進むだけの時間、過程があるものなのです。突然、病に襲われると言う人は、自らを蝕んでいる病が大きくなってくるまでの間、気がついていないだけなのです。

口の中の病気であるむし歯や歯周病などはその最たる例です。最初は、ほんの些細なむし歯や歯周病であったはずですが、放置しているうちに徐々に進行し、気がついた時には歯が欠けたり、歯が動揺したり、痛みが生じたり、歯肉が腫れたりするものなのです。そういった意味では、口の中の病気は静かに侵攻する病であると言えるでしょう。考えてみれば非常に怖い病気なのです。

こうしたことを防止するには、やはり定期的に歯科医院を受診し、検診を受けることに尽きるでしょう。患者さんが気がつかない小さな、些細な病変をチェックし、治療するべきものは治療する、今すぐ治療をする必要がないものでも経過観察していく。こうしたことで少しでも気がつかない病を見つけることが可能なのです。

一昨年、親父が腹部大動脈瘤の手術を受けた話は以前ここにも触れましたが、これも腹部の大動脈が膨れるまでには相当の時間、経過があったはずです。たまたま撮影したレントゲンCT写真にこの大動脈瘤が写っていたため、親父は直ちに手術を受け、命拾いしたわけですが、僕は静かに進行する病の恐ろしさを痛感しました。

僕の日記を読んで下さっている皆さんも、いろいろと忙しい日常をお過ごしのこととは思いますが、何とか時間を作って頂き、かかりつけ歯科医院を作り、定期的に歯科医院を受診するようにして欲しいと願っています。全ては静かに侵攻する口の中の病から身を守るためなのです。


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